2024/10/28 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に影時さんが現れました。
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に宿儺姫さんが現れました。
■影時 > ――このような空気の心地に、覚えがある。思い当たる節がある。
往々にして“この世”から隔絶された領域は、こんな風情がある。雰囲気がある。
それはそうだ。傍から見れば深い深い闇と濃い霧に覆われた山々とは、麓の俗世とは厳密に分けられた“場”のように思える。
深山幽谷に神を見た、感じたものがあるならば、そこは聖域となろう。
だが、そうでない真逆の場とは、此れは如何に。さながら生命の木なるものの真逆かの如く。
「眺めは良いが、この饐えたようとも澱んだような感じは……なン、か覚えがあるんだよな。さて……」
シェンヤンの地の遥か当方、八つの山が幾何学的に連なる山々の麓。人呼んで八卦山。
中天に日が昇った刻限であっても神秘的な風景でありつつ、異界、危険地帯と囁かれる場を独り行く姿が嘯く。
妖仙悪仙、妖怪邪怪が跋扈するとされるこの山から下りてくるものが、人でなければ、妖し怪かしのヒトデナシ。
そんな死地の如く噂される麓から、登り進むものは帝の大命も生命も知らずの酔狂者。しかもヨソモノときたものだ。
襟巻を口元を覆う覆面とした姿の男は、纏う羽織を強い風に翻しながら、一見のんびりと。見回す眼は鋭く進む。
襟巻の端から顔と尻尾を出し、おっかなびっくりと周囲を見回す風情の小動物もまた然り。そんな彼らが道案内とするのは……
「……――そろそろ、と思うが、はて、ぉぅい、居るか?」
ばさ、ばさ、と。風を切って進む一羽の鷹であった。もちろん野生のものではない。術で紡いだモノだ。
術符が変じたそれは、片割れとなる術符の存在を目指して進む性質を持つ。
出立前と道中、数度声をかけておいたが、聴いてくれていると良いが。そう思いつつ、待ち人を探して声を放つ。
進む先はいよいよ、なだらかな道から険しさを感じさせる奇岩の類まで見えてくる。
■宿儺姫 >
探し人ならぬ、探し鬼は切り立った岩場にて山領を眺めていた
暗雲渦巻く、と言っても過言でない、人知を超えた妖千の住処となる遥か山の頂を見上げる
いずれ遠き昔
力に荒くれ、より強き者を求め暴れ倒した鬼姫がそうして臨んでいた頃の様に
「──、おぉ。本当にやって来おった」
身に羽織る襤褸布に適当に突っ込んだ札からいずれか言葉は伝わっていたが、
この禍々しき霊山とも魔山とも呼ばれる場所に人の身で単身やって来るとは
…単身、とはいえいつものようにお供な隠れついてきているのだろうが
岩場の上から視線を落とす女鬼はどれ、と腰をあげて跳び、降り立つ。
「まぁ我と殴り合う様な人間なれば麓を歩くなど容易いことか、呵呵」
■影時 > 捜し人、尋ね人はヒトではない。鬼である。ともあれ、だが探している対象であるには変わりはない。
目的地の情報は都で散々聞いてきた。補足と裏付けを求め、王宮の書庫にも忍び込んできた。
初見にして流儀を知らぬ地、領域とならば、そこでは己はただの初心者でしかない。
万夫不当の益荒男であっても、斯様な有様となれば、よちよち歩きが出来る赤子扱いとなればまだ良い方、かもしれない。
己が経験と技と体質、そしてあとは運。それらがどこまで通じるかは、神仙も与り知らぬ。
「おうとも……、来たぞ。しかし、聞きしに勝るとはまさにこのこと。
戦乱で散々荒れ果て、陰の氣を蓄えた都に神秘の地をさかしまにして混ぜ込んだら、こンな塩梅になるのかね、全く」
声を挙げれば、応えたのか。それとも隠さぬ気配と足音、ついでに鷹の羽音に気づいたのか。
足を止め、岩場の方を見遣れば降り立ってくる姿に、いよう、と片手を挙げて挨拶としてみせよう。
肩上に留まる二匹の毛玉、シマリスとモモンガもまた然り。
いよいよ邪気が濃くなるようであれば隠した方が良いだろうが、この辺りの標高、地勢ならばまだ今はまだ平静でいられる。
抱いた感想を述べていれば、先導する鷹が雌鬼の顔の近くまで跳び、何か催促したげに嘴を上下させる。
片割れの符を回収したいらしい。銜えさせればそのままそれを携えて、鷹は術者の方に戻るだろう。
■宿儺姫 >
飛んできた鷹
何を催促されているのか、鬼には今ひとつ伝わらない
が、胸元の襤褸布から札の一部が覗いていれば、それを咥えて主の下へと戻ることとなろう
それを眺め、なるほどそういうことかと漸く納得する女鬼である
「くく、帝都で有意義な話は聞けたか?
