2025/03/29 のログ
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ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」 周辺の山間」にナランさんが現れました。
ナラン > 風のない新月の夜。星々だけが彩る夜空を鳥が過る影がある。

背の高い樹々の合間に夜鳥の鳴き声が時折木霊する中を、危なげなく、しかし慎重な足取りで進む影がある。

(…思ったより、冷えてきた…)

弓を手にしていないほうの片手を口元にやってすこし息を吹きかける。吐息が白くけぶるほどではなかったけれど、くちびるに触れた指はひやりとした。身体を動かせば体温は戻ってくるだろうが、あまり大きな動きをしては、音を立ててしまう可能性が高くなる。いかに闇の中と言えど、手練れであれば音だけで十分。こちらを狙撃することは可能だろう。

城塞都市が占拠されて以来、元来この辺りを縄張りにしていた猟師もあまり立ち入らなくなった辺り。
できるなら、古くなってしまったであろう罠の様子を見てきてほしい、と頼まれて足を運んでみたものの。

(ちょっと、迂闊だったかもしれません)

今日は昼間に弱い雨が降った。寒さもあって賊の動きは鈍いだろうと予想したのと、何かあっても新月の闇を味方にできるだろうと思っていたので少し気のゆるみもあった。
城塞都市に向かう道から然程離れていない森の中を進んで早くも、いくつもの松明が群れて都市へ向かって進んでいるのを見つけて慌てて反対、森の奥深くへと下がった。
迷ってはいないが、聞いている罠の場所までの道のりはまだもっと、都市へちかいほうだ。

(…行けないことは、ない けれど…)

数が多すぎるし、騎乗しているものもいるようだ。そっと、大分離れた後をつけるように森の中を進んでいるものの
万一見つかれば、逃げ切れるかあやしい。

ナラン > 弓を持った指先を、先に温めた手でさする。
松明を持った行列は黙々と、だがなぜか遅々と進んでいる。
時折バチンと火が爆ぜる音が木々の間にこだまして聞こえてくる。

(……急ぐことでも、ないと 言っていました けど)

罠が戦闘の最中で何かしたら、恨みを買って良くないことが起こるかもしれない と言っていた。
予想ではもっと早く鎮圧されて、『いつもどおり』にもどるはずだったのにとため息交じりに言っていた。

(…あれだけの 数なら)

むしろ、完全に見送ってしまえば、後を追うようなものもいないのかもしれない
――――それか、行軍が遅々としているのは、後から追いついてくるものを待っているからだろうか。

小さくため息を漏らす。どちらであろうと森の中をここまで進んでしまったなら
あの集団から目を離すよりは、見えるぎりぎりの距離を保って見送ったほうが良い気がしてきた。