2025/02/08 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にヴィロサさんが現れました。
■ヴィロサ > あちこちに倒壊の跡が残るタナール砦。
土や木材で補修を急いだ形跡が見られるが、人魔が入り乱れて殺し合う激戦区でそのような猶予はない。
周囲にはおびただしい数の力尽きた兵士の骸と、破損した武具の数々。
死の匂いに満ちた周辺とは打って変わって、激しい奪い合いの対象となった砦の内部は全く異なる光景が広がっていた。
「いい気味だな。兵士なんかよりも肉奴隷の方がよほど素質があるぞ。ははははははっ!!」
砦の中から響き渡る嗜虐的な嘲笑。
王国騎士らしい出で立ちの男女が捕縛され、人間とほぼ変わりない容姿の魔族たちに弄ばれながら屈辱の涙を流している。
みぐるみを剥がされ、乳首や性器には性玩具を取り付けられ恥辱の限りを尽くされて床に横たわっている姿は惨め極まりない。
ヴィロサ率いる軍は大半が淫魔系の種族をルーツとしており、個々の戦闘力は卓越したものではない。
しかし、種族特性でもある催眠や催淫をはじめ動物的本能を逆手にとったかく乱を得意とする。
高度な精神修行をもってしても、呪術の域にまで達した力となれば呆気なく魅了され取り込まれる兵士も後を絶たない。
王国軍内部をも腐敗させる淫魔の脅威は重々知られているが、それでも対策が万全ではないのが実情だ。
「それにしても、わたし達が来るまでにあっさり奪い返されるなんて情けない奴等だ」
戦時中にもかかわらず、ボトル入りの酒をぐびぐびとラッパ飲みすれば、ぷはぁ と酒臭い息を吐いてポイ捨て。
同僚の足手まといぶりを毒づきながら、王国軍など所詮はこの程度か と余裕もいいところだ。
■アマーリエ > ――タナール砦守備隊壊滅、そして敵勢による占拠。
その報せを受けるのは此れで何度目だろう。
気になるならば書記官に聞けばいい。わざわざ記憶するまでもない。回数を気にするのは報告書を認める時位だ。
それだけ件の砦は奪われ、奪い返してを繰り返している。何度も何度も。
それはすなわち、第十師団が今回の奪還の任を仰せ付かるのも、初めてではないということだ。
第十師団を指揮する女が、王都から国境まで最短最速であると自認する、或いは己惚れる所以は迅速速攻ぶりにある。
――即ち。
「……――私が行くわ。準備ができ次第後詰を飛ばして。他の兵力は手筈通りに」
王都の一角から飛び上がる翼が、ひとつ。白き大きなる竜とその背に跨る白い武具を纏った女の組み合わせだ。
魔術通信で意識を繋ぐ配下たちに命を幾つも下すのは、それこそ手慣れたもの。
砦が占拠されたことに対する報告を受けて、真っ先に動けるものは、丁度手持ち無沙汰にしていた一人の将だ。
軍勢の中で自分が一番強い故に、先に行く。
誰よりも率先して動く姿は単独先行の誹りを免れない。だが、其れで良い。敵の想定を飛び越えてこそ、後続の負担を減らし、時間稼ぎを行える。
王都と砦はそれなりに距離がある。近くに置いていた兵力を纏め、差し向けるにもそれなりに時間がかかる。
だが、竜の翼はその距離をものともしない。
「……見えた。ああもう、あんなにはしゃいじゃってまあ――トルデリーゼ、お願いね」
占領された砦の中や、中庭などから空を見上げるものが居たら、すぐに気づいただろうか。
遠く遠く、轟くような咆哮と、大気を打つ翼音、そして何より、速度あるものが風を割いて進むことで生じる風。竜の風。
その風を生む竜の背に跨る姿が手を上げ、目元に翳しながら魔術の光を灯す。遠視、遠見の魔術だ。
目につく風景に柳眉を呆れ混じりに顰めつつ、騎竜の首を叩いて立ち上がり、鐙の上で踏ん張る。
手に取るのは鞍に引っかけていた一本の長槍。それを手に竜が首を巡らす動きを借りて跳び、くるりと身を捻る。
