2025/01/11 のログ
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ご案内:「タナール砦」にフェブラリアさんが現れました。
フェブラリア >  
”前線”に彼女が呼び出されたのは何時ぶりか。
年単位は経過してはいないだろうが、それでも人ならば”久方ぶり”と形容すべき時間だろう。
ともあれ、竜令嬢フェブラリアが魔族との戦火の正面に立たされるのは初めてではない。

なにせ、竜としての力を持ち、貴族故の私兵を持ち合わせているのが彼女なのだ。
その戦力を遊ばせておくほど王国も人材は飽和していない。
むしろ彼女の生業の中に海防が含まれていないならば、本来は常に前線に置きたい人材であろう。

「…はてさて。正直なところ、我々にとって益になる行いではないのですが」

故にこそ、彼女は時にこうして”公共事業”として招集される。
短期間の一時的な戦力増強として、実に、実に便利な存在。

竜令嬢としても貴族故に、決して無視はできぬそれを、どうせならばと”ガス抜き”として彼女は利用していた。
なにせ彼女は人の中にあり、人に与しながらもその本質は竜なのだ。

「暴れに暴れ、力を示しても不利益にならぬのならば、好きなようにやらせてもらいますか」

尾を揺らし、自らの率いる兵たちには後詰めと兵站を維持させる。
自らは前線に立ち、ただ、その力を存分に示す。

竜にとって竜であれる戦場は、それだけで意味があった。

フェブラリア >  
そして彼女は戦場でありながら、それでも優美に歩を進める。
大胆不敵、恐れを知らぬかのような無防備さ。
容姿だけを見れば戦場を知らぬ貴族の幼子がそこに迷い込んだかのよう。
しかし、それが逆に異様であり、不気味であった。

竜令嬢はただ、真っすぐに敵へ向かって歩むだけ。
当然、異様だろうが不可思議だろうが、そうすれば数多の脅威が其処へと向かう。
無数の矢、雨霰のごとく殺到する魔法。
竜令嬢はそれを前になにか対応するでもなく──ただ笑みを浮かべるだけ。

刹那、飛来していたそれらは全て、その歩みを邪魔することなく竜令嬢の肌に”中る”のみ。
土煙を上げ、衝撃波の風を靡かせ、しかしてその身に傷一つない。
その最中、恐れ知らずの兵たちが武器を手に竜令嬢へと迫るが……それはあまりにも無謀だった。

決して戦いを知らぬわけではない彼女は、ただの力でそれを蹂躙する。
その爪は鋼よりもなお硬くどんな名剣よりも鋭く、そして竜の腕力は人のそれと比べるべくもない。
竜令嬢の爪は容易く鎧を、そして骨をも砕き、後に残るは無残な肉塊ばかり。

「さて、次はどなたがお相手しますか?」

ただ優美に歩むだけでそれは蹂躙されるのみ。
戦士の誇りも勇気も全てを踏みにじり、しかし彼女はなお進む。

フェブラリア >  
……ともあれ、竜の進む先には破壊のみ。
歩んだ後に残るは破壊の痕跡。

竜令嬢が去り行く頃には、その痕跡すら壊され尽くして…
ただ気晴らしの澄んだ竜が、その帰路には見れたという。

ご案内:「タナール砦」からフェブラリアさんが去りました。