2024/07/13 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 大通り」にナランさんが現れました。
ナラン > 昼間燦燦と太陽が照っていた日。
暑さも陽が沈めば落ち着くものだが、海風の向きのせいか今宵は温度がなかなか下がらない。

昼間の暑さを避けて、陽が傾いてから人出が多くなる様子は他の街と変わらないように思えるが、この都市はあふれかえるほどにヒトが多くなる。

(そういえば、そういう所でした)

歓楽街とはいえ一般市民もいる。ごく普通の雑貨屋もある。そのごく普通の店のひとつから出てきた女は、店に入る前よりも増えた人通りに目を見張ってから、内心ひとりごちる。

昼間出歩くのが難しくなって、夕暮れ過ぎに店じまいする王都での買い物はできなくなった。
この街に目当てのものが売っている店があるかどうか、果たして夜までやっているものかは賭けだったが、どうやら読みは当たって一安心。
そういった嬉しさも、商品を選ぶ楽しさも勿論あった。店についつい長居してしまったらしい、日暮れごろだったはずがとっぷりと暮れて、街も行きかう人もネオンに彩られてまるで別の街のようだ。

ナラン > (…来た方向は……)

方向音痴ではないつもりだし、人混みには慣れていないものの全く不得手というわけでもない。きっと首尾よく街の外へ向かうことが出来るだろう。
迷ったとしても、何とか港のほうへは行けるはずだ。

「ええと…確か」

来たときは右手からだったように思える。人の流れの多くはきっと街の中心へと向かっているはずで、その流れは…今は右手から左手へ動いているように思える。もともと街中の流れを読む機会がないうえに、少し離れたところに横道があってそこからの人の出入りも多いようだ。

女は布と糸が入った買い物の包みを抱えて、勝気な瞳の眉を曇らせる。迷ったままあまり時間が経ってもヒトがふえるばかりで、良いことは無いように思える。

ナラン > 仕方がない。
大通りで観光客向けの店が多い中、地元を顧客に抱える萬屋のような店の夫婦は客対応に品出しに売り子の教育にと忙しそうだった。
それでも気のよさそうな人たちだったので、暇をみて方向だけでも尋ねることはできるだろう。

そう考えた女は、ドアベルの付いた扉を押して再び店内に戻る。
結局道を聞けたのは、忙しそうな店を見かねて女が手伝いを申し出たせいで、雑貨屋の閉店時間。大いに感謝してもらって恐縮するという一幕があったあと、人通りがやや少なくなった大通りを涼しい風に送られるように、街を後にする――――

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 大通り」からナランさんが去りました。