2023/08/23 のログ
ご案内:「トゥルネソル家」にラファルさんが現れました。
ご案内:「トゥルネソル家」に影時さんが現れました。
■ラファル > 免許皆伝を伝えられたとして、それがゴールではない。寧ろ、入り口だと、聞いた。
それと、ラファル自身、未だ幼いというのもあり、学校に通ったり、家庭教師師匠に訓練をして貰ったりの日々。
今日は学校がないので、師匠である影時と共に、朝練をを行って。
ある程度の時間が経ったというのもあり、一度休憩、と相成った。
自宅の庭なので、休憩する、となった時に、メイドたちが静かにそっと、レジャーシートと、お茶の類と、皿などを用意してくれた。
ちょこんと、そのレジャーシートに座り、胡坐をかけば、当然のように肌色ちらり。
下着なんて無粋な物は一切付けない系幼女、寧ろ脱がないだけ我慢している系幼女。
今日も今日とて、師匠が持ってきてくれる東方の新しい甘味にワクワクドキドキ、うきうきが隠せない。
金色の竜瞳がきらきら輝くし。
尻尾のようなツインテールもわさわさわさわさ、揺れ動く。
ジュルリ、と小さな唇から涎も垂れるので、有る。
■影時 > ――弟子が学生、学院に通う生徒になったとしても毎週の稽古は欠かさない。
其れは伝えた術、技の精度が失われていないかどうか、維持されているかどうかを見るだけではない。
師は伝授した術技の実演を以て、己が伝えたかった術技の意図が誤ることなく伝わっているかどうかを見る。
そして弟子は、師が伝授した技を実演することにより、それが意図通りの伝授内容であるかどうかを見る。
言うなれば、相互による確認作業であると云ってもいい。
弟子の性質が竜種としての本能頼みに偏りがちであれば、武技術技の反芻と確認は人間特有の点を多少は励起できうるだろうか?
そう思いたい。やがて長ずるとなれば、立ち位置や在り方の選択を選ぶ、または思い煩うこともあるかもしれない。
朝早くからの訓練を終えれば、お互いの装備の点検、確認の時間を設ける。
メイドに頼んで出してもらった机の上には、家令に預けた刀以外の武具類が並んでいる。
一通り欠けのない、不足もないことも確かめれば――あとはちょっと早い、おやつの時間としゃれこもうか。
「……――おぅぃ、待たせたな」
と。そんな声が屋敷の庭先に響く。
声の主は大きなお盆を抱えた白い着流しの男だ。その姿がゆったりとした足取りで荷物を運び、敷かれたシートの上にそっと卸してゆこう。
お盆の上に置かれた品々は大きく三つと少し。丸い大皿と二つのガラス鉢、そして小さな小皿といったラインナップ。
丸い大皿に並ぶものは、米粉を練った団子を串に刺し、炭火で炙り焼いた串焼き団子であった。
味も何もない、わけがない。甘く味を付けたゴマ餡や餡子を塗ったもの、緑色のものはヨモギを練り込んで焼いたものだろう。
もう一つはどうやら、故郷ではなくこの地に集うお菓子の類を踏襲したものか。
米粉の団子に商会が扱う新鮮な果物類をカットして添え、甘い酒で香味をつけたシロップをかけたポンチと呼ぶもの。
そして、小皿は胡桃や殻付きのヒマワリの種、カボチャの種といったナッツ類であった。
こちらについては別途喜ぶものがいる。机の上、まだ真新しい黒檀色の苦無の柄を枕にしていた二匹の齧歯類たちのごはんである。
■ラファル > 学びが多くなり、する事が多くなった、それだけの話で。
楽しいと感じている今現状、学校でも、訓練でも、別に問題はないと思っている。
ラファルからすれば、遊びの延長上、と言う形でしかないのであった。
学んだことを忘れないように、いざと言う時に咄嗟に体が動くように、しみこませるための反復訓練。
基礎ができるようになって、初めて応用に手を出すことができるのだから、応用をする為の基礎の硬め直し。
竜としてではなく、人としての、技術を覚える事による、人への理解。
それらの意味を含めての、訓練。
因みに、封護―――師匠が持つ片割れの刀は、確りと腰に付けている。
ラファルに関しては之を外すことはめったにない、之があるから何時も何処に居るのかわかるというのもあるし。
こんな危険な物を、竜の巣に置いておくこと自体大変なのである。
師匠は預けているけれど、ラファルは持っている、まあ家の中に居るかいないかの違いなのだろう。
「わーい☆」
やってくる、良い匂いと共に、美味しそうな品物の数々。
東方の甘味が所狭しと並べられて行き、その脇にある小鉢には。
胡桃に、ヒマワリの種。
そして、そう言えば、とテンションが急降下。
最近になって表れた、師匠の周りに纏わりつくケダモノの事は理解していた。
「挨拶、してなかったね……?」
ケダモノが、目を覚ます。
其処に寝ている齧歯類二匹、じとり、と周囲の湿度が変化するのを感じるぐらいの粘質な視線。
普段のラファルからは想像もつかないような視線を贈りつつ。
