2025/05/02 のログ
ご案内:「タナール砦」に宿儺さんが現れました。
■宿儺 >
戦火渦巻くタナールの砦──。
王国の人間と、魔族の国の戦力が拮抗する戦場。
年中火の手があがっているといっても過言ではないその場所は、今宵は妙に静まり返っていた。
「──ふぅ」
疲労感の混じる溜息を吐くは、亜麻色の髪を戦場の風に靡かせる黒き鬼。
その大きく形のよい尻の下に屍を敷き、累々たる戦闘の残滓を周囲に侍らせながら、その場に在った。
人間、小鬼、豚鬼、巨鬼──獣の様な魔物も含め、大小様々。
どちらの味方もなく、雷光が如き暴れ参じた女鬼の餌食となったのだ。
「今宵はここまでか──其れ共、もっと喰い出のあるいずれかがいるか…?」
血濡れの口元を腕で拭い、嘲笑う様は見てくれ通りの人喰い鬼。
闘争に猛り、血の匂いと味に酔ったその翠の瞳が爛と輝き、狂気を孕んでいる。
片端から殴り、蹴り砕き、叩き潰し、圧し折り。
やがては双方が撤退。月に照らされる戦場はただ、静寂の中で狂鬼の息吹だけが──。
■宿儺 >
血の味と闘争での高揚は普段以上に女鬼の屈強な肉体を漲らせている。
要するに興奮状態に在る…のだが。
暴威を宿す種たる鬼として、それらが沸き立たせるのは只管の闘争欲、そして破壊衝動。
──腹が空いていたならば人喰いにも向くだろうが
「──」
月光の下、積み上げられた屍は椅子がわりに使われるだけでその血肉を喰らってはいない。
さして美味そうでない肉の数々である…というのもあるが──今は何よりも、肉体が更なる強敵を求めている。
──鬼、と呼ばれる種はこの地にも多くいた。
生まれであるシェンヤンの八卦山の集落の鬼と比較しても遜色のない、鬼と呼ばれる魔物は様々である。
特に、圧倒的な体躯を誇るオーガなどは実に好敵手であった。
ゴブリンの中にも屈強かつ武装をしているものはおり、オークなども強い肉体の雄は多くいるが。
やはり本質的に似た種であるのか、肉体任せの殴り合いを楽しめる相手となればやはり連中である。
頭が足りない、という点でも実に相性が良い。
足元に転がる茶褐色の巨躯を見下ろす。
此奴はなかなかに良かった。いくら殴りつけても怯まず石槌を振るい襲いかかってきた。
この場で最後まで立っていた、さぞ名のあるオーガの戦士に違いない。
なかなかのダメージを負う激戦であったが、まだこの肉体の疼きは続いている。
むしろその死闘が更に火を点けてしまっていた…とも言えるが。
■宿儺 >
やがて、屍の座より降り立つ。
──魔族の国の方面より感じ取れる、殺気かの気配を気取った故に。
小鬼英雄、豚鬼王、巨鬼王…。
戦場に座すれば耳にも入る、彼奴らの中にも在るらしい図抜けた戦士。
そういった者の来訪を心待ちに、地に降り立った女鬼は砦の入口を見据える。
有象無象であれば木っ端の如く蹴散らすのみ。
粒揃いであればそれなりに愉しめよう。
血湧き肉躍る、と。
表現するが言葉通りに力の漲りを己が肉体に感じて。
願わくば、この力の向く先が、より凶悪な敵であらんことを。
待つことすら耐えかねたか。石畳を重苦しく踏み締め、自ら殺気に向かって歩み征く──。
ご案内:「タナール砦」から宿儺さんが去りました。