2023/07/30 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > コモリガエルというものを知っているだろうか。簡潔に言ってしまえば背中に卵を背負い歩く事で、幼体が孵化するまで卵を守るカエルだ。この手の卵、及びに幼体を体内に取り込んで外敵の脅威より守護するという生き物は自然界にもそれなりに見られる。陸上生物ならばカンガルーやコアラなどを筆頭とする有袋類が有名処だろう。
詰まる所は、そういった野生動物の生存戦略を今回は模倣していた。自由自在である黒蜥蜴の粘液質の背部にはぼこぼこと幾つもの穴が空き、そこに先日に卵から産まれたばかりの小さな翼竜達が蹲っている。内包される分泌液によってコーティングし、これはまだ免疫が完全に整っていない竜達を病原菌などから守るという意味も持つ。
しかしながら、何時までも引きこもりにしておく訳には行かない、立派な竜として育てなければならないのだから。
それが故に今はマグメールの外部、『まれびとの道』から大きく外れた場所に群生する森林地帯にへと足を運んで来ていた。緑豊かな枝葉の隙間より日中の木漏れ日が差し込み、岩地や堆積した土壌の只中を横断するようにして流れる河川の川面に照り返される。日陰には苔や下生えが揃い、そこにもまた生態系が彩られている。
「…………」
此処に訪れて来たのには勿論理由がある。子供達に狩りを教える為だ。ぶるぶると巨体を揺すると、『ミ゛ッミ゛ッ』と子猫の鳴き声をもう少し耳障りにしたような唸り声をあげつつ、翼竜の特徴を持った幼体らが穴の中より這い出して来る。
獲物は最初は手頃なものが良い。今も草きれの中にぴょんぴょんと跳び回っているバッタ達。その為に噛み潰して半消化して与える給餌は昆虫類を選択している。目の前で捕らえたそれが『食べ物』であると教えて来たのだ。夏場に繁殖している虫は濃い自然の中では歩けば直ぐに当たるほどに豊富であり、幾ら確保しても無くなるという事も無い。
わさわさと這い回る竜種は監視下で一定の自由を与えられ、親の身体を降りて河川周囲で遊び出す。
■ドラゴン・ジーン > 此処に輪郭が形作られているまだ未熟な竜種たちは、モモンガや蝙蝠のような被膜を持つ生き物達と同様だ。鳥類の様に羽ばたくというよりも…パラグライダー宜しく浮力を得る事でゆっくりと落下するようなイメージで滑空する事を可能としている。
前脚や後足は登攀に適した握り、引っ掛ける鉤爪と指の形を成し、高い岩地や樹の幹などを登っては。そこから狙いを澄まして翼を広げて跳ぶ。そして虫たちの死角から襲い掛かり、ぶつかるようにして獲物を確保するのだ。
しかし狩猟のタイミングや手法などはまだ粗末な事極まりない。覚えたての方法を試して回る子供達の動きは『狩り』というよりも『遊び』のようなもの。成功確率はほんの僅かに過ぎずに獲物をとらえきれず、あるいは上手く飛べずにきりもみに落下してしまい。
「………ル゛」
ぱし、と、咄嗟に延ばされた柔らかい親の前脚によってキャッチされ、その四肢全体でしがみついて事無きを得る。『遊び』というのも生きる方法を獲得する為の学び。しかしそれも安全管理がなければならない。
今も子供達に『遊ばせ』ながらも大本の黒い蜥蜴からにゅっと突き出している淡い燐光を湛えた触角は、危険察知の為にくるくると周辺の、現状は静かな森の中を見回し警戒を怠らぬようにしていた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からドラゴン・ジーンさんが去りました。