2025/04/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にラナさんが現れました。
■ラナ > それは、ただの嫌がらせなのではないでしょうか、と心の中で呟く。もちろん声には出さない。
いかにも、と言った風体の若い男二人に前後を塞がれて、行くも戻るもできずに居る。
「一人で……運べますので、お気遣いは嬉しいですが……」
先日、荷物を増やしすぎて運ぶのが大変になってしまったので、この日はそうならないように袋一つで収まる量のうちに、荷を置いてある宿に都度戻りながら買い物に歩いていた。
必要なもののいくつかが、手に入りやすいのがこの辺りのお店と聞いたから、他より危険な地区だから気をつけろ、と言われたのもあってまだ日の高いうちに来たのに、この有り様。
この辺りなら詳しいから案内してやるよ、などと声を掛けられたものの。詳しい、は本当かもしれないけれど、ただ手伝おうとしているわけではない事ぐらいは薄々わかる。
遠慮してこの場を離れようとしたら、行くも戻るも塞いで通れないようにしているのだから、尚更はっきり好意ではないのが伝わってくる。
荷物の袋を低くかばうように、それ以上に自分をどう守ろう、と小さく自らを抱きしめるように身構えるけれど、にやついた男たちがまだそれ以上手を出してこないから考えていられるだけで、いつ襲いかかられるかわからない状況に、怯えの表情が出ているのを、悟られないように少し俯いて。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエリビオさんが現れました。
■エリビオ > 貧民地区に届け物をした帰り。
挑発するかの貧民の眼差しにも平然と前を向いて道を歩んでいた。
時折かけられる声にも淡微笑で軽くあしらい、或いは道を塞いだ男たちの隙間を風のように縫い。
治安が悪きこの場所から一足でも早く帰ろうと足を止めずに帰路を目指す。
けれども、この貧民街に似つかわしくない小柄なシスターが若い男に囲まれているのには、
「……」
流石に足を止めてしまう。そしてゆっくりと少女の方に足を運んで行き。
「やぁ!シスター!この前はどうも!
重い荷物を持っているね。運ぶのを手伝って差し上げますよ!」
殊更明るい声で話しかけては少女の手を握り、別の道に連れて行こうとした。
知り合いのフリをして若い男たちから切り離そうとする算段だが、果たして――
■ラナ > せめて、近くに水場があれば……と、視線を泳がせ周囲を探ってみても、水路どころか井戸の一つすら見つからず。
いよいよ覚悟して、本当にこういうやり方はしたくないのだけれど、大声を出すしか――と、ぎゅっと一度身をすくめたあたりで。
「え、あ――ですから一人で……」
ついに襲われるのか、とせめて荷物を守ろうと袋を掴んだら、片方の手をあれよと言う間に引かれていて。
咄嗟に、対の手で荷物をなんとか救出したままどんどん引っ張られていく。それが新たに現れた第三者で、取り囲んでいた男たちとはまた様子が違う、ようなのを理解するのに時間がかかったから。同じように何事か戸惑っている間に掻っ攫われる形となった男たちも初動が出遅れ、すり抜けられてしまう形に。
「あ、あの、どなたかとお間違いでは……」
振りほどくような力はないし、片手の荷物を離さないように必死だったし、それがもしかするとあの状況から助けようとした建前の嘘であったのだろうと言う考えに至る余裕もなく。わたわたと慌てながら、男たちが追いかけてこないか気にしながら言葉を発するのでやっと精一杯。
■エリビオ > 「少し走って。アイツらが諦めるように」
すり抜けた後に低く囁き、力強く手を握りしめ連れ子の如く小走りに駆けた。
戸惑う若い男の姿が背後に見えなくなってから、足を止めて手の力を緩めて解放した。
「間違いじゃないよ。あのままじゃ君、荷物を奪われるか路地裏に連れていかれて酷い目に合いそうに見えたから。
余計なお世話を承知で救出したんだ。君、可愛いしさ……大丈夫?」
先ほどまでの恐怖と慌ただしさに困惑してないだろうかとす、と顔を近づけて黒瞳で覗き込み。
「俺はエリビオ。この貧民街に届け物をしにきたんだ。怪しい者じゃないよ……
っていうと逆に怪しく見えちゃうか。」
■ラナ > 言われるままに、と言うより掴まれているからされるがまま、必死に合わせて走ろうとする。
歩くだけなら普通にできても、走るとなると、仮りそめの脚が上手く動いてくれない。手を引かれているからなんとか付いて行けたけれど、そうでなかったら走り出してほんの僅か先でもう盛大に転んでいただろう。
途中からはほぼ荷物と共に引きずられるような格好になりつつ、足が止まればまっすぐ立っているのもどうやっていただろう、と不安になって、少しふらつきながら。
「は……ふ、ええっ、と……?」
息切れしているのを整えようとしながら、言われた言葉をぐるぐると頭の中で整理する。
少々強引ではあったけれど、助けてくれようとしていた、のは分かったように思う。そこまで思考が追いつくのに苦労して、他をよく反芻できなかったけれど。
「そうです……ね。助かりました、ありがとうございます。
