2023/08/27 のログ
タン・フィール > 「へぇえ、学生さんっ! いいなぁ、ボクもがっこうっていうの、いってみたいっ。
どんなこと、お勉強したりしてるの?」

わくわくとした様子で訪ねながら、学校に行ってみたいと零す様子からは羨望の色はあれど、嫉妬だとか嘆きの類は感じられない声色で、
興味津々に問いを重ねていく。

「あはは、様、だなんてチョット恥ずかしいけど……うん、フィリおねえちゃんの好きなように呼んでね。

ぁ、そうか、気付けにつかうって手もあったかぁ!
そういう効能で使うのって珍しいっていうか、最近のはっけんなのかも。」

と、仕事柄というのもあるだろうが、身を乗り出して興味深そうに薬談義に花を咲かせる。
その合間にも漂い続ける香気が彼女を密やかに、甘美な速度で蝕んでいたことにこの時点では気づかず…
異変として察知したのは、背後の彼女の足音が途切れて、へたりこむ音が耳に届いてからだった。

「え―――…… ちょっ……フィリおねえちゃん!?……だいじょぶ?」

流石に慌てた様子で急いで振り返り、駆け寄る。
転んだのか、何かしらの要因で気が遠くなったのか、一瞬では判断がつかなかった少年だが、
倒れ込まぬように背を支えて様子を伺っていけば……徐々に、徐々に、その様に心当たりを覚えていく。

原因・バスケットの中身、そこに合点すれば、まず心に去来したのは、彼女が怪我をしているだとか持病があるといった類の転倒ではないことに安心して……

続いて、次第に熱を帯びていく少女の呼気、瞳、肌…
そして裾下でもそもそと脚をこすり合わせる仕草に、しまった……と己の甘甘な管理責任を反省し…
そして、最後に浮かび上がった感情が、その悪戯心が、気遣いの類を洗い流してしまった。

「―――だいじょうぶ?……ごめん、さっき匂い、かがせたバスケットの中に、
お姉ちゃんみたいなヒトには効きすぎるものが入ってたみたい。

…えっちなひとには、これ、効いちゃうんだ。」

と、バスケットから現物のキノコを手に取り、その眼前にわざと突き出す。
彼女の背は倒れ込まぬように気をつけて支えたまま、困ったような顔で見下ろす。

先程と異なって座り込んだ彼女の視線は下がっており、その一からならば幼子の桃色シャツの格好を下から見上げる形となり……
その格好が、よくよくみれば裸にシャツ一枚という蠱惑的なものであったと知ることになるだろうか。

さらに、間近で見上げているためにシャツの裾からは幼子がオトコノコである象徴の肉突起が、可愛らしい色とサイズで、ぴんっと屹立しているのが見えてしまうだろうか。

「おねえちゃん、もしかして……えっちなひとなの…?」

今現在幼子はわざと見せつけて、その反応を伺っている。
わざとらしく言葉で煽り立てながら小首を傾げて。

フィリ > 「ぃ、一応基本的な学問――が、殆どなの です。 ……ふぃ …フィールドワークとぃぅのは、未だ、でして…
ぁとは。勿論運動も、ぁるのですが、ー…私は そ、其方  …はさっぱり――」

言わずとも判るだろう。少女がどれだけ運動音痴めいているのかは。
座学についてはまだまだ、それこそ義務教育的な物が大半だろう。将来の進路が決定されるような歳ではないのだから。
…なので裏を返すと。師に仕え魔術を学んでいるという話が。学校の外の事だと言えるのだが。

が。其方の分野についてはもっと色々。頑張って語りたがっていたかもしれない少女だが。
想定外のアクシデントによって。あれこれ思い描いていた魔法薬云々等の会話内容が、頭から揮発していってしまいそうである。
本来は引き続き薬効についてを語り合う為か。或いは少女がへたり込んだ事を、彼方が直ぐに察したからか。
振り返り此方へ駆け寄ってきた少年との距離がぐっと詰まる。
必然彼が手にしているバスケットも、その中身も、極至近へと最接近する事となり。
荒くなる呼吸に合わせて更に。繰り返しその匂い成分を嗅いでしまう事となりそうだ。
目眩はますます酷くなり、寝惚け半分であるかのように歪んだ視界に。うっすらと白い物が入り込んだと思えばそれは。

「  ぅ、ふ――っぁ、…はぁ れ、 ぇっ  これ  ……ぅぁ゛。
その、も、申し 訳――ぁまり 大丈夫、では  …は――ぃ。はぃ、その通りな のです …私、みたぃな――」

勿論。そういった効き目や使い方の方が知られた茸なのだ、という事は。事前知識としてちゃんと知っていた。
取り扱っていたのは加工済みの物だったとはいえ、その微細な粉末等が残っていた、訊いていたというのは…少女の側の管理不行き届きという事になるだろうから。
この件については少年だけが悪い、と言うつもりはない。お互い様というか、互い不運だったというべきか。
…視界に入ってきたのはどうやら。そんな少年が此方を覗き込む姿であるらしく。其方に向かって軽く首を振ってみせつつも。
改めて直にバスケットから取り出され、目の前に突き出された茸には。目を白黒させてしまおうか。

