2024/04/14 のログ
宿儺姫 >  
「どうせ退屈なあ奴らは外界を見下ろし全てを見ておろうからな」

仙屈に住まうだろう邪仙、悪仙。
数百年など軽く生きている者ばかり。この集落の鬼…同胞が何処へ消えたかくらいは存じ上げているだろう。

「──気は進まんが、連中の門扉を叩くのも一つの手か…」

封仙宮の連中とまともに話が出来るとも思わないが、
自分の封印を解いたのも連中の戯れである可能性もある。

「マジで気が進まんのじゃがな」

力技が通じぬような相手も多いし、そもそも力でも及ばぬ者すらいるだろう。
何より妙に達観し人を喰ったような高みからの物言いをする者が多く、癪に触る…。
というのが、はるか彼方いにしえの時代の、宿儺から見た封仙宮の印象である。

いつまでもここにいても仕方がない、結局として同胞の鬼達が何処へと失せたか…それとも絶えたかはっきりとしたことはわからず…、

宿儺姫 >  
かつて鬼の集落だった廃墟の中に佇む女鬼。
王国で出会った、異なれど鬼である者との出逢いを思い出せば…
妙にその邂逅を嬉しんだのは無意識にかつての同胞を思い出していた故か。

感傷に浸るなどらしくもないが、同時に思い出したことも多々あった。
無論、同族同胞のことも、この集落のこともであるが。

なぜひたむきに強者に比武を、死合うことを望むのか。
己の肉体のもつ力という一つの要素のある種固執しているからだろう、と。
適当に済ませ、その理由を考えることもなかったが。

王国でいくつか喫した敗けのうちの一つ。
強力な魔法を扱う魔王の直属、あれに言われた言葉がある。

それは死を受け入れるのか、という問いかけ。

争い、殴り合い、死闘の果てにその結果として死を迎える。
それ自体に何もおかしいことはないと思っていtが女鬼だったが、それには理由があった。

宿儺姫 >  
『恐怖』がない。
傷つくこと、倒されること、敗北すること、殺されること。
それらに恐怖することがない故に、闘争に歓喜し命を惜しむこともない。
戦狂い、と言われればその通り。
しかしそんな者でも恐怖を知らない者は一握り──。

この集落が同族ごと滅びたのであれば、
滅ぼした者は自身に恐怖を刻む程の力を見せてくれるだろうか。

「──探し歩いてみるのも一興か」

その件で山頂の宮殿の門扉を蹴破り、邪仙に喧嘩を売ってみるのも良い。
山を下り、帝国の街でひと暴れしてやるのも良いだろう。

最盛の記憶と肉体を取り戻した女鬼は無目的に闘争を望む戦狂いではなく──。
己の知らぬ『恐怖』を与えうる強者、そして何処かに消えた同族を探すという新たな目的を得るに至る。

宿儺姫 >  
徐ろに女鬼は己を封じていた巨岩の残骸がある地点を歩み戻る。
そして己の背丈程もあるもっとも巨大な破片の前に立ち──。

「ぐ、ぬっっ…!!!」

欠片ですら重みを感じるそれを、全身を奮い立たせ持ち上げる。
そのまま、鈍重となった足音を響かせながら、向かう先は集落の廃墟。

その中央、枯れた井戸の前に立ち──。

「ふっ…!」

地響きを周囲に響かせながら、枯れ井戸の上へとその岩片を突き立て、そして───。

右腕を振り上げ、その岩に己の爪痕をつけて見せる。

宿儺姫 >  
集落の廃墟、その中央に新たに突き立てられた石碑。
その巨大な岩片につけられた真新しい鬼の爪痕──。

「呵々。まぁ我が同族の誰かがこれを見れば生き残りがおることがなんとなーく、わかろう」

時折様子を見に来てみるか、と満足げに鬼は嗤い、踵を返す。
向かう先はシェンヤンの帝都か、それとも国境を越え王国か。
更にその先、魔族の国か。

己の恐怖を与え得る強者を求め、一匹の女鬼は再び八卦の山を降りる───。

ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」から宿儺姫さんが去りました。