2024/03/28 のログ
ご案内:「タナール砦」にメルリンディアさんが現れました。
メルリンディア > 今日は両親の娘として出向してのお仕事。
後衛で行われる後方支援を円滑に回すための手助けとして参じると、少し緊張しながらも戦線へと突っ込む。
しかし目的は戦うことではなく、負傷者の回収と撤退援護のみ。
身体強化の魔法で膂力や瞬発力を強化すると、倒れている兵士へと鞭を伸ばす。
新体操のリボンのように軽やかに巻きつけると、手首のスナップを効かせて引き寄せていく。
少したたらを踏む場面もあるが、しっかりと両腕でキャッチすると肩に担いで撤退。
負傷者の集まるエリアに下ろすと、再び飛び出していき、逃げようとする兵士達の背後に迫る魔法へ鞭を振り抜く。
火球の魔法を鞭で包み込むようにして抑え込むと、霧散させる様に消していくが、その力は鞭に宿ったまま。
追いかけてきた敵兵の前へ鞭の先端を振り下ろしてその力を開放し、炎を爆ぜさせたりと、せわしなく動き回っていく。
ようやく落ち着きが見えたところで砲弾のような勢いの一足飛びで彼女の傍に戻ると、息絶え絶えに前屈みになりながら報告を紡ぐ。

「い、今のところ……奥で倒れたり撤退してる兵士の人は……いない、みたいです」

何事もなければそのまま戦いも収束するだろうか。
したしたと額から伝い落ちる汗が地面へを濡らしていくと、ぐいっと手の甲で額を拭っていった。
精一杯動き回っていたのもあり、報告している相手が王族であることを思い出せば、ハッとした様子で顔を上げて姿勢を正していくが、汗だくなのは変わりない。

エリザベート >  
前線でせわしなく動いている少女。
あくせくと、必死に戦場を踊り走る様子は可愛らしくも健気。
むさ苦しい環境になりがちなバトルフィールド、視界を潤す存在はまさに一服の清涼剤である。
さて、そんな可愛らしい存在が一足飛びにやってくる。
なかなかの運動能力…と感心していると息を切らせた報告が続き、それに対し魔女は笑顔で応える。

「うむっ。ご苦労♪」

姿勢を正す少女に、嫌がられなければ良いがと思いながらも手を伸ばして撫でてやろうとしつつ…。

「…と、いうことらしいぞ。そろそろ妾の出番も終わりでよかろう?」

口元に手を当て、小さな魔法陣に向けそう喋る。
念話の類、通じる相手はこの戦争の指揮官かその下か。
折返しに小さく頷きながら、あとは兵たちにこの場を任せて良いという判断を伝える。

「魔物達も退散しはじめておるらしい、お疲れ様じゃったの~♪
 この後は勝利の宴か、お主も頑張っておったゆえたっぷり飲み食いさせてもらうが良い」

微笑み、疲弊する少女をねぎらうように柔らかく言葉をかけて。

メルリンディア > 耐刃加工されたワンピース姿は明らかに防御力不足なのだが、そのおかげで関節の可動域が限界まで確保できているメリットが大きい。
どちらにしろ強い一撃を受けたら切り裂かれ、貫かれなくともその衝撃で体力の大半を持っていかれる。
運が悪ければ骨も折れるが、無理矢理守るよりも可能な限り避けるという選択を取ったというのは、魔法の利用用途が身体強化の割合の多さが物語る。
避けたら次はあっち、魔法無効化したら鞭で兵士を拾ってそっちに、それが終わったら……という忙しない援護が思考力を奪っていた。

「……! ぁ、ありがとう……ございます」

撫でられれば、ベージュ色の猫毛質がふわふわとした感触でその手を迎えていく。
汗でしっとりとしているが、それでも撫でればサラリとその手の中で流れていった。
きょとんとした顔で撫でられていく最中、魔法陣ごしの会話を見守りつつも、碧眼は幾度も瞬いた。
後は兵に任せてよいという返事に、ほっと胸をなでおろすが、表情がいつものように緩みそうになってからシャキッと姿勢を正そうとするが、あまり変化はない。