ともあれ、彼が悪い訳ではないと。ちゃんとその点については言っておかなくてはいけない。
乱れる呼吸をどうにかすべく。改めてゆっくりと言葉を選んでいたのだが。

「 ――そぅ、私 達みたぃに。 …魔術をぉ、修め――てぃる者に   は、  ぁぇ、 ぇ゛っ!?」

違った。此方の言おうとした事と、彼の告げた言葉は。同じトラブルに対しての筈なのに、途中からまるで別の物となっていた。
普段から取り扱っている職業だからと。少女はそう言いたかった筈なのに。少年のソレは職業云々ではなく個人の、それも…だった。
先を征し断言されてしまった言葉に当然反論すべきなのだが。ぶんぶんと首を振る少女の前には相変わらず。甘い香りを垂れ流す茸が突き付けられた侭であり。
更に熱を増し色を帯びていく頬もそのまま、今度は視線が重なる事を避ける様に、目線を下げてしまえば――

「ぁっ、の、ぁの、 違―― ので はと ……これ は、ぃ、ぃつ――もの弊害で、わ …私は、っぇ ぇと…!?
べつにそ、こまで ――の のべつまくなし では … ぃ、っつ…も妄想する ――だとかと、 ぃぅ訳で――は……」

途中から何だか発言が自爆しつつある気もするのだが、さて置き。
やむなく下方へ逃げるしかなかった少女の視界にも、また。茸同様に屹立した物が飛び込んでくる事となった。
っひゃ、ぁ、と。思わず甲高い声を上げてしまうのも仕方ないだろう。まだ小さく、色も薄く…だがそれでも。
硬さを帯びて立ち上がってきているそれは。紛れもなく少年の性器――少年が、男であるという、その証なのだから。

どくん。本物の、牡肉を。予期せぬ場と形で見せ付けられてしまい…更に。知らず知らず早くなる胸の音。
きゅっと手指に力が込められ。肩口や背筋まで強張り、震え。かちかちと畏れるにも似て歯の根が鳴らされすらもするのだが。
少女の動転をまるで他人事であるかのように――更に吐息が勃起の先端に吹き掛けるにも似たままで、熱を増し。
擦り合わされる両腿はますます。もどかしげに、感覚を早め、時折びくん、と身震いしては。

「っひ ひとな み―― …… 人並に それ――な、りにだと …ぉ  思われ ます――っ…」

否定しようとして…出来ていない。欲望の存在を否定すれば良い筈なのに、存在する事自体は認めてしまう。
…もう。耳元で囁かれているかのように。頭の中へと滑り込んで来る誘惑めいた台詞に。くぅ、と泣き出しそうな鼻声を鳴らしては。
それでいて、もう。一度目にしてしまった肉の象徴から。目を離せなくなりつつあった。

タン・フィール > 「ふぅん、いろいろあって楽しそうっ、
フィールドワークも、運動も、うまくいくといいねっ
運動の方は……ボクもそこまで得意じゃないかも、運動、得意になるお薬つくろっかな?」

と、彼女がそれらの授業を受けているであろう姿を想像して、それを通して自分が学院に通う姿も夢想してみる。
そして運動神経に関しては、趣味や実験であればまだいいとして学びの園で使うわけにはいかない、という常識も無いことを明るみにしつつ、
その常識の無さは悪戯心と幼子生来の魔性を伴って、徐々に魔手となって忍び寄る。

揺れるバスケットから溢れる芳香と、差し出したキノコの二重の香りで追い詰めていきながらなんとか振り絞るように紡がれる彼女の言葉を聞いていき。
寝ぼけたようにその視線が虚ろになれば、その都度背中を揺するようにして覚醒を促す。

「ぁあ、ほら、しっかりっ……
ふぅん……いつもの弊害って…いつも、どんなこと考えてるの?
……っふふ、っていうことはぁ……どんな妄想、しちゃってるの?
いつもそういうこと、考えちゃう? きかせて、きかせて。」

掘り起こした自爆気味な言葉を捉えて、さらに揺さぶりをかけるような声色で、
前かがみになって、周囲に人の気配は無いというのに口の横に手を当ててひしょひしょと耳元で囁く。

そのような姿勢を取れば、当然さらに彼女の正面で勃起した幼い肉茎はふわん、ぷらん、と揺らめくこととなり、
それを意識的に見せつけていきながら少年の頬も、その行為と背徳感に赤みを帯び、それが深まっていく。

「…っ…っふふ、あぁ、よかった。
人並みなんだ、人並みなんだったら、えっちなキノコのえっちな効果、そんなに出るはずがないもん。

ひとやすみしたら、立てるようにきっとなるから……そうしたら、ちゃあんとおうちの方まで案内してあげるから……ね……♪」

大きいくりくりの長いまつげの目、赤の瞳の眼差しで、彼女を見下ろしていたその目元が、にい…っと妖しく細まる。
わざと余韻を残すように、するぅり……と背中をなで上げるようにして支える手を離し、

