北方の大帝国「シェンヤン」の都。この都の名前が国名となっている。
大帝国の都に相応しい大規模な都市であり、王国の王都よりも巨大で、絢爛さはどこの国をも凌ぐとも言われる。
王都とは全く異なる文化様式、建築様式を保持しており、現実の世界で言えば東洋風、特に中国風の色彩が強い。
ただ、王都など諸国の文化も流入しているため、どこかオリエンタルな雰囲気も垣間見られる。
皇城、民家、飯店、道観・寺院、その他様々な施設が並ぶ繁栄の都。その国力の大きさを示している。

都城制・条坊制の都であり、都は四方を城壁に囲まれた正方形の形であり、幾つもの通りが碁盤の目のように交差している。
貧民地区を除いて、綿密に区画整備がなされており、都市計画に基づいて作られた都である。現実でいう唐の「長安城」や日本の「平安京」などに近い。
街の東西南北にそれぞれ巨大な門があり、東に「青龍門(地門)」、南に「朱雀門(天門)」、西の「白虎門(人門)」、北の「玄武門」とそれぞれ名前がつけられている。カッコ内は別称。

都の最奥には「始皇」や皇族が住み、政治の舞台であると同時に後宮も置かれた「皇城」が鎮座している。諸官庁もここに置かれる。
龍をあしらった装飾が主の、絢爛にして堅牢の宮殿であり、何人もの兵士や道士が守っているため、不法な侵入はほぼできない。
できたとしても即座に気づかれてしまうだろう。皇城は帝国の主神の加護が最も強い場所でもある。霊的防御は最大規模。
妖怪・妖仙や魔族が入り込めないのはそのためである。入りこめたとしてもその力は大幅に軽減されてしまう。
ただし、「始皇」の病臥の後、内部での権力闘争などが激化しており、敗者とされた弱者が弄ばれることも珍しくなく、そのための部屋なども地下に存在している。
破壊のようなことはまずできないものの、良からぬ企みを囁くために皇城に妖仙などが入り込むことはあり、権力闘争に一枚噛んでいるということも増えてきている。
強大な力さえ使わなければ、発見されることも少なくなってきているという。

都を縦半分に両断するように伸びた、帝都で最も大きい通りは「黄龍大路」と呼ばれ、南の「朱雀門」に接続している。
黄龍大路の由来は、皇城の正門である「黄龍門」から来ている。この「黄龍門」から伸びる通りが「黄龍大路」である。

この黄龍大路を境目にして、都は大きく二つに区分されている。
東側は「天都」と呼ばれ、西側は「地都」と呼ばれる。主に「天都」に富裕層や貴族、官人が住み、「地都」に平民、貧民が住んでいる。これは制度として決まっているわけではない。
「地都」の端は貧民街となっており、区画整備も進んでおらず、無秩序な建築が並び、犯罪の横行する危険な地区。娼館なども立ち並ぶ。
現在はある種の薬物が貧民街に蔓延しており、頽廃は加速度的に進んでいる。

「天都」「地都」ともに毎日「市」が開かれており、様々なものがそこで売られる。当然奴隷となった人も売られており、中には権力闘争で敗れた帝都の「皇族」や王都の「王族」が商品として並ぶことさえある。

基本的に治安は貧民街を除いて良好だが、近年それも危ぶまれ始めている。
霊的防御が完璧であるはずなのに帝都内に妖怪や妖仙が現れ、人に害を及ぼすことが増えている。
横暴な貴族や衛兵によって理不尽な目に遭う平民なども少なくなくなってきている。
特に見せしめなどが帝都内ではよく行われるため、そのための舞台なども増設されている。

王国とは敵対関係にあるが、民間レベルでは交易なども盛ん。
王国の民も旅人として、王国からの使節としてなど、問題がなければ特に帝都への入城を拒まれることはない。
ただし敵対行動を取ろうとした場合は厳しい追求などが待つことがほとんど。

