2024/03/20 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」にリーベンさんが現れました。
リーベン > 「精霊祭、なぁ……」

どこか呆れたような口調で禿頭の男は呟く。
太陽が柔らかく暖かい光で照らすなか、街道からすぐ近くにある野営地の切り株に男は腰掛けていた。
口許から零れたパンくずを膝の上にかけた布が受け止める。手に残った欠片を更に小さくすると、手を前方へと突き出した。
しばらくすると体調15cmほどの妖精が羽を羽ばたかせて数匹近づいてきた。
最初はおっかなびっくりだが、男に害がなさそうだとわかると大きな欠片から手にとっては食べていく。
鳥が餌をついばむような景色に男が笑うと妖精は驚いたように少し距離をとるが、すぐに食事へと戻っていく。

妖精が少なくなった――という事情は確かにあるが、祝祭が衰えた理由は他にもある。
単純な話、年頃の娘が農村にいないのだ。形を変えれば男だけでも続けられるのだろうが、そんな柔軟性は彼等にない。
女性は財産が分与されないくせに、結婚では持参金を求められることがある――農村から都市部への人口流出が加速している。
都市と農村、どちらにいる方が彼女達にとって幸福なのかはわからないが……。

「それはさておき、もうそろそろ来てもいい頃合いだが……」

村から5kmほどの距離で男が小休止をとっているのには理由があった。
依頼人からこの場所での荷物の積み込みを依頼されたのだ。わざわざ村から外れた場所を指定するあたり、訳アリなのかもしれぬ。
王都への帰りだから帰り荷もたかが知れている。荷台に十分余裕はあるが、さて――。

リーベン > 掲げた手をゆっくりと下ろす。膝にかけた布に落ちたパンくずを、掌を箒のようにしてかき集める。
それらを摘まみ、掌に載せるとまた妖精たちが近寄ってはとっていった。
今度はその場で食べるのではなく、どこか木々の中に消えて、しばらくすると戻ってくるようになった。
お腹がいっぱいになったから、夕飯や明日の食事にでもするのだろうか。

「妖精は悪戯好きと聞くが……」

首を傾げる。エルフなど人間大の妖精種では悪戯好きというか食わせ者は沢山見てきたが、悪戯好きな小妖精には会ったことがない。
偶然かな? と能天気に考える。小妖精は周囲の生命体の影響を強く受けることを男は知らない。
勇猛な戦士の近くにいる妖精は好戦的で、慈悲深い僧侶が伴う妖精は落ち着いている。
あと少しで約束の時間から四半刻を過ぎる。もう四半刻待って、それでも来なかったらやむを得ないが出発しよう。
日暮れまでに王都につくのが他の荷主との約束だ。

リーベン > 街道側から人影が近づいてくる。どうやら間に合ったようだ。
男は妖精たちに別れを告げると、その人影を迎えに立ち上がった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からリーベンさんが去りました。