子供がよく親や懐いた年上にするように、少女の手をとってくいくい、と引っ張って、立たせようとするジェスチャー。
そはいえ、それで無理やり引っ張り上げて立たせることが目的の行為ではない。
その手は徐々に下腹部の屹立した肉棒へ近づけられ、触れる直前になれば遠のく、というもどかしい往復を続けて、彼女に
「触ろうと思えば触れてしまう」
距離感と実感を与えようとしていく。

「あぁ、でもでも……ひとなみにえっちだったら……こういうとき、さわっちゃっても、何をしちゃっても、おかしいことじゃないのかも…?……♪

ね、どぅ?……ここ、みえちゃって…何か感じる?それともなんにも、おもわない?」

相手の困惑した脳内に染み込むようにささやきかける言葉。
幼子のシャツがはたはたと翻るたびに肉棒が揺れるのが見え、吐息を浴びてぴくぴくと反応しているのが見えるだろうか。

やがて、肉棒へと誘う手は、彼女が拒まないのならば幼子の手に誘導されるままに、その肉茎の先端に触れ、
少女の貌も、先程までよりさらに下半身に寄せられて、下から服の中が丸見えの状態に。

少女めいた華奢なシルエットが桃色シャツの中に広がる中、
そんな様子を恍惚として見守る幼子の視線は、とろんと甘やかで、どこか危険な色を孕んでいた。

フィリ > 「  ん、ぅぅん……?  …内容によっては――それもまた。一つの手段、でしょぅし…
別に競ぅ でもなぃのでした――ら、 … 怪我を避けるとぃぅのも、立派な、方便となり ますし …?」

少女も少女で。それこそ逆説、体育の課題等ではなく趣味や実験であれば良いのではないか、と。そんな風に抜け道考えてしまうので。
少年の着想が例え少々、真面目な学生とは言えない物であろうとも。研究者としては寧ろ歓迎してしまいそう。
何だかんだ言ってこの少女も、また。ある程度人外の血が流れており、相応に人とはズレた思考の持ち主なのであった。

…が。それでもきっとどちらが、まだ人の側に近いかといえば。それは紛れもなく少女なのだろう。
今の状況。今この場所。そういった複数の現実をまだ覚えている為に。半分は幻覚めいた症状に囚われつつも、もう半分はどうにかこうにか。
彼が逐一、完全な埋没を妨げてくれている事も功を奏し、ある程度は理性を残していた。
その、研究者としての常識はともあれ。一般的な小市民としての考え方は。何とか、この場を離れなければと考えるのだが。

「っそ、っそそそそ、 っ、その――!? っぁ ぁわ、 わ――、ぁ  …ぁまり。
そぅぃった 事ぁ…まり、お、大っぴらに は ……っぁぅ、ひゃ、っ、ぁ ぁぁ……… それ、っ…だ、駄目で……
ぁぅ そん――なに見てし …まぃますと、  め、 目に焼き付っ … ぁぁ、ぁぁっ、 そ…ぅぃうの、ばっかりぃぃ…」

また自爆。彼の問い掛けに首を振り、答えないようにしているつもりでいる筈なのに。
否応なく目に入ってしまう異性のソレに対し大いに動転してみせながら。「そういうの」、と。つい口に出てしまう。
まぁ具体的な妄想の内容とまでは行っていないのだとしても。
勃起した男性器が真っ先に出て来るような脳内での光景だなどというだけで。もう充分に駄目なのではなかろうか。

至近で囁かれる声音と吐息が、耳元や首筋を擽っては。その度にびくびくと肌が総毛立つ辺り。
もう少女自身の自覚はともあれ、身体の方が。具体的な性感すら帯びつつあるらしい。
身体的な熱がますます具体的に頭の中身を茹で上げていく中。吸い付けられてしまう視線を少しでも、肉茎から逃したとしても。
そうすれば代わりに目に入ってくるのは、寄せられた少年の表情だ。
中性的というのすら通り越し、少女よりも少女然と可愛らしくすら見えるのに。其処に浮かぶ色合いは紛れもなく。女を狙う男の欲だ。
最早矛盾じみてすら見えるギャップに。この場合女というのが、少女自身の事なのだ…という危機をすら忘れ。どきりとさせられてしまいそう。

「  ――っくふ。 んく。  そぅ…―― 帰る かぇ、らなきゃぃ…ぃけなぃと、思われ……
っは ぃ。 ごめ――ぃわく、  ぉかけ、 し  ――きっと。  大丈夫になり、 ま  ――――」

あれ。と。ふとした疑問が過ぎり、少女は言葉を途切れさせてしまった。
自分の言う通り、普通でしかなくて。彼の言う通り、そんなに大した事でもなくて。
だからきっともうそろそろ、偶発的な免疫反応めいた茸の効き目など。消えてくれるのではないかと思うのに…