※上記のような設定ですが、あまり神経質にならずに、施設などは世界観などを壊さない範囲で自由に設定して頂いて構いません。
 基本的な利用方法は王都と同じです。
 利用の際はシェンヤン帝国の設定をある程度把握しておいていただければと思います。

http://mag-mell.undo.jp/world6.html

●フリー設定ルームです。最初に入室する人が部屋の設定を自由に設定できます。
ルーム名
部屋説明
背景色 テキスト色





参加者(0):ROM(1)
Time:11:10:29 更新


ご案内:「皇城・地下」から玖妲さんが去りました。 (11/04-01:12:45)
玖妲 >  
美酒が振る舞われ、夜会は更に酒池肉林の様相を呈してゆく

淫蕩への堕落、快楽への爛れ…
肉欲と獣欲を満たし合い、宴は狂気すらも孕みはじめる

ただ女を犯すだけでは飽き足らず、ただ男を貪るだけでは物足りず…
この場に在れば、健常な人間とて惑わずにはいられない
そんな魔性の空間と成り果てた地下の宴の間

「ふふ……醜い光景。──退屈な皇城の風景に比べれば、余程に良いけれど」

女はその場に在りて、輪には加わらず
城下から献上された上等な酒の注がれた杯を優雅に傾けながら、その血の色の眼に宴の光景を映していた
(11/04-00:43:45)
玖妲 >  
妖艶に佇む女の視線の先
女…玖妲によって魂を喰われ意思なき人形となった皇女達に嬲られる男は、ただ情けない声を上げることしか出来ない

「………」

ふぅ、と。
小さな溜息を詰まらなさそうに吐き、興味を失った様に視線すらも最早向けることはない

──もう少し強固な意思の持ち主かと思えば、なんて脆い。喰らうにも値しない(ごみ)

場に充満する甘い香りは媚薬の香
精神を蕩けさせ、肉体に熱を灯す
この場に在ってすぐに肉欲に溺れない者は、己の食料足り得る魂の持ち主…
あれのような粗悪品ではなく、強固な意思と己を律する強さを持つ、極上の馳走…

女にとってこの夜会は、そういった己の好みの者を見つける場でもあった
(11/04-00:21:02)
玖妲 >  
帝都シェンヤン──始皇の住まう皇城
その地下で毎夜繰り広げられるのは、とある夜会

后の一人である女が開く悪趣味な宴
それは陽が沈むとともに始まり、陽が昇る刻まで続く──

今宵槍玉に挙げられたのは──野心を抱いた皇族が一人
権力争いに己が資産を投じ、次代の強権を狙った男だった

「──無様ね。雉も鳴かずばなんとやら──身の程を辨えないから」

夜会の中央で生気のない瞳の女性に集られ、嬲られているのはその男に他ならない
そしてそれを見世物に、夜会の場では乱交に次ぐ乱交…男女の獣欲にかまけた淫蕩の宴の光景が広がっている

敷布の惹かれた華美な椅子に優雅に掛けた黒髪の女は、周囲に家臣を侍らせ、その血色の眼を細目、歪む口元を扇で隠し、愉しげに嗤っていた
(11/04-00:06:45)
ご案内:「皇城・地下」に玖妲さんが現れました。 (11/03-23:59:28)
ご案内:「北方帝国シェンヤン「帝都シェンヤン」」から影時さんが去りました。 (10/28-00:10:33)
影時 > 「……ちと面ン倒だが、もうちょっと奥の方まで向かってみるかねぇ。なに、ちょっとだけ。ちょっとだけ、と」

さて、如何に守護を掻い潜るか。天の理。地の利。人の守り。これらを縫い、忍び込む手立てを考えるのはとても楽しい。
腕組しながら考え込み、零す言葉は戯れめいているが、何せ真っ向からとなると正気を疑う沙汰にもなる。
最奥と思われる方角から感じるものは、生半なものではない。侵入を果たすならば相応の謀を以てしなくてはならない。
そもそも、この国に足を運んだのは喧嘩を売るためでも何でもない。酔狂転じて災いとなることだけは、避けたい。
どの位の塩梅ならば、虎穴を突く騒ぎにならずに済むか。考えだすと塩梅が難しい。

最終的に欲するものはいまいち当たらなかった、出会えなかった結果のみを持ち帰るべきか。
子分たちに探索をさせるのも考えたが、仙人の類が想定通りとするなら、迂闊な探索はリスクになりかねない。
年月を経て長く生きた獣が“化ける”ことがあるが、それと同じ手合いが仙人として宮中に使えていた場合、どうだろうか。
文字通りの余所者が、跋扈している姿を見咎めないとどうして言えるか。
それがこの場所に子分たちを出さず、雑嚢の中の向こうにある隠れ家に寝かせて老いているのはそのためだ。

