2024/08/03 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にナランさんが現れました。
ナラン > 「はい、では確かに」

日暮れ間近に迫った戦場。
只中ではそろそろ引きの合図が出ているのだろう。王国軍陣地へは続々と帰還する兵士たちが流れ込んできている。
好天はこの季節にはあまり味方とは言いづらい。誰しもが汗だく、返り血か自分の血か泥なのかわからないものに塗れて、それでも帰還できたことに安堵と歓喜の声が、こすれ合う武器防具の音に混じって騒がしい。

その間反対、陣形からすると裏口ともいえる場所。大きな柵が建てられたそこは今はもうすっかり影に覆われている。
その裏口に、馬を連れた女がひとり。装いからして王国の正規兵ではない。
どうやら中の人物に話をして、取次と何事かを頼んだらしい。ひとしきりのやり取りの後、門は内側から開かれた。

「…ありがとうございます」

門を開けてくれた兵士と、女が中に入るのを見届けずに去っていく騎士と
女は律儀に礼を告げて頭を下げる。
恐縮するような様子の門番に、井戸と馬を休ませている場所を尋ねると、女は陣地を奥へと進んで行った。

ナラン > 多少想定よりも遅くなってしまったが、依頼のものは確かに本人に届けられて女は内心胸を撫で下ろす。きっと自分を含めて、囮として他の使いも来ているのだろう。相手は実に素っ気なかったが、女としては依頼さえ達成できたのであれば構わなかった。

手綱を引く馬を振り返って首を撫でてやると、汗びっしょりなのが解る。それほど急がせたわけではないが、何しろな暑さだ。
早々にその場を立ち去ろうとした相手に、馬を休ませたいと告げられて良かった。水だけなら帰りの途中で小川に立ち寄っても良かったが、戦場に近い場所で緊張を強いられ続けるのは得策ではなかったろう。

「…少なくとも、暫くは休ませてあげられそうだから」

鼻面に触れてやると小さく嘶く。元々戦場の馬ではないのを借りてきたからか、この場所は余り気に喰わないようだ。