2024/02/22 のログ
ご案内:「無名遺跡 入口」に布都さんが現れました。
布都 >  
 冒険者ギルドに所属するという事は、冒険者ギルドからの援助を受ける代わりに、ギルドからの特殊な依頼は断る事が出来ない。
 それは、布都のような人間であっても、真理と言えるものだ、求めるものは、何かを差し出すと言う物だ。
 今回は冒険者としての布都ではなく、鍛冶師の布都に対しての依頼。
 冒険者ギルドというのは、冒険者達が、冒険をやりやすいようにする相互扶助の役割がある。
 冒険者たちの生存率を上げるというのであれば、武器防具の整備点検が必須とも言える。

 普段は、街に居る鍛冶師にお願いして、研ぎ直しや調整などを行う物だ。
 しかし、遺跡からの帰り、というのが一番危ない。
 理由としては、遺跡に潜り、戦闘して武器が摩耗する、その帰り道に盗賊や魔獣に襲われるという事は有るのだ。
 それに、出発時でも新人であれば、整備不十分な時もある。

 街の鍛冶師は兎も角、この女のような冒険者も兼ねている鍛冶師であれば、出張することも適う。
 という事で、冒険者ギルドからの依頼で、女は今、無名遺跡の入り口に作られている簡易ベンチに腰を掛けていた。
 其処には、ギルドから貸し出された、携帯用の簡易鍛冶の為の魔道具が置いてある。
 魔獣から取れる魔石を装置に入れると、一定の温度、鍛冶が出来る程度に熱を発してくれる魔道具。
 これであれば、女のような、魔力を持たない者でも使える。
 本格的な修理や鍛造は―――女の全力を出すことは叶わないが、一時的な修繕や修復、軽い調整程度の打ち直しは出来る。
 値段などに関しては、ギルドの指示もあり、割高ではあるが、研ぎ直しや調整が、冒険直前や直後で出来る。
 その為に呼ばれ、女は、傍らに、日本刀、作務衣という、ちぐはぐな恰好の儘、腕を組む。

 ―――遺跡から出てくる、若しくは、遺跡に入る誰かを待つために。

ご案内:「無名遺跡 入口」に影時さんが現れました。
布都 > 「――――」

 数人の冒険者がまれびとの道の方より、やってくる。挑戦者なのだろう。
 此方の事を物珍しそうに見て、得心が行ったのか、納得した様子で過ぎ去っていく。
 此処に、鍛冶屋があれば後の事は、心配は薄くなるだろう事は理解しただろう。
 向こうが何も声をかけてこなければ、此方から何かを言う必要もない。
 唯々、彼らが行くのを見て送るだけだ。
 言われている役割は果たしているし、もし、何も鍛えなおさなかったとしても。
 戻れば、時間の分の給金は出る。
 だからこそ、女は瞳を閉じて、唯々、誰かが来るのを待つだけだ。

 修繕の依頼があればよし。
 修繕の依頼が無くても良し。
 こちらは何も困らない。

 だからこそ、唯々、ベンチで腰を掛けて、誰かを待つのみ。

影時 > ――ひどい目に遭った。

初心者含め、臨時に数人で組んで遺跡に潜る。それはいい。そのこと自体は決して珍しいことではない。
駆け出しを混ぜ込んでパーティを組むことで、ベテランにはささやかながら報奨金が入る場合がある。
端金と呼べるレベルのそれに熱心になる者は少ないとしても、酒代にはなるだろう。
この男もまた、その一人だ。小銭稼ぎに血道を挙げることはなくとも、初心者を支援することは功績面でも悪いことではない。
だが、初心者というのはベテランでも想定しないレベルのトラブルを、引き起こすものでもある。

「……流石に死ぬかと思ったぞ。あいつら、ちゃーんと外に出れてンだろうなー……」

遺跡の奥底から足音低く、微かに。随分と草臥れた風情で歩いてくる姿が一つ、ある。
黒色と柿渋色、そしてその色に隠れる血色に染まった姿はこの国、この土地では珍しい装いだろう。
腕と胴を守る手甲、鎧の仕立てこそ当地風との折衷とはいえ、腰の得物含めて余所者であることを隠さない。
だが、不思議と違和感がないのは、それらを身に纏った男の立ち振る舞いのお陰だろう。
其れが少し崩れ、疲れているように見えるのは――潜った先で遭遇したトラブル、そしてその対処ゆえだろう。
男の肩上、そして頭上に乗っかったシマリスとモモンガともども、疲れが色濃い様子で外に出れば。

「……――お。奇遇だな?」

遺跡内外の光の差を調整する様に瞼を数度瞬かせ、入口にある気配に顔を向ける。
ここらは現地集合のため、ちょっとした待合場のようになっている場所がある。そこにあるベンチにある姿に覚えがある。
何せ、腰に差した得物の作り手だ。それを間違えようもあるまい。
お疲れムードの小動物達ともども、いよう、と右手を挙げて声を投げ掛けてみようか。

布都 > 「ぁン?」

 入る冒険者が居れば、出てくる冒険者も居る。
 先程の冒険者が入ってからどれだけしたのか、時間の感覚は無いし、それは如何でも良い事だ。
 中の方から足音がする、小さくても、無ではない。
 鉄の甲冑の音ではなく、聞きなれた草履の足音だった。
 それは、自分が捨てられた国で良く履かれる靴の音であり、自分も又それを履いている。
 上って来た人間を見やり、ぼろぼろの姿―――予想だにできない様子を見て、あン?と、もう一度。

「死に損なったのか?ジジィ。」

 出てくる冒険者は、馴染みの男であり、今現在で言うならば、唯一の客だ。
 認めた人間しか客として認識しない面倒な性質を持つ女ではあるが、その腕を全力で振るう唯一だ。
 その人間が死ねば、まあ、また客が居なくなるという、そんな相手。
 気軽に手を上げている様子を見れば、生きてるのか、と確認するようなつぶやき。
 頭の上に居る小動物たちを眺め、それからその様子を全身確認する。

「奇遇っちゃ、奇遇だな。
 あンたは何処にでもいンだから、何処に居ても奇遇になると思うさね。

 ――――で?」

 どうしてそんなに、ぼろぼろなのさ、顎で彼の装具のダメージを指し示しながら、問いかける。