気が付くと少女は。彼に取られた手を引っ込める事が。肉棒へと近付けさせられていくその動きに、逆らう事が。まるで出来ていなかった。
後ほんの僅かで触れる。指先の肌が、至近で発せられる肉棒の熱さを感じられる程。
彼を見返していた視線がまた。熱に浮かされるようにして、手元へ。その先へと戻ってしまったのと同時。
今にも。もう今直ぐにでも。「触れたければ触れてしまえる」、そんな少年の性器へと。
最後に残されていた距離を詰め、その熱さを確かめるように、先端へと触れていく指先は…果たして。
少年の後押しによる物だったのか。それとも少女自身の手が、自分から。動いてしまったのだろうか。

「  んっぁ、  ひゃん―― …!?
  っぁ、ぁ。 ……ぁふ ぁ、 ぁぁ …… げ、 現実 触っ …てしまぃ、  …ました ………
こ れは ……タンさ、ま…のこれは。 ぁ …の。  …ちっとも。  ひとなみ、では なぃの …です――」

経験その物は、初めてではないけれど。そして経験した事柄は…繰り返し繰り返し、脳内で反復してきたけれど。
それでも尚。圧倒的に大きい等ではない、何処までも少年然とした物でしかない筈の、その肉棒が。
だが何故か今の少女にとっては酷く、並外れた何かを秘めているかのように思えてしまった。
…それもまた薬効成分のせいなのか。或いは…今は気配が無いとはいえ、何時誰が通り過ぎるかも分からない路地というという、歪んだ状況のせいか。
少なくとも最早。こうして触れてしまえば少女はもう、これ以上…考えを反らす事が出来なさそうだった。
恐る恐る。だが確実に。指先から掌まで。片手だけではなく両手の指で。熱を孕んでぴくぴくと揺れる少年の肉棒を押し包んで…ちろり。
矮躯の華奢な造詣に引き寄せれるようにして。はためくシャツの裾に頭が潜り、目の前で手にした先端…亀頭に。小さく舌先を這わせだす。

だって少年が言っているではないか。 ひとなみだったら、こんなことをしても、 なにもおかしくはないと。


――こうして。いよいよ周りが。見えなくなってきた少女は。この先何処まで、想像以上の痴態を繰り広げさせる事になるのだろうか――。

フィリ > 【後日移動後継続にて】
ご案内:「裏路地」からフィリさんが去りました。
タン・フィール > 【後日継続】
ご案内:「裏路地」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「『ザ・タバーン』3階」にヴァンさんが現れました。
ご案内:「『ザ・タバーン』3階」にマーシュさんが現れました。
ヴァン > 目を開く。額に手をあてる――熱は多少収まったか。鎧戸の外の明るさから察するに、陽は落ちたようだ。
上体を起こそうとして、諦めた。シャワールームへの6mが遠い。

朝、起きたら世界が揺れていた。二日酔いの比ではない。
それなりに熱があり、階段を下りるのも危ぶまれる感じだった。
店主に水の調達を頼み、鍼を断固として断り、何度かの睡眠と覚醒を経て今に至る。
部屋の鍵は開け放していた筈だ。この状態でいちいち開け閉めにいくのが面倒くさい。

ベッドの上、首だけめぐらせて周囲を見る。何も変わっている筈はないのだが。

マーシュ > 相手がめぐらせた視線の先。テーブルには水差しとグラス、それに布をかぶせられた食事と思しきもの。
その傍の椅子にとりあえず腰かけている銀の髪をした女の姿。

眠っている相手がいるからか鎧戸を占めた薄暗さの中で、何をするでもなくやや俯き加減の姿勢で過ごしていたよう。
目が覚めてから、と用意されたあれこれはあるものの──。

わずかな衣擦れの音に、相手の目覚めを知ったのか女もまた緩く視線を動かす。
視線を緩く交差させる中で、穏やかに目を細めた。

「お目覚めですか?──店主さんからお水を渡されたので持ってきてますが……」

飲めるかどうかを問う前に。とりあえずは相手の言葉や反応を待つ態度。
───ほんの少しの悪戯な感情を宿しつつも、概ねは相手がさほど重症でなかったことに安堵するような表情を浮かべていた。

ヴァン > 見慣れぬ食事、そして椅子に腰かける女性の姿に、肘をついて姿勢を変えようとする。
薄暗いとはいえ誰かぐらいはわかる。右手を部屋の中央へと向けると、手で簡単な印を組んだ。
薄暗かった部屋が白く、明るくなっていく。魔導灯の効果。

「おはよう、マーシュ。……そうか、朝持ってきてもらった分はもうなくなるのか」

確か数時間前、いやもっと前か。体調を崩した旨を念話で伝えた。今度の休日までにはしっかり治すからと、それだけの連絡だったが。
わざわざ王城から来てくれたことを嬉しく思っているのは、表情に出てしまったかもしれない。