栗鼠と、モモンガを見やるのだ。
■影時 > とは言え大義などなんだの、と大仰な言葉に基づいた教育はしていないつもりだ。
元々素質があり、力がありながら諸々と危なっかしく見えた者の教育役を買って出た。その起点は今も変わらない。
教えるのは基本的に適性があるもの、並びに適性云々とは別に扱える体術を始めとしたもの。
基礎含め、適性を伸ばして培い続けるものの先にこそ奥義が生じる。
理念と危険性を弁えていなければ扱えない外法は、それこそ必要に迫られなければ教える気にはならない。
寧ろ――教えることが無いことを祈りたいくらいでもある。
人同士の戦いでも凄惨なのに、人に交わる竜とはその生業も含め、何かと目を付けられやすい。そんな印象がある。
諸々のかかわりがあれば、そうそう危険な目に遭うことも少ないのかもしれないが、それでもだ。
「今日はどうすっかねぇ。一応運び込ませてもらっちゃいるが、真面目に茶ぁ立てなくても良いか?」
さて、そんな真面目な話はさておき、シートの押さえ代わりになるように置かれた重厚な木箱を見る。
自身が所有する茶道具類をまとめた背負い式の運搬箱だ。
取り出せば、魔術鉱石を動力源にした加熱器とセットの茶釜、そして茶碗類等をその場で並べられる一式。
茶沸かしに必要な水も用意してもらっているが、せっかく淹れて貰っているお茶が勿体ない。
運んだ品をシートの上に運び終えれば草履を脱ぎ、着物の裾を払って上がろう。胡坐に座して目を遣れば、
「……あー。」
作り手は怖いけど、この武器(苦無)は傍に居ると怖くない、不思議と居心地がいいらしい。
不思議な木目模様が浮かんだ刃の柄を枕に、すーよすーよと寝息を立てた二匹が美味しそうな匂いに髭を揺らして目を覚ます。
飼い主の親分の服と似たような白い法被を着た二匹が伸びをしかけたところで、びびびくく!!?と震えるのだ。
それは親分の傍に居る人間?が放つ粘着目線。否、人間なのかどうなのか。
栗鼠とモモンガが大きく尻尾をぶんぶかさせつつ、親分の方を見る。その有様に顎を摩り、苦笑をにじませて。
「アイサツ、しとけ?出来るだろ?」
そう声を投げれば、尻尾を降ろして、小さくを頭を下げる。
何か言うように口をパクパクさせているのは、「あっしらは北の地より親分に連れられて~」などと、仁義を切っているのだろうか。
よくよく考えれば初対面ではない筈だが、ちゃんと挨拶等かわすのはなかったかもしれない。そう思い返す。
■ラファル > 大儀と言うのは、正直に良く判らない……と言うわけでは無い、興味が一切ない。
忍びと言う物は、と言う物でもなく、単純にラファルが子供過ぎて、興味が薄い。
ラファルは体術と身体操作を中心に学んでいる、後は忍びに必要な知識も深く学んでいる。
師匠の修行に関しては姉のリスが一任しているので、師匠の判断で行われている。
一応でも、人の世界を理解しているし、してはいけない事も理解している。
まあ、たまーに、襲ってくる盗賊をばりぼりしちゃうことはあるかもしれないけれど、その程度だ。
人が襲ってくるから、と言っても、純粋な人間ではない、其処から捻じ込んでくる貴族がいるかもしれない。
それはその時に、何とかするしかない。
「ん、だいじょうぶだよー。
お茶でなくても、良いし?」
一杯ある荷物を眺めて、今回は師匠の判断に頷く。
動いた後で喉も乾いているし、彼がお茶をたてる時間を待つのも……。
寧ろ、寧ろ。
早く甘いもの食べたい、視線がもう、師匠の顔よりも甘いものにじっと注がれる。熱視線。
「むー。」
師匠が、何かを察したようだ。
とてもマイナスイオンの空気を吐き出している、木の苦無を枕にしている小動物。
それを全力で威嚇している、ドラゴン娘。
情けない事この上ないと思われるのだけれども、ええ、ええ。
その情けない事をするのに理由があるのだ。
「ボクはラファル。
ししょーは、ボクの、だからね?
変な虫が付かないように、ちゃんと、見守って居て頂戴ね。」
にっこりと笑うが、ええ。笑うというのは本来、威嚇の形でもあるのだ。
二匹の小動物に視線を合わせながら、仁義を向けてくれる二匹に、よろしくね?
ドラゴンのオーラ全開で優しく言って聞かせて。
はい、と自らの手で、その更にある胡桃とヒマワリの種を一つずつ、手渡し。
「ししょーに手をだしたら、もぐもぐ、するから、ね?」
美味しそうだから、ね?
と、ようじょは、にっこぱーと、全開の、笑顔
■影時 > 大義云々となれば、それこそ国が亡びる、今の生活基盤のよすがとなるものが壊れるような事が起こらない限りは生じない。
弟子にとっての大義とは、外見に相応した心に対して強い影響を受ける、強制される程の出来事が前提となるか。
色々と教え、関係が続くようになって長いが、性根自体はそう変化していないように思う。
そうとなれば内面の変化は、どのように生じ、または影響を受けることなのだろう?
