2023/11/28 のログ
アドラー > 最初に目に入ったのは製錬され、刃へと姿を変えた黒い鋼。
差し込む光を美しく、暗く反射する金属。機能美を追求した形に目の色が変わる。
なるほど、彼の腕は噂通り。いや、噂以上のようだ。

「サーベルか。握るのは初めてだが…どれ、試してみようか」

彼に促されて、サーベルの柄を握る。
持ち手の感触、剣の重心、重さ。それらを剣を眺めながら確かめる。

彼と距離を取り、木人形の標的を目にする。
踏み込みすぎずに腕試しといった具合に刃を振るう。
振り下ろし、横振り、切り上げ、そして刺突。それらを軽く試した後に、呼吸を整えて―――

「ッ…!!」

踏み込み、目にもとまらぬ速さで二撃。
ほぼ同時に木人形の体にバツ印の大きな刀痕を残す。
剣を振るった圧力で小さな風が起き、地面にある木屑が舞う。

「…見た目よりやや重いな。素材が素材だからか。
 おや、ワイバーンも火蜥蜴も、私は狩った覚えはないんだが…君の方で用意したのか?」

剣を振るった感想を端的に述べる。
この一般的なこのサイズの剣と比較するとやや重量があり、慣れるまでは剣を振る速度とタイミングに調整が居るだろうか。
とはいえ、それは魔黒鋼の素材の特有のもの。こちらが合わせるしかない。

相手の言葉に耳を向けると、前回話題には出さなかったモンスターの話が出て片眉を跳ねさせる。
柄の部分だけでも豪勢な素材を使っており、それの用意は彼がしたのだろうか。
追加の料金がかかるならば、支払いを待ってもらう必要もあるかと内心つぶやく。

「大事な備品を壊すことになるかもしれないが、魔力を使ってもいいか?」

ともあれ料金のことは、相手が拘り、作り上げた部分を試してからだ。
木人形の方を指差しながら、その剣…および素材が持つ真価を発揮してよいか、店主に問いかける。

イーヴィア > 「仕上げはしてある、ま、怪我明けだろうからな、無理はするなよ。」

(先刻、腕を振った所から見て、負傷して居た筈の腕は癒えて居るのだろう
だが、其れは其れとして、癒えたばかりで再び痛めては元も子もない
念の為の忠告、では在ったが――どうやら、其れは杞憂だったらしい

元々、確りとした腕の持ち主であるとは推測していた、が
其の剣閃は、無駄が無く、其れで居て鋭い
木人形の耐久性は、人間の強度に合わせて在り
サーベルと言う事を考えれば、本来は骨まで両断する様な剣ではない
だが――切り付けた胴体部、其の傷跡を鑑みれば
肋骨を切り抜いたに等しい傷である事は、間違い無い。)

「……、……嗚呼、その代わり、普通の鉄と耐久性は比べ物にならんさ。
流石に、魔黒鋼だけで剣を作るのは現実的じゃあ無かったからな
折角鍛つんだ、勿体ねぇ組み方はしたくないだろ?」

(――他の素材を使う事は、初めの提示金額の時点で、実は既に推定していた
店に在庫もあり、金額としては想定内に収めている
――と言うか、そうでなければ、真っ当な長物としては成立しないのだ
勿論、魔黒鋼としての性質を、ただ頑丈なだけの金属として見るなら別だが。)

「嗚呼、勿論。 部屋は頑丈に作ってあるからな。
木人形も基本消耗品だ、壊しちまっても構わんよ。」

(男の問いには、勿論と頷き返す。
試し切りを行う場だ、在る程度の衝撃にも耐え得る造りになっている
勿論、広範囲の大魔法なぞを使うと言われれば、流石に止めるが
――己は、少し下がる。 男が、気にせず試せる様に)。

アドラー > これでもコートの男は長い間刃を握り続けた戦士。
初めて握るサーベルでも刃の手触り、感触を速いペースで自身のモノにしていく。
治ったばかりの左腕も早い段階で完治したお陰か、筋力の低下もなく武器を振るうのに十分。

身体の痛みもなく、自由に刃を振るえることに小さく笑みがこぼれる。

「あぁ、すまない。重量に関しては欠点ではない。私の感想だ。
 ははは、確かにそうだったな。迂闊だった。」

彼の間の空いた言葉にフォローするかのような言葉を掛ける。
重量があることは剣という武器において欠点ばかりではない。重い武器はそれこそ勢いを乗せやすく、威力が増す。
それにこの剣自体、重視しているのは重さではなく耐久力だ。

