帝国の遥か東に存在する八つの山が八角形の形に連なる「八卦山」とその周囲は、現在一種の異界・仙界と化している。
深山幽谷、水墨画のような世界が広がっている。
「封仙宮」と呼ばれる妖仙・邪仙の集合体の拠点であり、基本的には帝国を転覆させるための陰謀を巡らせている場所と言われる。
陰と陽のバランスが崩れているため、八卦山やその周囲には「妖怪」の出現が相次いでおり、「道士」などでなければ周囲に近づくことは危険である。
帝国内の主神である「三君」の影響もここではほぼ消えてしまっている。
深い闇と霧のため外から「八卦山」内部の様子はほとんどわからないが、「八卦山」の中の異界化は更に深刻なものになっている。
「道士」であっても何の準備をせずに訪れれば、その邪気によって汚染されてしまう可能性がある。
八卦山の最高峰には「乾坤宮」「渾沌窟」と呼ばれる仙窟・宮殿が存在している。
そこは「封仙宮」の面々が会議などを行ったり、頽廃的な行為をしたりする場所である。
「乾坤宮」「渾沌窟」は「封仙宮」の長とされる伝説的な妖仙、「渾沌道人」の住まいでもある。
ただし、「渾沌道人」その人が姿を顕すことはめったにない。
「渾沌道人」は妖仙や妖怪たちが八卦山で何を行っても咎めることはなく、全て「それもまた大道なり」と許すとされる。
その他にも「八卦山」内外には色々な場所が存在し、それぞれの妖仙や妖怪の住処、捕らえた帝国の民から陽気などを吸い取るための「精窟」、地下の泉と呼ばれる「黄泉(コウセン)」などが存在する。
何にせよ、普通の人間では近づくことはまずない場所であるが、妖仙の気まぐれで「八卦山」への穴が開かれることがあり、迷い込んでしまう者もいる。
帝国の脅威である「封仙宮」のことや「八卦山」のことは一般民衆には秘匿されているものの、情報統制が近年取れなくなってきており、一般民衆にもその情報が伝わり始めている。
これまで何度も帝国の「道士」達による八卦山攻めが行われたものの、成功した例は一度もない。
ここで生まれた妖怪は近隣の村などを襲う場合もあるため、道士や冒険者のような稼業の者たちは依頼を受けて、これを打ち倒すことも多く、その姿はよく見られる。
※八卦山の内部や周辺としてご利用ください。「封仙宮」の設定などはシェンヤン帝国の設定の当該箇所を御覧ください。
http://mag-mell.undo.jp/world6.html
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Time:12:56:31 更新
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」から宿儺姫さんが去りました。
■宿儺姫 >
集落の廃墟、その中央に新たに突き立てられた石碑。
その巨大な岩片につけられた真新しい鬼の爪痕──。
「呵々。まぁ我が同族の誰かがこれを見れば生き残りがおることがなんとなーく、わかろう」
時折様子を見に来てみるか、と満足げに鬼は嗤い、踵を返す。
向かう先はシェンヤンの帝都か、それとも国境を越え王国か。
更にその先、魔族の国か。
己の恐怖を与え得る強者を求め、一匹の女鬼は再び八卦の山を降りる───。
■宿儺姫 >
徐ろに女鬼は己を封じていた巨岩の残骸がある地点を歩み戻る。
そして己の背丈程もあるもっとも巨大な破片の前に立ち──。
「ぐ、ぬっっ…!!!」
欠片ですら重みを感じるそれを、全身を奮い立たせ持ち上げる。
そのまま、鈍重となった足音を響かせながら、向かう先は集落の廃墟。
その中央、枯れた井戸の前に立ち──。
「ふっ…!」
地響きを周囲に響かせながら、枯れ井戸の上へとその岩片を突き立て、そして───。
右腕を振り上げ、その岩に己の爪痕をつけて見せる。
■宿儺姫 >
『恐怖』がない。
傷つくこと、倒されること、敗北すること、殺されること。
それらに恐怖することがない故に、闘争に歓喜し命を惜しむこともない。
戦狂い、と言われればその通り。
しかしそんな者でも恐怖を知らない者は一握り──。
この集落が同族ごと滅びたのであれば、
滅ぼした者は自身に恐怖を刻む程の力を見せてくれるだろうか。
「──探し歩いてみるのも一興か」
その件で山頂の宮殿の門扉を蹴破り、邪仙に喧嘩を売ってみるのも良い。
山を下り、帝国の街でひと暴れしてやるのも良いだろう。
最盛の記憶と肉体を取り戻した女鬼は無目的に闘争を望む戦狂いではなく──。