お使いの買い物をしていたら、あんなことに…… あ、私は――ラナ、といいます」
す、と丁寧に頭を下げて。
知り合いのように話しかけられて色々思い出そうとしてみたけれど、やはり始めて会う人、と思う。怪しく――は、言われてそう見ると怪しく見える気もしたけれど、さっきまでの状況に比べたら危険ではなくなった、とは思えるから、それでやっと落ち着いて来たような気がして。
■エリビオ > 彼女の正体も知る由はなく。その疲弊しきった体に思わず体を抱き寄せようとする。
叶えば息が整うまで己の体で支え、叶わなければ 片方の膝に手を宛がう様に、前傾姿勢で心配そうに少女の動向を見守ってゆくだろう。
「ごめん。かなり走らせちゃったかな。これならお姫様だっこして俺が連れ去った方がよかったかも、なんて。」
彼女の息が整うまでに戯言重ねてにっこりと人懐っこい表情で佇む。
やがて礼と共に名を告げられたなら歓喜の色濃く目元を細めて。
「どういたしまして。そういってくれると嬉しいよ。
ここは治安が悪いから君みたいに小柄で可憐な人は狙われやすい。
……よかったらこの街の外まで一緒にいかない?荷物、俺が持つよ。」
ひらり、緩やかに差し出す手は酷くやわらかなれど、守るべき荷物を任せるかどうかは彼女次第――
■ラナ > 「実は、あまり走るのは――得意ではなくて。小さな場所で静かな暮らしばかりしていますから……」
意識しなければ何ともないのだけれど、どうやっていたっけ、と意識してしまうとかえって上手く脚が使えなくなるもの。
支えてもらうのはとても有り難かったから、抱き寄せられるのは一瞬身を竦めたけれど、今はそのまま添わせてもらうことにして。
走るのは上手くないのです、と素直に口に出てから、逆にそのことで心配させてはいけないと……少し言葉に迷ってから、単に運動する機会がなさすぎるだけです、と言うことにする。
「明るいうちなら大丈夫かな、と思っていたのですが……駄目でしたね、思った以上に。
……あ、あの、荷物は助かるのですけれど、他に買ったものを宿に集めているので……そちらまで運んでいただけたら、あとは後日、迎えが来ます」
この荷物一つなら、街から出るのでも行き先はそれで良くなるけれど、他の荷物を置いてこれだけ持ち帰るわけにもいかないから。
今使っている宿の場所を教える、のはやはり少し迂闊なのだろうかと躊躇ったけれど、助けてもらっておいてはぐらかすのもなんだか変な気がして。
■エリビオ > 小さな場所で静かな暮らし……との物言いにとんとん、抱き支える背筋を優しく撫で
「……お嬢様かな。花嫁修業でシスターしている。
ほんと、気を付けてね」
身長差あるたくましき体躯で支える以外、それ以上はせず独り言をこぼして背筋から腕を退ける。
続く言葉には二つ返事で頷いて。
「いいよ。この街の宿まで運ぼう。
それじゃ失礼……」
信頼嬉しく背負っている彼女の荷物を軽々と片手で持ち上げて肩で担ぐ様を見せつけ。
そしてもう一方の手を――今度は壊れ物を扱うように―― 包み込もうとする。
叶えば2人手を繋いで
「それじゃ行こう。恋人かカップルだと思われれば、絡む輩も減るからさ」
彼女に向けて片目を瞑る戯れを見せて、歩みを進める……相手の足運びと合わせてゆっくりと。
■ラナ > 撫でられる首筋がこそばゆく、少し身を震わせて。お嬢様かな、と呟いたのを敏く聞いていたのか、ふわり微笑みながら小さく首を振り。
「教会で育てられた、ただの孤児の一人ですよ? ……お手伝いでお掃除したりとか、お洗濯したりとか、そういった程度に身体は毎日動かしますけど、運動をしているか、と言われると――ふふ、走ると、はしたないと言われるのは私達も淑女の方たちも同じなのかも、ですね。
はい、もっと気をつけないといけませんね……」
荷物を持ってもらえるのは本当に助かるのだから、あえて断る理由もなく。
妙に親密に手を繋がれれば、それはどことなく戸惑うような表情を見せるけれど。それが単に優しさからくるものでも、誰かが言っていたような――役得?だったろうか……?のような考えでそうしているのだとしても、そのぐらいはそのまま従っておこうと思う。
「少し気恥ずかしくはあるのですけど、その方が良いのですよね……」
使わせてもらっている平民地区のはずれの宿の方向を概ね伝え、歩を進め。今度はゆったりと歩けている、たぶんこの人の本来の歩調よりゆっくり歩いてくれているのだろうな……と思える。
優しい人ではあるのかな、と、強張っていた気持ちはだいぶ薄れて、普段通りのふんわりした表情に戻ってきた様子で。
■エリビオ > 「ありゃりゃ、独り言聞かれてたか。
孤児だったんだ。俺も同じ。両親の顔は知らない。
女の子は走るのが苦手だよね。服装からして……でも俺が気になったのは足がふらふらしてたこと。
……怪我とかはしてないよね?ただの運動不足だけならいいんだけど。」
繋いだ手は華奢な手でも軽く振りほどけるだけの柔らかな力で、温かく包み込む。
彼女が何を考えているかはわからねど、接触を好む少年はただふれあいたいだけ。
戸惑う表情に薄く小首を傾げて肩に黒髪が零れる。
「恥ずかしい?ふふ、ラナは初心だね。
あんまり他人行儀だとまた誰かに絡まれるかもよ?
