2023/11/25 のログ
九音物 > 変なモノを招き入れて厄介になる巫女もいる。
目の前の彼女についてはそういう噂を聞かないが、失敗が0になるという事はないだろう。
玉鋼よりも純度が高く、今の総本山では拵え直す事さえ出来ない無銘の妖刀。
昔は名のある神剣とされていたそれを抜きはらいつつも、息を整えた巫女に万が一が起こっても面白くはない。
死なないというのと、苦痛は別物なのだ。それを知っているから人の好さにため息を吐く。

「………ばぁか。」

その声は。天井から降りて来た男の幽霊への声。
――死後の世界へ向かう勇気さえ持たない霊如きが。
生きて封印の一角になる己を自由に等出来る物か。陽気な男の腕が。頭が自分と同化しようとすれば。
其処に在る歪な精神世界を垣間見ることになる。
寸刻みに世界は切り取られ、男の狂気では波紋一つ起こせない重厚な汚泥の塊。
その世界に足を踏み入れた男の幽霊に興味はない。
せいぜい悪神を目指し呪しか残せず消滅させられた憑き物と語らえばいいだろう。

ぞぶり、と。その陽気な男は名に隠された獄に入り込み。捉えられ。
漆黒の口が牙が獲物を離すまじとその陽気な男を捉え、食いちぎり、呑み込んでいく。
咀嚼する黒い牙が、呪詛の塊である黒い唾液が陽気な男の霊だったものを取り込み。文字通り消滅をさせていった。
広大な汚泥の海に一粒の砂が入った所で何も出来ない。
時間をかけて罪の清算をするなり、自らの魂が喰らわれていく様を見続ける時間を過ごせば良い。

「……クギヤ。」

そんな顛末は興味がないとばかり。ぽん、と巫女の。
家族の肩を軽く叩いた。その手加減は優しく、衝撃で呼び覚ますのではなく精神の安定を齎し。
自分の声は音を、喉を調整する事で安心感を与え、巫女の精神と意識を安定と安寧に誘う様な甘い声。
巫女に聞かせると共に、巫女に入り込んだ霊にも聞かせる様な声音。
床に指差しをしたのを見ると、巫女の身体を再び御姫様を抱える様に優しく抱き上げる。
足の裏で畳の一角を、たん、と音が鳴る様に打つ。
畳返しの様に畳が跳ね上がり――中の様子を鬼火に照らし、明らかにしていく。

念の為巫女の様子を見遣る。まだ窒息しそうならばちょっと困った事態なので、奥の手を使うか悩み所ではあった。

「……大丈夫?」

ミホ・クギヤ > ――厄介だ。
殺害された人物の視点で固定されてしまうと、それは殺害されたのだから、逃れ難い。
なぁに甘く見てくれるなよと、そんな余裕もあればあえて殺され埋められるところまで見てやる心意気。

喉に食い込む娘の指に、詫びながら、一抹の安堵を得ている母親の魂はここには無い。
陽気な男はこの母親を食い物にしたのだろうか? あるいは親の財布からくすねた金で金銭的援助をしたのか。
…それとも、見舞い、慰めになっていたなんて事もあったのか。
気付いた娘はそれを裏切りと激怒した。
まあ、そりゃあ。

――頭を仰け反らせた姿勢で みぢり と首の皮膚が沈む。
自立を維持しているがカクンカクンと震える体はいかにも危うく、ひゅーひゅー喘ぐ喉は口の端に泡を立てて。
抱いた女の気配に引かれてか降りて来た男の顛末は分からない。
ポンと肩を叩かれ、名を呼ばれて我に帰り――

「――っがぁっはッッ!? げほっっ ごほっ っふぅっぐッ…」

けんけんこんこん一しきり咽ながら、手ぶりは「私は大丈夫」とヒラヒラ。
涙で滲む目の焦点を戻せば、返っている床材、繰り抜かれた床下。
棺のつもりだろう、軽く装飾された大きな木箱が納められており――

「…だーれもそんなに悪かないんだ。ただ、ちょっと、嚙み合わせがねぇ…… あれ、物の字何かあった?」

ちと上の空気が違うような?と、私を起こしてくれた九音はそっちはそっちで大丈夫かと振り返りながら。
手を合わせて箱を開ける。中には儀式的に埋葬されている女。
これまで臭いも無く不思議と虫なども湧いていなかったが、開ければ腐臭が漂って。

「この人はもう… 少なくともこんな所にゃ想いを残してない。
 娘さんと一緒に行ったかね… 上手く召されているといい。 ――いや、捧げられちゃったのか?」

娘さんがどこ行ったとかはもう私達の仕事ではない。
この呪物と化した亡骸を解けば、上の男の呪縛も解かれようと思うけど… いやしかし事後の感があるね?って。
済んだ事ならさして惜しむ素振りも無く、呪いに即席の対策を施したら、
亡骸一丁、公的機関にも知らさねばならないかと、一先ずこのままこの場を後にする姿勢。

「上手く、いったね。おつかれ帰ろうか。」

九音物 > 「……逆の立場で僕が咳き込んでたら良い顔しないでしょ、クギヤ。」

咳き込む相手の背中を摩り、呼吸が落ち着いたころに、真相を話し始めた巫女の頭に取り敢えずチョップ。
死なないからといって家族が苦しむ事を是とする程、ドライでもない。
何時もよりも、心なしかチョップの力は強かった。
何かあったかという声には首を傾げてみせる。