「ぁ、ありがとうございます。これだけの援護と回復があったら、消耗戦では向こうに勝ち目はなしですよね。ではお言葉に甘えて……」

といっている合間に、労いの笑みにはっと思い出す。
そう、まだ名前を名乗ってなかったとアワアワとしながらも、今更ながらのぎこちないカーテシーで頭を下げる。

「ご、ごめんなさい。申し遅れ……えっと、メルリンディア・セルヴァインです。両親の命でお手伝いに来ています」

魔具やそれに纏わる魔術の研究で功績を上げ、平民から格上げとなった子爵の家名を今更ながらに伝えていく。
一応夜会に出たことぐらいはあるのだが、如何せん王族の前にお目通りしたことなど今までなかった。
それもあってか、緊張で目がぐるぐると回りそうになりながら、言葉遣いも大分不慣れな自己紹介になってしまう。

エリザベート > 「さて、此方側からでは魔族の国(向こう側)の戦力の底は見えぬからのう。
 無駄に長引くようであれば撤退も視野じゃったろうが」

運良く、と言い換えても良い勝利。
不透明な戦争相手程厄介なものもない。
常々この砦で攻防を担っている戦士達には頭があがらぬというものである。
…それはそれとして。 
おほぉ…♡撫で心地まで愛くるしいのじゃあ…♡
などという変態的な言葉はさすがに口にはせず内心に留めておく。
やや名残惜しげにそのふわ髪から手を離し、少女の名乗りを聞いて…。

「セルヴァイン?爵位を持つ家柄の娘がこんな戦場などに来ているとは…両親の命で?」

思わず眼を丸くする。年端も行かぬ娘を戦場に寄越すとは剛毅な。

「そう緊張するほどのものでもないぞ。王族に嫁いできただけの者じゃし。
 おっと名乗りを返しておらなんだな…妾はエリザベートという。…ところでここだけの話。…ほんとに両親の許可もろとる?」

声のトーンを下げ、そう問いかける。
成り上がった貴族だとしても、うら若い娘が戦場を駆け巡るのを許す両親がいるだろうか。
特に他意のない問いかけではあったが、内心ちょっと慌てる様子が見てみたいというのがあるのだった。
それはきっと、可愛らしい光景なので。
違えばそれはそれで納得するし、後々に家の者と逢う時があれば話のネタにもなろう、と。

メルリンディア > 実は思っているよりもフランクな人かもしれないとは、まだ気付いていないものの、離れた手を追いかける視線がそのまま彼女の瞳へと向けられていく。

「はい……ぁ、えっと、ちょっといろいろ事情があって……」

油切れの機械の様に顔を背けて視線から逃げていくも、冷や汗滴るような固まった表情は訳ありなのを隠せない。
来た理由はあまり言わないほうが良さそうだと、両親から事情を聞かされているのもあって、付けない嘘を無理矢理着くような状態だった。

「そ、そうです……か? エリザベート様……えっ、あっ、も、貰ってますよっ!? というか、行けって伯爵様から──」

声が少し低くなったことで、本当に疑われていると思ってしまい、目をまんまるに見開いて慌て始める。
言葉につっかえながらも貰っていると答えたはいいが、それをどう証明すればよいかと無意識に考えた結果口が滑った。
ハッとした様子でそちらを改めて見やると、両手で唇を覆って隠しつつ、緑色は右に左にと彷徨っていく。
そのまましばし自身の爪先へと向けられていたが、おずおずと顔を上げると、きょろきょろと周囲を見渡す。
他に人の気配なし、多分この方ならお咎めもない……と思いたいとなんて願いつつ、数歩踏み出して彼女の隣へ。
そのまま少し背伸びするようにして、お耳を拝借というように小声での告白をする。

「な、内緒にしていただきたいのですが……りょ、両親は乗り気ではなかったんです。でも、伯爵様が、パパとママの技術や力の証明になるから、なにかやってくるようにって言われて……二人は研究者だから、ちょっと冒険者とかしてる、私が……代わりに」

爵位を与えられた後、同じく研究を行うとある伯爵の下に着いたのが、両親の立ち位置。
立ち位置としては伯爵の補佐を行うような関係なのだが、補佐とは言えど命令されればほぼ絶対なところはこの王都でもよくあることだろう。
そして嫁いだとはいえど、彼女も王族に名を連ねた存在。
その戦いに一枚噛んでおけば、行く行くは伯爵の評価も上がるといったところか。
魔具関連というのもあり、戦いにも適正があるだろうということで命じられた結果、戦いの経験がある娘が行かざるを得なくなった。
しかし、そんな事を話せばメンツが丸潰れになるやもしれないから、黙っておくようにといわれてぎこちなくなっていたのだ。
名誉やらメンツやらという話は、関わらずとも見聞きすることのある話題ではあるはず。
だからご内密にというように、不安そうな顔で踵を下ろしていくと、濡れた緑色が縋るように見上げていた。

