2024/04/16 のログ
ご案内:「王都のどこか」にメアリさんが現れました。
ご案内:「王都のどこか」に枢樹雨さんが現れました。
■メアリ > 夜も遅い時間、平民地区の大通りから離れ、人の声も街灯の明かりも届かぬ様なそんな場所にある
廃墟の屋根の上にひとつの影がある――
路上から見上げても存在を視認しにくいような位置、そこで春の温もりを微かに感じられる夜風に
当たりながら女はひとりで、小さな酒瓶を口元で傾けて、甘みの伴う安酒をちまちまと飲み進めていた。
「……はぁ」
酒気の纏う吐息を微かに零して、大広場方面から零れる街の明かりを遠くからぼんやりと眺めて
ひとり、穏やかな時間を過ごしている……筈だった。
■枢樹雨 > 昼間とはまた違った賑わいを見せる夜の街を見下ろし、ふよふよと霊体姿で漂う妖怪。
何か興味を惹かれるものはないか。そんな思いで街を彷徨うのは最早日課。
そろそろ地に足をついて散策に切り替える頃合いだろうか。なんて、思案する間に人々の喧騒は少し遠ざかり、民家らしき建物の立ち並ぶ静かな区画の上空まで移動していた。
―――それは偶然。悪戯な春の夜風が、不意に強く一陣。
攫おうとしたのは、誰かの外套。屋根の上ではためく布の音に気が付いた妖怪は、自ずと其処へ視線を落とす。
見つけたのは、人影。その手にある、酒器。
前髪に隠れた仄暗い瞳が、僅かに輝きを乗せる。
そこからの行動は早い。
するりと人影の左隣にしゃがみ込んだ妖怪は、ゆらりと実体を顕わにする。
風に揺られる頭の白絹。その下の長い前髪。その更に下から、じぃ……と貴方を、貴方の手元に視線を注いで。
■メアリ > 流石に霊体まで感知できる程鋭くもなく、人として存在していない女の気配を感じ取ったのは
その実体が顕わになった時。
それはつまり、女の姿が何も居なかった筈の、己のすぐ左隣に現れた瞬間で――
「―――ッ?!!」
人の目が届かない場所だからと、完全に油断していた。
穏やかな春風に溶けてしまいそうなほどにぼんやりとしていた己の意識は、その存在を認識した途端
反射的にそこへと注がれ、屋根の上に腰を下ろしながらも、女のいる方とは反対側に身を引く。
「な……な、っっ」
驚いたように目を見開き、唇を震わせてコミュニケーションも図れない様な言葉として不十分な音を
唇から零しながら、まるで幽霊でも見たような反応を見せる。
否、実際に幽霊(幽霊もどき?)を見ているのだからその表現に間違いはない。
「―――枢、さま?」
動揺しながらもその白絹の下の、見覚えのある顔を捉えると、僅かに荒立つ心の内も和らいで。
ドクドク、と早鐘を打つ鼓動を感じながら、女は困った様に眉根を寄せる。
「驚かさないでくださいよ、もう……
どうしたのですか、こんなところで。」
はぁ、とため息を零しながら、心臓の真上をさすりと撫でつつ問いかけて
■枢樹雨 > 視線を注いでいたはずの酒瓶が、一瞬にして遠ざかる。
息詰める貴方の前で「あ…」と間の抜けた声を零す妖怪は、悪戯な幽霊のごとき行いをした事実に気が付きもしない。
それどころか酒瓶にばかり視線を注ぎ、その持ち主たる存在に意識が欠片も向いていないという事態。
しかし戦慄く貴方の声にやっと視線を少し持ち上げると、驚きに見開かれた花紺青の瞳を見つけ、瞬きをひとつふたつ。
「メアリ?」
知人であった。
呼ばれた名に貴方の名前を重ねると、両膝を両手で抱えて座り込むまま、じぃ…と貴方の表情の変化を見つめ。
「驚いたのか?私に? 戦を知る君を驚かすだなんて、私も大したものだね。」
霊体というチート能力を保有しているが故なんて、思考は無い。
戦士の傷をその身に持つ貴方を驚かせた事実をちょっと自慢気に語れば、どうしたとの問いに本来の目的を思い出す。
そうすれば視線は再び酒瓶へ。そして持ち上げた白い手で、その酒瓶を示し。
「お酒。…………飲みたい。」
■メアリ > 「こんなところに足音もなく急に現れて、驚かない人の方が居ない思いますけれど…?」
自慢げな様子を見てもう一度ため息を零しながら、屋根の上で再び足を崩した状態で座り直した。
ふと、隣の女の視線が己の手元に注がれていると気が付けば、視線をそちらへと向ける。
「……この間沢山ご馳走してさし上げたではありませんか。
そんなにお酒がお好きなのですか?」
まるで子供が強請るかのような言葉に呆れながら苦笑いを浮かべて、よくもまぁこんな暗がりの中
瓶の中身が酒だと気が付いたのだと感心しつつ、中身の量を確かめるようにして酒瓶を揺らす。
「そんなにお好きならばご自身で買ってくれば……と思いましたけれど
――貴方もしかして、まだ一文無しなのですか?」
ふと以前の事を思い出しながら問いかける。
あれからしばらく経っている筈だし、お金を手に入れる手段に辿り着いていてもおかしくはない
筈だと思いながらに。
■枢樹雨 > 「そうか?……いや、そうか。暗がりでひっそりと忍び寄るのは、悪戯好きの妖怪の常套手段だった。…うん。人を驚かすというのはなかなかに楽しいね。」
そんなものだろうか。一度は疑問に思うものの、怪談話と共に生きた妖怪は思い出す。人間を驚かす方法と、その楽しさを。
抑揚のない声音も、僅かにトーンが上がれば上機嫌な響きとなる不思議。
チクリと指摘されて尚、めげる様子もない妖怪は、貴方からの問いかけにひとつ頷き。
「ああ、好きだ。肉体を得て初めて、美味いと思った。
人の子がそれはそれは美味そうに飲んでいて気になっていたのだが、なるほど納得のいく味わいだよ。
それにあの酩酊感も良い。ふわふわと、心地良い。」
淡々と、それでいて饒舌に、妖怪は語る。
なにせいまだに酒以外の飲み物を知らないのだ。飲み物すべて酒くらいの認識である。
水を求めるように酒を求め、無邪気に図々しく二度目ましての相手に強請るなら、二つ目の問いにも素直に頷き。
「お察しの通りだ。酒は飲みたくなるが、切羽詰まる程ではないからね。興味を惹かれるものがあれば、"仕事"とやらをやっても良いのだが。」