今すぐ考える必要がなくとも、転機がいずれ訪れるのではないか?と。頭の片隅にはおいておく必要がある。
――とはいえ、今はのんびりとしたものだ。
悪党がばりばりぼりぼりされてしまう位は、あーあと顔に手に当てながら眺めることもあるが、慣れたものである。
「さよか。まぁ、こっちの茶でも合うだろう。
味付けには少々悩んだが、沢山イケる奴を仕込んできたぞ」
餡子の材料になる豆類は入手に何かと手間がかかるが、米に関しては方々を巡れば意外とそうではなかった。
故に米粉を使った菓子、食べ物を作るという選択ができるようになる。
冒険時含め、野外活動のために常備する兵糧丸の材料の一つでもあるからだ。
粒が短く、粘りのある米を選んで買いこみ、諸々の工程を経て粉としたものは、団子に加工して食用に足る。
残るは味付けだ。今回入手できた小豆は半数を知り合いに回したため少ないが、トッピング的な餡子にするだけはあった。
風味が違う味付けも出来れば、あとはメイドが淹れてくれたお茶と一緒に味わうだけだが――、
「……悪い虫がつくもんかねぇ、俺はよう」
何を張り合っているのか、対抗しているのか。
今回ばかりは張り合っても意味がない、文字通り蟻と象以上の力の差を威嚇の圧から悟ってしまったのだろう。
形状は違えど、ふさふさの尻尾と毛並みをぶわわわと膨らませ、にっこりと笑う幼女に栗鼠とモモンガは、こくこくこく!と頷く。
それを眺め遣りながら、親分にして飼い主たる男は半ば呆れたような面持ちで息を吐く。
挨拶と仁義を通し終えたのか、差し出される胡桃とひまわりの種をそれぞれ受け取り、二匹はお互いに見合うように目配せする。
「流石に出さないっすよう」と言いたげに鳴き、二匹が殻付きの胡桃をそれぞれ抱え持ち、前に出す。
何か誓いの儀式めいたことでもやりたいのだろう。胡桃に幼女が指先などをつんと合わせたりしたら、きっと喜ぶかもしれない。
■ラファル > ラファルにとっては、大事なものは、多くない。家族位なものだ。
それを脅かすというのならば、ラファルは持っている全てを以て抗うけど只、その前に、有能な姉達や、家令などが、色々してくれるだろう。
内面の変化に関しては、之から付き合う人間とは限らない、魔族とか龍族とか、誰かしらで変化する。
そもそも、一番影響を与えているのは、師匠であり、保護者の師匠なのだ。
悪党をバーリぼーりした後は、たんぱく質鉄分!とか、何とか言うのは、流れだ。
「わーい☆
わーい☆」
美味しそうなおやつの数々、両手をあげて、ぴょんぴょんとジャンプして、嬉しさを全力で表現。
視線はもう、甘い物に釘付け。
普段は食べられないタイプの甘味があるからこそ、それが楽しみで仕方がない。
完全手作りの東邦系甘味は、わくわくしかない。
行けば食べられるが、其処迄ちょくちょく行くのは面倒でしかない。
なので、作ってくれる、持ってきてくれるのは、とても、とても嬉しいのだ。
「えー?ボク以外の雌のにおいするけどー?
シロちゃんと、フィリちゃんの他にも、仲のいい女の人が最低、二人は、いるよねー?
一人は、其処の二匹と同じ匂いで。
もう一人は完全に知らないけど、女のにおいするー。」
どの口が言ってんだこの親父と言わんばかりに、視線を半眼に。
どういう関係かは知らないけれど、それでも、中のいい相手は悪い虫判定していいだろう。
ドラゴンは嫉妬深い、その辺りは、トゥルネソル……否、ドラゴンの習性だろう、宝はしまい込む系の。
まったくもー。
と、言いながらも、視線は、超超小動物に視線を戻す。
まあ、先程釘をぶっ刺したので、獣してはこれで終わりだ。
にこにこと、ドラゴンオーラをぷしゅる、と飛ばしつつ。
頷く小動物に、よしよし、と。
差し出された胡桃と、ヒマワリの種に、つん、と突き返してあげる。
これで、この辺りは終わり。
「よろしくね?
スクナマルに、ヒテンマル。」
にっこり、と笑って、もう一度ちゃんと腰を下ろして、お茶と、並べられる食べ物を、眺める。
■影時 > そう、考えるに弟子が自分自身以外に優先すべきと思っている、感じているものは多くないだろう。
想定できる限りとしては極々身近な範囲、血族、否、家族という範囲と考えている。感じている。
己が考える戦いのスタンスとして、手合わせ以外で起こす、あるいは望む戦いとは最低限である方が望ましい。
だが、それでも。生きるにあたって避けがたい、逃げられない戦いとは起こりうるもの。
――その時、どうするか?
