2024/08/26 のログ
ナラン > ワッ、と客たちの方から歓声とも悲鳴ともつかない声が聞こえてくる。

思わず女が顔を上げると、どうやら不意の強風に煽られて料理や酒が少し飛んだようだ。
欠けた月が中点に上った深夜で、客たちはほぼ誰もが出来上がっている。中には悪態をつく声も聞こえたが、大体がアクシデントを面白がっているようだ。

女はそれを見ると微笑んで、また手元のメモに目を落としかける。
――――と、一人近づいてくる人影が見える。客たちの即席テーブルを照らす明りの方が強いので、どんな相手かましてや表情も解らないが、どうやら注文が来そうだ。
女はメモを仕舞うと立ち上がって、柔らかな笑みで客を迎える準備をする。

虫の声は一層喧しい。
長い夜になりそうだが、退屈することはなさそうだ―――

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からナランさんが去りました。