2025/03/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルスランさんが現れました。
■ルスラン > 【お約束有り】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にジーゴさんが現れました。
■ルスラン > 貧民街の、裏通り。
薄汚れた長い外套が薄く開いた戸の陰に挟まる様に丸まって落ちていた。
そして、そのなかには通りに落としておくには聊か上質な白いシャツと、黒地のパンツに包まる様に転がる子供の姿が、やっぱり落ちているというのが相応しいような風情で転がっていた。
事の起こりは30分くらい前の話。
いつものように信用できる情報筋から情報を買い付けて去ろうとする男の疲弊した顔を見た情報屋の女は一本の薬を差し出した。
聞けばそれは疲労回復用の栄養剤だという。
確かな筋からのもらい物だった男は、やっぱり疲れていたのだろう。
いつもなら懐に入れるだけで後に処分するようなその壜を、女と解散したその後に気の迷いから口にした。
そのうち、体が温かくなる──どころではなく、熱に浮かされるかと思うほど。
歩くのもままならない程意識が混迷していくなかで、それでもギリギリの精神力を引き絞って万が一の隠れ家としている扉を求めて歩いていた。
鍵を開け、扉を押し開けようとしたところで精神と身体の限界を来した男はそのまま意識を失って。
最後に覚えるのは、体が端から融けてしまうかのようなどろりとした感覚───
そして、今。
その扉の奥へと放り込むことを失敗したような布地のかたまりから覗く、崩れ落ちたはずの男が履いていた靴を不格好に嵌め込んだかのような白く柔い足が二本。
男性とは言えない、ちょうどそう、まだ声変わりも終わっていないかのような年ごろの少年が包まっていることを示すように暗い路地の中でぼんやりと輝くように落ちていた。
■ジーゴ > 「くそさむ…」
そろそろ暖かくなってもいいはずなのに、思いがけず雪さえ降った夜。
雪は地面に着く頃には溶けてしまうようなものだったけれど、季節の割には驚くほど寒い。
足早に家路を辿っている少年がまず見つけたのは、暗闇でも目立つ白い何かだ。
拾えば売れるんじゃないか?ともちろん思った少年はその何かに近づいて、ようやく白い何かがシャツであることを認識し、そのすぐ近くに黒いズボンが落ちていることにも気がつく。
「え。しんでる?」
狼の耳が大きく上を向いて、獣の瞳孔が目立つ目が見開かれた。
驚いたのはその服に包まれているように少年が倒れ込んでいる体。
恐々、落ちている少年が生きているのかを確認しようとして布地から見ている白い足を失礼にも革靴を履いた足でつんつんした。
しゃがんで手でその体に触れるのは怖くて躊躇われた。
裏路地とはいえ、そうそう死体が落ちているエリアでもない。
■ルスラン > 「…ぅ、んっ……」
体に何かが当たる感触。
一度はなく、二度、まるで何かを尋ねるかのように。
服の塊の中から呻いた声は布を通してなお高くて、やはり未だ声変わりを迎えていないことを示すものだった。
もそり。それからややあって、また、もそりと。
「……?」
薄汚れた外套の中から埋もれていたものが指先でその端を持ち上げて、外を伺うように外套の庇の下からスカイブルーの瞳で自分をつついてきた何かを確認するように仰いだ。
暗い色の髪、あまり体は大きくないように見える。
けれど、大きな自分とは違う形の耳が見える。獣耳だ。
「…だ、れ。
ここ…は、……?」
掠れた高い声が確認するように問いかける。
自分がなぜここにいるのか、目の前の彼なら知っているかもしれないと尋ねるかのように。
■ジーゴ > 「あ いきてた」
つんつんした相手からはやわらかな感触が伝わってきたし、
何より相手は小さな声を出してから動き出して、地面に落ちていたコートの中から顔を覗かせた。
死んでいなくてよかった、と思って相手と目の高さを合わせるようにしゃがみ込んだ。
「オレ?ジーゴ。ここ…?ん、なんだっけ、おうとのあんま金ない奴らがいるばしょ?」
『マグメール』という王都の名前さえわかっていないのは、獣の少年が王都以外の場所をはっきりとは認識していないからだ。
「だいじょうぶ?」
相手の様子はどこか異様だ。地面に落ちているだけでもどこか危なげなのに、
ぶかぶかすぎる服を着ている、というよりも服に対して小さすぎる体に服がまぶしつけられているだけだ。
「起きられそ?」
地面にずっと倒れているわけにもいかないだろうと、手を差し出した。
■ルスラン > 「起き、られる。
ちゃんと、生きてるよ」
差し出された手に助けられて起き上がれば、足の合間が雪の痕のツンと冷えた空気に嬲られて寒さに体が震えた。
転がっていた方の少年の背丈はちょうど少年の鼻先とつむじの高さが同じくらい。
だから白いシャツは膝位の丈になっていたし、一度は袖から出した指先もまた立ち上がった時に隠れてしまった。
「ジーゴ、おにいさん。
…えっと…ぼくは、……ルス」
それからおうと、という響きを口の中で二度反芻して、孤児院で教わった『王都』という場所なのだろうと理解した。
孤児院のあるヤルダバオートからは、子供の足じゃ一日ではつけない距離にあるのだと誰かが言っていたとおもうのに、どうしてそんなところにいるのだろう。
「ぼく、どうしてここにいるの?
