2023/11/11 のログ
ご案内:「王都平民地区 屋台通り」にルシータ・ヴァルケスさんが現れました。
ルシータ・ヴァルケス >  
 王都マグメール 大通り・広場
 昼も夜も、大道芸や屋台など 表側なだけにまだマシな光景が広がっている。
 貧民街の、垢がないだけで特上の雌と認識されそうな場所と比べるのも烏滸がましいものの
 広場では、酒場で焙れた静かに奏でる吟遊詩人の歌を肴に呑む者などもいた。

 ルシータも例に漏れず、学院での日常が終わり、自由な夜の時間
 夜通し鉄を打つような予定など、あの学び舎では無いに等しい。
 剛なこの両手が槌の振動で痺れてしまったことなど、いつ以来だったか。
 そんな風に考えながら、煮売り屋台の一角の席
 水浴び場から取り寄せたというのが自慢らしい、娼婦と描かれた素焼きの壺徳利
 中で満ちている澄まし酒をぐい飲みに注ぎながら、素人でも飲みやすい口当りはドワーフには弱い
 しかし麦やトウモロコシとは違う独特なものがあり、それが煮売り屋台の味とよく合っていた。


   「子どんがおっ場所じゃ酒も薄う感ずっせいか、中々胃袋に染みっど。」


 大将に、肉串と卵 練り物をもう少し強請ると、たっぷり練り辛子を付けて頬張る。
 鼻にくるその味を、水か茶で濯ぐのではなく酒で洗ってしまうから性質が悪い。
 ぐぅぅ、と干したぐい吞み 次を注がれながら、鼻にきたそれで零れかける涙
 端を親指で散らしては笑い。


    「あ゛ーっ こら効きすぎじゃあ。」


 からからと笑い合いながら、女童に見えるそれでも、貫禄は若者よりもたっぷりで。

ルシータ・ヴァルケス >  
    「おはんも一杯()るとよか
    さんかと(寒いと)(ささ)が恋しかじゃろ」


 一人席
 屋台はすし詰めになることもあるものの
 今はほぼ貸し切りで静かに酒と肴を堪能
 吟遊詩人の最近の出来事を謳う様子も聞こえるから、気分は悪くない。

 学院生活で懐は貴族と比べどれほどのものなのか
 ただの平民よりは余裕があるように、手元の素焼き壺にまだたっぷりとある澄まし酒
 それをぐい飲みとは違う盃に注いでやると、きちんとぎりぎりまで。
 零れるか否か 張力で維持しているだけのふるふるとした水面
 屋台の主人は、ありがたく受け取りグイッと拒みにくい酒を味わう。
 女や美人と付く酒は、飲みやすく好かれやすい 嫌う方がおかしい味なのだろう。

 度数がもう少しだけほしいところか、しかし未だこの女名の酒を手放す気にはなれず
 手元のぐい吞みに再び満ちては水のように干していく。


   「美味か(ささ)じゃあ
    にせらがいる学び場じゃこうも美味くならんど。」


 ルシータは機嫌良く、やっとほろ酔い
 女童に見えてもドワーフ 樽で干しても頬色づき、体が熱い程度か
 酒に比べ腹は満ちたようで、紙巻を黒筒のホルダーに差し込む
 中指丈のそれの先 火を探すと、煮詰めている煮売りの一枝
 小さく燃えるそれを差し出され、火を借りた。
 酒で潤んだ舌先 煙が当たるとそれもまた美味い。
 これは煙を呑む者にしかわからない感覚だろう。
 紫煙を燻らせ、カリカリと黒筒の先を齧りながらぐい吞みを片手で弄ぶ。
 

ルシータ・ヴァルケス >  
 気分いいまま帰りたいと思うのは酒飲みのやり方
 ほろ酔いより少し濃いめ へべれけになるほど呑んでも足が鈍くなるだけ
 ゴルドを支払うと、ホルダーを嚙みながら咥え煙草

 ズシリと感じる隣に置いていた斧を背負い直す
 カチリとベルトで支え直したそれと共に、その場を後にするだろうか。
 真夜中でも足取りは軽く、少し冷える空気がほろ酔う肌を撫でてくれる。

 今夜は静かなもの 呑んだ酒がまずくなるようなことも
 この好い酔いが覚めるようなこともないだろう
 学院にほうへと足を向けながら、その狭間 戻る傍ら
 伸びをしては笑みを浮かべ。


   「ああ 好か夜じゃあ。」

ご案内:「王都平民地区 屋台通り」からルシータ・ヴァルケスさんが去りました。