2023/08/04 のログ
影時 > ――其処に何か待ち受けていたのか否か。

血煙と黒煙が立ち込める戦禍を、影の名を持つ者は馳せる――。

ご案内:「タナール砦」から影時さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 タナール砦
 満月の昼

 魔族国との境目
 押し入れさせる事も、攻め入る事も許されない
 アスピダのような半端な時間ではない。
 砦というこの一か所の奪い合いのみに注がれた意思は、アスピダよりも血肉が濃い
 濃く、血に染み込んでいるとわかるように、何度雨が流していったって砂色の大地
 それは再びドス黒い色へと変わっていく。

 地面 壁面 階段
 あらゆる場所に触れていない場所なんか、無い。


   「―――■■■■■ァァァァァッッ!!」


 裂帛の狂号
 白いギザ歯を剥き出しにし、赤い瞳の中心にある黒目が赤く塗りつぶし霞むかのように
 その表情は狂戦士そのものを現す。
 両手で携える黒鉤大鉈 砦の中でも振るい切れるような刃渡り
 鎧を両断する肉厚な身幅が、二つ名を現すようにその黒鉄の塊を間合いに入った者らと何度も鍔競り合う。
 人間でも亜人でもない 魔族国出身者との戦闘
 ダンタリオの血筋の本懐 目の前にいる奴らに積み重ねた、数えきれない血獄
 ミシリと両腕が力む度に覆う黒鉄が耐え切ろうと悲鳴を上げながら、魔族相手に力も技術も
 握りしめる武具さえ劣るところはない。
 魔族そのものになっても良かったと思えるほど、対等以上に仕上げた混ざり合った躰の膂力。
 それが斧や鉈、剣に対し刃を合わせると、跳ね返るような金属の撓む音 溢れ出る刹那の剣花が散る。

 耳に連続的に響く鉄の悲鳴 鉄の咆哮。
 鎧事胴体半分を胴薙ぎが振り切ると、黒鉤大鉈の刃先に肉筒がずるりと引き出されてついてくるだろうか。
 反す刃 回転する靴底 下から斬りあげた刃が片腕を肩から斬り飛ばして崩れさせる。


   「アスピダが あんなにも近いのに―――!!」


 バリッバギッと歯軋りをしながら、メイラの表情は修羅のよう
 狂気に呑まれるように、追従する兵らは、メイラが先頭で漁り散らかす兵らに槍を突き立て、剣を脇から刺し貫く。


   「お前達如きに出遅れては、あの御方は褒めてくれない…、…!!
    お前達なんか もう“今更”ですのよっ!!」


 タナール奪還 何度目かになるそれに、何度も血肉に変えていくメイラの両腕
 アスピダに赴かなかった分の消費しきれていない感情と力 捧げられなかった気持ちが、溢れ出る。

ご案内:「タナール砦」にチヨさんが現れました。
チヨ > タナールに響く怒号と喧騒、それの中心に在りながらもその場所は奇妙なまでの静けさに包まれていた。
人間の兵士たちが戦に備えその儚い命を僅かにでも生きながらえるために訓練をするその場所は恐れ、そして望まれた戦の最中に足を運ぶ場所ではない。けれどそれだけでは到底説明できない奇妙な空気がその場所を支配していた。敗戦の将であれば見晴らしがよく侵入者を一方的に迎撃するには都合よいその場所が静寂を保っている不気味さの真ん中にそれは昏々と眠っている。

 ――あれ、なんかきた?へんなの、へんなの。

すぅすぅと眠っていたそれの目が突如見開かれた。同時に巨獣の唸り声のような低い音が訓練場内に満ちる。地面に座り込み、項垂れるようにして眠っていたそれがゆっくりと上体を起こすにつれ、その地響きは強くなり

 よいしょ

現れたのは黒白の花弁。地面を割って現れた肉厚の五枚の花弁は少女を囲むようにその威容を降り注ぐ陽光の元に晒した。それの背後から無数の触手を露わにしながら現実味の薄い色合いをしたそれはその鎌首をもたげ、その中心に座していた少女のような形をした何かを持ち上げる。ぐねぐねと蠢きながら伸びていく巨大花の中心で僅かに微笑みを浮かべる少女へと目を凝らしたならその下半身が巨大花と同化しており、祖の花弁が腰に当たる部分から生えている事に気が付く頃が出来る。再度注意深く辺りを見渡せば風化した骨……人型や魔獣のそれが僅かに周囲に散らばっている事にも気が付くだろう。それは人、魔物問わずその場所を訪れるものを捕食対象としていたようだ。

 おきゃくさん かな

アルラウネ……魔性花、人食いの猛花等と言われる魔物の形をしたそれ入口へと目線を向けると小さく呟き、欠伸を一つ。大口をあけながらぐぐっと体を伸ばして太陽を仰いだ後ふぅと思案するように首を傾げる。

