2025/05/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にれあさんが現れました。
れあ > お昼間の貧民地区。
丁度今時分、貧者救済などを掲げる炊き出しなどが行われているためか、比較的人の出の多い時間帯。
女冒険者は「貧民地区の見廻り」という、ふわっとした依頼を引き受けていた。

それは自治体の要請や、炊き出しなどと同じ貴族の施しの一環としての依頼だったりする。
この街を少しでも住みやすくしてくれ、金は私が払う。という社会貢献行為なのだろう。

ノブレス・オブリージュというアレに違いない。

そしてこの仕事、見廻りの効果が最も発揮されるのは「犯罪抑止力」としてに他ならない。
そんな意味で、見廻り役を引き受けた女冒険者は、その印としてのギルド腕章をつけていた。

これを見れば、悪人は悪さを行うことを躊躇し、またはこの腕章を見て姿を隠す…ハズだった。


「これで何度目だっけ…」


見廻り経験回数を数える。今日で7回目だ。
その間、有事な感じだったのは2回。何事もなく見回りを終えたのは4回。
有事の2回も、相手は個人的には心の癒しになるようなキッズギャングであり、凶悪な何かに出くわしたことは一度もなかった。
これも「抑止力」が働いた結果と言えるのだろう。

施しを求めて近寄ってくる貧民に、「私は違うから」と言いつつ、「あっちの広場で炊き出しやってるみたいよ」と伝える。

れあ > 見廻りは決まったルートを3周する事になっていた。
今はその1周目で、じめじめとしていて、そこかしこに吐しゃ物や排泄物(液体の方)があるような汚い路地を直進している。

行く先で小競り合いをしていたチンピラ2名が、私の腕のギルド腕章を見てその動きを止める。
争いの理由はわからないが、手を止めた彼らの葛藤が手に取るように分かった。
ギルドの見廻り員が来たので争いをやめるべきなのだけど、女冒険者に従うのも癪である。そんな心の動きだ。
男たちはそのまま争いを止めず、男の沽券を優先して、恐らくは、ギルドが介入してこない事を願いながら、阿吽の呼吸で小競り合いを再開し始めた。
私への威嚇を兼ねて、より大声で怒鳴り合い始める。

「喧嘩は見えない所でやってね。迷惑だから」

そんな彼らに対して、私は自分のギルド腕章を指ではじいて示しつつ、子供に言い聞かせるように口頭で注意を与え、それを屈辱に感じた男達が、顔色を変えた。
「あ?なんだテメェは」「引っ込んでろブス。殺すぞ」
二人同時にこっちに食って掛かり出す。お前ら仲良しか。

「は?ブス?」

とりあえずブス言ってきたヤツの頬に思いっきり高速ビンタを決めた。
バシーーン!と鋭い音が響き、殴られた男の首がぐるんと回る。
その衝撃に驚いたもう一人の男がビビり散らかす中、殴られた男は「はじめて親に殴られた子供」みたいな、キョトンと目を大きく見開いた表情で静止していた。その目にはうっすらと涙が…。

「喧嘩は見えない所でやってね。迷惑だから」

そうダメ押しして、私は現場を離れる。
後ろで「お、おい大丈夫か」「あ、ああ…」みたいなやり取りが聞こえた。
やっぱ仲良しじゃん……。

れあ > 更に路地を進むと、一層排泄物の匂いが強くなるような、下層に辿り着く。
貧しいというだけでは、人はここまで足を踏み入れない。
つまり、ここから先は──そう、犯罪者たちの領域。

「あ」

角を曲がった直ぐ先に、浮浪児がいた。
向こうも「あ」って顔して固まってる。
その手には、彼らが持つのは明らかにおかしい、卓上銅像の女神。
100%盗品である。

野生のネズミのように逃げようと地面を蹴った彼の速度を上回り、私は少年の襟首を捉える。

「はい。現行犯~」

暴れる彼のジタバタ攻撃をいなして、噛みつき攻撃をチョップで迎撃し、脚を引掛けて転ばせて、その背中の上にどすんと乗っかる。そして「ヴ。重…」と呟いた子供の頭を叩く。
キッズはしゃかしゃかともがき脱出を試みるも、30分で動かなくなった。

「どこから?露店?」

彼から卓上銅像を取り上げて、出所を尋ねる。
ぐったりとしたまま、子供はしゃべらない。

「どーこーかーらー?」

私は彼の脇腹をくすぐる「拷問」にかけ、表通りの露天商からくすねたことを白状させた。
何故盗んだのかを尋ねると、彼はそれを自分のモノにするために盗んだと答えた。

「女神像に一目ぼれした…?」

改めて銅像を見る。
なるほど母性でも感じたのか、それとも異性を感じたのか。
私は銅像を地面に置き、少年の背中から立ち上がる。

「言っとくけどね、君らが盗んだり暴れたりするから、どんどん取り締まりが厳しくなるんだからね。これからは先を考えて行動しなさい」

少年は見逃されたと気付くまで、私と銅像を交互に見つめ続けて、それから慌てて逃げて行った。
残念ながら忠告の意味は理解されなかったかもしれない。

れあ > その後は何事もなく、3周の見廻りを終える。
今日も有事は無かったと言っていいだろう。

「まあ昼間だしこんなものか…」

治安の悪さでは群を抜いている地区とは言え、歩けば殺人鬼に当たるなんてことも無い。
もしそうなら、逆に「ギルド経由で貧民地区を見廻る依頼」なんてものが存在しえない、もっとガッチリとした制度が確立されていることだろう。

空を見上げると、ちょうどいい感じの昼下がり。

「もどって報告して、ちょっと休んでから“お店”にいきますか…」

酒場での仕事を考えて憂鬱な気分に浸りつつ、その足でまず冒険者ギルドへと向かいました。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」かられあさんが去りました。