2024/07/06 のログ
布都 >  
「―――そうさな、この国に来て、初めての銘入りだ。
 なれば、『外道國(とつくに)』と、するか。」

 この国に来て、初めての、名刀レベルだ、それならばと、決めてしまおう。
 今までは、素材に、鍛冶師の腕、場所、様々な要因が有れども、名刀は出来て居なかった。
 場所が違うだけで、名刀を打てなかったのは恥じるべきものである。
 それも、今は名刀が打てたのだから、業物が打てたのだから、銘を付けて、それを茎に彫り込んでいく。

 元の国から出て、新たな国、外の国を通り、出来た刀。
 然るべき相手が居ればそれを渡すとしても、今は完成したばかりのこの刀を言祝ぐ事にしよう。
 いい酒が飲めるな、とにやりと口元を緩ませる鍛冶師は、目貫を、柄をしっかりと取り付ける。
 あらかじめ作っておいた鞘に、刀を収めてから。

「今日は、もう終わるか。」

 良い物が出来た、達成感を胸に、炉の火を弱くし。
 刀を持って、二階へと昇っていく―――。

ご案内:「布都の工房」から布都さんが去りました。