2024/10/27 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「帝都シェンヤン」」に影時さんが現れました。
影時 > ――こんなものか、とは思わない。同じ幸運が二度も続くとも、思うまい。

堅牢無比の難所に忍び込もうとする際、思ったよりも容易く行けた時にこそ、油断が生じる。
然るべき時、己が昂りを抑えきれないものは忍びとして不出来過ぎる。
いつものことでは?そういう野暮はなしにしてほしい。だが、同時に幾つか気になるものも無いわけではない。

何せここは大帝国「シェンヤン」の王城、“皇城”である。
最奥は如何にもな兵士、武人、道士たちが守護を固めており、尋常な手段では進入を果たせまい。
悪意、悪心を抱いている手合いであれば、そもそも近づくことすら躊躇わせるほどの何か、を予感する。直感させる。
では、その外輪外周、または政庁の常として人が多く出入りしうる場所はどうだろうか?
それもまた本来ならば、難しい。否、如何に覚えがあるものであっても、退けられてしまいかねない。
だが、夜分となれば、幾らか緩むのもあるのか。いいや、そんな筈はない。だが、それでもなお、這入れるのは。

「……――いかにもカチカチに見えて、何かあンのかねぇこの国も」

夜の皇城、大きな書物庫と呼べる部屋にて、ぽつりと。慨嘆する声がひとつ零れて漏れる。
城内を巡回する道士、または武芸者か。或いはそれに扮したつもりか。
黒い道服の上下に身を包んだ男が、高い身の丈ほどもある書棚に向かいつつ、手にした糸綴じの本を捲りつつぼやく。
史書らしき書が並ぶ場に立つ姿の立ち振る舞いだけは、いかにも出入りに慣れたらしきもの。
擦れ違うものがあれば気配を柔らかく潜め隠し、貴人らしきものがあれば、手を隠し礼なぞしてみせて、尤もらしく振る舞う。
そうやって目的のものがあれば頁を開き、無ければどうしたことか、と首をかしげる。

影時 > 本来ならここまで危険を冒すつもりはなかった。この位は、城下町で聞き込みと探索をしていれば集められるだろう、とも。
だが、知れば知る程、探せば探す程気に掛かるものも幾つかあった。
そうとなれば、己が興味のすべてを満たし得る場所は何処にあるだろう?
高名な道士の邸宅? それもいい。だが、国軍を動かすような記録まで網羅しているとは思うまい。
勇名な武人の屋敷? こまめに日記でもつけてくれていれば良いが、ここ最近の出来事でもあるまい。何より、勘が冴えている手合いは厄介だ。
国となれば、軍を動かしたなら何がしかの記録も残るだろう。
公的な記録として昨今まで伏せられていた場所への出征の記録を残したくはない、かもしれないが、ぼかし伏せた形であろうとも。

(……悪妖、とやら、とか言ったか。こういう場所にも出没するようになったとなると、……まァ、色々備えもされてそうだが)

城内の人の流れ、動き、出入りの傾向は数日を経て確かめた。
近日にでも次の目的地に向かうとなれば、より知っておきたい情報はより深く網羅しておきたい。把握しておきたい。
最近聞いた悪妖とやらが例えば、宝や美女を欲するなら、己が欲しいのはそんな別のもの。
だが、それもこの城の守り手たちとすれば宝のようなものだろうが、目ぼしいものがあれば見て覚えるだけだ。奪うより有情であろう?

「なンて思うのは良いが、……はてさて。この辺りに置いておいても差し支えない範囲、みてぇな扱いかねえこりゃ」

欲しいのは八卦山なる地での出兵、出征の記録。武名を挙げたもの、要注意とされうる悪鬼やら悪仙なるものの情報。
そう、仙人である。仙人なるものが居る、在ると聞くのだ。龍なるモノも聞いた時には驚いたが、此れもまた気になるものだ。
市井で聞ける限り、知り得る限りは知り得たが、御伽噺よろしく脚色されたもの、尾鰭がついたものも少なくない。
だから、答え合わせが出来るにたるものがあるか?とも思ったが、情報の扱いに心得たものもこの国にちゃんと居るのだろう。
欲しいものがいまいち見当たらない。見つからない。場所の見当違いか、それともより厳重な扱いをされている場所にあるのか。

(……在るとした場合、巻物の形だったら厄介だなぁ……)

あれは目を通すなら兎も角、広げるにあたりそれなりの場所が要る。
あり得そうな記録媒体の予感に苦笑しつつ、ぺらぺらと書面を捲ってざっと掻い摘む。拾い読む。
目的の情報が無くとも、書を戻す際は慎重に。元に在った通りにそのままになるように、そうっと戻す。