その選択を得るため、生き抜くための一助となる体験の欠片を教えている。そう思っている。そう信じたい。
ただ、悪党踊り食い⇒ばーりぼーりのコースは偶にちょっとだけ、ツッこみたくなるのだが。
「さぁ食え食え。
そっちの“ぽんち”は茶店等で目にした奴をマネしてみたンだが、それなりにいけると思うんだよなぁ」
団子の仕込みは朝早くからかかっていたが、何分作り易いのが良い。
醤油の類が手に入ればもう少し味の工夫も出来たかもしれないが、トッピング次第で味付けし易い。
細い木串に三つ刺した団子は、手を汚さずに食べられる工夫でもある。
一本ごま餡をまぶしたものを摘まみ上げ、こう食べるんだ、と実演するように齧ってみせよう。
食べ終えた後の串については、大皿の空いたところに置いておけば其れでいい。
もう一つのフルーツポンチはこの季節、喫茶店などで見かけた食べ物を真似したものだ。
細かい粒の粉で作った白玉団子はつるりとしており、こうした冷えた食べ物に合わせると喉越しが良い。
団子に用いたのとは別の粉は作るのに手間暇がかかるが、その分使いでがある。
厨房の担当にも実演ついでに製法をおすそ分けはしたので、頼めば作ってくれるかもしれない。
「……はははは、なンのことだろうなァ?
ってか、匂い消しは気を付けてるつもりなんだが、よく気づくもんだ」
わざとらしい笑い声を響かせるのは束の間、半眼を向けられれば、大袈裟に息を吐いて肩を竦める。
匂いもそうだが、竜種の眼、直感と言った要素も合わせて、縁と関係を嗅ぎ取ったか。
まだ取って食ったりはしてねェぞ?と。そう言いつつ、メイドが淹れた紅茶が揺れるカップを取る。
甘味には、砂糖も入っていない渋みの強い茶の味がよく合う。これは現実逃避ではない。
「とはいえ、仲良くしてくれンのは有り難い。こいつら流石に戦う力まではないからな?」
剣や刀の鍔を打ち合わせる金打のかわり、なのだろうか?
いつの間にそんなモン覚えたのだろう。半ば怪訝そうに眉を顰めつつ、つんと突き合う二匹と一人の様子を眺め思う。
二匹が口の中にヒマワリの種を収め、殻付き胡桃をよいせと抱え、ひょいと飛び降りる。
その足で向かうのはシートの上の小皿のところ。其処に陣取れば胡桃を置き、頬袋から出したヒマワリの種を齧る。
齧って殻を外し、中身をぽりぽりぽりと……二匹揃って咀嚼する様子は、眺めているだけでなごむ風景か。
■ラファル > 戦う事に関して、否やはない、そもそもがドラゴンだ、闘争の中に生きる一族。
必要な戦いから逃げ出すという選択肢などは、無いのだ。
ただし、その際に関して……ちゃんと相談する。人ではないからこそ、人の中で生きていくためのルールに抵触しないか確認する。
そして、問題がないなら、問題があるなら、問題になる所を先に排除する。
どうするか、その時に、その状況に見合って、動くことを、ラファルは、考える。
悪党には人権はない、何処かの魔族/盗賊殺しの、偉い魔術師が言っていたとか何とか聞いた事がある。
それに、突っ込まれても、僕ドラゴンだし、ご飯はいっぱいほしいしーとか。
「いただきまー!
ぱんちからー!」
ポンチを勘違いなのか、パンチとか言いつつ、飛び込むように踊り込む。
もしゃもしゃもしゃもしゃー、と顔から容器に突っ込むようにしつつ、もしゃーじゅるるるる、と食べる。
果物も、生クリームも、顔中全体使って食べるような勢いで。
うまうまうまうまうまー。と。全身が喜んでいる。というか、ツインテールの髪の毛が踊っているようにも見える。
白玉をぱくんと食べて、口の中でコロコロころがしてから、もちゃもちゃかんで、ごっくんこ。
甘くて、つるつるで、美味しくてほわぁ、と、蕩けるような表情に。
「ほわー。」
全身から、幸せオーラが溢れ回る。
「んにゃ?
ボクの情報収集能力は、ししょーゆずり、だよー?
それに、ししょーの知らない技術だって、ボクは持ってるんだし?
