2025/02/03 のログ
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影時 > 「とは云え、座していても奴さんから来てくれるとも限らんからなあ」

――遣ってくるにしても、死体が這い這いして、となっていたりした日には嗤えない。
迷宮に潜る前、人相書きの束は纏めて鞄に捻じ込んではおいた。
せめて、面相で判断できうる状態であって欲しいものではある。そう願いながら立ち上がり、水袋を仕舞う。
水袋を腰裏の雑嚢に放り込み、装備を確かめる。動き出す時には必要なことだ。
防具よし。身に仕込んだ刃よし。腰の刀よし。手持ち武器が無くとも戦えるのが忍者だが、刃があれば捗るのは間違いない。

「…………勤勉なモンだなぁ。自分からやってくるたぁ、熱心なモンだ」

さて。音がする。這いずる音か。違う。足音だ。人間のか?いいや、具足を纏っているものにしては生々しい。
奥に続く通路の入口を満たす闇の中から僅かに聞こえてくる音に目を細め、襟巻を引き上げて口元を隠す。
敵か。敵だろう。察しを付けつつ気配を滅し、密やかに壁沿いに通路の入口近くの陰まで移動する
この玄室は天井全体が仄かに発光している。夜目が効くならば、明かりは要らない。後は隠れるものの技量次第だ。
入ってくるものが魔物であるなら、踏み込んだ処で殺す。そうでないならば、直前で手と刃を止めるだろうか。

影時 > (ああ、これは……)

さて。近づく足音と気配、そして臭いで察する。此れはヒトではない。魔物であると。
重い響きこそあったが、鎧を纏った戦士と読むにしては違和感がある。故に人ではない。
闇を抜けて、玄室に出てくる姿は分厚い贅肉で身を覆った大柄なオーガ。
だが、気配を隠して身を伏せるものには気づかない。見落としている。それ故に――。

「…………」

ただ、一閃。左腰から出でて、立ち上がりざまに抜く鋼刃が奔り、振られて鞘に戻る。
その遅滞なき抜き打ちが骨肉をするりと斬り、刃の主が闇の中へと滑り込む。
入れ替わりに残る骸が倒れ、生まれる音は二つ。残る音は何もなく奥へと進みゆく。

目的を果たせたか否かは――闇のみぞ知る。

ご案内:「無名遺跡」から影時さんが去りました。