「そうだな、水をもらえるとありがたい。あとは……そこの衣装棚から替えの下着を」

滝の中に飛び込んだかというぐらいに汗だくだ。なんとか状態を起こし、ゆっくりと寝巻の上を脱ぐ。

マーシュ > こちらを見て、姿勢を変えようとするのを押しとどめるような仕草。無理なら寝ていてもいいし、介助はこちらでもできる。
室内に明かりが灯ったのに、少しだけまぶしそうに眼を細めて。

「おはようございます。……水分は多めにとった方がいいですし、ついでだからと」

食事の方もポリッジめいた、消化にやさしいもの。
まだ冷めてはいないけれど、どうかな、と器を触って確認しつつ。

請われるまま、水を注ぐと手に取りやすいよう傍までもっていった。
そのついでに身動きが辛そうなら、と多少背に手を添えて、枕の位置を変えたり、となれた仕草なのは職業柄だ。

「──はい。ええと、ご自分で体が拭けるなら」

テーブルに乗せられた盥には、湯が張ってある。そこにタオルをくぐらせると固く絞る。
衣類を変える前に体をふいた方が心地よいだろうしと用意したうちの一つではあったが。
絞ったタオルを広げて扱いやすい大きさに畳むと相手の手に渡してから、示された衣装棚に向かう。

……どれを手にするか迷うのだけれど、肌触りの良さそうなものを選んで手にした。

ヴァン > 押しとどめる仕草に軽く首を振る。横になるのも飽きてきたところだ。
とはいえ、動きは普段の姿からは想像できない緩慢さ。

「あぁ。救護局の連中も『夏はとにかく水をとれ』って言ってたな。
身体に熱がこもってしまうとかどうとか。食事は――少しだけ食べるよ」

状況は少し違うが、汗をこれだけかいた以上必要だろう。
夏の風邪は暑さで身体が疲れてなるのだと聞いた。もう若くはないな……と自嘲した。
……二週間ほど前に良いことがあって以来、調子に乗って酒量が増えていたことからは目を背ける。
酒は水ではないと救護局の連中がくどくど言ってたこともよく覚えている。

「助かる。そこに向かうのすら億劫でね……」

そこ、と称したのは室内にある小部屋だ。洗面所やシャワールームといった水回りが揃った部屋。
渡されたタオルでまずは顔、腕、胴と拭いていく。温かいタオルは急激に身体を冷やすこともない。
布団の中でもぞもぞと身体を動かして、腰やら足やらを拭いた。
マーシュの反対側に汗だくの寝巻を置く。一人で眠るにはクイーンサイズのベッドは広さを感じるが、こんな時には便利だ。
渡してもらった下着を身に着けると、ベッドの背へと凭れた。

マーシュ > 「食事がとれるようなら、すぐに復調するかとおもいますよ?」

それでも普段とは違う身じろぎの仕方や、緩慢な仕草というのは病の際には顕著だ。
自重めいたつぶやきには少し眉じりを下げてそんなこともないでしょうにと反駁を返す。

宿にしては珍しく、水道が敷設してある関係上、最上階にあっても水回りが備えられている。
それでも寝台から足を運ぶには遠かったのだろう。
緩く首を横に振る。

「無理して動くよりはいいかと、……普段していることが役に立つのは少し面映ゆいですが」

身体を拭き終えた相手が、己の差し出した肌着を着付ける間
あえて反対側に置かれたらしい汗じみた寝間着を回収しようと手を伸ばす。

女としては普段の習慣として何ら抵抗はないのだが。
むしろそこにおいてあったらだめでしょう、という目。容赦はない。

「洗濯物で回収しますので、おとなしくしてくださいね」

使い終わったタオルと同様にまとめてしまうつもりの模様

ヴァン > 「そうだな。早く直さないと……」

見せたいものは実は既にこの部屋に用意しているのだが、気付かれはしないだろう。
むしろ部屋の入口に置かれた包み――ちょっとしたお遊び用のもの――の方に視線がいかないか気になる。

「用を足すときは無理にでも動かないといかんがね……」

笑ってみせる。尿意をここしばらく感じないのは、やはり汗のせいか。
着替えの間に、さっと濡れた寝間着をとられてしまった。どこか気恥ずかしくはある。
おとなしくしていて、との言葉に素直に頷いた。

「……なんだか、いつもと逆でリードされてばかりだな」

寝汗が酷かったのはベッドにも影響が出ていた。シーツが乾いている場所へと少し体を動かした。
そのまま身体を横たえて、相手の姿を眺めている。――人生で、なかなかなかった光景だ。

マーシュ > 「……疲れがたまっていた、というのはあるのでしょうし。しばらくはゆっくりなされてもいいのでは?」

彼がやりたいこと、というのは……人道的な面から見ても、あるいは倫理的に見ても諸手を挙げて賛成できるものではない。
心情として、それほどまでに激しいものを己は抱いたことはなく。それを否定するだけの理も持たない。
それを達成するために費やした時間や、失ったもの、得たものを考えると──疲労、等と簡単な言葉で済むものでもないと思うのだが。