後、お互いが良いなら、べつに子作りは本能だし、良いんじゃないの?」
師匠の知らないスキル。
元々、彼に弟子入りする前には、ストライダーと言う、盗賊系、隠密上位の技術を持っている。
それと、忍術をミックスし駆使すれば。師匠を出し抜く事さえ100%とは言わないが、出来る訳で。
匂いも、師匠の感じてる通りに縁などで臭いを理解していた。
あと、手を出す―――姪っ子たちに手を出すこと自体は気にしないというか、その辺り竜の感覚。
お互い同意あるなら、じゃんじゃんしていいんじゃないの、と。
「うん、非常食でしょ?後は……情報収集の為かな。」
栗鼠とモモンガ、其の二匹に関して、戦闘能力に関しては、見ればわかる。
美味しそうが先に出たからの非常食、後、現実的に、彼等の頭の良さを見て思うの使い方。
仲良くするという事自体は問題ない、唯、獣として、上下関係はしっかりしておきたいだけだったし。
それが終わったから、もう彼らは良いのだ、と。
■影時 > 竜も人も色々だ。関わり合いがある竜の血族は一つの群れ(イチゾク)だが、それでさえ個々に異なる。
弟子のように並ならぬ強さを持つものが居れば、今は善くても武器に振り回されそうなものも居る。色々だ。
己が説くようなリスクマネジメント、対応というのは他ならぬ雇い主は諳んじていよう。
実力行使の四文字こそ、政も含め、よくよく考えて切らなければいけない切り札であるのだ、と。
しかし、一方に力量の差が在り過ぎる殲滅戦は――どうだろう。少なくとも止めようがない。
迂闊に捕虜にしても依頼人が喜ばない類の悪党、魔物は根切にするに限るのを、否定する言葉はない。
「ぱんちじゃなくてポンチな。まぁ、良いが。ほっとくと温くなっちまうからなあ。
……ちょっと動くな。口についてンぞ? 拭いてやるからじっとしていろ」
暑さのピークは少しは過ぎたのかもしれないが、依然として日中はじっとしているだけで汗ばむ。
冷たい食べ物、スイーツ類の類も早めに食べるというのは、内心同意できる事項でもある。
魔導機械で保冷できることもそうだが、商会が取り扱っている品々の良さは、この手の料理をするときもホッとできる。
己も硝子の椀を取り上げれば、作ったポンチを味わう。
色々な果実の味わいと白玉団子がシロップの甘みを含み、つるんと思った以上に吞み込めるのは、この季節に有難い。
匙を進める中、先んじて勢いよく食べ進め、幸せオーラを上らせる弟子の様子にナプキンを取る。
片手を伸ばして、そっと向こうの口の端を拭ってあげようと。
「そりゃそうだ。とは言え、ラファル。お前に教えてない技も新しくできた術も色々あるモンだ。
……とはいえ、隠してるつもりでも無ぇが、色々気づかれるなあ」
臭い云々については、日ごろの習いとして徹底的に消しておく癖をつけている。
それでも気づいたり、感づいたりするのは己が知らぬ技、術だけではない。女のカンというのもあるのではないか。
そう思いながら、そっと息を吐く。下手に隠してこじれたりボかしたりするのだけは、御免だ。
かかわりがある一人は向こうの血族でもある。であれば、否定するよりも言外に肯定し、隠さぬ方が正解だろう。
そう考えつつ、左手を起こす。手指を曲げ、一瞬印めいた形を作って振れば、離れた場所の机の上で音がする。
布に包まれた黒い刃の苦無が不意に宙に浮かび、引っ張られるように男の手元へと収まるのだ。
「食い物扱いは止めてくンねぇかね。あいつら怖がってるだろ。諜報は……あいつらの気分次第かな?」
ひじょーしょく?!と。そう聞けば、ヒマワリの種を食べ終えて、ぽわーと幸せそうにしていた二匹が飛び跳ねる。
座った男の肩にまで至りそうな高さは、こう見えて身軽で機敏であるということも伺えるだろう。
情報収集は頼めばするかもしれないが、基本的には付いてくるだけのものだ。
そのかわり、宿や学院内で二匹で手紙を抱えて運んだり、小動物セラピーめいたことも遣り出している様子もあるが。
■ラファル > 竜と言うのは、それだけで強大な個体であり、それが沢山この国にあると言うのは、爆弾が隣に置いてあるようなものだ。
人間では無いのだ、だからこそ、判り合えないところもある、一番人間寄りのリスでさえも、人竜であり、完全に人では無いから。
ある程度のストッパーや、ルールが必要なのだ、その為のとある人との約束だし。
その為の、リスのマネジメントなのである、一番不安材料だからこそ、彼に頼んでいて、それは今、功を奏している。
今のところ、ドラゴンが爆発するのは―――リスを含めた、トゥルネソルに大きな被害があった場合、であろう。
例えば、謂れもなく迫害を受ける、罪をなすりつけて、などだ。
なので、今のところは、ドラゴン暴走の危険性は―――トゥルネソルの一族に関しては、無い。
「ぽんちー☆ポンチー☆
んい、あいあおー(ありがとー)」
只繰り返しているだけだが、何か卑猥な事を言ってる気……は、気のせいだろう。
拭ってもらうのに対して、食べるのを辞めない、でもお礼は言う。
もぐもぐしながら、拭ってもらう器用な小娘。
魔導機械の、保冷庫も最新型のを取り扱っているし、その辺りは遠慮なく、商会の資金力を使う。
それに、食材などに関しては、本当に新鮮な最高級品を持ってきている、船よりも馬車よりも早いドラゴンがある。
其れこそ、普通なら数日の所を、1時間とかそのレベルで持ってこれる。
