2025/02/09 のログ
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ご案内:「九頭龍山脈 山中」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「っはあ、はあっ……ふあっ…――も、大丈夫、かな……?」

 山中に分け入ったところ、狼の群れに出くわして。犬恐怖症=狼も駄目、な女はとにかく我武者羅に逃げ出した。立ち向かうなんて気はカケラもなく。
 頭の中は恐怖心で満ちていたし、何なら顔は半泣き状態。目に涙を溜めてなんというか獲物感がすごい。
 足の速い獣相手ではなかなか撒くことも難しいが、木の根を飛び越え大木を横切って藪を突っ切り、足元に太く枝葉の突いた木切れを投げ、と……極力追っ手を足止めしながら。
 どうにか今回はギリッギリ、上手く逃げ切れた、か……と後ろを振り返り、まだ足は緩めないままで走っていた、その時。

 ずっ…!

「う?! あ―――きゃあぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」

 余所見が災いし足元が崖になっていることに気づかず、踏み出したそこは地面がなかった。脇目も降らず全力で走っていた為ある程度勢いがあってそのまま、バランスを崩して前傾し崖下、何もない中空へ投げ出されかけて悲鳴が上がる。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にザイヴァーさんが現れました。
ザイヴァー > その日、ザイヴァーは飛竜ボルバルドラグーンを駆り、九頭龍山脈上空を飛行していた。
無論、悠々自適な空の旅を楽しんでいる…わけではなく、この山脈に巣食う山賊に対するパトロールのようなものだ。

『しっかし、なんでお前さんがこんな事やってるんだ?』
「黙れ愚剣。たまには自分で情報収集したほうが早い事もある」

部下が暗愚というわけではない、わけではないのだが……山賊から賄賂など受取っていないとも限らないのが悲しいところだ。
というわけでザイヴァーは山脈上空を飛んでいる……のだが。

「……狼が、騒がしい?」
『なんか、大きな獲物を追ってる声だねぇ』

 狼の声を感じる。何かを追う狼の声。

「ドラグーン。あちらへ飛べ」

 そして、ドラグーンを狼が騒がしい方へと向かわせれば……女性が、崖から落ちそうになっていて。

「危ない!」

 それをザイヴァーは、ボルバルドラグーンの上から、手を伸ばして女性の手をつかもうと……

ティアフェル >  追われ追われて崖っぷちを踏み抜いて――

 落ちる…!!

 成す術もなく地上へ向けて真っ逆さま。
 視界が回る。天地が引っくり返って頭から崖下へと転落し地表に激突するのを覚悟しかけたその時。

「――……っ!?」

 大きな…何かとてつもなく大きな羽音……その羽搏きは遠くからでも耳にしそうな程で。
 明らかに鳥程度の大きさではない飛竜の羽搏きを墜落する刹那に耳にしたかと思えば、誰かの手か伸びて来た。
 見開いた目に映る中空で肉薄する飛竜とそれに騎乗して手を伸ばす男性の姿。

「……!」

 気づいた時には無意識に必死でその手をつかみ返そうとして伸ばされた手に手を伸ばした。
 わらに縋る溺れる者にも通ずるような必死さで、それはまるで天から垂らされた命綱かのように見えた――

ザイヴァー > 伸ばした手。伸ばされた手。それは空中を一瞬舞って……

ガシっ!

瞬間、しっかりとザイヴァーの掌が、相手の掌を掴むだろうか。

「離すんじゃないぞ!」

 相手の眼をしっかりと見つめながら、大きな声で叫び……ぐいぃ!
 相手の体躯を、しっかりと力強く飛竜の背へとエスコートする。

「大丈夫か……? すまないな、緊急事態につき、おもいきり掴んでしまったが……手や腕は痛くないか?」

そう相手の体を心配しつつも、ドラグーンを崖上に留まらせている。
しかし、あまり長時間、慣れないドラグーンの背に乗せておくというのもあれだろう。
だが……

「狼、か」

 まだ遠くで、狼の鳴き声、うめき声がする。おそらく、この女性が奴らの昼食か夕食になる予定だったのだろう……
 だが、その食事は永遠にお預けになるだろう。

「ボルバルドラグーン、焼け」

その一言で、崖上が飛竜の炎で焼かれる。
動物を追い払うなら、炎が一番だ。

「さて、降りようか……怖かったろう、よく頑張ったな」

そう、必死で走っていたであろう、少々汚れている女性を優しく労っておこうか。

ティアフェル >  中空で交差したのはたった一瞬。それを逃してしまえばもう本当に終わる気がした。
 ほんの刹那、一秒にも満たない瞬間だったが。何故か時間がゆっくり過ぎる錯覚を覚え。

「――っ!」

 指先がすれ違った一瞬、もう駄目かと思ったのも僅かのことで。
 しっかりと落ちる間際の手をつかむ強い力。
 燃えるような緋瞳と目が合った。叫ぶ声に周囲へ涙の粒を散らした顔で懸命に肯いて。
 そのまま大した膂力で竜の背へ引き上げてもらう。