休養を欲しているのは事実だろう。
少しだけ居心地悪そうに身をずらすのに、本当はシーツも変えたいところだけれど、病人をあれこれ移動させるのも気がひける。

冗談めかした言葉には、排尿よりも汗で水分が出てしまっているのだろうな、なんて考えてしまったけれど。
洗濯ものを籠にまとめていると聞こえた言葉に、少しだけ意外そうでもなく眉を上げた。

「………いつもはヴァン様が色々先回りしてくださいますから、そうですね」

そういわれると新鮮、なのか。弱っているところにつけ込むような趣味はないけれど───。
いつもバンダナで隠されている額に手を伸ばす。
熱があるかを確かめるように掌で包んで。己の体温よりも少し高いのを確認してから手を離して。
盥の水を入れ替えて、それから、と判じつつ。

以前訪れた時と部屋の様子は変わりはあまりないように感じる。
この前約束した時に言われた見せたいもの、というのは女には見当がついていないから、特に思い出してもいなかったのだけれど。
入り口に置かれた包みは、特に隠されていないのなら目に留まるのかもしれない。

こちらを眺める相手と目線があったら、あれは何ですか、くらいは問うのかも

ヴァン > 疲労の蓄積など酒で洗い流す、と元気な時なら言えただろうが。
それができなかったからこのザマだ。
それでも、普段ならばここまで体調を崩すことはなかったろう。張り詰めていた緊張の糸が緩んだ、というのは確かにあるかもしれない。

額に手を伸ばされると目を閉じた。少しだけひんやりした感覚。知らず、息が漏れた。
離れていく掌の感覚に、名残惜しそうに目を見開く。

「こうやって看病されるなんて、子供の頃以来だな、と思ってさ。
大人になってからは一人で部屋に籠もって、薬飲んで寝てるだけだったから。
わざわざ来てくれてありがとう。――気分が楽になった」

他の独り者たちと何ら変わらない。
――いや。ここ10年近くは病気になったこともなかったか。慢性的な二日酔いは、それ自体が病気のようなものだ。

包みは見つかったが――遅かれ早かれ、相手に見せるものだ。
どう答えたものかしばらく考える。病で辛そうにしている時間を逡巡にあてられるのは数少ない利点か。

「あれは今度の休みにマーシュに身に着けてもらおうと思ったやつだ。開けてもいいよ」

包みは二つ。CとDという文字がそれぞれ記されている。

マーシュ > 「───後で、滋養に良さそうなお茶、用意しておきますね」

今はまだ、何かを口にするといった雰囲気じゃなさそう。食事もその時に温めなおすか──
果実をすり下ろしたのでも良さそう、と一人ごちる。

体温の違いを心地よさそうにしているから、まだ体は熱を持ってるのだろう。
水場の部屋を借りて、盥に水を張りなおすと薄手のタオルを浸して冷やす。
横たわる相手の額にそれを乗せて、あとは楽な姿勢でいてもらうのがよさそうだ。

「あまりにひどかったら、施療院に連れて行こうかと思いましたけれど?」

看護という点ではきちんと治療してくれるはずですから、と揶揄いじみた言葉を紡ぐものの
そこまでの容態でもなさそうだったことには安堵している。
礼の言葉にはただ瞼をおろすことで頷きに変えて。

普段よりもよほど素直な言葉には少しくすぐったそうにしていたが──。
己の問いかけに、しばらく沈黙が揺蕩う。
これが見せたいもの、ではなさそうなことは理解した。

「身に着ける……?」

逡巡の後の言葉に対して、それじゃあ、と包みに手を伸ばす。
刻まれた記号を見ても見当がつかない。

とりあえず”C”と記された包みを解いた。

ヴァン > 食事はできそうな気もするが、肝心の食欲がそこまで無い。
マーシュの言う通りお茶など摂りやすいものを優先しよう。

「どうかな……あまりに酷かったら、動けないことを良いことにセカンドが俺を鍼の実験台にしてたと思う。
水を渡された時、あいつ何か――掌大くらいの細い何かをいくつか持ってたりしなかったか?」

言いながら手を動かし、親指と中指を広げてみせて長さを示す。
シェンヤンにも伝わる治療法らしいが、いちいち台詞が怖い。冗談っぽく、一度鍼灸を受けた時のことを話してみせる。
こうやって人と話すだけでも気が紛れる。本ではこうはいかない。

Cの包みを開けたならば、3つのアイテムが現れる。
灰色の猫の耳が添えられたカチューシャと、大きな鈴がついた赤い首輪。
猫の尻尾と思しきパーツ、付け根のあたりには球状のものが直列に並んでいる。
見る者が見れば真夜中書店から来るタイプの包み紙だとわかるだろうが、目の前の彼女にその心配はないだろう。
動物のコスプレ衣装だが、ミレー族のコスプレとしても使われるらしい。

