2024/03/01 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 娼館通り」にニュアさんが現れました。
■ニュア > 大歓楽街──「至福の島」。
巨万の富と薔薇色の夢の充ち満ちた不夜城は、あぶく銭と泡沫の夢をも呑み込み坩堝を成し、掃き溜めの垢のように欲望を凝らせた。
娘が居るのは少なくとも、富と夢に彩られた眩い場じゃあない。そこからあぶれた──…富と夢の残滓が織り成す一画。
姦しく賑やかしい“娼館通り”。───波濤に砕けた夢と欲の波打ち際のような場所だ。そんな場所にだって、顧客はいる。
娼館の、甘い白粉の匂い漂う“接待室”。
閨に赴く前の客と娼婦の憩う場でもあるその部屋の片隅で、年代物の猫脚ソファに腰掛けた少年風貌は、手慣れた素振りで──木箱の中身を詰め替える。
「裂傷用の軟膏と月袋樹の根を煎った堕胎薬に悪夢止め。あとこれはアレイユの香薬。いつものヤツだよ。」
粗悪な薬を常備薬として安く買付け使い続ける店もあれば、値の張る薬を常備し、ひとさしで快癒させんとする店もある。
娘の顧客は後者だった。年に一度、幾つかの娼館に置いた薬箱の中身を取替えに訪れる、そんな仕事。
あれやこれやと店を仕切る婆相手に薬を並べていれば、御大尽を侍らせた娼婦も興味半分に覗きにくる。
そんな娼婦らに貝紅や美顔薬を口先三寸に嗾ければ、客が娼婦への贈り物にと、財布を緩める寸法だ。
だから、いい稼ぎになる。それでも──。
「毎度。───さぁて、以上かな。他に不足はない? ……??」
それでも──…そう。こういう場所は、年イチくらいで丁度良い。此処の婆は毎年同じ事を問う。
目深に被ったフードの内側、少年容貌を値踏みするかに覗き込み。
“アンタも可愛い貌してるんだ。薬屋なんざ廃業してココで働く気はないかい??”
「ナイってば。俺、オトコだって毎年同じ事言ってんじゃん。ケツにブチ込まれる趣味ないもん。」
この会話が毎度、中々に億劫で足が遠退く次第である。
長々と続けてると、客や娼婦が“どれどれ買ってやろうか?”“あら可愛い”なんて面白がってフードを捲らんとしてくるのもまた鬱陶しい。
その前に退散しなければ─…、というのが、恒例の慣習であり。
「だァーかーぁーらァ…ウリはなし!俺が廃業したらソッチが困るでしょ。ハイ!終わり!!」
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 娼館通り」にティカさんが現れました。
■ティカ > 「だぁぁぁああ、ちくしょうっ! 何だってどこの街でも絡まれンだよっ! 死ねっ! 角に小指ぶつけて死ねっ!!」
ゴミ箱を蹴倒し野良猫を追い散らし、姦しい罵声と共に薬売りの少年(?)の元へと近付いてくる口汚い少女の声音。
共に響く足音は勢いよく角を曲がった所で
「――――うぉわっ!? 悪ィ!!」
正面衝突。
幸いとっさに足を止め、前傾していた身体を仰け反らせの激突であったため、薬師はその薄い胸板に少女戦士の天然エアバッグがぼふんと重なる衝撃のみを受け、怪我など負う事はなかった。
が、150cmにも満たぬちんちくりんのタックルとは言え、薬師もまた華奢な身体。もしも彼(彼女?)が突き飛ばされて尻もちでも付きそうになるのなら、チビはとっさに手を伸ばしてその細身を支えようとするだろう。
■ニュア > 知っている。この婆共は、たとえ己が男だとしても構わず男娼として売り捌くだろう。
そう思えばますます長居する気は皆無であり。
貰うものだけ貰ったら、そさくさと退散するのみである。
「ハイハイじゃあねー。また来年くるから、来年は同じコト聞かないでよね毎度ありー。」
酷く雑で棒読みな挨拶を述べたなら、すたすたと娼館の扉を潜り。うんざりと嘆息。
「儲かるんだけど、───… こぉゆうトコ、面倒いよねー…… 」
気疲れ半分さあ次は何処だったかなんて思案半分に歩いていれば、気もそぞろではあったかも知れない。
故に───…
「 !???!?? ちょ、わ 、 ──…!?!?」
ぼふんっ!
