2025/02/27 のログ
■ノア = セシル > 盗賊団の拠点となっていた廃屋を特定し そこに入り込んでいた者が、彼らの他にもう一人。人攫いまでしていたとは知らないまま、どうやら相当溜め込んでいるらしい盗品目当てに 廃屋の地下へ忍び込んでいた ── が、
バタバタと聞こえる複数の足音や、声に、薄らと地上の状況を理解して。人の気配が消えるまで このまま地下に身を隠そうと、息を潜めていたのだけれど… 重い何かが、恐らくは この地下を隠すあの本棚が倒れる音が響く。次いで男の声と 階段を下りる足音が近付き始めれば、扉の前で じっと息を殺して
「 ︎︎…………… っ、 ︎︎」
音を立てぬようその場に横たわり、気でも失っているフリをする魂胆。もしも扉が開き声を掛けられたなら “知らぬ間に連れ去られた” だのと適当に理由を付けて、極力不利な戦闘は避け 逃げる機会を伺おうと ───
■グライド > ――――反応は無い。
ならば、少し間をおいて扉を開ける。
鍵が掛かって居なかったのは幸いだ、此方の急襲で暇が無かったのやも知れない
隙間から先ず様子を伺い、そして、一気に扉を開いて室内を見渡す
凡そ想像通りの光景で在った。
先刻の調査では見つからなかった、盗品の残りが、棚に、乱雑に並んで居る。
具体的に何にどれだけの価値がある、とまでは判らない上に
あくまで盗品であるから、其れは一旦手を付けぬ様に放置しつつ
問題は――其処に、人が倒れて居る事。
「――――……おい、おい嬢ちゃん! 生きてるか?」
傍に屈み込み、其の肩を軽く揺らして、起こそうと試みる。
こんな辺鄙な所で、発見されない儘、と言う最悪の事態にならなかった事は幸いだろう
これで鍵迄掛かって居たら、最悪野垂れ死ぬ可能性だって在ったのだ。
■ノア = セシル > 扉を開く音に、眉一つ動かぬように。こちらに気付いた人物の声に、少しでも肩を震わせてしまわぬように。ただひたすら気を失ったフリに集中し、やがて肩が揺らされると
「 ︎︎───── ︎︎ん、っ… ︎︎」
意識を取り戻したかのように小さな声だけを漏らし、薄らと目を開く。脱力はそのまま、駆け寄った人物に上体を起こされると
「 ︎︎だれ、……… ︎︎」
短い言葉だけを 途切れ途切れに零しつつ、薄目の観察によって王国の騎士や衛兵の装備ではなさそうだと判断する。
囚われていたのか、いつから居たのか、そんな事を尋ねられたなら、全てに “わからない” “思い出せない” などと、変わらず消え入りそうな声量で答えるつもりで。暫く問答が続けば 徐々に長い睫毛を持ち上げ、ようやくしっかりと視線を合わせようか。
「 ︎︎………………… ありが とう、
︎︎ ︎︎あたし ノア… ︎︎ ︎︎─── 貴方 は、 ? ︎︎」
女の身を案じてくれているように見える相手に、ほんの少し申し訳ない気持ちになりつつ… ぼんやりと、貴方の顔を見詰めながら名乗った。
■グライド > 女から声が返れば、先ずは良しとする。
意識がないままだった場合、色々と扱いには困ったろう
其れこそ、其の儘憲兵に一旦引き渡す、と言う選択だって在り得た
先ずは、色々と質問は掛ける。 何故此処に居たのか、何が在ったのか。
少しでも事情が汲めれば良かったのだが――生憎、返って来たのは、「判らない」だけ
困った様に、少しばかりその場で考え込みつつ
暫しして漸く、視線の焦点が合ったらしき女の瞳に、己もまた、視線を重ねて
「……ノア、か。 ……俺様はグライド、傭兵だ。
さっきまで、上の部屋で立て籠もってた盗賊連中を仲間とふん縛っててな。
此処への通路が見逃されてたもんだから、確認に来たって所だ。」
一先ず事情は説明して置こう。
其れから、立てるかと女に問う。 室内は兎も角、通路は少々手狭だ
歩けるならば、歩いて貰った方が移動に支障が無いだろう
難しい、と言うなら…、……大きな外傷が無ければ、此処で少し休ませるのも手か
己が腰元に手をやり、水入りの革袋を掴めば
女の胸元に差し出して、ひと先ず飲むように促そうか。
「ただの水だ。 まぁ、少しは気付けになるだろうよ。
其れとも、酒の方が良いなら、一応渡せるがよ。」
――雰囲気を和らげるよう、軽口めいて、そう告げながら。
■ノア = セシル > 安易な考えの元 だいぶ付け焼き刃な演技であったものの、今のところ何とか怪しまれずに済んでいるようで。女を微塵も疑わぬ真っ直ぐな視線を向けられる度、今にも逸らしたくなってしまうのを じっと堪える。上で起きていた事も、おおよそ女の想像通り。貴方の名前と職業がわかれば、後は如何にしてこの場を抜け出そうかと思考巡らせながら