「犬と猫、マーシュは猫の方が好きだってこの前言ったから……」

Cが猫ならば、Dは犬だろう。

マーシュ > 無理に口にしたって、あまり意味はない。
身体が食事に負けてしまっては意味もないのだし。摂取しやすいものに多少下支えになるような細工はするけれど。

「───実験。……いつものご様子でしたけど……ああ、……薬が欲しくなったらいつでも、みたいなことは」

……雇用主と、被雇用主のはず、なのに時折彼らの関係性に首を傾げたくなる一瞬が訪れる。
それを詳らかにされるかどうかは流れ次第ではあるが、見ていて面白く捉えている自身もいる。
シャンヤン出身らしいことは折に触れ耳にしたことはあったけれど。──なかなか彼女も技術の幅が広いのだなと感慨にふけっていたものの。
実験だの、台詞だのを聞くだに、若干遊んでいるような気もする。

薬についても、前回の悪戯のこともあるし……何かするんだろうなあとは思ってしまう程度には彼女の人格は見えてきた気がする。

────雇用主の悪戯心についても問いたいところがありますね、と開いた包みの中味に視線を落として静かに思うのだ。

「……………………………そういう?」

露になった包みの中味を手にして。つぶやく。
……ミレーの耳製じゃないあたりは良心的なカチューシャを手に取って、先日の問いかけの答えを知る。

”D”の方は開いてないけれど。たぶん中身はそういうことなのだろうというのは、寝台の上の住人の言葉で予想がついた。

「……」

とりあえず様々な感情が去来したので、無表情に近いいつもの表情がさらに無に近いものになりはしたのだが。

何処でこういうものを手に入れるのかは若干不思議。普段の生活では世俗とは隔絶されているところがあるから知識不足だ。
耳と、首輪と、尻尾───でいいのだろうか。胡乱な眼差しで見やってから、ちら、と病人を見やる。

───己の悪戯心を発露させてもいいんだろうか。

「……───ヴァン、様、………ちょっとよろしいですか?」

何を、とは言わない。

ヴァン > 「薬も普通の調合でいいんだけどな……」

余計なものも混ぜるせいで意外な効果が顕在することがある。前は解熱の効果が複数回発現して彫像のように身体が冷えたこともあった。
雇用主と雇われ店長という関係であるが、元を辿れば復讐者とその観測者だ。その関係にも終わりが近づいてきている。

包みの中身を目にした呟きは、よく聞き取れなかった。
猫が好きな人は相手が猫なのが好きなのであって、自分が猫になるのが好きではないと思うが、細かいことは気にしない。
あまりリアルなものは好まれないらしく、触れば布製にそれっぽく設えたものだとわかるだろう。
猫耳はともかく、首輪は――嗜好が現れていることは伝わる筈だ。今彼女が身に着けている物も、そう見えなくはないのだから。
尻尾はどうしたものか。セット販売だからやむなく入手したものの、使い道が思いつかない。

ベッドに横たわったままだと、相手の表情を窺い知ることは意外と難しい。
とはいえ、羞恥の声や動揺の様子が感じられない。己の趣味に慣れてきたのだろうか。

「尻尾を使うつもりはないけど……ん? どうした?」

名前を呼ばれた後にわざわざ「様」をつけられたので、異常を察知する。
――とはいえ、この身体では何もできない。にっこりと笑うだけだ。

マーシュ > 「それもまた実験……何でしょうか。……趣味な気も致します」

この前のお菓子の時もそうだったし。彼以外に対してはあまり過激な効果は発露しないような気もしている。
ある種の信頼ととらえるべきかどうなのか───。
彼らの関係が清算されたときにそれらの答えが出るのだろう。

ちょうど背を見せていたこともあってか、若干己の内に入った呟きだったからかこちらの言葉はあまり相手には届いてない様子。

手にしたそれらは、尻尾はともかくとして、他二つは、まあ────ある種デフォルメされて可愛いといえなくもないものだが。
手の内でカチューシャを弄びながら、その柔らかな布の風合いなどを確かめる。
こういったものをつけて遊んだりしたことは無く。それに付帯する感情もあまりない。
───首輪については、……以前チョーカーを贈られたときに多少そんな片鱗は見えていた気はする。けれど。

視線を転じて、呼びかけた相手の笑顔を見返しつつ。

「何から聞いていけばいいのかわからないのですが」

寝台に膝を置いて乗り上げ、きし、と寝台を軋ませる音を響かせた。
抱きしめられそうな距離感で、淡く微笑むと、相手の頭に猫のカチューシャをはめてみる。

己の髪色に合わせて灰色の猫耳を誂えてくれたのだろうけれど、相手も似た髪色だからきっと似合うはず。
藍色の双眸に楽しそうな色身を乗せて。

病身の身にあまり無理をさせるつもりもないからそれくらいだが──。

「ヴァン様はこういうのがお好きなのですか?」

もう一つ、手にした首輪をくるりと手の中で回せば、鈴のかわいらしい音が響く。
それにあまり可愛いとはいいがたい意味合いが宿るのはさすがに理解しているが。
すでに己の首許を彩っているそれもまた似たような意味合いが込められているのだろうかと言葉を重ねた。