衝撃こそ軽かった。軽かったけども──少年容貌の、此方もまた軽く、貧弱であった。
故に。思いきり後方に蹈鞴を踏み。倒れそうになるのである。結果、伸ばされた手に縋り、転倒を免れるか。或いは、──共倒れ。
「~~~~~~~~ッ !!!」
■ティカ > こんなナリでも一応はプロの冒険者だ。
特に目の良さと敏捷性を売りとするティカなので、薬師の細身が致命的にバランスを崩す前にその腰を掴んでぐいっと抱き寄せる事に成功した。
その結果として出来上がるのは社交ダンスにおけるコントラチェックめいた密着。
珠汗を伝わせる豊乳が少年の薄胸にぎゅっと押し付けられて、灼けた体温と激しく暴れる鼓動を伝え――――野良の子猫を思わせる紅色の双眸が大きく見開かれて動きを止めた。
まじまじと少年の―――否、これだけの美貌で男という事はあるまい―――少女の顔立ちを凝視して
「――――………くあぁぁああっ! くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!! ――――おい、お前! ちょっとそこに隠れてろ! いいか、絶対出てくんなよっ!!」
乱暴な手付きが少女の細身をぐいぐい押して、ガラクタの物影にその細身を潜ませようとする。八重歯も剥き出しな童顔は、今にも噛みつかんばかりの勢いだ。
彼女からすればさっぱり訳の分からぬ展開だろうが、ティカにも説明している暇がない。
今も急速に近付きつつある男たちの怒声に焦りが増す。
■ニュア > 倒れる───…と思いきや。ぐぃと腰が思いきり引かれ、まるで社交ダンスも斯くやとばかりに密着と相成った。
己の薄胸に比べ、弾力豊かな胸をクッション代わりに飛びこめば。
眼前に少女のあざやかで苛烈な紅色の眸が飛びこんでくる。
ぶつかって、倒れる前に引き起こされて助けられた。其処迄は理解が及んだ。
恋が始まる予定もないから、なれば告げるべきは一択。
「…… 有難うゴザイマスサヨウナ、ラ──────…ッ!?!???」
そのまま別れとなる筈、であろうのに、
「は!? なんで?? 何なの????? ちょ、意味ワカンナイんだけど何。ぇ、は??何??!??!???」
訳も判らぬ内に、訳も判らぬ場所に押し込まれるのだから混乱ココに極まれりである。
がちゃごちゃと硬質で油臭い手触りは、掃除バケツだとか雑巾だとか、なんかそんな用具入れの類か。
しかも何やらガラの悪い怒号すらも近付いてくるとなったら、表情も怪訝になろうというものだ。
自分を匿って少女はどうするつもりなのか。何はともあれひとりごちるは、
「……………最ッッッ悪、なんだけど…」
思わず零れた怨嗟。流石に察する。─────巻き込まれた、と。
一先ず、息を殺してガラクタに潜伏しつつ状況把握に努めようか。
■ティカ > 「っせえ、いいから黙って言う事聞けっ!」
困惑しきりな少女の反応は最もだ。
実際彼女は巻き込まれた形。
けれどもティカの奇行も巻き込んでしまった彼女が酷い目に合う可能性を潰そうとしての物。そのため多少汚れようが喚かれようがお構いなしに細身を用具入れに押し込んで、自分は逆に通りの真ん中に歩み出る。
直後、まろび出るかのように路地裏から姿を現したのは、見るからに悪酔いしたゴロツキ3匹。足を止めているティカを目にして『ようやく観念したか』と下卑た笑みを浮かべるそいつらに――――
「―――ッだらぁあああああ!!」
真っ向駆け寄り小躯の体重全てを預けたヤクザキックをお見舞いした。
鼻っ柱をしこたま蹴飛ばされたチンピラAは、その後頭部を背後の壁にがつんとぶつけて昏倒する。
まさか逃げるばかりであった獲物に反撃されるとは思っていなかったのだろう。残り二人の反応も実に鈍い。
「てめぇらっ! なんざあっ! やろうとっ! 思えばっ! あたしにだって! ぶっ倒せんだよォッ!」
脇腹、顎、頬、からの金的。
堪らず蹲ろうとする頭部を掴んでがっつんがっつん膝を食らわす。
実にアグレッシヴなチンピラムーブ。既に二人目は血だらけで意識があるかも分からぬ有様。
これだけやれば普通は逃げ出してもおかしくはないのに、三人目は思いの他戦意に溢れていたらしい。傍らに転がる空き瓶を拾い上げ、二人目をぼこぼこにする赤毛の後頭部に叩きつけんと振り上げて―――。