「……まぁ、無理はしねぇに限るか」

書庫に気配が己以外に感じ得ぬなら、第六感的に危機を察知しえぬならば、今のうち。
外に出て、警戒を突きすぎない範囲で宮中の有様、風情を堪能し切ってから、そうっと。夜陰に紛れて姿を消そう――。
(10/28-00:10:30)
影時 > 本来ならここまで危険を冒すつもりはなかった。この位は、城下町で聞き込みと探索をしていれば集められるだろう、とも。
だが、知れば知る程、探せば探す程気に掛かるものも幾つかあった。
そうとなれば、己が興味のすべてを満たし得る場所は何処にあるだろう?
高名な道士の邸宅? それもいい。だが、国軍を動かすような記録まで網羅しているとは思うまい。
勇名な武人の屋敷? こまめに日記でもつけてくれていれば良いが、ここ最近の出来事でもあるまい。何より、勘が冴えている手合いは厄介だ。
国となれば、軍を動かしたなら何がしかの記録も残るだろう。
公的な記録として昨今まで伏せられていた場所への出征の記録を残したくはない、かもしれないが、ぼかし伏せた形であろうとも。

(……悪妖、とやら、とか言ったか。こういう場所にも出没するようになったとなると、……まァ、色々備えもされてそうだが)

城内の人の流れ、動き、出入りの傾向は数日を経て確かめた。
近日にでも次の目的地に向かうとなれば、より知っておきたい情報はより深く網羅しておきたい。把握しておきたい。
最近聞いた悪妖とやらが例えば、宝や美女を欲するなら、己が欲しいのはそんな別のもの。
だが、それもこの城の守り手たちとすれば宝のようなものだろうが、目ぼしいものがあれば見て覚えるだけだ。奪うより有情であろう?

「なンて思うのは良いが、……はてさて。この辺りに置いておいても差し支えない範囲、みてぇな扱いかねえこりゃ」

欲しいのは八卦山なる地での出兵、出征の記録。武名を挙げたもの、要注意とされうる悪鬼やら悪仙なるものの情報。
そう、仙人である。仙人なるものが居る、在ると聞くのだ。龍なるモノも聞いた時には驚いたが、此れもまた気になるものだ。
市井で聞ける限り、知り得る限りは知り得たが、御伽噺よろしく脚色されたもの、尾鰭がついたものも少なくない。
だから、答え合わせが出来るにたるものがあるか?とも思ったが、情報の扱いに心得たものもこの国にちゃんと居るのだろう。
欲しいものがいまいち見当たらない。見つからない。場所の見当違いか、それともより厳重な扱いをされている場所にあるのか。

(……在るとした場合、巻物の形だったら厄介だなぁ……)

あれは目を通すなら兎も角、広げるにあたりそれなりの場所が要る。
あり得そうな記録媒体の予感に苦笑しつつ、ぺらぺらと書面を捲ってざっと掻い摘む。拾い読む。
目的の情報が無くとも、書を戻す際は慎重に。元に在った通りにそのままになるように、そうっと戻す。
(10/27-23:04:57)
影時 > ――こんなものか、とは思わない。同じ幸運が二度も続くとも、思うまい。

堅牢無比の難所に忍び込もうとする際、思ったよりも容易く行けた時にこそ、油断が生じる。
然るべき時、己が昂りを抑えきれないものは忍びとして不出来過ぎる。
いつものことでは?そういう野暮はなしにしてほしい。だが、同時に幾つか気になるものも無いわけではない。

何せここは大帝国「シェンヤン」の王城、“皇城”である。
最奥は如何にもな兵士、武人、道士たちが守護を固めており、尋常な手段では進入を果たせまい。
悪意、悪心を抱いている手合いであれば、そもそも近づくことすら躊躇わせるほどの何か、を予感する。直感させる。
では、その外輪外周、または政庁の常として人が多く出入りしうる場所はどうだろうか?
それもまた本来ならば、難しい。否、如何に覚えがあるものであっても、退けられてしまいかねない。
だが、夜分となれば、幾らか緩むのもあるのか。いいや、そんな筈はない。だが、それでもなお、這入れるのは。