己の知らぬ『恐怖』を与えうる強者、そして何処かに消えた同族を探すという新たな目的を得るに至る。
■宿儺姫 >
かつて鬼の集落だった廃墟の中に佇む女鬼。
王国で出会った、異なれど鬼である者との出逢いを思い出せば…
妙にその邂逅を嬉しんだのは無意識にかつての同胞を思い出していた故か。
感傷に浸るなどらしくもないが、同時に思い出したことも多々あった。
無論、同族同胞のことも、この集落のこともであるが。
なぜひたむきに強者に比武を、死合うことを望むのか。
己の肉体のもつ力という一つの要素のある種固執しているからだろう、と。
適当に済ませ、その理由を考えることもなかったが。
王国でいくつか喫した敗けのうちの一つ。
強力な魔法を扱う魔王の直属、あれに言われた言葉がある。
それは死を受け入れるのか、という問いかけ。
争い、殴り合い、死闘の果てにその結果として死を迎える。
それ自体に何もおかしいことはないと思っていtが女鬼だったが、それには理由があった。
■宿儺姫 >
「どうせ退屈なあ奴らは外界を見下ろし全てを見ておろうからな」
仙屈に住まうだろう邪仙、悪仙。
数百年など軽く生きている者ばかり。この集落の鬼…同胞が何処へ消えたかくらいは存じ上げているだろう。
「──気は進まんが、連中の門扉を叩くのも一つの手か…」
封仙宮の連中とまともに話が出来るとも思わないが、
自分の封印を解いたのも連中の戯れである可能性もある。
「マジで気が進まんのじゃがな」
力技が通じぬような相手も多いし、そもそも力でも及ばぬ者すらいるだろう。
何より妙に達観し人を喰ったような高みからの物言いをする者が多く、癪に触る…。
というのが、はるか彼方いにしえの時代の、宿儺から見た封仙宮の印象である。
いつまでもここにいても仕方がない、結局として同胞の鬼達が何処へと失せたか…それとも絶えたかはっきりとしたことはわからず…、
■宿儺姫 >
家屋は既に家屋としての機能を果たしていない程に崩れてしまっている。
「小難しいことはわからんが、どれだけ時間が建てばこうなる…?」
自分が封じられていた数百年の時間とはそれほど長い時間だったのか。
しかし、だとすればこれほど崩壊するのは…。
「──我がいなくなり、それほど時間が経たずに滅んだのか」
ぽつりとそう零す。
で、あるならば…自然の流れで絶えたということではあるまいと。
なれゔば自身を封じた道士達が、殺戮の限りを尽くしたか。
簡単に朽ちぬであろう石造りの階段や石壁、石畳までが崩壊しているのも人の手による破壊であると納得はできる。
道士達に滅ぼされたにしろ
雌がいなくなり絶えたにしろ
天頂に佇む邪仙どもの戯れに蹂躙されたにしろ…
自分がいなくなったために…と考えればさしもの雌鬼も厭な感情が沸きはじめる。
「当時を知る者。なぞもそうそうは出逢えぬか。それこそ…」
気に入らない連中、しかいるまい。
外に出ると、邪仙どもが住まう山頂を睨めあげる。
■宿儺姫 >
「まぁ、こんなものじゃろうな……」
集落の中心…枯れ井戸にどっかりと腰を降ろし、一息を吐く。
考えてみてもわからぬものはわからぬし、もしかしたら誰ぞか同胞の一匹でも残っているかと期待したが。
人っ子一人、ではなく鬼っ子一人とていなさそうな廃墟に、女鬼は残念そうな表情を浮かべる。
力と闘争にしか興味がないといえど、記憶の中の村がこの有様では感傷がまるでないとはゆかず。
せめてこうなった顛末くらいは知りたかったものだが、と腰元に吊るした古徳利を掴みあげ、口元へと運ぶ。
中身は王国にて知り合った者から譲り受けた酒。
この場、帝国の山で呑むには些か味わいの違うものではあったが、
それも余計にこの場所の虚しさを強調する味に思えてしまう。
しかし、そこで気付くのだ。
ただ朽ちたにしては、石垣や石畳までもこうまで崩れ去るものかと。
思い立った鬼は立ち上がり、まだ僅かながらも原型を留めている集落の住居だったものへと足を踏み入れてゆく。
■宿儺姫 >
大きな集落ではない。
当時にいた鬼の数も数十といったところ。
「ううむ。これは…」
かつて、といっても数百年前の記憶を頼りに足を進めていた女鬼が立ち止まる。
建物は朽ち果て、村という様相はとても成していない。
「完全に廃墟じゃな……」
当時は何やらを祀る社やら、でかい屋敷も在った気がするが、
最早そのどれもこれもがボロボロで原型を留めていない。
「打ち捨てられ、朽ちたか。それとも」