素材に関しての話になると苦笑いを浮かべて、小さく頬を掻く。
そして、相手からの許可が下りれば、ニヤリと笑って木人形の方へと向き直り

「感謝する。では…!」

神経を研ぎ澄ませ、魔力を高める。青い光が一瞬彼を纏うと、右手に持っている得物に集中する。
剣身は黒い輪郭を保ちながら、青く輝く。右手から切っ先にかけて青いオーラが波打ち、それは剣を追いかけ纏わりつく。

魔力の刃。それでエンチャントした逸品にて木人形に刺突をする。
高熱を帯びた刃は木を焦がしながら貫通。流れる上方へ切り上げると上部へと抜けて。
そのまま間を開けず、一息で三連撃を繰り出す。

刃が通った跡に青い残光が迸る。一呼吸おいて木人形は音を立て崩れはじめ、破片が地面に散らばる。
断面は焼け焦げたように黒く、木の繊維は熱を帯びて赤くなっている部分も見受けられる。
焦げた匂いと小さな煙を立てた残骸を一瞥すると魔力の放出を止める。

「素晴らしい剣だ。逸品だよ。苦労して魔黒石を集め、君に頼んだ甲斐があった」

満足した様子で店主の方へと向き直り、丁寧な動作で彼にサーベルを返却しようとする。

イーヴィア > 「なぁに、御前さんなら、振ってりゃあ直ぐに慣れるだろうさ。
だが、慣れるまでは迂闊に外へ出たりするなよ
何事も、油断が一番命を取るもんだからな。」

(サーベルの、武器としての欠点は、細身で打ち合いの際に折れ易い事
だが、魔黒鋼素材で在れば、其の欠点も補える上に、威力も増す
本来片手剣であるサーベルを、両手持ち可能な形状に変えたのは
ひとつは、此処最近鍛つ機会の多い、和刀から発案を得た事と
大男で、かつ鍛え上げられた男の膂力を生かせるように、だ

そして――其処に、魔黒鋼の特殊な性質が上乗せされる
この鉱物が一定の用途にしか使われない理由は此処にあると言って良い
魔力を通した際の、発光、発熱。 詰まる所――一種の魔剣と化す
通常の切れ味に加え、焼き切ると言う効果が加わった其れは
魔力の通し方次第では、鉄や金属すらも断ち切る事が適う物

――勿論、誰しもが扱える訳では無い、が。)

「……上手いもんだ。
通し過ぎりゃあ自分を焼くし、少なけりゃただ熱いだけ。
魔力の調整に長けてなけりゃ、扱い切れないってのによ。」

(軽く、拍手めいて称賛を送りながら、相手から差し出された剣を一度受け取ろう
木箱の中、サーベルの鞘を取り出せば、其処に剣を収め
改めて男に、其の腰に携える様にと促せば。)

「それじゃあ、次だ。
出来るだけ要望に応えられる様調整したがよ
銅線より頑丈で、銅線より細く加工して在るから、切断性能は今までより増す筈だ。」

(試すべきはもう一つ。 同じく、魔黒鋼を加工して作った、鋼糸だ
男が最初、己へと見せた銅製の物と、同じ形状、同じ仕組みの格納器に納まった其れは
剣とは真逆、正確に、調整を重ねて、男の用途に合わせた調整が施されている
もっと細く加工して切断力を上げる事も可能だが、此処から先は耐久性を犠牲にして行く事に為る
これに関して、実際の運用方法は男次第となるから、己からは何とは言わぬが
もし、木人形で試したいと言えば、新しい物を用意するだろう)。

アドラー > 「ふふ、矛盾したことを言う。
 実戦で剣を振らなければ、感覚なんて掴めないさ。
 ま、新しい武器を貰ったからといって調子に乗る、などというのは控える」

彼の心配の言葉に微笑みながら返答する。
これだけの武器をもらって慣れるまで引きこもれというのは剣士にとっては酷な話だ。
剣士と剣が一体になる瞬間。それは命のやり取りの中で感覚がもっとも研ぎ澄まされた時だ。
ただ、剣を貰ったからといってはしゃぐのは禁物と、今のうちに自己抑制をしておく。

「お褒めの言葉をいただき光栄だ。
 左腕が使えない時は暇でな。魔力のコントロールの修練をしていたんだ。
 でも、成果は想像以上だったよ」

拍手に対して胸に手を添えてお辞儀をする。
打ち合いが出来るほどの重量と耐久性、両手持ちが出来る形状はそれだけ戦闘の幅を広げることができる。

自論ではあるが、戦闘とは持っているカードの切り合いだ。
自分の持っている手札を如何なる順番で出すか、相手に出させるか、切り札をどの場面で使用するか。
もちろん、最初に持っているカードが多い方が有利となる。