……ぼく、ぼく」
じわ、と、涙が滲む。
母が亡くなってからはいった孤児院はいい思い出ばかりではないがそれでも知らないところにいるよりは安心できる。
けれど今の──男だったころの記憶がない少年には、ただこの場所にいることは恐怖でしかない。
差し出された手が重なっていれば縋る様に白い指先で握りしめた。
■ジーゴ > 手を握って起きるのを手伝うとその立ち上がった。
相手の方が少し小さく見下ろす格好になる。
目の前の少年は大きな服がちょうどよくシャツだけで着られているようだ。
「ルス、ん、はじめまして
って、ばか、こんなとこで泣くなって」
初対面の知らない存在に突然泣き出されて困惑した獣耳が左右に倒れる。
治安だって決していいとはいえない貧民街で、手を握りしめられるとどうしたらいいかわからなくなって、慌てた声を出す。
悪意だって立ち込めている貧民街で、純粋に頼られて動揺している獣は少し考えた後に一つの提案をする。
「なら、とりあえずオレんち来なよ。お茶くらい出すからさ」
ご主人様が借りている定宿であって、奴隷の少年のものではもちろんないのだが、我が物顔で誘った。
相手がなんで泣いているのかを聞くことでさえ、貧民街では憚られる。
相手がうなづけば、貧民街を抜けて、平民街の外れにある定宿に案内しようとするだろう。
■ルスラン > 「っ、ごめん、なさ…っ…」
慌てた声に、びくりと大きく肩が震えるのは年上に叱られる時を思い出してしまったから。
泣くなと言われていわれから大ぶりな袖で目を擦ったけれど、すぐにスカイブルーの眦にぷっくりと大きな涙が滲んでしまった。
けれど声を挙げて泣き出すほどの聞きわけのない年齢でもないらしい。
左右に、倒れてしまった獣耳を不思議に思うことよりも先に、自分の置かれている状況への不安が勝っている。
だからきゅう、と、ちいさく唇を噛みながら、これ以上は啼かないようにと唇を噛みしめた。
「…いいの?」
ちら、と、直ぐ近くの開きかけた扉を見るも、誘ってくれる獣耳の少年にを見上げて頷いた。
今は記憶の全てもないけれど、少年になってしまった男からすれば万が一の仮の宿。
金目のものも、男の身分を知らすようなものも何もない、ただ鍵をかけて眠れる寝台があり、体を洗うことが出来る設備がある程度のものだ。
記憶が戻ったとしても、捨て置いても構わないようなところだと少年の中でも無意識に定義されているのかもしれない。
離れて歩くのは怖いのか、腕を組むわけもないけれどほぼぴったりと獣耳の少年の後ろをついていく様は生まれたばかりの雛鳥の様にどこか似ていた。
■ジーゴ > 「あ、ごめ…ん……」
自分がより一層相手を泣かせたかけていることは
獣の少年にもわかる。
「オレんち来たらどんだけでも泣いていいからさ」
手を握りしめて足早に貧民街を抜ける間、相手をこれ以上怖がらせないように話し続ける。
「あ、オレんちって言ったけど、オレじゃなくてオレのご主人様がかりてる宿ね。たぶん、今日ご主人様いないし、いても大丈夫だとおもう」
何回か角を曲がると、貧民街も抜けて少しは治安がマシな地域に差し掛かる。
貧民街を抜けてから子供の足で15分も歩けば見えてきた宿の2階を指差した。
「入んな」
シンプルだが安物ではない扉を、ポケットから出した鍵で開けると、繋いだ手を引っ張って部屋に招き入れた。
いくつかの部屋がある大きめの宿で、扉を開いた先はこぢんまりとした部屋にダイニングテーブルと椅子が二脚。
その奥には小さめのベッドが見える部屋の扉が開いていて、もう一つの部屋は扉が閉まっていて、中は伺えない。