だから、他の八百屋などと比べ物にならない鮮度の野菜や肉、お魚を。
お魚に関しては、海に近いのでそこまで、違いはないかもしれないが。
「ほひょはほははひひゃはひゃひょへ(そこはお互い様ってやつだよね)
ひゅひゅひゅ。(ふふふ~。)」
師匠も理解してると思うが、その辺りは、この国の気質もあるし、ドラゴンの気質もあるので。
多分師匠が嫁を娶って帰って来ても、スタンスは変わらない、困るくらいに変わらない。
それよりも、手元に戻す苦無を、何をするだろうという興味が沸いたけど。
でも、フルーツポンチの方が優先されて、もしゃるのは止まらない。
「んい。」
果物を、甘いものを成分接種をしているから、非常食扱いに対しては、こくこく、と首肯。
非常食扱いはしないと約束。子分だもんね、と、いつの間にか子分扱い。
影時、親分、ラファル若頭、スクナマル、ヒテンマルは子分、という……ラファルの思考。
近い感覚で、小動物二匹も、考えてくれているのだろう。
■影時 > 竜が意外とどこにでもいる――と云う感慨を抱くようになったのは、商会とのかかわりが深くなってからだ。
表向きに見てわかる得物、代表的な武器として、龍に反応する刀を差している。
この屋敷に立ち寄る際、今はそうでなくとも数度震えたものであるが、それが意外と街中で震えることがある。
自分の勘違いかと思えば、恐らく他の竜の個体を察知したのであろうと。そう考えることが出来る。
若しかしなくとも、この屋敷のドラゴンメイドや商会のドラゴン従業員とニアミスしたのかもしれないが。
ともかく、存外に浸透している、身をやつしている等、個々の理由と事情で人界に混じっている。
その例を己は良く知る。
だか、其れを吹聴したいとは思わない。意味がない。必然が無い。
何よりそんな依頼などは現在の雇用主から請けていないのだから。
「……その発音はどぉなんだか、ッたく。
あー、団子食べる前に合間に茶ぁ呑むといい。多分すっきりするぞ」
云われて見れば確かに、そうかもしれないが、繰り返されると妙に卑猥なことを宣う姿に突っ込みをぼやく。
食べる合間で口を拭うというのも無意味かもしれないが、この位がっついてくれると作った方としては嬉しいもの。
甘いものが大まかに二つ並んでいるが、それぞれ甘さの質が、方向性が違う。
シロップに溶いた砂糖を除けば果実由来の酸味が効いた甘さと、ゴマやヨモギ、小豆が作る風味とは違いがある。
ちゃんと感じて味わってくれるのであれば、茶を一服して口の中をリセットすると丁度良いはず。
米と小豆、ヨモギは持ち込みだが、他は商会由来で揃えたものだ。
米についても頼めば取り寄せてくれるかもしれないが、如何せん種類を徹底しようとすると難しい。
「まあなぁ。思った以上にこっちの気風に染まったかもなァ、俺も。
さぁて。今の引き寄せの術は――“観えた”か? まだ教えていなかったと思うが」
気づけば滞在するようにして長いこの国の気風、スタンスに染まった気がしなくもない。
一先ず、通すべき筋は通しておこう。そう決めておく。
内心で定めつつ、軽く左手を振って見せる中で、弟子の竜眼には見えただろうか。または感じただろうか。
振られる五指の先より、微かに煌めく糸状の氣の流れ。強い氣圧を精妙に糸として錬り、手繰り操る術を。
膝上に取り寄せた布包みを乗せ、食べかけのガラス碗を盆の上に置く。
片手で茶を含み、一口すれば緑色の団子の櫛を摘まもう。それを煙管を咥えるようにぱくり。
「賑やかし――というか、何と言うか。こんなナリでも故郷から出てきた冒険者なンだぞ?」
ごく潰し、というわけでもない。小さな仕事であれば買って出る程だ。
飼われてやっている身であり、身を寄せている子分であり、小さな冒険者でもあり。
おやぶん>らふぁる>自分たちという関係性は十分理解し、覚えたのだろう。胡桃を抱えて、こくと、幼女を見上げそれぞれ頷くのだった。
■ラファル > 竜に関しては、何もトゥルネソルだけではない、なので、師匠の刀に反応することもあるのだろう。
ラファルの短刀も、ラファル以外の竜の存在に震える事がある。
普段は震えなくなったが、時折、ラファルが悪戯しようとすると、ぶるぶる震えるので、多分そうなのだろう。
因みに、悪戯以上を考えてみると、悪寒がするので、考えるではなく実行しようとすると、能力封印されてしまうのだろう。
やったことがないので、疑問形だが、確信はある。
やろうと思うかどうか、怖いのでやらない、だって、能力封印されたら、動けなくなるだろうレベルな、はずだ。
そう言う意味では、ラファルにとっては、呪いの装備でも、有るのだ。
閑話休題
「飢えてる?
あーい。甘いのを、苦ーいのでなくして、甘さを復活させる。
人類の、知恵だね!」
言われたし、甘いのは大好きだから、ちゃんとお茶を口にする。
お茶の渋み―――と言っても適度なそれは、口の中を洗い流して、新鮮にしてくれる。
はふぅ、と満足そうに吐息を吐き出して、リセットされた口で、おいしー、と感想をもう一つ。
さて、と。
次は、と和菓子、上品な甘さが基本であり、それはそれでとてもおいしい。
ホッとする味なはずだ。これに関しては、以前貰って食べた事が有るのでわかる。
うひひ、と笑いながら、頂きますと。
団子を一口。
もっちもちした弾力に、程よい餡子の甘さ、果物とは違う甘さに、頬を撫でて、ウマー。と。
「確か、師匠の国の言葉で、朱に染まれば赤くなる、だったけ?
