2024/06/03 のログ
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ご案内:「魔族の国」にタマモさんが現れました。
タマモ > タナール砦を抜けた先、そこに広がるのは、魔族の国。
人の国だけでない、気紛れな少女の行動範囲は、この魔族の国にも及んでいる。
そこらの村から、魔王の住まうどこぞの城にさえ、理由も色々に、姿を現すのだ。

さて、本日は…

「………まぁ、迷うのは、いつもの事、なんじゃがのぅ。
こうも誰にも会わんと、どこにどう行けば何があるのやら、さっぱりじゃ。
せめて、こうした場所でもないと、迷う事この上ない」

はふん、軽い溜息と共に、腕を組む。
そんな少女が佇む、その視線の先にあるものは。
覚えのないどこぞの村か、色々と中を探索したくなるような城か、偶然見つけた洞窟やら遺跡やらか。
ともあれ、それを前にして、どうするかを考えているのだ。

いつものように、適当に突き進み歩いてみて。
丘を抜け、森を抜け、川を抜け…そこに辿り着いた、そんな状態である。

ご案内:「魔族の国」にシルヴァさんが現れました。
ご案内:「魔族の国」からシルヴァさんが去りました。
タマモ > さて、そんな状態から、少女はどう動くのか?
言うまでもない、どう悩もうが、結局は向かって行くのだ。

そうして、向かった先で、どうなったのか。
…まぁ、碌な事なんて、きっとないだろう。

ご案内:「魔族の国」からタマモさんが去りました。
ご案内:「魔族の国」にイェルドさんが現れました。
イェルド > ――魔族の国は広い。

当の住人たる魔族でも、その全てを把握しているものは居ないのではないか?
そのような声がどれだけいるかどうかわからぬ識者、賢者の間で囁かれている。
差し当たっては、自分たちの支配圏内を把握していれば間違いはない。何か足りぬ際は奪えばいい。
そういう片づけ方、ひっくるめ方は成る程。大変魔族らしい。
力こそが全てであるが故に。であるからこそ、物見高くある必要がある。

「……――思ったより進んだとは思いたいが、どうだろうな?フローガ」

そんな魔族の国の一角。深き森の地より出でて、古地図を頼りに西進するほど2日。
地の恵みが枯れ、砂礫が広がり始めた荒野の只中にひとり。否、一騎の騎馬が月明りを浴びる。
巨大な黒馬だ。獰猛に唸る馬体の鞍上に跨る黒銀の鎧姿が外套の内側から何かを取り出し、広げつつ嘯く。
羊皮紙に描かれたそれは地図だ。月明りでは足りぬと指を鳴らし、白い魔力の球を浮かせて。

「オマエの足をオレが甘く見るものか。
 かなり進んだのは間違いは無かろうよ。だが、森から抜けるとこうも様変わりするとはな」

主と仰ぐ鎧姿の若き声に甘く見られたものだ、とでも微かに不満げな嘶きを聞けば、鎧姿が宥めるように鬣を撫でる。
実際、かなりの距離を進んだことだろう。版図たる森は広い。徒歩で抜けるなら数日でも足りるかどうか。
それをショートカットしたような進行速度を出すなら、飛ばぬ以外の手段ではそうそう適うことではないだろう。
己が侍従たる蛮族の女と同様に、昔なじみと言ってもいい愛騎の足には信頼を置く。
知った地であれば、転移魔法ですぐに移動できる。だが、知らぬ土地はこの足で直で赴かなければ、転移魔法の正確さが確保出来ない。
国の主たるものがわざわざ出向くのも、そのためだ。
地図を仕舞い、明かりの球はそのままに前を見る。地図はその内書き換えるが、見えてくる廃墟の影が少し気に掛かる。

イェルド > 発端はここ最近、版図たる森に侵入している何者かを察知したことだ。
森に棲む魔物の様子のおかしさに加え、敷かれた結界の幾つかが断たれているのであれば、気にもなる。
如何なる狙い、如何なる目的によるものだろうか?
敵は幾つも思い当たる。国の中にもある。配下の中に居る魔族達が捲土重来を狙っている可能性もあろう。
遣れるならば遣ってみろ、と常々公言している。其れで終わるならば、己は所詮それまでの器だ。

「こっちの方角までは、冒険に出かけたことはなかったな。……何かあったのか?」

魔族の国も色々ある。冒険者を名乗ってマグメール王国に出入りするが、この地に於いても己は冒険者である。
興亡目まぐるしい土地には、忘れ去られた廃墟の類も少なくない。寧ろ多い。
未知の魔物を捕らえるために向かうことがあれば、宝を求めて赴くこともある。得たものはいずれも力となる。
月の光を受ける廃墟は近づくにつれて、より明瞭に見えてくる。
広い。石造建築の群れ、群立はなまじ堅固に作られている故に、風雨砂塵に洗われてもなお、昔日の名残を思わせる。

「……呪詛の気配は、ないな。亡霊は隠れていそうだが、真逆オレをここに引っ張り出させる算段ではあるまいな?」

言葉を放ちつつ、目を閉じる。少し念じれば魔法で構築された兜が割れ、変形して鎧の襟元に引き込まれる。
緩やかに頭を振れば、兜の中に押し込まれた髪が広がり、濃褐色の長い耳朶にかかる。
それを籠手に包まれた手で払いつつ、如何にもな重々しい気配がないことに目を細める。
狙いの者が踏み込んだ際、術式が成立する類の罠が敷かれている可能性もあるが、その線は薄い。
まだ、暗殺者や襲撃者を廃墟の中に伏せ、標的が踏み込んでくるのを待つ方が、まだ確実性が高いだろう。

そう考えつつ薄く笑い、兜を被りなおさないまま馬体を軽く蹴る。その意を汲んで黒馬がゆっくりと廃墟の中に踏み込んでゆく。