――飛び降りる。
槍を抱くように構え、纏うマントを翼の様に広げて舞い降りる先は――壁の上で警邏する魔族の一体。
その一対を脳天から刺し貫き、串刺しとする代わりに落下の衝撃を抑え、後で追ってくる衝撃音が高々と告げる。
お前たちの敵がやってきたぞ、と。下界を威圧するように響かす竜の嘶きと共に。
■ヴィロサ > 「輪姦しすぎて死なせるなよ。一応人質だからな」
酒をラッパ飲みしながら、若く美しい人間の女を凌辱している同胞の傍を横切って念押しする。
彼女が率いる兵士たちは武装こそしているが、緊張感や殺気めいたものは薄く、まるで無秩序な学生の如く奔放だ。
単なる凌辱だけではなく、絶え間なく絶頂を強いたり孔がどれだけ拡がるのか遊具のようにして弄んでいる。
中には、禍々しい黒鎧に混じってれっきとしたマグメールの国章があしらわれた鎧を身に着けた者も混じっている有様。
彼らとて良くも悪くも一介の人間。禁欲状態の中でタガが外れるのは珍しい話ではない。
人間はちょろい……―――
人間は弱い……―――
そんな驕りに満ちていた彼女たちのもとへ不意に訪れる奇襲。
警邏の一人が、なんの前触れもなく鋭利な穂先を持つ長物に貫かれ、そのままぴくぴくと身を震わせた後絶命する。
それを目撃した別の魔族は空を見上げ、空に見える不自然に動く影。自然に生じたものではない重厚な風の音に戦慄する。
数体はいた兵士のうち、いくつかは竜という存在の強大さに呆気なく小さな翼を羽ばたかせて逃亡してしまう者も。
「うるさいな。我慢できなくなったのか……ん―――」
バタバタと屋内へ駆け込む魔族の女兵士が血相を変えて敵襲の報せを告げる。
順番を守れない輩かと思ったが、髪を乱し冷や汗を垂らしながら駆け込んできた者には思わず険しい表情を浮かべる。
状況を詳しく聞こうとするより先に、竜の嘶きが聞こえれば目を見開き、すぐに黒い直刃の剣を抜刀し砦の外へ飛び発っていく。
輪姦を愉しんでいた者達は呆気にとられながら、後れてまばらなペースで竜騎士の迎撃に向かう。
「ほーぉ、噂のトカゲ乗りか。人間の分際でよく手懐けたものだな!!」
黒い翼を羽ばたかせ、高空へ飛びあがって接近していく女はやや苦い表情を浮かべながらも余裕を保とうと大口をたたく。
後続の兵は有翼の女兵士ばかり。軽装備で竜に傷をつけられるのかは怪しい武装ばかりで、騎手を直に討つ腹積もりなのだろう。
■アマーリエ > 先駆けする意味も。理由もある。
如何に敵勢が多くとも、それらを相手取れる実力。竜を随伴させることによる火力の確保。
だが、そうした戦術的な意味よりも個人的な理由がある。
第十師団の中で数名、若手を件の地に寄こしていたということ。
何もない時は何も起こらない地である。その凪めいた期間がどれだけ長い、または短いかは分からない。
今が偶々、思ったよりも早く凪が過ぎてしまった。結果的にそう思うコトだけは簡単だけども。
(……――早駆けを信条とする癖に、遅れて出張るのは名が廃るのよ)
そうした実に個人的な理由だ。多くを従える責任と女にとっては、その考えは並び立つ。
故に振り下ろす槍は嫌でも冴える。人間のカタチに近い敵兵をするり、と。
白く輝く刃が恐ろしいまでに鋭く、降下の勢いを多く乗せて貫き、介錯がてら切り裂いて命を奪う。絶命させる。
石壁の上にかつん、と。硬い鉄靴の音を鳴らしつつ、槍持つ姿が眼下の有象無象に姿を晒す。
長い髪と黒いマントを風に靡かせ、槍を振るって纏わり付く血を掃いながら、青い瞳が見遣るのは。
「――トルデリーゼ。あそこと、あれにブレス。向こうの方には当てないでね。まだ生きてるわ」
『――承知。皆まで云うでない。儂が仕損じると思うかえ?』