エリザベート >  
緊張する様子の娘にあくまで柔らかい調子の声色と笑みを向ける。
元々、必要な時こそ利用はするものの権力を傘に着るタイプでもないし、この王国の表舞台で頑張る女共を応援したい立場のエリザベートである。
心配こそすれど、戦場で活躍を見せたメルリンディアのことを悪く扱う様子などは微塵も見せず。

ハッとし、耳元に唇を寄せる少女にどれどれと耳を貸せば、成る程の内容。
研究者、そういえばそういった家だったかと記憶の紐が繋がって。

「ふーむ。そういう事情であったか。
 しかしその身に何かあっては両親も悔やもうて。無論口外はせぬゆえ安心せよ」

小声でそう言葉を返し、安心させるようにもう一度頭をぽんと軽く撫でる。

「メルリンディアの活躍は勇ましくも甲斐甲斐しく、十分すぎる戦功であったぞ。
 前線を飛び回っているのはひやりとしたところもあったがの♪」

心配は無用、と笑みを零し。
辺りへと視線を配れば、哨戒から戻ってきた兵達が勝鬨をあげる。
今宵は一先ず勝利。砦の保全作業などに慌ただしくなるなか宴の準備もまた進められてゆく。

「しかし冒険者か…なかなかの体捌きじゃったな。妾ではああはいかんのじゃ」

少女の立ち回りを思い出しながら、するりと手を滑らせるようにしてメルリンディアのお尻に触れさせようとする。
やましい気持ちはないのである。緊張する少女を和らげてやろうという軽いスキンシップ、茶目っ気である。…多分。

メルリンディア > 財や力で位を保つのと違い、技術や研究は認められるのには結果が出た時が多い。
それもあって、伯爵も発言力を強める機会があれば貪欲に関わらんとした結果が今ということ。
ひそひそとそんな内部事情をささやくと、大丈夫かなと不安げに見上げていたが、小声の返事と掌に安堵していく。

「……! ありがとうございます、エリザベート様は優しくて安心します……」

軽く撫でられると、ふにゃりと表情を和らげていき、年相応……よりも少し幼い普段の笑みがあふれる。
更に褒め言葉が重なっていくと、気恥ずかしげに再び視線を逸らしつつ頬を赤らめるものの、唇の端が嬉しそうに上がってしまう。
元来の子供っぽさが徐々に徐々に、彼女の分け隔てない振る舞いに滲み出す。
ひやりとしたという言葉には、再びアワアワと落ち着きなく唇が半開きに蠢いていくが。

「ご、ごめんなさいっ。い、いつもああいう感じに動くものなので……!」

言われてみれば攻撃を倒立回転で下がりながら避けたりもしていたので、魔物の爪が寸前で掠めていくこともあった。
普段から紙一重の回避もしながら戦うのが染み付いていたのもあり、申し訳無さそうに謝罪したりと喜怒哀楽がコロコロと移り変わる。
戦いの終わりを告げる勝どきが聞こえると、子猫の様に小さくはねて驚いてそちらへと振り返る。
死傷者はいなさそうに見えるのもあって、勝利よりも無事なことに嬉しそうに目を細めていた。

「もともとはバレエとか新体操とかを習っていたのですけど、それを生かした魔具を作れたらって思ってこれを作って、実践してみたいなとか、後は──ひゃっ!?」

臀部に触れる掌に伝わるのは華奢な体とは裏腹に、少し大きく発達したおしりの柔らかさ。
そしてその下に張り巡らされた靭やかな筋が生み出す、淡い硬さの重なり合い。
貴族令嬢にしては絞られた体付きなのも相成って、腰から太腿に掛けてのなだらかな膨らみがはっきりと伝わるはず。
撫でられたことにビクリと体が反応して小さく跳ねるものの、少し頬を赤らめながら驚きまじりの恥じらい顔で振り返る。
嫌がる様子もないが、不意打ちもあってどくどくと鼓動が大きく跳ね上がっていく。

