2025/02/02 のログ
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
■影時 > ――穴が開いていたら入ってみたい。
――地の底に何が潜むのか。隠れているのか。
と、ヒトの欲とその起こりは数知れずとも。迷宮には宝が隠れていると聞けば、向かわずにはいられない者が居る。
童心めいた冒険心の持ち主であったり。悪党であったり。はたまた食い詰めものであったり。
何も得られずとも生きて戻って来られるならば、大なり小なり教訓を得る。
詰まりは命あっての物種、だと。さて、帰って来れないものについては、どうなるだろうか。
「……――まァ、請ける分だけには別に鎌いやしねぇんだがよう」
無名遺跡と呼ばれる遺跡群のひとつ。
その表層から中層とされる領域の境目と呼べる層の玄室のひとつに、漏れる声がひとつある。
自然の石窟の表層を焼き固め、無理やり均したような床に壁に背を預けつつ座し、水袋を呷る男の姿だ。
一刻前までは、この部屋には何体もの魔物が守衛の如く放り込まれ、屯していた。
だが、それらは悉く切り捨てられ、物言わぬ骸と化している。
酒の肴にするには、最悪な類だ――と。顔を上げれば嫌でも目に入るものに、溜息も漏れる。
「ここまで潜ってみるのは良いんだが、……望み薄じゃねぇかねぇ。いつものことだが」
迷宮探索者にあるあるとも言える事柄として、未帰還者の探索、捜索願というものがある。
生還出来たら幾ら、死体を持ち帰ったなら幾ら、と。冒険者ギルドや親族関係者等々から出されるものだ。
それなりに迷宮に潜れ、腕に覚えのあるものなら、請けておいても損は余りない。
上手く行けば、空ぶりでも小遣い稼ぎが出来る。だが、大体のところは此れも空ぶる。そんなに美味しい話はない、とばかりに。
今回も恐らくそうだろう。
貴族の子女が何を夢見たのか、遺跡に潜って戻らない。それを探して来いというのは――此れも無理な相談だろう。
魔物に喰われて死ぬならまだいい。生きていても慰み者になって世を儚むような有様と、さて。そこに救いがあるかどうか。