2024/11/03 のログ
ご案内:「ゾス村」にナランさんが現れました。
ナラン > 季節の変わり目、収穫の時期も終わりを迎えるころ。農村では今年の豊作を祝ってまたは来年の収穫を願って宴を開くことが多い。

それは女の居た故郷のほうでも同じことだったが、今日のこの村は特別皆が浮かれ騒いだ。
天候に恵まれなかったながらに得られた収穫の量を祝うこともさながら、他所の村から花嫁が来たのだ。

本格的に式が始まったのは昼前だったろうか。
生憎青空とはいかなかったが幸い雨が落ちることは無く、式は滞りなく進んで
今はその後に続いた長い宴も、日暮れとともにようやく仕舞いを迎えつつあった。

こういった宴の時に野党が現れることもしばしばあるらしく、女は今日は何人かとともに警備の仕事についていた。
―――とはいっても、浮かれた村人たちがてんでに宴に巻き込もうとするものだから、もう酒が入っていない者などほとんどいないだろう。とにもかくにも、宴も仕舞いと言える時分まで殊更襲撃を受けることもなかった。今はもう殆ど人もいない野外の広場に設けられた宴会場で、生真面目に異常は見当たらないかと歩いていた女もほっと吐息をつく。
見渡しても残っているのは、皿やら杯やらがそのままに残されてんでばらばらに置かれた幾つもの机と椅子と、おこぼれにあやかりに来たらしい猫がちらりと横切るくらいだ。

「…終わり、と思っていいんでしょうか」

声に出して言ってみる。同様に警備についた者たちも、未だ飲み足りない村人にただ一つある酒場に連れ込まれていた。返事をする者もいない。

ナラン > 耳をすませば、件の酒場の方からまだ喧噪が聞こえてくる。
女はそちらに視線をやるとくすりと笑って、もう一度長い溜息をついてようやく肩の力を抜いた。
ついでに空を見上げると、ちかちかと瞬く星が宵の帳に浮かび上がっている。暗くなってから漸く雲も晴れたらしい。

「……」

宿は用意されているからそのまま引き上げても良かったけれど、ばらばらに散らばった机やら倒れた椅子やらが行く手を阻む。確か宴の始まりには整然としていたはずだけど、参加者が思い思いに動かしてしまったのだろう。

(―――ついで、ですし)

女は手近に倒れた椅子を直すと、それから近くの机の上の皿を適当に重ねたり集めたりして整え始める。手近のそれを片付けると何となく、続けて隣の椅子と机を適当に片付け始めた。
全部片づけるまで続ければきっととっぷりと夜も更けてしまうだろうが、野党の警備にはちょうどいいとも思える。

ナラン > すっかり日が暮れて空が満天の星に覆われる頃
酒場の喧噪から抜け出てきた近所のおかみさんに見つかって、半ば強引に宴に加わるよう引っ立てられていくまで
独りなんだか楽しそうに鼻歌を歌いながら、片付けをしている女の姿があったとか―――

ご案内:「ゾス村」からナランさんが去りました。