2024/01/27 のログ
ご案内:「南方の島」にジギィさんが現れました。
ご案内:「南方の島」に影時さんが現れました。
ジギィ > この毛玉たちのみならず、熱心に食料に向き合うひたむきさは何となく微笑ましい。
それ故に、飼われ(てやってい)るとなると食料の採りすぎなどは気を付けないといけない訳だが、この2匹がいまだに体形を保っているのは親分に依るところは大きいだろう。
彼が日頃筋トレなどするかは知らないが、2匹が真似してスクワットをする様子を思い浮かべて、肩を震わせるエルフは人知れず顔を背けた。

「カゲトキさんは賤しい…っていうよりひたすら地味っていうか、芸術に散財するとか苦手そうだよねー。実利がなければしないカンジ。 ええっと、機能ーびーまでとどかないちょっと惜しいすれすれなカンジ?
 ディアーヌさんに教わったら良いんじゃない。そんで私にコイバナ提供してくれたらいいんじゃない」

エルフは彼を振り返ってしげしげ見つめながら評すると、後半は『良いこと思いついた!』とばかりに顔を輝かせて、最後独りで頷いている。
その隣で天使少年が『今のままでも十分かっこいいですよ!』というちょっと方向のずれた励ましを贈る。
逆光に肌の暗めなふたりが立っている様は、青い空を背景に切り取られたようにも見える。

さて、それからの彼の『泳ぐのは必須か』との問いにはその二人ともがまた揃って首を傾げる。
そのまま二人そろって海辺を振り返ってまた彼を振り返って

『そんなこと言っても、船の代わりになりそうなものなどないし、渡って行けるような岩礁など影も見えないけど』 → 『え、まさか水面を、片足が沈む前にもう片方を踏み出して渡るとか?』 → 『え、そんな12歳くらいの男子が考えそうなこと言ってる?』

→『あらまー、 そんなことも出来ちゃうわけ』(エルフ)
→『そんな… 夢のある事言うなんてカワイイ!(きゅん)』(天使少年)

という、最後のコマだけ違うオチとなっているような表情の変遷が、彼の眼の前で展開された。

親分が出立する気配を察知した毛玉たちは、ぽんぽんと毛皮に着いた殻の破片を払うとたたたと彼に駆け寄って駆け登って行く。
慣れたもので、そのまま肩までするすると辿り着く。
一方のコガモはごちそうさまでした、というようにぴーと彼に鳴き返してから、毛玉たちを真似してよちよちと彼ににじり寄っていく。当然登れないので、それからそのままぐるぐると足元に纏わりつくように歩き回っている。

『…いえ、泳ぐのが必須と聞いたことはないので、大丈夫だと思います。何でしたらぼくがすでに泳ぎましたから、お気になさらずで大丈夫ですよ!
 頑張ってください!』

何を期待しているのか、少年は両手を組み合わせて目をキラキラさせて彼をみつめる。
エルフはエルフで、何か思案しているようだ。
彼に先に行ってもらった所で、どうやって追いかけるか。潮が引くまで待つのも芸が無い。かと言って風の精霊に運んでもらうと嵐になりかねない。

(…服濡らしたくないからなー)

いっそ裸で泳いじゃおうかしらん、なんて、彼の脚元をよちよちまわるコガモを宥めながらつまみ上げて、そんな事を考えている。

影時 > 日々の楽しみは高尚な趣味ではなく、食事にこそある。高貴さやら美しさ等ではお腹は膨れない。
だから、毛玉たちが闊歩する学院やら何やらで貰ったり、偶々見つけたりする食事以外は、出来る限り気を遣っている。
それと同じように、運動を気を遣う。趣味として動物を飼う金持ちと比べて、宿部屋暮らしでは運動量の確保に限界がある。
自分が仕事をしているときに散歩は許すし、朝晩の訓練やら瞑想やらに付き合わせるのだ。
腕立てのマネやら演武のマネやらをしだしたら、新たに二匹が何かを学んだ――ということが、直ぐに分かるに違いない。

「……賤しいとか云ったか、お前さん。せめて、詫び寂びが分かってるとでも言ってくれ。
 故郷から船で渡ってきた茶碗とか見かけたら、買っちまうかどうか悩む位は最近遣るんだぞ?