エリザベート >  
うむう、愛らしい…。
思わず眼を細めてしまう。
自らの置かれた立場、並大抵の者ならプレッシャーに潰されてもおかしくないものの。
それでいてあの身の熟し、冒険者も兼ねる見事な戦いの勘や体捌き。
健気さと初々しさを兼ね揃えるこんな少女が近くにいるのだ。
ちょっとした悪戯したくなったって仕方がない。
ああいやあくまで緊張を解すためだけれど。

「いやいや。結果として無傷であるなら妾はそれで良いのじゃ♪
 お主のような娘が王族貴族の犠牲になることが多い国じゃからのう。
 ……おお、なかなかの肉付き…それでいて……」

老婆心のような言葉を投げつつも漏れるのは触れた桃尻の感想。むにりむにり。
顔を赤くしてしまったメルリンディアを見ればぱっとその手を離し、からからと笑う。

「んっふふ♪すまぬすまぬ♡
 しかしなるほどバレエ、靭やかな体つきをしておるわけじゃな~♪
 言い換えれば男好きのする…♡ くっく、気をつけよ~?戦場には狼のような男どもも仰山おるぞぉ♡隙を見せてはいかんな♪」

言いつつ、爪み見立てた両手を掲げる獣のようなポーズ。がおー。
初心な反応が余りにも可愛らしく溜まらない。
本心を言えば………チョメチョメ、なのだが。ここで手を出すのは権力による圧が付きまとってしまう。
それは大変よろしくないと自制していた。妾えらい。

メルリンディア > 無傷なら問題なしと言われれば、胸を撫で下ろしながら表情を緩めていく。
そして憂う言葉が聞こえてくると、こちらも少しだけ眉が力なく下がっていき、痛ましげに瞳を伏せる。

「……エリザベート様はいい人です。私……冒険したいってパパとママにいった時、世界を見て回りたいからって言ったんです。でも本当は……この国の良くないところで壊されてしまう人を助けたい、そう思ったんです」

王族貴族の謀略の中で、性奴隷に落とされていく姫君や令嬢もいれば、ただ欲しいがために平民の少女が肉奴隷として奪われて食いつぶされる。
そんな事が暗闇の中で日常化してしまった国を、どうにか良くできないかと思うところは自分と似た思いを持ってくれているのかも知れない。
そう思えば、少し声を潜めながら告白していき、どう思いますかと振り返ったところでむにむにと柔尻を揉まれていたわけだが。

「え、エリザベート様……! はい、体の柔らかさとかは特に自信ありですから、それを活かした戦い方という感じですね。お、男好きのする……!? 私みたいな体付きでそういうことはあんまり思わないんじゃないかな……」

悪戯に少し窘める様な声が出てしまうものの、少しほっぺたを膨らませるだけの迫力のない顔。
男好きということばから体付きのことかと思えば、少々表情を曇らせながら、両手がぺたぺたと胸元を包む。
背丈もあともう一声欲しいし、胸元は二次性徴途中ではあるが、掌サイズから全く変わる気配がない。
その割に臀部だけは足回りの運動もあってか発育が良いのもあって、コンプレックスの塊みたいなもの。
寧ろ女性らしい豊かな体付きをした彼女を、羨ましそうに見つめていた。

「ふふっ、男の人の前ではちゃんとしてますよ。エリザベート様なら別に構わないですけど……」

気さくで優しい、分け隔てない接し方をしてくれる彼女だからこそ心が緩んできていた。
冗談めかしてそんな言葉を曰いながら、なんちゃってと言うようにクスクスと微笑んで見せるが口走ってしまったのは事実。

エリザベート >  
「くふふ。カタくなっておったから緊張を解してやろうと思ったのじゃ♪
 必要もないくらいやわらかかったが♡」

冗談めかしつつも言葉を返したエリザベート。
しかして、少女から発せられた思いの言葉は、その調子の良い魔女をしても尚、真剣に耳を傾けるべき内容。
この国で悪徳の犠牲となる者達を憂う心からの言葉。
やや苦笑気味にその言葉を受け止め、そうじゃなあ、と空を見上げる。
篝火から火の粉が天に昇ってゆく様を眺めながら、浮かんだのは…危機感。
犠牲になる者を助けたい。その行動理念は悪徳を是とする者にとっては邪魔に他ならないからである。

