2024/07/15 のログ
ご案内:「タナール砦」にナランさんが現れました。
ナラン > 夜。
砦の中は煌々と松明に照らされて行きかう人も未だに多い。
砦は奪還したばかりで、占拠しきるまでの攻防は日暮れぎりぎりまで続いた。成果を祝う者たちと、今日の補修や怪我の治療、状況確認と明日の準備と
それぞれがまだ興奮冷めやらぬ様子で騒がしく、どこにいてもヒトの声が聞こえてくる。戦に特化した作りの砦ならではの、無骨な姿にはそぐわない様にも思えるざわめき。

その砦の見張りの塔のひとつに、今は女が一人いる。吹いてくる昼間より冷たいが、未だに熱と焦げた匂いを含む。その風に黒髪を靡かせ、丘を見下ろしながら手元では矢の補修をしていた。
矢はある程度支給されるが無限ではない。まして傭兵だ、足りなくなったら自分で補給する必要がある。

ナラン > 魔族が相手という事もあって、狩りで使うような矢はあまり役に立たない。
支給される矢は大体が鋼鉄製で使い慣れずに苦労していたが、最近は特殊な鏃を支給されるようになった。ヒトの手で射る矢としては、抜くのが容易でコストのかかる全体鋼鉄製より、鏃だけを特殊にしたものの方が結果的に殺傷能力が高くコストも下がるらしい。

箆の部分はそのまま、呪をかけてもらった鏃を付けて革紐でもってぐるぐる巻きにし、最後は歯を使ってきつく縛る。
何本作っておいてもいい。自分の矢筒に入らなくなったのなら仲間に分ければいい。

ナラン > 踏み荒らされ、踏みにじられた丘になお残っている夏草が、月あかりの下で夜風に揺れる。
見ていて楽しい風景ではないけれど、手を動かしてやることもある。後退の時間まで気が抜けるということもないだろう。

「―――…♪」

矢を作るのも、慣れてくるとリズムが生まれてくる。女は砦の中の騒めきに紛れる程度の声音で歌を口ずさみながら、淡々と戦場の夜を過ごす―――

ご案内:「タナール砦」からナランさんが去りました。