2024/04/03 のログ
ご案内:「無名遺跡」にE・T・D・Mさんが現れました。
■E・T・D・M > ダンジョンが居る
ダンジョンが在る
迷宮というのは何も陸地が続いているばかりではない
今、見回して解るように水場が湛えられている場所も在る
流水の勢いは弱く澱みがちで、滞留した水にはプランクトンが棲み付き
あるいは水藻が生い茂っている所為でお世辞にも余り透明とは言えない
それらを育てているのは天井から照らしている微弱な魔力光となる
一帯に差し込んでいる照明によって浮き上がっているのは半ば水中に没した建物や瓦礫の山
かつてにおいて何等かの文明が在ったが今では地下水の底に沈んでしまった…という感じの景観だ
此処を渡って行くには当然ただ徒歩で歩いて行くわけには行かず、泳いで行くか、水上を歩行できる魔法を用いるか、はたまた規模の大小はさておいても船が必要になる
このエリアに足を踏み入れる冒険者は接岸されている、御誂え向きに櫂付きの木製の小舟を認める事になるだろうが
■E・T・D・M > 此処で聞こえて来るのは水滴の滴る水音
何処から流れ込んで来たのか泳ぐ魚の尾びれが水面を叩く音
そして、澄んで冷たく湿った大気を震わせて響き渡る歌声の旋律…――
そう、耳をすませば聴覚に触れて来るコーラスの歌唱が染み入って来る
年若い女たちの諳んじる透き通ったソプラノは閉鎖された空間に木霊を繰り返し美しく渡り続けている
だが、余り耳を傾け過ぎてはいけない
その歌声には魔力が孕んでいる
外界でも船乗りたちが時折に遭遇する現象だ
海を航行中に歌声が聞こえ引き寄せられるようにそちらの方角に舵を取った
あるいは海面を泳いで手を振って来る、海から顔を覗かせた女の誘導に従ってしまった
すると船はたちまちに岩礁に乗り上げて船底を傷つけ、憐れ海の藻屑と転覆してしまう、というもの
これは猛々しき海の者達すらも震え上がらせる人魚の声だ
歌の出所にへとその視点を移してみよう
水上に露出している藻だらけの瓦礫の山を腰掛けにして
見目麗しい女の上半身を露出させ、腰から下が青々とした魚の鱗と太い尾を持つ半人半漁の人魚たちが
楽し気に声を揃えて歌い上げている様が見えて来る
そしてそれらを指揮しているのは水中から伸びて渡る蛸足の如き軟体
それの握り締める赤いサンゴの指揮棒
迷宮の一角にすまう主手ずからに人魚のコーラス隊を伴い
その奏でる旋律をもって冒険者達をこの場にへと引き寄せようとしている
無論、伝説通り、もしも油断して、油断していなかろうとも歌声をレジスト出来なければ
此処までやって来た船は岩礁に…というよりも瓦礫の一つに衝突という憂き目を見る事になるだろう