2024/08/23 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にナランさんが現れました。
ナラン > 夕暮れと夜の間の時間。
都市に数多くある教会の一つの裏口で、ぼそぼそとやり取りする影がある。
やがて話はついたようで、ひとつの小柄な人影が路地へ出て、それから駆けていく。
その駆けていく影を迎える影がまたあって、ふたつの影は一つになって大通りへとまた駆けて行った。

「―――はい、大丈夫です。凡その話は聞いていますから」

残された影のうち、比較的背のある方が言う。もう片方は仕方ないとばかりに肩をすくめて、それから裏口の扉は閉ざされた。

――――それから数刻後。
その教会の尖塔のひとつに人影が現れる。鐘楼を抱えたその場所は外から遮るものは殆どない。
思ったよりも強く吹く風に目を細めながら、すっかり暗くなった夜空を見上げる。

(あんまり、良いことではなかったかもしれないけど)

人を送り届ける依頼を終えての帰ろうとしたところ。送り届け先であった教会のシスターである少女から、こっそりとされた『お願い』。夏の終わり、恋人との逢瀬を果たしたいのだという。

今日は都市の何処かでお祭りがあるようでほとんどのシスターが特別に外出を許されている中、彼女は留守番を仰せつかってしまったらしい。
やることと言っても特にはない。いくつかの場所の片付けと、お祈り。それを身代わりになってくれないかという。

思春期であろう彼女にとっては一度きりの夏。切羽詰まった様子についつい引き受けてしまった。慣れないシスター服は少女のものだから、女にとっては少々きつい所もある。月明かりの下でくるりと回って点検してみる。掃除中は破ってしまわないかヒヤヒヤしたが、何とかやり過ごせたらしい。

ナラン > 逢瀬に出かけた少女の友達という少女から、この鐘楼は眺めが良いと聞いていた。

『よく私、さぼったりしたいときとかここに隠れるの』

鐘楼まで登るには長い長い階段があって、訪れるものも少ないという。
なるほどここまで来るには流石の女でも息が切れたが

「…確かに」

すっかり夜になってしまったが、眼下に広がる都市は整然と街路が輝いていて、眺める価値は十分にあるように思える。
少し視線を遠くまで伸ばすと、何やらぼんやりと光を放っている区画がある。少女たちの言っていた、件の『お祭り』の会場かもしれない。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にヴァーゲストさんが現れました。