2023/11/30 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエイリさんが現れました。
■エイリ > 徐々に暗闇が周囲を覆いつつある山賊街道の道中。
奇抜なクノイチ衣装を着て山道を歩いていた女は、立て看板を見つけてふと足を止めた。
町中にいるときはニンジツで衣装を野暮ったいローブに見せかけているが、人に見られる心配のない山の中でジツは使っていない。
一見すると寒そうな格好であり、多少寒いことに違いはないのだが、そこはタンレンの賜物というやつである。
足を止めたのは、「温泉はこちら」という文字を見つけたからだ。
「街まではもう少しかかりそうだし、休憩してくのも悪くないわねぇ」
どちらにしろ、このまま休憩を挟まずに歩き続けても、街に到着するのは深夜に変わりない。
温泉のものらしい、気持ちよさそうな熱気も漂ってくる。
人の声もしないことから、温泉を独占することができそうだ。
女はくるりと向きを変え、看板の示す方角へ踏み固められた細い道を歩き出す。
すると、脱衣所などに使うために建てられたのか、簡素な掘っ立て小屋が見えてきた。
「――ま。いても獣ぐらいだろうけど、念のため、ね」
たかが山賊だろうと丸裸のところを襲われるのは面倒だ。
小屋と温泉の周囲をぐるりと歩いて、誰も潜んでいないことを確認すると、衣服を脱ぐために小屋へ入っていく。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にルミさんが現れました。
■ルミ > 経験を積んだ女であれば、小屋へ入っていく前に、先に気配に気付いたことだろう。小屋のさらに先にある温泉のほうから、気配が漂ってくる。声と、デッキブラシで何かを擦る音も聞こえてくる。その声の主──少年の方は、彼女ほど経験を積んでいないので、逆に気配に気付くことはなかったが。
「まったく、魔物退治しにきたっていうのに、後片付けまでがっつりさせられるなんてさぁ」
近隣の者がギルドに委託した依頼は、知恵をつけた小型猿の魔物の胎児だった。
行きがけに依頼を請けて、温泉で好き勝手に振る舞っていた魔物を退治したまではいいが、温泉の管理をしている人間(地元の人間なのだろう)に、これじゃあ客がくつろげない、と片づけを要求されてしまった。
そんなわけで、羽織っているものを脱いで、武器は置いて、裸足で温泉を清掃していたわけだ。
ゴシゴシとデッキブラシで磨いた辺りは綺麗なもので、もう客を入れても大丈夫な段階である。
女が少年の気配に気づいて様子をうかがうことがあれば、桶で水を流して掃除が終わろうとしているのが見えることになる。
■エイリ > 無人と思っていた温泉に人の気配を感じ、足を止めた。
ひとりで気ままに湯に浸かって休憩をしようと思っていたところを、水を差されたかたちだ。
しかし、誰が所有するものでもない温泉である。
間が悪かったのだと諦め、相手に気づかれるより前に、女は来た道を引き返して山を下りていった――。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエイリさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からルミさんが去りました。