「んー、まずはおフロだな」
雪が溶けて濡れた路地にどれだけの間転がっていたかわからない相手。
手から伝わる冷え切った体温と、綺麗とはいえない相手のシャツを見て言うと
「シャワーだけだけど、お湯でるから。おいで」
玄関から少しのところにある風呂場に入るように促した。
相手が嫌がらなければ、大きなシャツのボタンを上から外していこうとするだろう。
■ルスラン > 薄暗い街を出るまでの間、ん、と何度も布に埋もれているせいでくぐもった相槌をかえしながら、唯一今は自分を助けてくれそうなその手に縋り付きながらついていく。
「…ごしゅじん、さま」
けれど相槌を返していただけの口元が、急にその言葉を繰り返す。
そして、不安げにつないでもらっているその手をまた握りしめた。
やがて連れてきてもらった建物を見上げれば宿の文字が見えて、少年が言う部屋というのは宿の部屋なのだと理解した。
階段を上がり、鍵の開く音がする。
中をそろりと見回せば、部屋そのものは至極普通の安い宿といった雰囲気だ。
閉まっている扉をちらりと見やった後、獣耳の少年の案内に導かれるままにそのあとをついていく。
お風呂、シャワー。
孤児院では聞いたことのある単語だ。
けれど、それは本当に普通のお風呂なのかと半ば不安げに獣耳の少年を見やる。
「……、うん」
外套を落とされれば下には雪の中にいるには適切とは言えない、見た目は普通だが触れば上質さの分かる白いシャツ。
獣耳の少年が一つずつ外してくれるボタンも、よくよくみれば木や安い樹脂のようなものではなく貝を丁寧に削られたもの。
脱がされていく間も恥ずかしがりはするものの、嫌がる手はない。
ちょっと賢く目端が利くのなら誰かに服を着せられたり、脱がされたりすることに慣れているのがわかるはずだ。
■ジーゴ > 「そ、ごしゅじんさま」
彼にとっては安心できる相手だから、相手が繰り返した理由はわからなかった。
宿の部屋に招いた相手。
なんで風呂の前で戸惑っているかはわからなかった。
すっかりボタンを外してしまうと、相手の腕をシャツから抜き去った。
自分のシャツのボタンは手荒に外した。
招かれた方の少年のシャツの質に気がつくことはない少年のシャツは比較的簡素なものだ。
下着は自分で脱ぎたいだろうと思ってこちらから脱がせることはせずに、自分で脱ぐのを待って
風呂の扉を開けると小さな方の少年が案じていたようなことはなく、そこには文字通りシャワーがあるだけだ。
栓をひねってお湯を出した。
■ルスラン > 幸いなのか否か、ズボンと違いやっぱり体のサイズに合わない下着は少年の体から抜け落ちずに済んだらしい。
立ち上がった時に落ちないようもう片方の手で布の重なる上から押さえていたのも理由だろう。
さあさあと降り落ちてくるお湯は温かだ。
ふんわりと立ち込め始める温かい湯気のそれだけでも、冷えていた体には染み渡る。
「……ジーゴおにいさんは…ごしゅじんさまが、いるんだね」
お湯の落ちる音のなかでぼんやりと、思ったことをつぶやく。
シャツを脱いでいる獣耳の少年を見やれば、自分よりも背丈はあるものの体格そのものの細さはあまり変わらないように思える。
それから、ふと自分の体を見下ろしてみれば、最初に少年が思ったよりも肌は綺麗だった。
痣もなければ、締め上げられたかのような痣もない。
比較的自分の体の中でも痣が残ってていることが多い手首や鼠径部を見下ろしながら
「でも、どうしてぼくはあそこにいたんだろう。
……にげられた、のかな」
