2025/03/08 のログ
ご案内:「無名遺跡」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > 無名遺跡。昼夜を問わず、変わらずにほぼ一切の陽射しの差さない閉塞的な空間が維持されている。数多くの遺跡特有の怪物だけならず、生きたトラップ類が作動する事も在り、安全性だけを考えるならば活動に適している場所とは到底には言えない。
しかしながら、怪物の棲息数が多いということは、即ちにおいてはその遺伝子も多種多様に渡っているという事に他ならない。よって、その採取を目的として、此処に足を運んで来る者が居る事も在った。
「………」
薄暗く、照明は壁際に立て掛けられている松明の類だけ。周囲を焼き締めた煉瓦の壁で構築されている人工回廊内を徘徊する巨大な蜥蜴のような生き物が一体散見される。表皮粘膜の腹部に位置する場所が破れ、そこから黒々とした体粘液を垂れ流しにしながら。
街でぬくぬくとしている一般人や、油断した対象ならばまだしも。生存競争の著しい環境下での強敵を相手に遺伝子を採取する事はこういったリスクも在るという事だ。手痛い反撃を受けて命からがらに情けなくも逃げ出した怪物は、回廊内を廻っていた。
そのように今も肌に感じ続けている猛獣や、それに類する危険な生命体の気配から身を隠しつつ、辿り着いたのは回廊の端に設置されている宝箱となる。
■ドラゴン・ジーン > ぬるん、と、間も無くしてそこに手足をかけてとりつき、閉じられている箱の中にへと入り込んだ。施錠をされており閉じた箱も鍵穴やその他僅かな隙間さえあれば侵入するのは非常に容易だ。本来は不定形である我が身を生かして一抱え以上もありそうな豪奢な装飾の施された宝箱の中にへと逃げこんでしまう。
あたかも、この手のダンジョンにはありがちなミミックのような有様だ。そのまま内包されている財宝類に紛れ込んでその底に身を隠し、周囲の危険をやり過ごす為の休眠に入り始める。
潜り込んだ粘液の分だけ嵩増しのされた箱の容量は満杯になり、見目においては内圧によってみちみちと箱を構成している木目の板や金属部品が窮屈気にしているようにも見えるかも知れない。だが、そのような些細な変化は周辺に居る怪物達も気にしないだろう。
遺跡内に座している財宝など、食えも飲めもしないのだから。
ご案内:「無名遺跡」からドラゴン・ジーンさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にシアンさんが現れました。
■シアン > 無名遺跡中層に程近い上層部――
例えば巨人が闊歩したとて十分な余裕がある広さを誇る石造りの巨大迷宮。
或いは巨人が設えたのではなかろうか?
等という疑問が浮かぶのは、石レンガ、照明、扉、何から何までが巨大である故。
己が小人になった気分はどれだけ経っても抜けないが……
「モノホンが出てこねぇのぁ救いだな」
ぽつり、ぽつりとぼやきながら、とある小部屋の前で……小部屋といっても王城の舞踏会を催されるほどの大広間ほども巨大だが……チョークやら松脂の残りやら兎角記しに使えそうなものを使って、がりがり、ぬりぬり、記しているのは簡易の魔物避けの結界の印だ。ついでに聖水やら魔物が嫌う香やらも一緒に混ぜ込んで、魔術の類は使えないなりに呪いの真似事中。
小部屋の中には、魔物に負けて死にかけてたり犯されたりの要救助者数名。
「さて。こんなもんだろ。助かるかは……さて……」
あと数時間もすればギルドの救助隊本隊がやってくるがそれまで保つかは、気力体力次第。
応急処置はしておいたもののそれ以上は出来ないのでこの結界ともどもお祈りである。
「次行くか」
ぱん、と乾いた音を立てて手のひらを合わせ本当にお祈りしてから踵を返す。
救助隊の斥候としてやってきて何名かの要救助者は処置していたが、まだ居るかも知れない、まだ仕事は終わりじゃない。このあたりをぐるっと見回ってから一先ず休憩にしよう、と得物の鉄杖を片手で持ったまま、歩き出す。
ご案内:「無名遺跡」にユーミルさんが現れました。
■ユーミル > 男の足元を、猫ほどの大きさの、数匹の鼠が駆けた。
ウェアラット――上層に現れる大鼠の類だ。尤も、巨大迷宮にあっては、小鼠なのかもしれないけれど。
けれども鼠は男を襲わんと飛び掛かるでもない。
傍らをちょろりと駆け抜け、先に待つ娘の元に辿り付く。
それは男と共に斥候としてギルドより派遣された冒険者。クラスは――魔獣遣い。
「――――… 、… ?――… !」
鼠の前に屈み、乾果を片手に、床を指先でこつこつと叩いて何かを問う。
右か、左か。 在るか、無しか。 或いは――生か、死か。
鼠が娘の右手と左手に、――…選択肢を示すように鼻先を寄せ。
少女は、ぱ。と顔をあげた。向くのは鉄杖を持つ筋骨隆々の男へだ。
「アッチ。 通路、先。左――… ヒトリ。血のニオイ!」
鼠に餌を与えれば、――鼠は散開し、駆けてゆく。
少女はといえば、小麦色の膝のバネを利かせ、ぴょこんと身軽に立ち上がって。
■シアン > 一噛み、毎、一掻き、毎、破傷風をはじめとした病に罹患する危険のある大鼠。
其れが視界の端を掠めればぎょろりと金の眼がそちらへ向く。
「……?」
薙ぎ払うか? 蹴っ飛ばすか? 歩みで揺れる手先と鉄杖や足がその緩やかな速度から急加速を得る、前に、ぴたり。
止まったのは鼠達が己等まるで意にも介していない様子で、しかも警戒心迄無く足元近くをあっさり通り過ぎたから。
何だ? と、顔に書いてあるような面相で眉を潜めたり右目だけ開いたりとしながら掛けていった先を見遣り――……
「……」
その向こうから漂う、僅かな、常人なら感知は出来ぬだろう程度に僅かながらの妙な匂いや拙い言葉遣い。
怪訝な顔と臨戦態勢に差し掛かった体勢は数秒そのままだったが顔からも体躯からも不要な緊張を解いて、
「……何だっけか。名前。ぁー。民族的な……」
この遺跡内に入り込んだ同業者。顔合わせ程度だったが見覚え、聞き覚え、嗅ぎ覚えのある姿に首を傾げてから、少女の方へと向かって歩き出す。
害意ありませんよ、敵意ありませんよ、と示すよう靴が床を踏む音を大きく立ててゆっくりとした足取りで。