 お針子のお嬢ちゃんに教わる以前の問題としてだな。げーじゅつなんて凝り始めたら、置き場所がなくなっちまうからまずいンだ」
 
何かすンげぇ聞き捨てならねェこと云ったような、云わなかったような。
耳にかすかに残る言の葉に思いっきり胡乱げな眼差しを、己をしげしげ見遣るエルフに投げやり、青空を振り仰ぐ。
昔雇われていた大名の薫陶のおかげで、物と気分が整っていれば茶の湯を点てる趣味位はある。
道具の見た目の良し悪しは拘るときりがない領域だが、舶来品を扱う商人の店先で見つかれば、うーむと考える位は偶にある。
だが、芸術云々が他に詳しいかどうかというのは、エルフの指摘も大きく外れていない。歴戦の忍びにも、至らぬ点は多くある。
誰かに教わるのは正しいにしても、どうしてその名が出るのか。
コイバナ趣味全振りな顔を見れば、くしゃくしゃと己の髪を掻こう。その上で掛かる励ましには、“……有難うよ”と吐息交じりに零して。

「…………――俺そんなに不思議なこと云ったか?」

儀式やら禊やら何やらを思うなら、目的の完遂のために泳ぐ必要があるのか否か。それを問うただけなのに。
両者一様に海辺の方を見遣り、その後振り返りながらそれぞれに表情を移ろわせるさまに、思いっきり首を傾ける。
儀式を完遂するに様式が定められており、踏襲しなければならないとしたら、と思っていたが其処まで厳しくはない、ということか。
船が必要なら、丸木舟でも作ればいいとはいえ、次第を考えれば悠長にはしていられない。
水の上を走ってどうにかできるレベルであれば、そうするのがきっと一番早い。それを為せる力と技能が男にはある。

その男が背負いものを用意する中、毛玉たちが動き出す。
ふかふかの毛皮についた破片を払い、脱げていた法被を器用に着直したうえで駆けより、するするするーと攀じ登るまで最早慣れたもの。
右肩にシマリスが掴まり、頭上にモモンガがべったりと張り付くように捕まるのが、定位置であるらしい。
そんなポジションに憧れてるのか、鉱石と宝石で出来たコガモが先輩たちに倣って寄ってくる。
鳴いてくる姿に頷き、食べ残しと食べた後の瓶とガラスをそれぞれ拾い、まとめて鞄に放り込む。残る苦無を帯に差せば、どうしたものかと思い。

「分かった。泳がねェでも大丈夫なら、少しは楽が出来そうだ」

何を思って、考えているのか。何かきらきらした眼差しに一瞬ぎょっとしながら、心得たと頷く。
その後に視線を移すのは、足元を回るコガモを摘まみ上げてくれるエルフの方である。

「取り敢えず、先に走ってくるわ。ちゃんと追ってきてくれよ――、と……!」

背のものを担ぎ、しゅぱと右手を挙げれば頭上と肩上の毛玉たちが同じポーズを取ってみせる。
その後に微かに身を屈めれば、地を蹴る。砂を微かに舞わせながら忍び装束姿が海に向かって走り出す。
泳ぎに行く――のではない。寄せる波濤を跳び越しつつ、突き出す蹴り足は海面をたしかに踏み締めて、反撥させるようにその姿を立たせる。

ジギィ > 「わ…?
 へー カゲトキさん、お茶碗なんて集めたくなるんだ。 …割ってショギョウムジョウを感じるとか、そーいうやつ?」

実利を追いかけるのは必要な事だし、それはそれでストイックな美しさがある。そう伝えたかったのだが、口を突いて出た言葉が不味過ぎである。
うわぁ聞こえちゃった、とばかりに口元を抑えてみるが、彼が続けて言った言葉のほうへの不思議で表情が置き換わった。今度色々聞いてみたいが、果たしていつになる事やら記憶の保持に聊か自信が無い。

「…そーだね」

逆に不思議そうな顔をする彼に、エルフはくすくすと笑いながら答える。
少年の方が『彼はまじめに言ってるんですよ!』とある意味謎のクレームをエルフに上げるので、それには「ごめんごめん」と、彼に言っているのか少年に言っているのか曖昧に片手をひらひらと振って見せた。

子分たる毛玉たちの所作はもう板についたもの。彼らがエルフの故郷の森を出たのはほんの少し前のことだと思っていたけれど
時が経つのが早いというのか、それともこの1人と2匹の相性が相当よかったのか。
ぴったりと彼に(いろんな体制で)貼りつくのを眼を細めて微笑ましく眺めるエルフと、唇を噛むちょっと悔しそうな天使少年。

