2024/08/14 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に宿儺姫さんが現れました。
宿儺姫 >  
「ちぃ……逃がしたか。上物じゃったろうに惜しいことをしたな……」

九頭龍山中、山賊街道
日が沈み月が照らす街道に火の手が上がっていた。
街道の脇に壊れた馬車が転がり、油壺かなにかに灯りの火が燃え移ったか。
煌々と夜闇を照らす炎の側、女鬼がやれやれと腰を下ろす。

馬車を襲っている山賊を見つけ、横槍を入れて酒でも奪ってやろうと襲いかかったは良いものの。
いかんせん逃げ足が早かった。まさか馬車の馬だけを奪って逃げるとは──さすがに馬の脚には追いつけない。

端から見れば鬼が馬車を襲い火を放ったかにも見える光景である。

宿儺姫 >  
「…なんか残っとらんか?」

燃え盛る馬車。立ち上がりまだ無事な荷物を適当に漁り始める。
頑丈な、まだ火の燃え移っていない木箱を力任せに蓋を引っ剥がす。

「む、これは…」

並ぶ赤褐色の瓶。
酒瓶か、とあたりをつけその蓋を引き抜いて鼻を鳴らす。

「葡萄の酒か…。量は頼りないが、ないよりはマシかのう」

味は然程好みではないが、十分に酔えることは知っている。
がぶりと酒瓶を呷り、片手にもう一本拝借する。
箱ごと持ってゆくほど強欲でもない。好みの酒であったならその限りでもないが…。

宿儺姫 >  
遠くから馬の駆ける音が聞こえる。
既に夜は更けた、この時間に商隊は山賊街道を通るまい。

となれば、山賊を狩りにきた騎士団か、あるいは冒険者か。

「くく、となれば長居は無用よの」

己の首にはどうやら賞金がかかっているらしい。
強者に首を狙われるのは実に大歓迎であるが、ハイエナのようなつまらぬ罪を擦り付けられるのは不本意だ。

「──さっさと離脱するとするか」

笑みを浮かべ、地を蹴る。
その図体に見合わぬ、疾風のような速度でその場から遠ざかり、女鬼は山中へと姿を消した。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から宿儺姫さんが去りました。