2024/01/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」に影時さんが現れました。
影時 > 普段の根拠、活動拠点としている街を出て、海を渡って港湾都市を目指す。
海を行くのが早いのか、それとも街道を走るのが早いのか。その道程の諸々を考えると、どちらとも云えない。
船代ついでに商船の護衛という仕事を請けてしまえば、結局のところ船旅にならざるを得ない。
風も海賊の害もなく、思った以上に穏当な旅路を経た後に踏み締める大地は奇妙にほっとする。

「……こっから降りるのは久方ぶりだが、ここらもあンまし変わらねえなぁ」

いくつもの帆船やガレー船が泊まり、人足の声や鞭の音が騒々しく響く中で降り立てば嫌でも感慨が過る。
夕暮れ時の船着き場で帆を畳んだ帆船の舷側より、ひょいと飛び降りる姿がそう思う中、投じられる気配に手を伸ばす。
ぱし、と受け取るのは護衛を依頼した商人からの心遣いであるらしい。
じゃら、と音がする袋を掌で転がしつつ、白い羽織を纏い、刀を差した姿は忝い、と手を挙げて応え、歩き出す。
港の情景は国が違えば違い、差異はあるけれども、良きも悪しきも大体は人の気配に溢れているらしい。

「舶来品を商う手合いは順次巡るとして、こっち辺りも一応は見回ってみるか……」

ここには雇い主たる商店の本店がある。最終的に挨拶がてら目指すとして、用があるのは貿易船が運んできた荷だ。
故郷からの船旅で運ばれているかもしれない品があれば、内容次第で買い求めたい。
次に珍しい話や仕事、次の旅のきっかけになるものがあれば、それも良い。そういう話は幾らでも欲しい。
商いやら話やらに当たれそうな先は、この先だろうか。足は近隣にある奴隷市場の辺りに向く。こちらが確か近道だった筈。

影時 > 夜に近くなっても、奴隷市場と云うのは人の流れが絶えないのか。ヒトを商っているのだからそう、とも言えるのか。
愛玩用とする奴隷はその質を保つための努力は必要、なのだろう。
日差しや風を遮るためと思われるテントの軒先で、首から看板をかけて立たされている少女は裸ではない。
寒々しくも着せられた貫頭衣から出た手足や、顔の肌艶は萎れたり病的に細かったりはしない。
檻に入れられたミレー族と思われる動物の耳やら尾がついた少年少女も、不潔すぎる風には見えない。

「……あーあ、なンだろうな。嫌なことを思い出しそうになる」

先に見えた少年少女たちの扱いがまだましな方なら、労働用となると――扱いの差も生じるのだろう。
首枷をつけられた老若男女の群れが視界の端に入れば、脳裏に過る古い記憶に苦笑が滲む。
己の原風景、物心付いた時を遡れば遡ると、親の顔というよりはこういった人買いに率いられた記憶が浮かび上がる。
遠い昔の自分と今見る彼らと、さて、どちらがマシなのか? 
今でこそ、立派な服装に身を包み、上等な得物も腰にぶら下げているけれども、今と昔でどこまで違っているのか?

「すまんね、買うつもりは無ぇんだが、ついつい目に入っちまったもんでな。何か売りてぇ類でもあンのかね?」

ふと立ち止まっていた姿が関心がある素振りと思わせたのか、もみ手をしてくる奴隷商の声が耳に入る。
無精髭が生えた顎を摩りつつ、困ったように笑った――ように見せかけて、調子を合わせてみよう。
羽織を重ねた忍装束で闊歩しても良かったが、これは身なりを整えておいた所為もきっとあるだろう。
少なくとも金があるように見えるのは、それなりの暮らしが出来る、つまりは売りつけられそうな類であると。