2024/03/15 のログ
ご案内:「骨董品店『』」にケイオスギャラリーさんが現れました。
■ケイオスギャラリー > 広いと言われれば広いかも。
狭いと言われたら詫びの言葉もない。
平民地区にひっそりと存在する骨董品店。
客は入店した何もかも。
冒険者であれ、貴族であれ、貧民地区の住人であったもだ。
人間でもミレー族でも不死者でも、人型で対話可能であれば誰であれだ。
店内にはそんな客相手に薦める品の数々が展示されている。
通常の半分くらいの大きさの女神像に手のひらサイズのガーゴイル、真っ黒に塗りつぶされた絵画に大鏡、珍しいところではビキニ鎧に両手剣などの武具まである。
その奥には店主が頬杖をついて暇そうにしている。
全身を怪しげな外套で身を包み、露出しているのは煙草を咥えている口元だけ、店内にはそんな店主の咥えている煙草のようなものの香りが広がっていて――ひどく甘ったるい香りがするだろう。
さて、今宵はどんな素材が届くのだろうか。
今宵はどんな美術品が選ばれるのだろうか。
酒の肴か、甘味の代わりか、どんな顔でどんな声で、楽しませてくれるだろうか。
唯一外部に露出している口元を柔らかな笑みの形に歪め、その時が訪れるのをのんびりと待っている。
平民地区にある骨董品店『』
窓からはあたたかな光がこぼれている。
その明かりはまるで通りかかる者を誘い招く誘蛾灯が如く。
■ケイオスギャラリー > 「おォ、そウダそうダ。」
店主が独り言をいいながら、カウンター奥の椅子から重い腰を上げて立ち上がり、咥えていた煙草のような何かをカウンター上のガラス皿に押し付けて潰してから、両手から埃を落とすようにパンパンと叩く。
……その声は若い男とも老齢な男とも、少女とも艶やかな女性とも判別つけ難き声色である。
それ以上に不可思議なのは煙草に似た何かと同じ香りが、店主が歩くたびに、行動するたびに、ふわり、と店の中に広がることで、店主は香りを振りまきながら、店の出入り口をあけると近くにあるポストをあけて、中を確認する。
『店員募集中、条件要相談』
冒険者ギルドに張り出し、店の壁にも張り出した募集に反応があったか、無かったかの確認である。
残念だがポストは空で店主は両肩……あるのかわからないが、両肩を落とすと、またあの不可思議な判別つき難い声色で「うーん……。」とうなり、ポストを閉めて、またすぐにあけて、中を確認するのだった。
店内に並んでいる品々は基本的には店主が客に合わせて選ぶか、品物の方が客を選ぶ、あるいは客が品物に惹かれる、けどそうでもない場合にはどうしても埃払いや、雑用をする必要性があり、自分の手を汚したくない店主はアルバイトの募集を以前からしていた。
今日もいつも通り応募はなかったけども。
■ケイオスギャラリー > 応募はゼロ、無いモノは仕方ない。
踵を返すように店に戻ると大げさな態度でため息を吐く。
フードからは決して見えない瞳を細め、唯一見える口元は不機嫌そうにへの字に曲げて、仕方なしに作品の数々の整理を始めることにする。
例えば、入り口近くに飾られてる『頭部が花の蕾状になっている石造』、こいつはガーゴイルでは飽き足らぬ芸術家がガーゴイルの頭部を花の蕾をイメージしたものへと変えたらしい。
作者ではないのでわからないが、それを一瞥すると棚のほうを眺める。
その棚には幾筋も血管の浮かぶ球体。
卵にも見えるが心臓部にも見えるグロテスクな物体。
これは生命の誕生と生命とは何かを訴えた作品らしいが、知らない、作者がないから。
あとは壁にかかった豪華な額縁に飾られている真っ黒な絵。
これはまだ作品として仕上がってないとの事なので、素材を求めてこの店で預かっている。
どれもこれも理解できないが素晴らしい作品の数々。
あとはそれを完成させるだけのピースが欲しい。
それはどの作品も一緒である。
こうして作品たちを愛でながら1日は終わる。
更けていく夜にいつまでも店主はうなづき続けた。
ご案内:「骨董品店『』」からケイオスギャラリーさんが去りました。