サーベルに魔力の刃を使用し、繰り出す斬撃。
それはジャイアントキリングを成せるほどの切り札となり得る。
ほんの少しの修練でこれだけの威力ならば、より精度を高めれば強力なカードとなることは間違いないだろう。

「はは、サーベルのインパクトが強くて忘れかけていた。
 こちらも重要だな。さてと…」

鞘に収められたサーベルを受け取り、腰に携える。
次に提示されたのは魔黒鋼で作られた鋼線。すなわちワイヤーだ。
それを摘んで、長さと感触を指先で確認する。きめ細やかな鋼の繊維、ムラのない螺旋は慎重かつ正確に加工したことがわかる。

格納器を今使用している銅線のモノと付け替えて、先ほど切断した木人形の残骸に向かって手を振るう。
正確な動作で狙った場所へ鋼線が飛ぶと、対象に絡みつき、手をくいっと引っ張ると男の手元に。
木片に鋼線を絡めたまま、別の木片へと飛ばし、当てて。ヨーヨーのようにコントロールをする。

「…良いな。違和感がない」

ぼそり、そのようにつぶやいた

イーヴィア > 「クク、新人たちにも言ってるが、御前さんにゃ失礼か。
ただまぁ、世の中何が在るか判らないもんだ
俺が武器を鍛った奴だ、精々生き延びて欲しい親心って奴だよ。」

(命を顧みないような連中もいる
冒険者と言うのはそういう生き物だと言われれば、否定も出来ない
だが、己の仕事は、殺す為だけではなく、生かす事も出来るモノだ
誰かの身を助ける事が出来るなら、それに越した事は無い

――鋼糸には均一さが求められる
其の上で、僅かなムラが在れば、負荷が一点に掛かって破断して仕舞う物
鋼糸を装備とする事が難しいのは、使用者の技量が求められる事も有れば
何より鋼糸其の物が、鍛冶師の技量を求められるからだ

ただ、だからこそ抜かりはない。
限りなく均一に、強度を保った鋼糸は、自在な動きを齎すだろう
使い手の意図した通りの動作を可能にすることが、腕の見せ所。)

「……前に、同じ様に鋼糸を依頼して来た奴が居てな。
今は、偶に来て店を手伝ってくれてるんだが。
……そいつも、御前さんも。 良くもまぁ、身につけたもんだぜ。」

(――糸の扱いが難しい事は、己も良く判って居るからこそ。
手先の様な技量には、感嘆を覚える。
己でも、此処までの事は出来まい。 研鑽と経験の賜物と言う奴だろう。)

「――――嗚呼、そうだ。 ……勿論だが…、……其れも、魔力は通せる筈だ。」

(そう、作ってある。 其の用途に耐えられずして、魔黒鋼の鋼糸に存在価値は、無い)。

アドラー > 「はは、そうだな。予想外の出来事は常に起こりえるものだ。
 心配の言葉痛み入るが…言われずとも、私は生き延びるさ。とっくの昔にそう決めた」

相手の気遣いの言葉には笑いながらも、感謝を述べる。
この国では予想外のことが多い。冒険者という職業ならば、特にそのような出来事に遭遇する確率が高い。
それでも生き延びると決めている。その理由は、今は明かさないが。

「へぇ、私以外にもワイヤーを使う物好きがいるのか。
 ぜひ機会があれば会ってみたい。
 私からすれば、君の鍛冶の方が大変に見えるがな。こういうのはちょっと訓練すればすぐに身に付く」

精巧に作られた鋼糸は柔軟かつ強靭な耐久力を発揮する。それを少し操作して自在かつ違和感なく動くことを確認する。
加工が困難とされている魔黒石から、このような逸品まで作れる技量があるということに、関心と尊敬の念を抱く。
自分にとっては少し硬い糸であやとりをするよりも、腰にある黒いサーベルや今身に着けた鋼糸などを作成するほうが
難しそうだ。

「はは、“それ”を試すのはまたの機会にしよう。このまま使ってしまったら、手を火傷してしまいそうだ。」

鋼糸に魔力を通せるとしたら、どうなるか。
先ほどのような溶断が可能になるかもしれぬが、剣のように自身の手を保護するものがなにもない。
考えなしに使用したら自身の指まで切り落としてしまうだろう。

だが“その使い方”も手札の一つとして記憶しておいて、鋼糸を格納する。

「…あぁ、話は変わるが。
 これ、甘いもの好きの私には合っていたぞ」

懐から小瓶を取り出し、彼の方へと弧を描くようにしてパスする
この前貰った砂糖菓子。その感想を述べながら、笑顔で感謝するようなジェスチャーをする

イーヴィア > 「判った、なら良い。 覚悟が在る奴にはとやかく言わねぇさ。」

(相手の事を詮索する心算は無い
何かしらの事情を抱えている人間なんて、この国には沢山居るし
それ等について、いちいち聞き耳を立てていたらきりがない
話す気が有るなら、きっと聞けることも有るだろうが――己は、仕事に徹するだけだ。)