この山の在り様は、我が幾百の眠りから覚めてもさして変わらぬ威容であるからな」
「かつては天上に住まう者共に喧嘩を引っ掛けてやろうと息巻いてもいたものだが──」
男に向けていた視線を、再び山頂へと巡らせる
そこには単純な力のみでは遥か及ばぬ壁がある──何百年を生きた鬼などよりも遥かに長寿、あるいは永命の者共の住処だ
「──まァ貴様がかの仙窟に挑もうというのであればそれも面白いが。
我はその入口までしか案内はできぬぞ? 幾度殴り込もうとも門前で追い返されてしまっておるからな」
からと嗤い、さて…と向き直れば。
「我がおれば麓にいるうちは妖も襲ってはこぬだろうが、さて──」
「このまま山を登るか、それとも何処か見たい場所でもあるか。
ある程度は帝都で情報を得てきたのであろう?」
■影時 > 術で紡いだ鷲は術者の声を通すチカラはあるが、自発的に喋る類のものではない。
だが、片割れの持ち主の胸元のボロ布から、目的のものが覗いていればそれをひょいと咥えみせる。
舞い上がり、くるりと一礼でもするように回って見せて飛ぶ先は、術者が挙げる片腕の上。
そこに止まれば、ぼふっと弾けるような音と共に符の姿に戻る。
掴み取る二枚の符は、術者の手の中で不意に燃え出し、灰となって散る。
「――多少は、ってトコかねえ。取り敢えずはお前さんらに関係してそうな辺りから、な。
数十年位前のハナシかと思っていたが、それよりもっと前とは思っちゃいなかったぞ」
暫く滞在した都で先に仕入れたのは、「八卦山に棲む」「雌鬼の」「話」。
その伝承を探すこと自体は、不可能な話ではなかった。想像以上に名の通る、勇名を馳せた伝承だったらしい。
であれば、その関係者の足取り、子孫の類まで探せるかとは思ったが、それが限界だった。
わざと記録に残していないのか、記録されていても皇城の奥で厳重に管理されている類の事項だったのか。
記録を容易く辿れるなら、縁と因果を辿って呪殺やら怨念が伝い来ることなどを厭ったのか否か。
「何かとぞっとしねぇ話ばかりここには溢れてるようだが、仙窟やら仙洞に殴り込んでみるのは――愉しそうだよなあ。
名を挙げるつもりはなくとも、己がチカラが通じるかどうかは、試してみたくはある、が」
雌鬼が山頂の辺りに目を遣る。それを追うように、男と二匹の毛玉が高みを仰ぐ。
腕力が通じなければ他の武力、術力などが通じるのか否か。試してみたくはある。そう思ってしまうのは、悪い癖だ。
「まずは、前に言った通りだ。お前さんらが住まってたトコまで登ってみてェ。
その近くにその仙堀とやらがあるなら、おおよその位置を教えてくれや。
殴り込むかはどうかはさておき、いずれ行ってみる場所の検討はつけておきたい。
……噂の悪仙妖仙の端くれのツラとやらを、拝んでみたくてなァ」
そう、悪い癖だ。肩上の毛玉たちが揃って肩を竦め、風に乗って来る悪風にそわそわと身を震わす。
その仕草を見れば肩上に手を伸ばそう。手首に乗っかってくる二匹が居心地が悪そうにしてるのは、良い傾向ではない。
羽織の下の雑嚢の蓋を開け、彼らをひとまず退避させておこう。
仮にこの先、何か悪いことが、不吉なことがあっても、こうしておけば彼らの安全は保障できる。
■宿儺姫 >
「おっと…言っていなかったか。
我がこの山の黒鬼が里で暴れまわっていたのは数百年は前の話なのだぞ」
笑い飛ばすように声を張る
定命の者からすればその物差し自体がおかしなものか、と
「人の里には踏み入ったが、帝都まで殴り込んだことはなかったからのう。
未だ名が残っているとあらば、帝都の道士どもには気取られているやもしれんな」
己が岩戸の封印から解き放たれたことを
──もっとも、この鬼が行動範囲を王国にまで広げていることまではそうそう知られていないだろうが
仙窟へ殴り込むことをまんざらでもなさげに離す様子には、種こそ違えどこの男に自身と似たものを感じる