ヴァン > 静かな声に、『あ、これお説教モードかな?』と思いつつ。
大人しく猫耳のカチューシャをつけられる。

マーシュの髪に合うのなら、当然己にも合うだろう。似合うかは別として。
鏡を見てみたい気もするが、またの機会にするとしよう。

首輪は赤い革製で、過去に装身具店で見たものと素材は近い。
装身具店のものはもっと細身でスタイリッシュだった。今彼女が手にしているものはとにかく目立つ。

こういうのが好きか、というのは質問というより確認に近い。
今この関係にある以上正直に言っても問題はないだろうが――。
じゃれることに決めた。
あまり接触しすぎて風邪をうつすのは本末転倒なので、ベッドに置かれた手に頬を寄せる。

「……にゃあ」

ごろごろ、喉を鳴らすことはできないので口で音を出す。猫がよくするように、ベッドの中で身体を丸める。
猫耳を外されたら――大人しく白状することにしよう。

マーシュ > ごろごろ、喉を鳴らすことはできないので口で音を出す。猫がよくするように、ベッドの中で身体を丸める。
猫耳を外されたら――大人しく白状することにしよう。 (08/27-15:38:53)


抵抗はなかった。恭順の意思を示す様に大人しく猫耳をつけられている姿はある種面白い。
──ミレー族や、亜人種であれば何ら不思議はないのだろうけれども。

首輪をはめるほどではない。大きさからして男性の首周りでも行けるのだろうけれど。
赤く染められた革のそれは以前用意されたものにも似ているけれど、それよりは存在を主張する大きさ。

己の問いにどんな答えが返されるのか、と思っていたのだが。

「え」

予想外に聞こえた猫の声音に固まった。

「ん」

手元に感じる熱が相手の頬のそれなことに気づいて視線を下げる。
本当に猫のような仕草で丸まられるのに若干毒気も抜かれた表情を浮かべた。

───ごろごろ、とまで訴えられると小さく噴き出すほかなかった。

「いえ、あの、責めてるわけじゃないんですが。───…ふふ」

もしかしてカチューシャ外すまでこのままでいるつもりなのかな、と思いながら。じゃあ猫扱いしましょう、と手を伸ばす。
さり、と頭を撫でて。──まだ少し熱いですよねとも思うのだけれど。

──動物にはつい甘くなってしまう己を自覚はしているが。
……こんな幼稚な擬態でも甘くなってしまうのは問題かもしれないな、と思いつつ───、作り物の耳を弄う。
さすがに体を撫でまわしたりはしないくらいの理性はあるから。

───相手が体調を崩していなかったら、これをつけていたのは自分だったのかな、とも思うと感慨が深い。

ヴァン > 驚きの声。
こんな声を出すのは――意外だろう。
猫は人の言葉を発しない。猫耳がついて人の言葉を発するのはミレーだ。
それっぽく振る舞うのがコスプレの基本。多少の恥じらいはあるものの、見てる者は少ない。

責めているわけではない、と言われると枕へと頭を戻して、なー、と長めに言った。
頭を撫でられると、心地よさに目を閉じた。……あぁ、猫もこんな気分なのか、とふと思う。
作り物の耳には感覚がないから、本物がするようにぴこぴこ動かすことはできない。
多少頭を振って、それっぽく振る舞うくらいか。

服を着替え汗を拭き、快適になったせいだろうか。
身近な者が看護に訪れ、安心したせいか。
だいぶ眠った筈なのに、睡魔が訪れてきたようだった。
ごっこ遊びも終わりとばかり、睡眠をとることを伝えようとしたがその前に意識は落ちかけて行った。

マーシュ > モゾ、と寝台の上で姿勢を変えて、猫じみた声を聴く。
実際責めているわけではなかったし、確認めいた問いかけ、というのは間違ってはいない。
己をそうすることの意味、というのも少し聞いてみたかった気もするだけだ。
今のところ、主従めいたふうに彼我を縛るような言動は相手は取ったことがないだけに。

目を閉じる相手にそのままなでていたのだけれど、そのうち聞こえてきた寝息にゆるく双眸を瞬かせた。

そろりとカチューシャを外すと、寝台から降りる。薄めの上掛をかけなおすと、少しためらった後でもう一度頭を撫でてから
濡らしたタオルをその額に乗せなおした。
聞こえた寝息が苦しそうなものでないことに、淡い吐息を一つ零す。

カチューシャその他はテーブルに戻すと、ひとまず眠りを破らないように洗濯物などを片付けに階下へと向かったんだとか──。

ご案内:「『ザ・タバーン』3階」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「『ザ・タバーン』3階」からマーシュさんが去りました。