「うちに通ってれば、顔を見る機会も有るだろうさ。
コルボって言う奴だが…、……ま、喋ってみると面白い奴だ。」

(幸い、従業員が増えて来て居るこの頃、彼もまた其の一人だ
不定期な勤務では在るが、此方としては歓迎だし、有難い
同じものを扱って居る事を考えれば、交わせる言葉も在ろうか、と
これは、己が勝手に言って居るだけだ、が

――転がって居る木人形は、後で片付ければ良い
これ以上は大丈夫と言う事ならば、頷き返した
実際に木人形でなく、実戦で試す事も在ろう
己は作った、後は、相手がどうするか次第だ。)

「――――……嗚呼、お気に召したなら何よりだ。
うちの従業員が、甘味を所望してたもんでね。 気が向いたから、手隙に作ったんだ。
ちょうど、客が砂糖を仕入れて来ててね。」

(安く手に入ったのだ、と、先日渡した砂糖菓子の小瓶に、ふ、と笑う。
気紛れで作ったものだが、存外色んな所に好評で
ならば、常備しようかと考えていた所だ、と、そんな事を呟きながら

――役目を終えた木箱に蓋を閉め、改めて、男に向き合う
己が腰に手を当て、最後に一つ、此れだけを確かめる為に。)

「―――――さて…、……お気に召したかい、ヴァルケス印の品物はよ。」

アドラー > 「コルボ。コルボか。記憶した。
 今回のサーベルとワイヤー以外も試したい武器は山ほどあるからな。
 毎日来る常連客、ではないが、通わせておくれ」

赤髪の店主が口にした名前を復唱し、頷く。
今回のサーベル然り、新しい武器を試すというのは中々新鮮な気持ちとなる。
それを味わうきっかけをくれた彼に感謝をしつつ、次回もまた来ることを宣言して。

「あぁ、その従業員。もしかしてアルマ、という名前ではないか?
 奇妙な偶然ではあるが、私の友人でな。この前会った時ここで働いていると言ってたぞ」

この前…富裕地区で彼女と会ったことを思い出しながら、店主に友人であることを打ち明ける
気まぐれで作ったものにしては砂糖の具合が良く、仕事中の糖分として重宝した。
在庫があればまた頼めるか?と付け加えるように頼み出る。

「100点満点、と断ずるには実戦に出てからだな。
 しかし、今の段階では文句のつけようのない出来だ。流石は王都の一線級の鍛冶屋、噂以上だと心底驚いた。
 
 改めてこの武器と道具を作ってくれてありがとう。感謝する。」

彼からの評定を求められ、笑顔でそのように告げる。
正直、今のところの武器の使用感、満足度でいえば文句のつけようはないが、そこは戦士として実戦の結果を重視することする。
しかし、満点の評価を下すのはそう遠くないだろう。

最後に、彼に向かって、依頼したものを仕上げたくれた感謝を述べながら、握手を求める。

イーヴィア > 「また、他に用が有るなら気軽に寄ると良いさ。
整備も修理も、気になる所がありゃ、遠慮無くだ。
勿論、新しい装備の依頼でもな?」

(人の縁と言うのは不思議な物である
類は友を呼ぶと言うが、似た物が自然と集まり易い物なのか
何時でも待っていると、そう応えながら。)

「んぁ、知り合いか? そうだな、最近だが、此処で働いて貰ってる。
……あー、判った。 料理店に鞍替えしない程度には、気紛れに作ってやるよ。」

(――砂糖菓子を推したのは何を隠そう、彼女である
在庫が在れば、と聞けな、微苦笑した後で、一度男の前から消えるだろう
戻って来た頃には、先日追加で作った砂糖菓子の小瓶を、ひょいと男に投げて寄越す
少しばかり先日よりも大きめの瓶、大喰らいしなければ、少しは日持ちするだろう量。)

「気に入って貰えたなら何よりだが、実戦で試してってのは間違いない。
もし直ぐに壊れる様な事があれば言いな、額も額だ、一月は無料で直して遣るからよう。」

(己もまた、見てくれだけで判断させる訳には行かぬ
武器は武器、実用出来なければ、何の存在価値も無いのだから
差し出された片手に、応える様己からも握手を重ねよう
戦士と鍛冶屋、役回りこそ違えど、武骨な手同士で)。

ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からアドラーさんが去りました。
ご案内:「ヴァルケス武器防具店」からイーヴィアさんが去りました。