2023/12/12 のログ
ご案内:「無名遺跡」にエンさんが現れました。
エン > 「どうしたものかねぇ」

苔やら黴やらがあちらこちらの石の隙間を埋める石牢の中――
ぽつんと一人あぐらを組んで座って肩を落とす。

「救助……期待出来るかな……いやぁなんとかするしかないか」

助け舟を待つか自力で何とかするかの二択は事実一択ではあるが。
顎に手を添えて、首を右に左に何度か捻っては、詮無い事を零す。

「どこだろね、ここ。まあ、入り口からはそう遠くは……ん~」

――湾岸都市への道行き、
友人を訪ねに珍しく遠出をして馬車に載ってみたらその馬車が山賊に襲われた。
何で君ら山賊なんてやってんの?
そう思わず質問を投げて掛けてしまうぐらいに、
包囲から護衛の殲滅からアジトへの連行がスムーズであった。
ここまではいい、いやよくないが……
そのアジトというのが無名遺跡というのが大変よろしくない。
とりあえず大人しくしといて適当なところで暴れてとんずら、
の予定は変わらないのだがこのとんずらが随分面倒臭くなった。

「さて……」

よっこいしょ。と、億劫そうに一声かけながら立ち上がる。

エン > 見張りは、居ない。他の人質も、居ない。隣にも同じような空間はあるようだが人の気配もない。……素手で石牢ぶち破れるような人間なんかそうは居ないので見張りがいないのはまあわかるにして、他の人どこいった? 何で俺だけここでぼっちさせられてんの? 等、疑問はあるが、兎角、格子の隙間からひょいっと手を出して錠前を掴む。

「えい」

ぐしゃ。

鉄の錠前を、綿菓子でも握り潰すみたく軽々と片手で丸めて千切って、ぽい……
は、音が鳴って目立つので、そっと牢の内側に手を戻してから床に静かに置いた。

「まあね。もうね。この部屋木っ端なんて真似はもう出来んけどこれぐらいはね」

独り言ちながら、黒眼鏡とその奥にある閉じたままの瞳を閉じたままにぐるり、
周囲を睥睨するように首を巡らしていけば……

「えーと。ここがこう繋がってて……
 ぁーもうマッピングめんどくさぃー」

実は先程からしきり零しまくっている独り言は音の反響を確かめている。
他にも、肌に感じる風の流れ、鼻に届く周囲の匂い……
目は使えないが目の代わりに使えるもので周囲を伺って。

「こっちかな」

凡そ、周りの状況は把握できた。此処にぶち込まれる折に覚えておいた状況と照らし合わせてから、頷き一つ。此処にぶち込まれるまでの道程を思い出しながら、歩き出す。

「他の人も助けにゃならんし……山賊はぶちのめさにゃならんし……
 俺もう引退して長いんだけどなぁーもうー……」

エン > こんなことなら様子見なんかしていないでさっさと暴れれば良かった。これは、マッピングに必要なそれでなくもう心の底からの本心。はぁ~~~……と、長い長い溜息を零しながら、足取りまで怠そうに、歩いていく――
ご案内:「無名遺跡」からエンさんが去りました。