うん。教えてもらってはなかったけど……傀儡の術、だったはず、だよね?
本来は、人形などを使って、人と誤認させたり、敵の不意をひきつけたり、攻撃防御に使う…為の術。」
気を使い、モノを動かす、引き寄せる術は、教えて貰ってはいなかったが。
確か、そう言う術があった、それの応用だったかな、と。
ちゃんと、ラファルは自分でも、学ぶ。その為の翼、師匠の国に行けば、師匠の教えの全てではなくても。
自分で調べるための術が生まれるなら、自分でも学ぶのだ。
因みに、諺は普通に間違えて覚えて居るもので、朱に交われば、の事なのは、仕方ない所。
「まじか。お前たち……。」
二匹の小動物、その小さななりで冒険者になっていたらしい。
ラファルは冒険者としては見習いなので、目を丸くして見せた、凄いんだなぁ、と。
認めるべき所はちゃんと認める、それが、兄貴分……じゃなかった、姉御分の役割だと思う。
■影時 > そんな(竜にとっては)呪いの装備を、対象となりうる弟子に預けるのはどうなのか。
知己にして現在の愛刀を打った女鍛冶師が、それを聞くと啞然としていたコトをふと思い返す。
体格的に合うだろう側を渡したつもりであり、同時に対を成す龍殺しの片割れを託すことで、雇い主に翻心はない、と示すために。
だが、気づけば弟子が容易く刃を抜けなくなっていた――というのは、誤算ではあったが。
「……それはそれで何か情緒が無ぇンだよなあ。
まあ良いや、さっきのでも別段間違いじゃねぇな。
甘いものがあるところには大概茶があり、茶が無ければ代わりが在るようだ。
ただただ甘いだけでは飽き足りるってェのは、何処の土地でも変わらない考えなんだろうなぁ」
(甘いものに)飢えているという言い草自体は間違いではないが、もう少し何かこう、欲しい。
情緒的にな語彙等も学ばせ、覚えさせるべきなのだろうか。
では、その為の座学の題材は?と思い出すと、仕事が板についてしまっているのだろう。そんな感慨を覚える。
ううむと考えだすも、今は急ぐまい、と咥えた団子を齧る。手前味噌だが、意外といい出来かもしれない。
「ンな言葉あったなあ。間違っちゃいねぇのが何とも言い難ぇが。
さて……よく勉強してるなァ。糸などで人形を操るものを傀儡師と呼んだりするが、俺の里だとちょっと違う。
この術はその糸繰りの技の代替であるとともに、諸々補助をするための術だ。
俺は、氣鋼念糸の術と呼んでいる。次の修行で教えてやろう。あとは、此れもだ」
異国趣味、東洋趣味と云うのもこの国ではそう珍しくはないらしい。
だから、刀を差しても違和感のない装いとして、羽織袴を略式ながらも正装と言い張って着込んでいられる。
よく勉強していると方法は敢えて問わずとも弟子を誉めつつ、先ほど見せた術の名前を口にする。
氣を撚り合わせ紡いだ極細の半透明の糸を、指先から放ち操る術だ。
同業者で戦闘用の傀儡人形を操る忍群が、しばしば使役のための鋼糸を武器にしてきたが、それを真似たもの。
先ほど見せた技のように、投擲した武器の回収や氣を遠くまで伝え流すための導線にも出来る。
熟達すれば、鋼糸術の代替として、切断技にも出来るが、氣を奪い喰らうような武器には弱い。
そうして、膝上の布包みを解く。使い込んだ光を放つ苦無を掴み、柄尻の輪に指をかける。
印めいた形状に逆の手を結び、氣を流して回し始める。刹那、風を切る黒い刃に微かな紫電が帯びだすのが見えたか。
「……住処を出てきて、俺にひっついて付いてくる位の物好きだからなぁ」
眼をまんまるにして見られたら、ふふーん、とばかりに二匹して背伸びして胸を張る小動物コンビである。
そんな二匹が胡桃に乗っかり、かじかじと齧ってゆく。
程なく割れる殻の中身を取り出せれば、やったー!と掲げて、無心に齧り出す。
■ラファル > 最初は、呪いの装備では無かった……はずだ。
師匠が一度預かり、刀を調整しなおしてくる頃には、抜けなくなった。
打ちなおされて、呪いと言うか祝福と言うか、それが強くなったのを感じる。
なんか、たまーに、見られているような気もする、ホラーを感じる。
「情緒……? うん。
確か、塩とか、珈琲とか、ね。」
情緒、理解はしているけれど、今は違うはずだ。師匠の言いたい事は判るので、にまぁ、と笑って見せるけどそれだけ。
今は情緒よりも食い気、甘いもの優先。
なので、こう、そう言うのはまた今度、と言う感じで頷いて見せる。
団子を一緒にカジカジしながら、次の団子に手を伸ばす。
花より団子、まあ……ラファルの年齢としては、之が当然なはずの反応なのだ。
「えへん。
―――氣鋼念糸……。
氣鋼念糸
あい、次、覚えるよー!」