「……――いかにもカチカチに見えて、何かあンのかねぇこの国も」

夜の皇城、大きな書物庫と呼べる部屋にて、ぽつりと。慨嘆する声がひとつ零れて漏れる。
城内を巡回する道士、または武芸者か。或いはそれに扮したつもりか。
黒い道服の上下に身を包んだ男が、高い身の丈ほどもある書棚に向かいつつ、手にした糸綴じの本を捲りつつぼやく。
史書らしき書が並ぶ場に立つ姿の立ち振る舞いだけは、いかにも出入りに慣れたらしきもの。
擦れ違うものがあれば気配を柔らかく潜め隠し、貴人らしきものがあれば、手を隠し礼なぞしてみせて、尤もらしく振る舞う。
そうやって目的のものがあれば頁を開き、無ければどうしたことか、と首をかしげる。
(10/27-22:28:48)
ご案内:「北方帝国シェンヤン「帝都シェンヤン」」に影時さんが現れました。 (10/27-22:10:41)
ご案内:「北方帝国シェンヤン「帝都シェンヤン」」から影時さんが去りました。 (10/21-00:18:51)
影時 > 「……書に目ぇ通すのは程々に、呑み終えたらちぃと歩くか。望むものが無けりゃァそん時はそん時だ」

この後の方針としては、明確。書物を商っている店やら素材屋など、道士とやらが通う場所を練り歩いてみよう。
事情通めいた古老が居れば実におあつらえ向きだ。
望むものに行き当たらなくとも、見分を深めるのは決して無意味ではない。拾うものは大なり小なり糧になりうる。
この地で使われている術やら考え方は、自分が研鑽してきた忍術に近しい道理を感じる。
どちらが似ている、先であるということはないだろう。長き歴史に及ぶ錬磨の果ての結果が、偶々そう思えるほどに結実したのかもしれない。

酒瓶を掴み、揺らせば中身はもう少しある。
親分の様子を見つつ飲み食いし、げぷっと両足と尻尾を伸ばして座り込む毛玉たちを見れば、彼らの食休みだって居るだろう。
自分にとっては地上の人間を眺め、観察し、一挙一動を吟味する機会でもある。
知らぬ礼儀作法の類があれば、それを読み取り、意味を調べては己がものとするための時間だ。

次に向かう場所への道筋を調べ、必要とあればより深きを得るための準備のために――。
(10/21-00:18:49)
影時 > 子分にして旅の道連れでもある二匹の仕草に、ったくと息を吐いて、酒を一口含む。
酒を入れながら、観察を続ける。街は確かに栄えている。見慣れた王都よりも広大であり絢爛、ではある。
だが、幾つか気づくことも思うものも色々ある。昼間時となればどこもかしこも炊煙が登るが。

(……多いと思うのは、人口の多さだけじゃァないな。煮炊き出来る魔導機械の類が無いのか?)

その多さが気になるのは、故郷とは違う文化、風習、産出物で溢れていた王国に慣れた身からだろう。
似たような塩梅の土地はどれだけあったか。塩梅として近いのは故郷。薪で火を焚き、その熱を使っていたのだから。
薪が採れない土地の場合、乾燥させた家畜の糞を燃料としてた土地もあった筈だ。
この辺りの観察を深めたいなら、食い歩きのつもりで料理屋が集まっている地域を巡り歩けばいい。
燃料代に悩む声が耳に届くのであれば、そこは商機を見出し得る。気づきを纏め、己が雇い主にでも渡せば良い具合に使いそうだ。

「……――ま、城崩しの算段を今の時点で立てても仕方ねェか。
 それよりも今の時点で頭に入れておかなきゃならんことは、他にもあるよなぁ……」
 
肴よろしく食べていた料理は、気づけばほとんど捌けていた。
残った酒を舐めるように呑みつつ、積み上げたものの中から書を引っ張り出す。
怪談集、武人名鑑のダイジェストのようなものだ。図書館でもあれば使いたい処だが、気軽に使えそうな場所は見当たらなかった。
何せ、聴いた地名を地図で探し出そうとしたら、買った地図の出来の違いのせいか。穴が開くように見ても分からなかった。
まさかなと思いつつ調べを深め、幾つかの補足と裏付けを経ることで、其処で相違ないと確定させることが出来た。

妖怪変化が出てくる魔窟、ざっくり言ってしまうなら危険地帯であるとも。

八卦山と云われる場所に向かい、命からがらに逃げてきた武芸者やら道士、或いはその崩れめいた者たちの会話も酒場で聞いた。
では、件の土地で武勲を挙げた者が居るのか?となると、時間のかけ具合が足りないのか。それともアプローチの問題か。
これがまた、いまいちハッキリしない。かの地のことについては、永らく秘匿されていたような節がある。そのせいだろうか。
(10/20-23:20:49)
影時 > 「……すこぉし散財したが、路銀についちゃぁまだ何とかなるのは、日ごろの行いの良さってトコかねぇ」