「そのように羨む眼で見ずとも、お主のような女を好む者も多いのじゃよ。良い尻じゃたし(小声)
 しかして、国を憂い是正せんとする思想を持つ者……気をつけよと言ったのは本音であるからな?」

宴の準備が進み、タンブラーに注がれた馬乳酒をどうぞとエリザベートに差し入れる兵士。
それを見越し、この話題はここまで、と人差し指を口元に当てて見せる。
堂々とそんな言葉を吹聴することすらも出来ない国であるのは女の身では事実であるからして。

「うむうむ。ちゃんとしておるのならば良いのじゃ♪………ん?妾ならば良いと?」

再び、目を丸くする。
距離感近く、気を許す可愛らしい少女にきゅん♡としないわけがない。
直後になんちゃって、という言葉が続き狼狽を見せてしまうのもやや仕方がないであろう。

「は、はっはっは!なんちゃってであるよな!ふぅ……危ないとこじゃった…。
 ───さて、宴がはじまるぞ。お主は…まだ酒は飲めぬかの?」

タンブラーを片手に、戦場を飛び跳ねまわった頑張り屋さんである少女の手をよるように。
まぁ自分がついていれば妙な輩は湧くまいと、飲み食い踊れの勝利の宴の輪の中へ。
存分に語らう時間もまだ在るだろう、タナールの夜の良き同士との出会いにエリザベートは満足げに笑っていた。
……次にまた会ったときにはもうちょっと色んな意味で踏み込んでみようかと思いながら───。

メルリンディア > 「き、緊張……そ、それはその、エリザベート様は嫁がれたからといいますけど、それでも王族の方ですから、やっぱり緊張するなって思って……うぅ、い、言わないでくださいっ」

とはいうものの、彼女の人当たりの良さにその緊張も大分薄れている。
その証拠に冒険の本心を語るのは、彼女なら理解してくれるかもと思うほどだったからだろう。
空を見上げる彼女をみやり、同じく空を見上げて行けば、深い闇色の空に橙色の星が舞い上がる。
両親も彼女が浮かべた危機感を感じ取っていたのか、緊急時に発動する転移や高等な治癒魔法を付与していた。
当人はまだその危ない目にあっていないのもあり気付いていないが、魔導に明るい彼女にはそれが見えるかも知れない。

「そ、そうですか……? ──はい、肝に銘じておきます。万が一があったらパパとママも悲しむし、それにエリザベート様にも申し訳ないですから」

良い尻だったは、半笑いが一瞬浮かんだのもあって、もしかしたら聞こえていたのかも知れない。
人差し指を立てる仕草にこくりと頷くと、こちらにもタンブラーが回ってくる。
それを受け取ると、ありがとうございますと柔らかな微笑みで兵士にお礼を告げる。

「ふふっ、エリザベート様は優しいですから……私の嫌なことはしないかなって思いました」

冗談めかしてはいるものの、途中から自分で何を口走ったのかが時間差で実感していく。
誤魔化しの言葉の後に落ち着きないのが見えれば、かぁっと一気に耳まで真っ赤になりながら、こちらまで慌てふためく始末。

「ぁ、えっ、う……え、えっと……え、エリザベート様はど、同性とか興味ない、ですよね……!」

以前、同じ貴族の娘にさも当たり前のように手を出されたことがあったのもあり、そういうのも上流階級では意外と普通なのだろうかと勘違い。
そうでなかったとしたら、とんだ恥知らず発言だと恥ずかしさが一気に込み上がる。
酒はと問われれば、少しだけと片手で中指と親指の合間に隙間を作って見せて、その手を重ねて宴の中へ。
進められるがままに飲んで食べて、踊れとなれば靭やかな舞をみせたりと楽しく騒いでいく。
彼女が嬉しそうに笑うなら、こちらも釣られてもっと嬉しくなる、そんな不思議で楽しい夜は更けていく。
また会えたらいいな……なんて思いながら、もっともっと彼女を知りたいと願いながらアルコールが眠りの沼底に意識を引き込みながら、今宵の幕は降りるのだろう。

ご案内:「タナール砦」からエリザベートさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からメルリンディアさんが去りました。