2025/03/21 のログ
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ご案内:「タナール砦」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 ―――それは再びだった。
 ―――制圧したはずのわたくしが、歯軋りをして見せる。


   「―――ッッ(バキッバキギッ)!!」


 黒い異形の女兜を身に着け、外側に反り返る乱杭歯の奥で軋む、ギザギザ歯列。
 綺麗に噛み揃えた其処はなぜ血がでないのか不思議なほど、精鍛な歯列と歯茎
 がっちりと噛み合わさってミシミシと音を立てている。
 怒り 虚しさ 哀れみ 混ざり合ったわたくしと後ろで群れる者らの感情を、どう表現すればいいんだろう。


   ―――タナール砦 午後
      天候は夜になろうとしている夕暮れ―――


 真夜中の砦戦
 そんなものは双方にとって無駄でしかない
 砦は制圧した後なのであろう、メイラ入り混じる王都側の軍勢と旗
 だが砦の向こう 魔族国側からやってくるシルエットに、皆がどうしようも無い気持ちになった。


 ―――焼いている いや、焼け続けている。
 ―――再利用できる兜と鎧は脱がし、着の身のままで遺体を持ち帰ることができずに焼いてできる限り骨にした者ら。
 ―――一部であろうと名前も記録し、黙祷し、終わらせてやったはずの者ら、目の前にいる 燃え続ける“何か”となって
 ―――わたくしの前にきている。


 砦の上から見れば点々とした燃える火が直立しているように見えるだろう。
 暗いから猶更だ。
 燃えるそれらばかりで魔獣も亜人の一匹すらいない。
 完全な徒労と一目でわかる亡霊か、アンデットかの群れ。

 
   「ぁ   ぁアあア゛ア゛゛■■■■―――ッッ!!!」


 全身甲冑と巨剣擬きを一本手にする姿で、突撃する激昂の姿
 続く長槍を持つ者らが突撃する。
 火のせいで、近接に秀でていない者らはそうとるしかできない。
 中には足が速い使い手らはメイラと共に走りだす。

 中にはまだ顔すら焼けた向こうから見える者すらいた。
 装備すら剥いで荼毘にしたのだから猶更か。



 

メイラ・ダンタリオ >  
 始まりはいつだってそうだ。
 戦争の始まりは、突撃する最初の一足が
 戦争の始まりは、激突する最初の一刀が

 大地(つち)を、武器()を、ぶち上げるこの音から始まる。


      ―――ッッッッ!!!―――


 金属音すらない、感触は骸そのもの。
 骨もスケルトンとしては長く居すぎた代物と同じくらいでしかない。
 一度焼いたからか 祈りを捧げたからかはわからない。
 骨同然のまま燃えるもの 焼けた腐肉を纏って燃え続ける者
 等しく目の前に来たと同時の間合いで、五体纏めて横薙ぎで砕き散らすと同時
 足をひねりあげ、腰を回し、返す巨剣擬きの質量の一撃が降りかかる。

 右、左、右、中央

 弾け飛ぶ火の散り
 砕け飛ぶ頭蓋が燃えたままのそれ。
 目の前に転がった燃える腕の先でうごめく五指を踏み砕き、この熱量をヂリヂリと鎧越しに感じながら
 メイラは恐れも怯えもなく、ドスの利いた低い声で睨みつける。
 声すら聞こえてこちらを見つめ、両腕を伸ばして近づいてくる者ら。


   「腐れた騎士ならともかく、コッチの真面な面子を呼び出す辺り、センスがいいことは褒めてあげますわ。」


 吐き出すそれはせめてものここに出されてしまった者らへの慰めの冗句か。
 だが、それでも赤く輝る宝玉が 兜の額で色めくそれがいつもよりもぎらついている。


   「でも教えてあげますわ。」


 片手 そう、片手で振り抜いた剣で切り払ったそれが薙ぎ払われ、土に散らばる。


   「わたくし達をこうしていいのは、あの御方だけなんだよォッ!!」


 言葉の調子すら外れた激
 それと共に、骸を破壊するため、槍は叩きつけるように
 刺すようにではなく壊すように振り下ろされ、礫が革袋で投げ入れられていく。
 矢よりも破壊的行動が叶う攻撃方法で、いくつもが倒れていく中、
 再び振われる剣と共に、数が濃くなる。

 間合いの外から攻撃する者らに比べ、近接に依るメイラの攻撃方法に、マントや鎧にしがみつくように降り注ぐ骸
 燃える、骸 それらを見つめながら、甲冑越しに感じる鈍い熱
 イーヴィアの鎧越しでも感じる熱量すら、鎧越しに与えられたアドレナリンと高揚から痛みは薄く
 片側で引き込んだマント越しに振り払うと、一回転すると同時、剣の持ち手を柄尻に寄せ、フルスイングするような
 一回転斬りと共に周囲が物理的に幾つもに分かれて散らばっていく。

 再び向かう濃い人数 突撃染みたそれは足を縺れさせ、他を呑みながら来るのに対し、腰の剣を引き抜いた。


   「―――閂砕け(かんぬきをくだけ)


 その短詠唱と共に、突き出して固定した剣が、形を一つの大ぶりな短砲筒に変わるや
 奥から炸裂した、魔の一撃。
 轟音と共に放たれた魔弾が貫通し、砕き、一通の道を開くほどに骸らを飛び散らかした。


   「―――シィィィィィッ。」

ご案内:「タナール砦」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。