今回の旅は誰からの依頼も請けていない。己が好奇心の発心、発露による思い付きの旅。或いは気紛れの旅。
迷宮探索を始め、今までの旅と冒険で手に入れ、手放したものは誰かに譲らない限り大体売り払っている。
そうして得た貨幣(ゴルト)は、宝石として貯蓄していたが、それをこの帝都で“金”に換金し直している。
この帝都に入る前、飲み干してこさえまくった酒樽、酒甕、酒瓶は、ほとんど捨て値で引き取ってもらったのはご愛敬だが。
そんな旅先にて仕入れたものを持ち帰り、売り捌くことで散財分を補填するかどうかは、急がなくてもいいだろう。
何故か。ガイドブック的に店売りされていた本、絵地図、等々。積むと荷物には重いが情報の重みとは、軽視し難い。

「今日明日にでも幾つか見て回るとして、どうせならあそこ迄行ってみたいもんだが。はてさて」

箸を使い、皿に盛られた料理を口に運びつつ、ちらと地上を見下ろす。
折よく、北の方角に向かって進む貴人らしい一群が見える。目的地はと考えれば、進む先を見れば考えるまでもないだろう。
北方はこの都の最奥と言えるものがある。皇城だ。氏素性を推し量るにはまだ知識が足りないが、宮に登る者には相違あるまい。
誰何されれば田舎者、我流の武芸者等とでも誤魔化す準備は出来ているつもりだ。
それで城の近く、手前まで近づくことは難しくないだろう。そこから仮に忍び込もうとするなら、どういった手段、手法があるだろうか。
思考実験よろしく考えを巡らせ、思いを馳せるにはこういった高い場所は都合がいい。

「……なンだね?ン?」

箸を置き、酒杯を手にしながらふと気づけば、卓上から見上げてくる二匹の視線がぢー、と。ぢー、と刺さってくる。
問えば、また何か変なことを考えてるでやんすね……と云わんばかりに顔を見合わせ、尻尾をぺたんと下げて肩を竦めてくる。
(10/20-22:36:17)
影時 > ――住めば都という。

気候に慣れ、風習に慣れ、食べ物に慣れて、水にも当たらなければ。暫く過ごしている内に風土に馴染むだろう。
そうして安堵を得られるのであれば、そこが己が居住地とも云える。
だが、長く過ごすつもりのない旅人が数日寝泊まりすると、どうだろうか。思うがまま、あるがままに身体を休められるかどうか。
それは人による。合わずに旅の空に戻るものもあれば、すぐに順応させてしまえるものも居る。
後者の例が、大帝国の都の一角、酒場兼飯屋と言える飯店で――、


「――おぅぃ、女将さん。酒もう一杯頼むわ」

……真昼間から酒をかっ喰らってみせるのである。
斯様な声が響くのは、四方を城壁に囲まれ整然と整地された都の西側、黄龍大路なる大通りに面した東西の境目に近い処。
視線を遣れば東側の富裕層が住むとされる場所が見える。
大通りに隣していれば、其処を行き交う貴貧様々な姿を確かめることはそう難しくはない。二階建ての飯店のテラス状の席からであれば尚のこと。
朱塗の円卓の上に幾つかの料理の皿と、糸で綴じられた数冊の本を置きならべた男が、空になった酒瓶を掲げてみせる。
程なくして遣ってくる女中が瓶を受け取り、厨房に向かう。その目が数度目とはいえ、奇異を示すのも無理はないだろう。
黒い道服に珍しい仕立ての上着を羽織った姿までは、恐らくまだ良い。卓上に並ぶ皿の傍に二匹の小さな獣も居た。
飼い主に合わせたのか、黒いスカーフめいた布を緩く首に巻いた茶黒の毛並みの齧歯類だ。それも二匹。
殻を剥いた種を齧ったり、火を通した後に冷えた野菜を齧ったり、小皿に注がれた水を舐めたりと。

髪の色や容貌はこの土地の人間とそう変わらない筈なのに、どこか奇妙で。にも拘らず、支払いは良い。
新しい酒を運んでもらえれば、支払われる硬貨自体も間違いはなく。
ごゆっくり、と声をかけてくる女中の声に鷹揚に頷く男が、空にした酒杯に酒を注ぎ、一口。ほっと息を吐く。
(10/20-22:14:44)