嘘でも楽しそうにしないと。」
緊張が薄れてきた様子に、戯言も多分に交えてゆき。
繋いだ手を2人の合間に大きく揺らしながら、その歩みは宿屋まで向かっていく。
■ラナ > 「助けていただいたおかげで、怪我はせずに済みましたから――ふふ、運動は苦手なんですけどね、そのぶん? と言うわけではないですが、音にはとても敏感なのですよ。
……この国で、両親の顔がわかるのはそれだけでも幸運なのかも、と思ったりもしますけど。でも、育ててくれた人が誰かいるのなら、そのかたが親のような…家族のようなものですから、私はやはり恵まれているのかも」
自分の方は、親の顔はもう朧気にしかわからなくなってしまったけれど、教会の人たちが家族のようなものだから、そこは辛くはない。
同じように孤児と言うこのひとが辛くないのかどうかは解らないから、あえてそれを聞くようなことはせず。
「初心、なのかは……そう、なのかもしれません。
あ、でも、平然と手を繋いでいたら、それは恋人と言うよりも長年のご夫婦だったりとか。恥ずかしがっているぐらいで自然なのかも。
もしくは、本当のお姫様と従者とか?……ああ、それなら手を取りはしても繋ぎはしませんね、ふふふ」
あまり抑揚なく、綺麗だけれど控えめな声。それでも気持ちはもう落ち着いているのだろう、時折ころころと笑う姿は自然なものに見えるだろう。
暫し、他愛もない話しを続けながら歩けば、伝えていた宿の辺りはもうすぐで。
■エリビオ > 「音……へぇ、音に敏感なんだ。俺の心臓の音も聞こえてたりして。
育ての親がいることに恵まれてるか……孤児院のおばさんは口煩いって思ってた。
でも認識を変えて感謝しないとね。シスターの教えだもの。」
他愛もない会話を続けながらその声は明るい。
孤児の辛さはあれど、今は手のぬくもりがあるから。
続く言葉にも時折笑みのさざめきを零し。
「あはは。確かに。でも俺たちは熟年夫婦ってよりお姫様と従者って感じだね。
手を繋いでるのは……隠れた恋慕があったから、とか。ふふ」
鈴鳴らすような笑みのさざめきを澄んだ声に重ねていく。
そして――
「あれかな?ラナの言っていた宿は?
……良かったら部屋で少し休んでいいかな。
ちょっと疲れたかも?」
今更のように肩に担いだ荷物を揺さぶって願い出る。
■ラナ > 流石に心音までは、とまた少し笑いながら。
「口うるさいのも、それだけ大切にしてくれているからと思いますよ。そうでなかったら放っておかれるのではないかな、と思いますし……」
叱られたりするのは、確かにつらい事もあるのだけれど。叱ってくれる人すらいないのは寂しい、と……思えるのは、それを失ってみて気づくものかもしれなくて。
口煩い、なんて言っているのを、でもそれは今そんなに辛くはない環境なのだろうなとも思うから、ただ優しい笑みを浮かべているだけ。
「身分違いの恋、は物語でよく語られますね……自分でそんな環境をうまく想像できなくて、ただ素敵だなって言う感想ぐらいしか上手く出てこないのですけれど。
――あ、そうですね、あの宿です。 ……ええ、部屋まで運んでいただく方が助かりますし、そのぐらいはいくらでも」
覚えのある場所まで戻ってきて、ひと心地。
ここで無碍に追い返すようなこともせず、疲れた、と言うのを素直に信じるまま、宿の前からは今度は自分で先導する側になり、中へと連れ立って。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からラナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエリビオさんが去りました。