2025/03/18 のログ
■ナラン > 昼間の春の太陽が沈んで天が夜の帳に覆われれば、空気はまだぐんと冷える季節。
このハイブラゼールでは季節問わず夜が更ければ更ける程に街は明かりと熱気を増して、それに惹かれるかのように人々が更に集まって来る。
「ああいえそれは、向うです。
出口ならあちらですが…」
不夜城の中でも最たる熱気の渦巻くカジノの一つで、すこし場違いな様子の女がひとり。『警備』の腕章をつけている辺り、少なくとも今宵はこのカジノの従業員なのだろう。
さきほどから一際人の出入りの激しい通路で客とみられる人に掴まっては、二階に行くにはどうすればいいのだとかルーレットの卓はどこだとか尋ねられている。
(…… 本当はこれ、『案内係』とでも読めるんでしょうか)
案内ついでに世間話に付き合った相手を見送った後、女は自分の腕にある腕章をつまんで覗き込んでみる。多分、間違いなく『警備』のはずだが…
今日は重要人物がカジノにお忍びで来ているとかで、警備の増員の募集がギルドに貼り出されていた。報酬は高額とは言えないが、なにより討伐などの血なまぐさい仕事よりは気が楽そうだと、赴いたものの。
「… これはこれで、別の苦労がありますね」
館内の地図を読み込んでおいたのが変な所で役に立った。女は苦笑を零しながらつぶやくと、人混みの中を巡回する足取りを再開した。
■ナラン > 大廊下も大小人種老若男女でごったがえしていて、ヒトの流れがあるようで無い。
女は誰かにぶつかる事こそないけれど、すれ違うと思った相手が予想外の方向に足取りをむけたりしてかなり意識をつかう。
もともと人混みにも慣れていない。早々に、留まってでも目を光らせられそうな場所をいくつか見付けた方が良さそうだ。
見晴らしを考えるなら―――2階だろうか。
大廊下が続く大階段に目をやると、そこもまた人、人、人だがちょっと身なりが違うようだ。男女ともに、正装しているものが多い。
よくよく見ると階段下には正規の警備員らしき黒服がいる。一種の門番の役目なのだろう。
日雇いの警備を、通してくれるだろうか。
(…… 簡単に、足を休められるような場所は見付からないかもしれないですね)
すこしひるんだけれど、通してもらえるか訊いてみるくらいは大丈夫だろう。確か、禁止事項などには書かれていなかったはずだ。
女は少しだけ息を吸ってから、意を決して
シャンデリアできらびやかに照らされる大階段の方へと―――
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からナランさんが去りました。