揃って右手を上げる主従に今度は声を出して笑みを零して、エルフも右手を上げて挨拶を返しながら、彼を見送れるように身体を捻る。

「んー 頑張る。 たぶんその像の気配を追って行けると思うから、行けるだけ先に行ってて」

エルフはそう言うと、彼が飛沫を立てるはずの波を踏みしめて駆けていくのを手を振って見送るだろう。
傍らで目を丸くしている少年とともに。

――――そして、真っ直ぐ走った彼が辿り着くのは、汀まで森が迫った島の端だろう。
見上げても、迫った木々によって行く末―――火山の筈―――は見通せない。
ところどころ陽が差し込んだところがあって『暗い緑』とでも形容できそうな風景は、さらに絡まり合う蔦植物とねじれた樹木の幹がだまし絵の様に組み合わさって、到底過去ヒトが立ち入った事があるようには見えない。
奥からは、獣たちの鳴き交わす声がひっきりなしに聞こえて来る。

影時 > 「たまたま見かけたら、だがな? 俺の昔の雇い主とかその敵とかが、大事にしてたよーなのが見つかりそうな気がしてなァ。
 ……あと、割るために探してるワケじゃないからな。
 茶碗の良し悪しで茶の味が変わるわけがないが、価値が分からねェ奴に渡るのが何かイヤなだけだ。それだけだ」
 
茶の湯の趣味、茶器の趣味は男が故郷に居た頃だと新しい類のようだったが、今はどうだろうか。
長らく戻っていなければ、否、戻る気が無ければその辺りの知識のアップデートが出来ない。伝来の情報を漁らなければならない。
だが、大名やら豪商の手から離れた茶器が、巡り巡って海を渡るということも決して無い――わけではない筈。
元は高値が付き、珍重されたものが流転の果てに己が手に落ちるような、そんな奇遇を狙っている。
そうそうにそんな旨い話が起こるものではないとはいえ、手頃な道具は幾つも揃えても困らない。今は仮の置き場所があるから。
紡いだ言葉は照れ隠しのようにも聞こえるかどうかは、向こうの受け取り方次第か。口を押さえる仕草を認めれば、ひょいと肩を竦めて。

「左様か。ンなつもりは無ぇんだが……」

そうかー……と。そう云わんばかりに浮かべる表情は、心底より不思議そうな面持ちをより一層に増してゆくばかり。
少年に云っているか、それとも男の方に向けたか定かではないセリフに小さく息を吐けば、頭上と肩上の毛玉が宥めるように尻尾を揺らす。
同じ屋根の下、一人と二匹の共同生活が続けていれば、子分は親分に倣うのだろう。それに相性の良さが輪をかけたに違いない。
小動物好きが見れば、きっと垂涎とも理想めいた仕草の一致を見せながら、挨拶を返す姿に男は小さく笑ってみせる。

「――期待してる。あと、どうしても、とか何か面倒あったなら、声を送ってくれ。出来るだろ?」

水面疾走は身軽さと氣の制御の巧みさ故に出来ることだが、背の荷物にさらにもう一人を担ぐとなると、流石に無理がある。
どう追いついて見せるのだろうか。ちゃんと追いついてくれるのだろうか。
一抹の不安はあるが、出来ると信頼に足る心当たりはいくつもある。危険含めて危なければ、風の精霊を伝って声も送ってくれるか。
そう思いながら、海面を走る。進み。駆ける。軽功の術と同様の技を修め、熟達しているからこそ為せる不条理だ。
波が見えれば、次に何処に足を進め、氣を走らせて勢いをつけて跳ぶか。一瞬の見切りと判断を重ね、行きつく先は――島の端。
汀まで森の緑が乗り出した風景は、ガジュマルやらマングローブやら云う水底に根差して生える樹木らが外輪として織り成すもの、だろう。

(人が踏み込むのを拒んでるような、そンな森だな……)

一先ず、しっかりとした太根の上に濡れた足裏を乗せ、踏ん張ろう。足元があやふやな場所を走るのは、体力もそうだが神経を使う。
木の幹に手を付け、身体の安定を計れば、盛大に溜めていた息を吐き出そう。