何故、言い換えたかと云えば、これは、一応の気遣いでもある。
今更とは言え、忍と言う物は、隠れるものであり、使い手が増えれば正体判明するリスクも多くなる。
なので、同じ技でも言い方を変えれば、偶然を言い張れる、国が違うのも、その一助となろう。
ラファルも忍としての技術は最低限にしているし、普段はストライダーとしているのだ。
必要ないというなら、それはそれ。厨二心というのもある。
その次は、氣を介して、苦無が紫電を帯びる。
これも、教えて貰っていない技だ、新しい物を見ると、わくわくする。
雷は、其れなりに親愛が深い、ラファルはテュポーン種、台風を語源とする風の竜。
空気の流れで自然の雷を作り出す事も出来るから、雷の技は、幾つあっても嬉しいものであって。
「うん、わかったよ!」
胡桃の殻を割って、喜んで食べている二匹。
それを見たラファルは、凄いことを認めた証として、二つ三つ、胡桃を割って、中身を差し出す。
ええ、この、食事最優先の食欲魔が、食べ物をプレゼントする、それは、其れに値するものとして認めた証だ。
そんな感じで、のんびりと、時間は進むのだった―――。
■影時 > 呪いと祝福は紙一重と言えるが、妙な特質が強くなったのは作成者による調整を経てからか。
ホラー的な感覚を得ることはないが、それは多分人間が所持しているから、なのかもしれない。
残念、残留思念、否、此処までくると魂すら宿っているのだろう。
それが個々の刀の特性と妙な感じで混じり、再調整を経て顕在化した――とばかりに。
「まぁ、お前さんの場合は喰いっ気よなぁ。
――塩味も甘味にちょっと混ぜると妙にいい具合になるンだよな。
珈琲も気になるが、諸々揃えると置き場所がな……」
難しくは考えない。難しく言い聞かせるつもりもない。
だからプリミティブ、天然、アリのままでまず居てくれればいい。
真面目ぶったり周囲に合わせよ、というのは、必要に迫られない限りは不要でいい。
何せ、まだまだ食べ盛りと云わんばかりの時期は過ぎない。
それはまるで、長い幼年期めいた年月、在り方を生きているかのようにすら思う。
「……此れはこっちに来てから見出した、閃いた方だな。
ほら、ラファルの背に乗って飛んでいたら、偶に雷雲に突っ込むだろう? あの時の風などの流れからな。
雷迅の術、とでも呼ぶか。氣の起こし方は木行からだが、ラファルなら風の精霊を手繰りゃなンとかなるか。
……こいつを預けておくから、練習してみろ」
言い換えは任せるが、少なくとも同門の使い手と遭遇した際の対策、対処にはなるだろう。
だが、もう一つの術は里を抜けた時点ではまだ開発途上、空論めいた扱いであった。それを思い返しつつ、術を完成させる。
栗鼠が割った胡桃の殻の欠片を放り上げ、紫電を纏った苦無で突けば、微かな音を立てて殻が炭化して僅かな灰となって散る。
落雷に撃たれたかの如く、という喩えを体現する術。であれば、その名もまた然るべきものであるべきだ。
それを練習用ついでに、使い込んできた黒い刃の苦無をおろし、布に包んで弟子の膝上に置こう。
剣の切先のように鋭く、薄く鋭利に鍛えられた刃は最近の新顔と同型だが、馴染んだ氣は弟子にも合うだろう。
しばらく使って返すか、それとも長く持つかどうかは、弟子次第に任せよう。
そう考えつつ、団子を改めて齧る。
皿に串を戻してゆけば、子分に胡桃を割って与える姿が見える。
それに嬉しげに二匹がぴょいと跳ね、弟子の肩上に登って頬擦りしてゆく様を眺め、小さく笑おう。
一人と二匹でそれぞれもぐもぐと、それを眺めながらもう一人で茶を啜り、時間は過ぎゆくのである――。
ご案内:「トゥルネソル家」からラファルさんが去りました。
ご案内:「トゥルネソル家」から影時さんが去りました。
ご案内:「薬屋テント」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 「よしょっ… ぃよいしょっ……!」
王都の空き地に許可を得て、開閉しやすい特別性の大きめなテントをはっていく幼子の姿がひとり。
一生懸命にテントを広げれば、続いて簡素な薬品棚を設置し、四畳半ほどの広さのテント内を薬屋に仕立てていく。
そこは幼子の居住であり、店でもある不思議で愉快で妖しげなテント。
苦くて飲みにくい薬を甘く飲みやすくした、シロップを煮詰めているような甘い香りはお菓子屋さんのよう。
近くを横切る人影があれば、店主とは思えぬあどけなさと小ささの黒髪の子が、裸にシャツ一枚という出で立ちでてとてと歩み寄り、
「いらっしゃいませーっ おくすり、いかがですかっ?」
と元気に挨拶していく。