やはり、何者かに滅ぼされたか。
山頂を見やる。…見下ろし、集落の顛末を見ていた妖仙どももいるのだろうか。
…連中が戯れに滅ぼした…などという線も在るのが面白くないところではあるが。
しかしそれも弱肉強食なればこそ、劣る者は例え鬼であろうが喰われるのみ。そうだったとしてもそこに遺恨は生まれない。
■宿儺姫 >
「…しっかしあれだけおった鬼どもは何処へいったのやら。
たかだか数百年で絶えるでもあるまいに……。」
いざ記憶がしっかり戻ってみれば、同胞が誰一人残っていないというのは寂しいものである。
人里から奪った酒での酒宴、人を喰らうという悪徳が当然と在った…人から見れば忌むべき集落ではあったが。
女鬼からしてみれば悪い記憶ではない。
何処かへと移り住んだのであればそれはそれで良いのだが。
絶えてしまったとあれば、雌である自分がいなくなったせいか、とも思える。
砕けた巨岩の欠片をパラパラと足元に落とし、踵を返す。
向かう先は、かつて在った人喰い鬼の集落の中心部…八卦山の峠の奥である
■宿儺姫 >
八卦山は広く、過去に鬼の集落があったこの峠はほんの一角である。
鬼などよりも遥かに狡猾で悪辣な邪仙どもはなんとかかんとかと呼ばれ、山の最高峰の仙窟や宮殿に住まうという、
ただ力ばかりの女鬼にとって正直上から見下されているようで連中のことは好かぬものであったが、
戯れに自分の封印を破れるような力を持つ者と考えると、どうあっても連中が頭を過る。
「…一度踏み込んでみるかのう。頂近くまで」
不透明ではあるがもし封印を破壊した者がそやつらであるならば…、
理由の善悪問わず、酒の一つもくれてやれねばなるまい。
そして改めて、悪しき理由であれば──。
「封仙宮の邪仙どもの仕業であれば、であるがな」
手にした巨岩の欠片にメキメキと力を籠め、強烈な音を立てそれを容易く砕く。
最盛期の肉体と力を取り戻した今であれば多少なりは連中の術にも抗えるか。
…こと剛力というという点だけに限ればこの山の鬼、雄も含め自分に勝てる者は当時はいなかった。
■宿儺姫 >
同胞、つまりは自分を鬼姫と祀り上げた同族の鬼やその子孫の仕業ならばあの場に誰も残っていないわけがない。
では悪仙や他の悪妖の仕業か。
それはそれで、ではなぜそうしたのか。
封印の効力が切れ自然に砕けたのではない。
故に封印の効力がなくなるまでに時間がかかり、過去の一部の記憶と最盛期の力を取り戻すのに時間がかかった。
…それで漸く、自身が意図的に封印から復活させられたのだということが理解ったのだ。
「道士ども…ではあるまいな。
わざわざ我を起こす必要が何処にもあるまい」
数百年前の話が残っていたとて、人喰らいの鬼をわざわざ呼び起こし放置する必要はあるまいと。
足元に転がる砕けた碑石の大きな欠片を拾い上げ、眺める。
それには未だ封印の力が残されているのか、手にすると肉体に強力な重力がかかったような感覚を覚える──。
■宿儺姫 >
言われてみればなぜ突然に巨岩は砕けたのか。
落雷に打たれた、にしてもあたりには他に落雷の痕跡などないではないかと。
「何者かが作為的に我を覚醒めさせた、にしても誰が…という話になるしのう」
封印が解け、眠りから覚めた時には、古に鬼族が跋扈していた集落は既になく、同胞の姿もなかった。
深く考えず下山してしまったが、何処かへと移り住んだか、あるいは…。
「──シェンヤンの道士どもに滅ぼされたなら、言い伝えられておるか」
ううむ、と考えるのが苦手な鬼は不得意な思案の巡らせにガリガリと亜麻色の髪を引っ掻く。
ふとした切欠で戻った完全なる過去の記憶。
自身を封印していた巨大な碑石を砕いた者の存在が気になり、一路王国から帝国へ。
しかしその碑石の残骸を見てもいまいち、何かが他に残されているわけでもなく。
■宿儺姫 >
かつての記憶と力を取り戻した折、いくつか気になったことが在る。
取り戻す切欠を与えてくれたあの者にはいずれシェンヤンの酒の一つもくれてやらねばなるまいか。
そう思いつつ野山を早駆けに、自身が生まれそして封印されていた地へと戻ってきたのは一匹の雌鬼。
広大な八卦山のほんの一角にすぎない峠、かつては鬼と呼ばれる悪妖が跋扈していた一部エリアにて。
女鬼は大きく砕けた巨岩の前で訝しげに腕を組み、眉を顰めていた。
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に宿儺姫さんが現れました。