本来捕食の対象でしかない人間を相手に言葉を交わし、こうして山の案内までも
無論、男が相応の力を持つ存在である…ということもあろうが、いわば…類友なのである
「良き。ちと獣道を征くことになるぞ。──遅れずに尾いてまいれよ」
そういうと、妙に意地の悪気な笑みを浮かべた。…ように見える
牝鬼の悪い部分が出ている
何をするにしてもどこか勝負事を仕掛けようとしてしまう、悪癖
奔るぞ、と一言を残せば、まるぜ黒き疾風が如く、荒れた野山の道を疾走る
時折後方を確認こそすれど、まともに山道として機能していない山道を気にせず駆ける様はまさに人外
もっとも、こういった悪路を征くのは男も得意とするところ、かもしれないが──
■影時 > 「おおよ、聞いちゃなかったなァ。
――とはいえ、聞かなかったのも悪かったか。俺にとっては最近のこと過ぎて考えが及ばなかった」
言わなかった方が悪いのか。聞かなかった方が悪いのか。どちらが悪いとすることに、然程意味はない。
強敵に戦えることが楽しい。喜びがある。そこに相手の過去を深く追う必要性はない。
いやぁ全く、と。柿渋色の羽織に包まれた両肩を竦め、くつくつと笑おう。
時間経過の単位の違いとは、其処に足を踏み入りかけている生き物にはまだまだ分かりづらい尺度でもある。
「殴りこまなくて正解、だったろうなァ。
町は兎も角、皇城は恐らく奥に行けば行くだけ、お前さんも含めた手合いの力が削がれる。
……聞き込みにあたっては、宿儺。
お前さんの名は極力出さんように務めたが、巷の道士がどれだけ耳ざといか、だなぁ」
此れは俺の見立てだが、と。先日皇城に忍び込んだ際の所見を述べる。
ただ単純に結界を敷いた、とは違う何かももしかしたら在るかもしれない。時間が許すならもう少し調べたい処だ。
だが、長居が過ぎると本業に差し障りがある。
持ち帰る情報は雇い主の商売にも参考になるとは思うが、本業をおろそかにするのは色々と問題がある。世知辛いものだ。
時間を割けるなら、この御山の探索にも腰を据えられるとは思うが、それも移動手段を確立させなければいけないか。
「承知。……なーに、それ位なら慣れたもんだ。追い抜いたらすまんな?」
さて。牝鬼が、笑って奔る。黒鬼の名の如きものが風を巻いて走り出す。
おお速い。だが、忍びたるもの追い縋れずして如何とする。
そう言わんばかりに身を低くした男が、た、と僅かな踏み込みと共に初速を得て、荒れに荒れた路を逆巻くように駆け出す。
獲物を追う獣めいた所作は気配は密やかに。
死角から忍び込み、急襲する刃の如く速やかで疾い。ひた、とその背に追い縋るかの如く。
付かず離れずに肉薄して、抜かぬのは、道を知ることで一歩先を知る鬼の領分故にか。
■宿儺姫 >
面白い
背を前傾に、更に速度をあげる
こんなものにまで負けん気が強いのはらしいといえばらしいものだが
背後の男のぴたりと肉薄する気配は遠ざからず、そこにある
「くく、我の脚についてくるとは、やるのう」
そこは素直に褒めよう
悪路も悪路だというのに
獣でもないというに、こういった道を征くのに慣れているのか
そんな調子で突っ走っていれば、やがて少し開けた場所へと到着する
荒れ地には違いないが、崩れた荒屋などが点在する集落とも思えるような、そんな場所
そこへと踏み込めば、牝鬼はようやくその足を止める
「ふむ、しばらくぶりに訪れたがまったく何一つ、変わっておらんな」
腕を組み、特に感慨もなくそう吐き捨てる
広がる光景は、廃墟と呼んで差し支えない
少なくともあらゆるものが打ち捨てられ数十年以上
建物も崩れてこそいるが、過酷な環境ゆえだろう、破壊されたような痕跡ではない
「我が封じられるより前は此処に黒鬼の集落が在った」
下里より人を攫い、奪い、喰らう悪鬼どもの住まう…
帝都に文献があったならば、そう記される鬼の里