2023/10/09 のログ
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ルージェ > たとえその形をしたものが、身の内に死棘を宿すのだとしても。永遠の停滞の中にあってはただ、穏やかといえる姿。

血の色をした双眸は月明りの中にあってはただ昏い色を呈し、時折光を弾く。

ただ茫洋とその眼差しは庭園を、そして月を見上げ。 


変わらぬ情景を、変わらぬことを貴ぶように淡く笑む。
───それもつかの間、すぐにそれらは何もない表情へと塗り替えられてしまうのだが。

空から花へと視線を戻し。
指先を濡らす雫を滴るまま。浅く指先を花びらの奥に潜らせる。
花の香り立つのと、冷たい花びらの感触をさり、と撫でる。

ご案内:「魔族の国」にバランガさんが現れました。
バランガ > 普段ならばタナール砦が交渉場所になるのが常ではあるが、つい先日タナール砦が人側に陥落
期限までに品を届けなければどのような事情があろうと面倒なことになるのは目に見えている、結局のところ命がかかっているとなればやることは一つ
そんな命からがら、期限までに品を納めると相手は非常に満足したらしい
無事に帰れるようにと与えられた外套のおかげでここまでは無事帰途につけていたのだが―――

「まいったなこりゃ、迷いこんじまったなァ…」

つい先ほどまで見えていた光景に突如生じたのは影絵でできたような城館
魔族の国で起こることにいちいち驚いていられないとはいえ、これほどの転移となれば極々一部、高位に位置する魔族に違いない

「挨拶の一つで見逃してくれるような相手なら助かるが…この外套がどこまで効果があるか、どうかかねェ…」

どのみちタナール砦に向かうにはこのまま進むしかなく、向かう先に人影が見えてくれば緊張から喉を鳴らして

ルージェ > 静謐の中、ただ波紋のように広がる花の香りを楽しんでいた。
死棘の森をどのように抜けたのかしらない。数多徘徊する闇精霊の腕をかいくぐったのはどれほどの魔族の加護がその身に宿っていたのかも。

ただ、その人間が現れたのならば、向けるのは一瞥。

本来人を寄せ付けるような場所ではない。
魔の国の辺境、人の国はさらに遠く。

人も魔も嫌うその城主が何かを呼ぶために労力を割いたことなど一度もなかったが

相手にとって僥倖だったのは少なくとも、飢えていなかったことくらい。

肉食の獣が、獲物を見るに等しい視線を向け。


「────何方」

バランガ > 人の手による加工物、創作物を好む魔族は当人が思うよりも酔狂で、そして何より有能だったのだろう
その恩恵に預かっていること自体には気づいているが、その程度が想像以上であることには気づかぬまま

「おお…っとォ…」

一瞥を向けられただけで防護用に身に着けていた宝玉の一つが塵と化したのを感じた
偶然、で遭遇するにはあまりにも高位の、少なくともこの領域の魔族を見るのはそれ相応に危険を冒す人生でも二度、三度のもの

「…バランガ、っちゅう…宝石職人みてぇなもんじゃ。商談の帰りに…迷い込んじまって…のう」

名を問われれば即座に名を返す、今のところ即座に殺される雰囲気はないが、魔族は猫のように気まぐれだ

(こっぱ魔族やったらどうとでも出来よぉが…こらァあかんあかん…名前聞いたら腰抜かすような大魔族やもしれんわ)

そう思いながらも皓い月明かりに照らされた女の容姿には目を剥いてしまう
人に非ざる美しさ、それに先ほどの緊張とは別の喉を鳴らして

ルージェ > 女は動かない。動く必要を感じない。
ここは揺り籃、その最奥。

他のどんな土地よりも己の肌身のなじむ場所。


こちらの挙措によって何が起こったのかもさして興味はない。卑下も、虚栄も意味はなく。
向けた眼差しは、感情をまだ宿してはいない。

「………そう。何方かを招いたつもりはありませんわ、立ち去ることをお勧めするけれど」

ゾロ、と影の中で何かが蠢く。
この場の木立の影、薔薇の影、あるいは商人自身の影の下で何かが蠢く様な。

月の明かりが皓いから、ならば影もより深く暗く。果てもなく。

バランガ > ぞぞぞっと背筋が寒くなる
元々これ以上寒くなるかというところから、更に寒く感じるのだから大層なものだ

離れているというのに、周囲から何やら蠢くような気配を感じれば
と、と一歩後ろに蹈鞴を踏むようにしたのは危機回避の本能だった

「そいつァ失礼しァしたねえ。こっちとしても、機嫌を損ねかァないんだ、その温情に乗らせて貰ァよ」

少なくともこの一瞬、この瞬間は見逃してもらえる
そうとわかれば一歩動いた足を奇貨にして、そそくさと逃げ出すのだ、一目散に

ご案内:「魔族の国」からバランガさんが去りました。
ルージェ > 「─────」

瞑目。焔が瞬くように血色が一度その色を隠し、再び開かれる。

商人の言葉が耳をくすぐり、消えていった。
こちらもいらぬ軋轢は不要とするならそれで仕舞い。

ず、と影が一瞬波打ち、また深い湖底へと潜るように沈黙した。

ルージェ > つい、と歩き出す。
城の主が、己の庭園のどこを散策しようとも自由。
小言を言う様なものは存在しないし、不埒な存在も今はない。

無防備ともいえる姿はゆらりと、月明かりの下に影を残して。
秋薔薇の香りが、その歩を彩っていた。

ご案内:「魔族の国」からルージェさんが去りました。