ご案内:「タナール砦」にチヨさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にチヨさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 砦という中を突き進む。
 守りに徹するならばその中に入るには、数で押していくしかない梯子攻めだろうか。
 堅牢な壁 開かれない門
 砦を可能な限り破壊してはならない。
 それはこの境目を無くしてしまうに等しい行為 門も同様であり、閂を一々扉事破壊してしまうことは是とされない。
 メイラもまた同意であった。

 故に、この攻め 始まりはまさしく 最上階。


   「どきやがれですわぁぁアアアッッ!!」


 切っ掛けを 大きな切っ掛けを産めばいい。
 黒真銀に身を包み、鉄塊を握るメイラの体が梯子と言わず、まるでぶん投げられるように砦の壁
 弓矢を射掛ける為の上階通路へと数人を振り割る勢いで着地する。
 槍衾になるつもりなどは毛頭ない。
 鉄塊の他、腰から抜き出した斧 右手の鉈 左手の斧
 二つの肉厚な鋼を手に、魔族らへと力と力で克つ姿。

 絶命しきれずとも落とせばいい。
 そこから新たな人員が梯子やその他から中へ染みのように流れ込んでいく。
 黒い先端が突っ走ることで、広がっていくのなら、砦内部
 魔族の青い血が 緑の血が 赤い血が 何度も壁面を重ねて濡らしていく。


   「―――!?」


 頭部を割るように、左手の斧が食い込んで左右に分かれながら分厚い頭骨を叩き落とした手ごたえの後
 呼ばれた声に周囲の残党を者々で始末しながら見下ろしたのは、砦内屋外訓練場
 広く場所を取られたそこは、素振りや型の実践稽古で用いられるだろう中庭的な存在だろうか。
 中央には大輪 砦の中にはやや似つかわしくない設置型の魔物が備わっている。


   「…、…ドリアード? いや、アルラウネ?」


 大輪から伸びる上半身
 女型の躰と周囲の骨 メイラの鼻先にはまだ香らないものの、おびき寄せるものか蔓
 それしか手段は無いと判断できる中で実にアナクロな方法を取るだろう。

 どうやるか?
 ―――怪力令嬢という名の通りだ。


   「弓手 集まりなさいっ!」


 弓手 そして矢じりには火を求められる。
 

   「構えっ」


 チ゛キッ チ゛キッ チキッ ヂキッ ギキッ
 弓の弦が張りつめる音と共に、メイラは鉄塊を両手から放り、手短な重量物
 砦内の壊れた像でもなんでもいい 持ち上げるそれは人数人の面積外見をさせた岩塊の重量。


   「放てェッッ!!」


 複数の炎の矢と共に、それの終わり際に投擲される重量物体
 メイラが上半身を捻り、ブォンと投げ撃った一撃。   

チヨ >  うーん、よくねた

陽光が降り注ぐ場所でたくさん食べ、よく眠った。アルラウネの中でも火山地帯に住む種を模したそれはその性質をも引き継いでおり、鋼のような外殻と触手、そして見た目以上に多彩な攻撃手段を有する戦闘能力の高い種ではあるものの、一度満足に食事をすればかなりの時間栄養補給を必要としない。ヒトと魔族が争うこの場は最近お気に入りになりつつあり、時々気が向いた時にこうして一角を占拠。当初こそ排除に来る双方を餌にしながらコロシアイを楽しんでいたものの……

 ん、おなかへってないなぁ

ソレは迫る戦いの気配に対して珍しく不満顔。普段ならともかくお腹いっぱい気味のタイミングで安眠を邪魔され余り気が乗らないというのが今の気分。眠っている間ほぼ自動迎撃で築き上げた死体の幾つかにあれ?と首を傾げつつも

 どっかいっちゃおっかな

取り込んだソレは知らなかったがアルラウネのなかにも種類は色々とあり、あまり好戦的でない種も存在している。取り込み模倣する際そういった気質も内包してしまっていたそれは面倒だし戦いを避けようかなと判断するとも一つ伸びをして……

 うわ。ちくちく。ちくちくきた。

突如降り注いだ黒雨に周囲の触手が霞む。一見無造作に振り回されるそれはその先端にともされた炎をものともせず数の暴力とも言える密度で降りしきる雨の一部を柔らかい生身に当たるものだけ払いのける。触手の嵐から逃れた幾本かの矢が花弁に当たるもカツンと硬質な音ともに弾かれ、そこに塗られた脂で僅かにその表面に火を纏うも気にする様子は見せる事無く、その炎耐性が伺える。そんな怪物が正眼に構えたのは投擲された巨岩。

 よいしょー

気の抜ける掛け声とともに迎撃に拳が振るわれた。その華奢な見た目からは想像もできない程の頑強さを持つ様子で打ち据えられた巨影は床に落とした焼き菓子の様にバラバラになる。同時に人の頭ほどの太さの先にでこぼこした節を有し、溶けた黒鉄を固めたような触手の一つが唸りをあげて撓る。並の魔物であれば一撃で粉砕するそれはその道中にある欠けた柱や崩落した天井の欠片の全てをなぎ倒しながら砦の壁へと横薙ぎに叩きつけられた。一撃とは言わず二度、三度と叩きつけられる破城槌の様な衝撃はこちらを見下ろす人族にも届いている。そして遠からずその足元が崩落を始めるであろうことも予想できるかもしれない。