上の階にはなにもなく、なにものこされていない
控えめに、手を合わせ。はーぁ、と持ち去るつもりだった清められていた酒を供え、清めの塩。
それと金平糖を1粒。
呪いに対策を施す様子は流石三番隊でも一番の長寿。
手際よく、霊への失礼も無い。騒ぎ立てる悪霊一歩手前の霊もここにはいない。
腐臭漂う室内に花でも供えれば違うのだろうが、手を合わせ拝む霊桜教の華に免じて霊には許してもらおう。

「お疲れ様。……ほっとんどクギヤだけ苦しい思いしてたけどね。
事後処理までは手伝えないから。」

頑張って、と。こっちで覚えた、親指を立ててがんばれ、と応援なのか煽りなのかよくわからない激励のポーズ。
どこの管轄になろうが後は悪い様にはならないだろう。
可能なら霊桜教の手柄にしたいところだが。

(どうせ、そういうのは考えないんだろうなぁ。)

お人好しの巫女の事だ。そんな打算をせずにさっさと引継ぎでもするのだろう。

「帰るのは良いけど、お駄賃は?」

ミホ・クギヤ > 「……逆の立場か。いやいや、お役目さね、物の字はこっちにゃ来ないよ。」

ふむ、と考えて子供のようなはぐらかし方。
おっといけない咳込み具合が大袈裟過ぎたよと素知らぬ振りで。
強めのチョップには、気遣いを嬉しく思うのか へへっ と笑ってしまっている。

…いやそれにしても何も無くなってしまったね?と宙を仰ぐが、相性問題もある、済んだ事と言及せずに。

「…いやいやいやいや、あっちゃもこっちゃも生き地獄。
 こんなのに苦しいなんて釘の巫女の名折れってもんで。」

労いの言葉には本当に平気よと顔色悪く胸張って。
呪いの向けられる対象が消失していれば間に合わせの対策も気楽なもの。
仮にも埋葬のテイストであれば手を加えるのは術式に対するものだけで、
そも、紛れもなく一件ないし二件の殺人が露見したのだから、あまり触るのも科学捜査とか無いとしたってなんかこう。

九音の内心を知ったなら、いいや私達のおかげでしょうと言うけれど、別に喧伝する気は確かに無い。
ただありのままを依頼主たるオーナーに告げて、あとは供養するもしないも彼次第。

「――相談あっての対策だからね、費用は請求させて頂くが、謝礼はどうするのかなあ。
 クニじゃ相場があったけど、この街でお布施として相手方に任せてるとイマイチぱっとしないって話は聞いた。」

相手にもよるのだろうが。
請求書を作るのは私じゃないよと、どこかに投げるつもりでいるけれど、
最後まで責任持てとか言われて弱った様子で机に向かうのかもしれない。

仮にも集合住宅一棟のオーナーなら気前も良かろうと、お駄賃はずんでもらえるといいねって他人事で。
さっさとホコリを落としたいと、はぐらかすように退散する。

九音物 > 悔い改める事は喰い検める事にも繋がる。
一個人の罪の味。狂気の味など大海に投じる1粒の砂糖より薄味な物だ。
黙って収まるべき所に納まり、罪を悔いて清算に向かえばマシだったろうに、と。
家族に一瞬でも苦しい思いをさせた霊の記憶はその時点で斬り捨てられた。
刀で斬る事は強制的に成仏を促す物。それさえもしないという事は、少なくとも――エロ爺の感情を逆撫でしたのだろう。

「……えー。じゃぁ今度ヤらせてよ。」

退散していく巫女の後ろ姿へそんな一声。
改めて、部屋を出る前に。妖刀を引き抜く。凡その話は聞いた上で、『娘の』御霊はもう救われても良い頃合いだろう。
さん、という音と共に。
娘の霊を縛り付けるこの部屋との因果を妖刀が断ち切る。
上の階の霊には向けなかったせめてもの手向け。天へ上るか地に堕ちるか。或いは現世に留まるのかは、その娘の思い一つ。

どれを選びどうなるのか。そこまで見てやる義理は無く、義務もない。
因果は断たれ、釘の巫女による葬送の弔いも簡易的だが行われた。
元凶とも言えた上の階の霊もいない。
後はノーシスの管轄なのか、霊桜教が最後まで面倒を見るかは別の話。
小遣いを強請ると言ってもオーナーにではなく、後日三番隊に手書きで「1000ゴルド」と書かれた請求書が釘の巫女宛に届けられたとかなんとか。

ミホ・クギヤ > 「じゃあ、の意味が分からない。あと何をだい?」

何をヤるって言うのか、急になんだいとあきれ顔。
――九音が背後でしている事に口は挟まなかったが。
微笑んでから… さてここまでしてしまった娘さん、そ知らぬ顔して正道を歩めているものだろうかと眉を八の字に。
もう何もやりようのない死者には大らかだが、まだ生きている者には少々シビア。

――後日届けられた謎のメモは、黙殺される。
来てくれて助かったがそのように差配された、お互いにお勤めであったなら。
むしろお爺ちゃんお小遣いくれんの?ってなもんで。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からミホ・クギヤさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」から九音物さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエルバさんが現れました。
エルバ > 日中だと言うのにも関わらず薄暗い路地裏。
目に見えて人が居る、と言う訳ではないが、物陰や薄い壁越しに人の気配はそこかしこに散っているのが分かる。
時折、周囲を確認するように視線を巡らせながら、進み慣れた細路地を進んでいたが、一本道を逸れる。

「――――……ここのはず、だけど……。」

教えられた場所へ向かえば向かう程、暗がりの色は濃くなって、不穏な空気が強くなる。
被ったフードを少しだけ深めに被り直し、更にと路を進み。

エルバ > そうして目的の建物へと辿り着けば、再度周囲を確認しながら中へと入って行き――――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からエルバさんが去りました。