俯瞰できる限りの敵の動き。同時に見える生残者らしい、見慣れた紋章を刻んだ鎧や装束を纏ったものたち。
ぽつと零す言葉に応えるものはなく。だが、悠然と上空を旋回する主従を結んだ竜には届く。
声なき思念の会話、念話を介してお互いに笑いの波動を伝え合い、竜が狙いを付けながら大きく息を吸う。胸郭を膨らませる。
その風景を一瞥しつつ、どこから切り込もうか。侵攻ルートに思いを馳せていれば、見える女の姿に眉を動かす。
「あら驚いた。――噂になってたの? 知らなかったわ。
人間のチカラは侮れない、という処でどう、かし、ら……、と!」
どうやら将か。
似たような形質、形状の翼持ちに加え、人間と比べると奇麗どころも多く交じる中、飛び上がってくる姿は随一のように見えた。
わざとらしくぱちくりと目を瞬かせ、口元を押さえて笑う仕草を見せつつ、竜が動く。
吐き出す吐息は炎。だが、ただのの炎ではない。閃光のように細く絞ったような吐息だ。
その分だけ熱量を増したそれは、狙い澄まして上空から俯瞰する限り、敵兵が密集したあたりを狙い撃ちにかかる。
それを契機に女騎士が足元を蹴り、中空に躍り出る。突き出す槍が狙うのは敵将の胸部。まずは小手調べ、とばかりに。
■ヴィロサ > 依然として苦境に立たされているはずが、一方でしぶとささえ感じる持久力は流石隆盛を極めた大国だけはある。
既に腐敗して久しいものの陥落は許さない軍事力は、魔族の間でも脅威となる。
中には魔導機械による戦略兵器や、ちょうど眼前の竜騎士のように人とかけ離れた存在をも使役する者までいる始末。
守りを棄てて砦に攻め入れば恐らく簡単に制圧できるだけの総力があるのだろう。
「何匹現れた?……ほう、一匹か!偵察にしては喧嘩腰だな。よし、歓迎してやるか」
竜騎士の襲来。獣といった表現すら当てはまらぬ災厄クラスの魔族すら見慣れている女だが内心は余裕を保つので精一杯。
重武装であっても生身の人間が相手である前提の編成だ。魔獣やそれに通じる存在となれば分が悪い。
これが編隊を組んで複数で迫っていようものなら、砦を捨て置いて即座に撤退してただろう。
人間を舐めくさっている部下の数名は既に尻尾を巻いて逃げ出す辺り、脅威度は充分に共有されていたのかもしれない。
騎手が命じると、天空を何かが照らしつける。炎だ。
厳かな竜の咢の内より燃え滾る激しい炎。しかしそれは細く収束し、吐息と呼ぶよりも魔弾に近しい。
そして、直撃すれば……大パニックになる地上の兵士たち。
先ほどまで遊興の舞台だった砦を、残り火が煌々と照らしつける。
忌々しく舌打ちしながら、黒剣を両手で構えて滞空したまま出方を伺う。
(バカ真面目に戦うのは分が悪いが……。……"遊び甲斐"はありそうか)
にやり…… 女の口角が怪しくつりあがる。
言葉が交わせるほどに近づけば、聞こえてくるような勇壮なれど女の声。
先ほどまで弄んだ人間の兵の無様な姿を思い浮かべながら、槍の一刃に臆せず立ち向かう。
(まあいい。何だってするさ。負ければ何も残らないんだからな)
女が味方へ視線を合わせれば、随伴していた兵士たちは散開していく。
先ほどの奇襲への慌てようを見れば逃げたようにも見えるが、貴方の足止めをしている間に悪さをするつもりなのかもしれない。
「くそっ、器用な真似をする……だが、味方を燻製ハムにするのは気が引けるようだな……っ!!
甘い奴めっ!!!」
空中で、聖なる穂先と禍々しき光のない黒剣が打ち合えば、火花を散らしながら互いに硬直。
得物はもとより、本人の膂力もただの人間の兵士とは並外れている。
このまま力で押し切れないと断じれば、剣で受け流した後、そそくさと翼を羽ばたかせて距離を取る。
間合いを取り、仕切り直せば高速で視界から消え、大柄な竜の背後を取って不意打ちを浴びせようとする小狡い算段だ。