メイラ・ダンタリオ >  
 炎の矢は嫌がらせにしかならない
 肉厚なあの花びら達 “ナマモノ” に着火できると思う阿呆はここにはいない。
 生肉ですら焙られるだけだ。 あれの後に放った、自身の投擲こそが本命だったものの硬質的な肌と膂力 
 砕け散った岩塊に全員が怯むだろう 人型 サイズの違いはあれど、貫ける武具と貫ける角度を用いれば
 タナールでの圧倒的経験から恐れなんて抱かなかった。
 あれはいったいいつからいたのか。
 芽吹いて、喰らい、育ち、居座るまでの経緯が速すぎる。


   「クッ―――!?」


 他対象を滅ぼしてから最後に仕留めても良かったものの、この立ち位置での先手必勝を欲張ったメイラ
 投擲がまるで聞かず、自身のように破壊して見せながらも足場を崩しにかかる様子。
 揺れる地面 破壊する様子 タナールの理を理解していない辺り、あれは魔族側の差し金とは到底思えない。


   「ただの野良の木偶の棒がっ。」


 あれは自由過ぎる。
 周囲の魔族らも止めようと階下で動き始めるものの、蔓が薙ぎ払う様子は間違いなく第三者の立ち位置。


   「混乱に乗じ階下を制圧 行きなさいっ。
    アレを放っておいては、わたくしはあの御方に顔向けできませんわっ。」


 乗っ取りどころか破壊されようとするなど、タナールに身を置いていい存在ではない。
 武具を取り、崩れかかる場所から一思いに 飛び降りる。
 馬鹿の所業に見える上空 蔓の間合い領域 しかし、振われる蔓に対し、躰を逸らすほどの両上段振りを叩き込みながら
 互いの硬さと力 この広がっている稽古場がビリビリと音で振るえ、耳に広がる轟音と共に
 地面へと鎧が噛み引きずる音が尾を引きながら着地するだろうか。


   「オラァッ木偶の棒っ!!
    わたくしが相手になってやりますわっ。」


 崩れている壁と柱を見ながら、メイラは鎧を撫でる。


 ―――イーヴィア・ヴァルケスは伊達ではありませんわよ この木偶の棒。


 ギィッと獰猛な笑みを浮かべ、メイラは内心で高めようか。

チヨ >  ――嫌い!

魔性花対策に火矢をいかけられることは度々ある。強靭な触手こそあれ、基本的に外殻を持たずその場所に根を下ろしている通常種のアルラウネであれば柔らかい人部分のみならず花弁や根っこに対しても鋭い鏃は有効であり、その脂で身を焼けば彼女等は容易に弱体化する。しかし火山付近に生息するこの種は切り立った岩肌や溶岩などの過酷な熱に対応し、度々生息地を移動すらする種。ひとの放つ火矢よりも度々飛来する溶岩や火山岩の方がよほど威力がある。……が嫌なものは嫌なようで、苛ついた表情を浮かべながら迎撃に余った触手を振るう。高所から射かけてくるヒトを叩き落としてやろうという力任せの殴打は砦をその衝撃と轟音で揺らしながら打ち、落下してきた魔をも巻き込みながら砕き、崩していく。

 ……!

ただ障害を排除せんと振るわれる触手の合間に落ちた影。植物を断つ鉄器……巨大な鉈の様なものを大上段に構えながら飛び降りてきたように見える黒影を見上げ、無慈悲に叩き潰そうと翻った蔦の一本がその剛腕に迎え撃たれ鉄塊を断つような音と共に中程から千切れ宙を舞った。痛みはないとはいえ鉄塊をも拉げさせるその殴打を受けて耐えるどころかちぎって見せたその威力に僅かに警戒を滲ませながらもそれ以上に広がるのは笑み。今回強力な種を選び過ぎたかと内心退屈していたそれは明確な”敵”を見つけ歓喜していた。

 木偶の棒か、ためしてみる?

衝撃と共に土煙を舞い上げながら少し離れた場所に着地する鉈の主は空中という圧倒的不利な条件から見事衝撃を殺しきり即座に臨戦態勢へと移る。待ち望んだ強者にその正気を感じさせない眼をゆっくりと向けながらそれは口元に三日月の様な笑みを浮かべた。

 いいよ。
 でも、しんでも、おこらないでね?

少し遅れて断たれた蔦の先端が油臭を漂わせる液体をまき散らしながらどしゃ、と地面へと落ちその染みを地面へと広げていく。

メイラ・ダンタリオ >  
 滴る油の匂い 刃にもべったりとそれはついている。
 抵抗力が少なくなり、切れ味が鈍りかけるか?
 しかし屈しない 躰の高揚が増す中、蔓と膂力
 斬り落としながら突き進むまでと、対峙した瞬間激突の一歩を踏み出したろう。
 時間経過したその場は、崩れた壁 燃え焦げた痕などが残っていたとか。

ご案内:「タナール砦」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からチヨさんが去りました。