「っは、あ………ふぁ……し、死ぬかと…思った……」

 翼竜の背に招いてもらって安全圏でしかと竜の背にしがみつきながら。ばくばくする心臓。はあはあと荒くなる呼吸に滲む汗。涙目で呻くと、
 
「ぇ。あ。ああ……全然……っ、全然、平気! 大丈夫…! あ、ありがとう……転落死するところだった……」

 こちらの手や腕の状態を気遣ってくれる声にぶんぶんと首を振って平気と伝えると急いで礼を口にして頭を下げ。
 ホバリングしている竜の羽搏きで受ける風と上下する動きにバランスを崩しそうで背中にはしっと伏せていたが。

「ぅ、ぅぁ~……まだ全然いるぅ~……」

 追っていた獲物が空に退避しているというのにまだしつこく付近をうろついている狼の群れに、引っ込みかけた涙が滲む。
 見てるだけで怖いぃ~とへっぴり腰の大層情けない態でアホ毛もぺたっとへたらせ…ていたのもつかの間。

「え……? えっ。ぅ、わ、わゎっ……!?」

 背に乗っている竜から火焔が放射された。
 や、山火事は……大丈夫ですか~…? と乾燥し枯れ木も多いこの時期、心配になる。ちょっと蒼褪めながら焼かれた崖の周囲を見て。
 焦げただけか…と胸を撫で下ろし。

「……あ、や、うん……こ、怖かったあぁぁ~……助かったああぁぁ~……」

 背に伏せている所為で分かりにくいが腰はとっくに抜けてます。
 労わる声に安堵したかのように脱力しふぇぇ…と大きく息を吐きだした。

ザイヴァー >  相手が安心か安堵か脱力して大きく息を吐くのを確認し。

「はは、心臓が落ち着いて、足腰がしっかりしたらドラグーンから降りると良い」

そう言って、ドラグーンを崖の上に着陸させる。

『おーおー。派手に炎吹いたが、山火事になったらどうすんだよ』
「黙れ愚剣。お前と違ってそこら辺の力加減ができないボルバルドラグーンではないよ」
『そーですか』

 そう、小声でバスカードと会話しつつ、そうだ、と。

「そうだ、水を飲めばもう少し落ち着くかもしれんな」

そう言って、懐から水筒を取り出し、先ずは自分用のコップに注ぎ一口。
これで、毒や変なものが入っていないと相手に確認させてから……

「ほら、飲みなさい。薬草の類が少し混ぜてある水だ」

軍で支給されるものだが、味は不味くないぞ、と笑ながら差し出そう。
そして、ザイヴァーは一足先にドラグーンから降りて。

「俺はザイヴァーという。まあ……王国軍の兵士だ」

ここで将軍と言って、相手を驚かせるのも酷だろう。まあ、兵士は兵士。間違ってはいないし嘘ではないのだ。

「そして、こいつはボルバルドラグーン。俺の空の相棒さ」

すると、さっき炎を吐き、かっこよく飛行していたドラグーンは……
キュイキュイと、高い鳴き声を上げるだろうか。まるで、「褒めて~」と言ってるようだ。

「さ、降りれるかい?もう一度、俺の手を取って」

そう言って、降りやすいように手を差し出そうか。

ティアフェル >  本当に生きた心地がしなかった……若干、ふよ~と魂が頭の上に浮いているような気がするし、ちょっぴり白目も向いちゃってる。
 心臓はなかなか調子が戻りそうになく脈拍は速いままだったが、いつまでも乗っている訳にもゆかぬ。と着陸してもらえば「へーきへーき…」と無理して降りようとするも、

「……? どうかした??」

 何だか小さな声で何かと遣り取りしている様な調子に小首を傾げていれば。

「え。あ。重ね重ねありがとう……ご迷惑おかけいたします~……」

 大変気遣わせてしまっている。申し訳なさそうに水の容器を受け取ると、

「ん。ご親切にありがとう。――あ、結構いける」

 こくこく、と薬草交じりのせいか清涼感のある水を喉を鳴らしていただくと、飲み干してぷはーっと大きく息を吐きだし。大分落ち着いた。
 水をいただいてから一息つくと名乗りを聞いて肯き。

「ザイヴァーさん? 兵士さんか。すごいね飛竜の竜騎士さんだ。
 わたしはティアフェルです。冒険者でヒーラーやっとります、よろしくね」

 ぺこりと頭を下げて名乗り返せば、意外と懐っこいような様子でかわいく鳴いている竜の声に笑みを誘われて、ふくふくと笑気を洩らすと。

「っふふ、勇ましそうだけど人懐っこいのかな? よしよし、ありがとうね、素敵な飛竜さん。おかげさまで助かりました」

 背中から手を伸ばして頬に近い首筋を撫でて功労を称え。そして先に降りた彼の方から手を差し伸べられれば、ありがたくつかまって。

「うん、ありがと……あは、やっぱり鍛えられてて手も逞しいね、かっこいー」

 愛想のつもりでもないが手を借りてその手を軽く握って竜の背からすとん、と爪先から着地すると、その手を両手で握って感謝の意を込めて握手握手。深々と頭を下げて。

「本当にどうもありがとうございました。ご親切な兵士さんに通りかかってもらって幸運だったわ」