だれかに買われてあの地下から掬い上げられたのだろうか。
温かいシャワーに手を伸ばして指先を温め、それから爪先を温めて。
自分を拾ってくれた少年から自分を起こすまでの様子を聞くために、涙のおさまりつつあるスカイプルーを彼へと向けた。
■ジーゴ > 「ん、ごしゅじんさま。」
彼の中ではとても大切なもの。お風呂のお湯の中で心がほどけていって饒舌になる。
「オレのごしゅじんさまはオレを買ってくれたの。だからここにすめてて、べんきょうとかも教えてくれるの」
自分でもある程度は稼いでいるけれど、こんなに整った暮らしができているのはご主人様のおかげだ。
「ルスはなんでさっきから泣いてるの?」
お風呂のお湯でも誤魔化しきれていない相手の涙。
少し背を屈めて、少年の頬にキスを落とそうとする。
「あそこってってどこ?ルスはなんでじめんに落ちていたの?にげたの?」
倒れていたのを起こしただけの少年は目の前の彼がどこから来てなぜ倒れていたのかはわからない。
スッと肌を撫でて、汚れている皮膚を撫でる。
「オレも逃げたことあるよ。市場から」
相手が嫌がらなけば、そのままキスを続ける。
■ルスラン > 「買うの?ひとを?
…でも、ジーゴおにいさんのごしゅじんさまは、…きっといいひとなんだね」
話してくれる少年は先程迄より饒舌だ。
だからきっと彼にとってはいいご主人様なのだろうと子供の頭でもすぐにわかる。
羨ましいのか、それとも違う理由からかわからない頬の涙を唇で拭ってくれる少年の言葉に、スカイブルーをその獣耳から胸元くらいまで落とした。
「…こわいんだ。
ぼく、なんであんな、まちのすみっこみたいなところにいたのか、本当にわからなくて」
肌の上の汚れを拭ってくれる掌に逆らう気配はない。
温かくなったその掌は、大人の掌より優しくて、柔らかくて気持ちよかった。
市場からにげたことがあるというその言葉を聞きながらいっぱいキスをしてくれる少年に、少しだけ心を開いたのか甘えるように抱きついてみようとしながら
「にげたかも、わからない…。
外に出られるのは、えらい人たちに『お仕え』する時か、『望まれてお迎え』されるときだけなの。
…だから、体あついけど、どこもいたくなかったから…お迎えされたけど、にげてきたのかな…って」
お仕えは、娼年として体を売る事。
望まれてお迎えされるのは、文字通りの見請け。
けれど今の少年の頃に戻った思考には未だその本当の意味が解らないままだ。
だから、少年からすれば目の前の獣耳の少年は『お迎え』と買うのふたつが等記号で結べないまま。
ただ、キスしてもらえるのが気持ちよくてうっとりとした顔を湯けむりに滲ませながら時々自分も少年の頬にキスをした。
奉仕ではなくて、ただ気持ちよかったからこれはそのお返しのつもりで。
■ジーゴ > 「あー、なるほどね」
キスを落とす合間に頭を撫でて、話を聞いている獣は
ようやく話がわかったというように頷いた。
「『おつかえ』と『おむかえ』ね。オレはごしゅじんさまに『おむかえ』してもらったんだよ。べつにごしゅじんさまはえらくはないと思うけど」
『お迎え』という言葉は安い奴隷のミレーには似つかわしくないが、おそらく目の前の少年の言葉で言うと『お迎え』だろう。
「オレと『おつかえ』の時にすることシたらヤだ?」
お返しとして目の前のかわいい少年がしてくれるキスに体が反応し始めるのを隠せない。
全裸だから尚更、体の中心で勃ち起がりかけているモノが露わになっている。
涙を拭うだけだったキスが、徐々に相手を啄むようなものに変わっていって。頭を撫でる手も止まらない。