「 ︎︎そう、だったの…… ─── ︎︎ありがとう、グライド。 ︎︎」
再び感謝の言葉を伝えてから、教えてもらったばかりの名前を復唱する。立てるかと問われれば、こく と小さく頷いて。受け取った革袋から、一口、二口… 喉を潤した。さすがの女も罪悪感が芽生えてしまうくらいには、気の良さが ひしひしと伝わってくる。囚われていた女を和ませる為か、軽口めいて告げた貴方の言葉には
「 ︎︎お酒すき ? ︎ ︎︎なら…… いつかご馳走させて。 ︎︎」
助けてもらった恩を返したい などと、ふわり笑って見せた。しかしながら ── 貴方に上体を起こされ、くったりと座った女の姿は… “攫われた娘” にしては、どうにも違和感が湧くかもしれない。寒いから手袋を… なんて言い訳しようにも、胸元は大胆に開いていたり。短いスカートから伸びる白い太腿には、ガーターホルスターが装着されていたり と。決して確信までは持てずとも、どこか “攫われなさそう感” が否めない装いで。
水の入った革袋を返すと、ゆっくり立ち上がる。本当は元気一杯……なのを、悟られぬように。
■グライド > 「酒は好きだな、酔っぱらいを気取るのは愉快なもんだ。
嬢ちゃんが奢ってくれんのか? なら、一層美味い酒が飲めそうだな。」
断りはしない。
理由が恩返しだろうが何だろうが、良い女の誘いは断る理由がない。
とは言え、軽い調子で在るのは、戯言として流す事も出来る様に、だろう
こう言うのは、話半分で聞いて置く物だ。 攫われた女であれば、正常な判断が出来ているとも限らない
緊張が解け、安心した拍子に口走って居る事だって在り得るのだ。
水袋の水を飲んだのを見れば、返された其れを受け取って、また腰に提げる。
己もまた、女と共にゆっくりと立ち上がれば、必要なら、其の肩を支えよう。
要らぬと言われれば、手は出さぬ。 改めて、室内を軽く一瞥しつつ、出入り口に向かおう。
半開きの扉に手を掛ければ、其の向こうの通路へと視線を送る。
先刻、声を響かせたが、生憎。
同じ依頼を受けた冒険者も、騎士の連中も、引き上げた後だったようだ。
「―――――――やれやれ。」
小さく、溜息を零す。
其れから――ふと、後ろを振り返れば、女に向けて
ゴルド硬貨を一枚取り出し、ぴんっ、と親指で弾いて当てようとする。
不意打ちだ。 避けなければ顔面に当たるだろう勢いで――反応を試すだろう。
初めから違和感はあった。 何せ、綺麗過ぎたのだから。
貧民街で攫って来たらしき女達でさえ、発見された時には両手両足に枷を嵌められていた
ならば、明らかにそうではない、しかも、連中にとっては上玉であろう女が
何の拘束も無いのは、そもそも不自然なのだ。
■ノア = セシル > 時間を掛け、時に貴方の手を借りたりしながら ゆっくりと立ち上がって。あと少し、このまま行けば逃げ出せる… そんな焦燥感に歩調が速まらないように。
( ︎︎ ………ごめんね、優しい傭兵さん。 ︎︎)
貴方には伝わることのない心の中、密やかに謝っておこう。最後の最後まで油断しないよう、女は細心の注意を払う。貴方との他愛もない会話も、ふんわり続けつつ
「 ︎︎もちろん、落ち着いたらお礼をさせて。 ︎︎」
部屋を出て、通路を抜け、螺旋階段を上がれば、あと少し と… 出口へのルートに意識が揺らいだ、その瞬間 ── 不意に飛んできた何かを、顔の前で ぱしっと掴んだ。手のひらを開くとそれは、一枚のゴルド硬貨。視線を上げれば、振り返った貴方と視線がぶつかって
「 ︎︎…………… っ、 ︎︎」
聞こえるか聞こえないか程度の、小さな舌打ち。
■グライド > 「――――――良い眼してるじゃねぇか、嬢ちゃん。」
くつくつと笑った。 とは言え、先刻までとは多少響きも違うだろう。
立ち上がるのも億劫で、覚束ない足取りで在った筈の相手が
コインを避けるに留まらず、掴んで見せたのだから。
己が先んじたのは、当然ながら、唯一の出入り口である通路を一旦塞ぐ為
振り返ったなら、改めて、"演技"を続けられなくなった女へと向き直ろう
「――――改めて、名乗って貰う必要があるかい?
まぁ、俺としちゃあ偽名だろうが何だろうが、別に構いやしねぇんだが。」
肩を竦め、響かせた戯言。
表情はさほど変わらない、明確な敵意をぶつけると言う訳でも無い。
ただ――少なくとも、油断や隙、と言う物は、消えたのが判るだろう。
人差し指を、相手の前に立てて見せる。
「一つだけ、聞いて置かにゃならん事が在る。
……俺様は傭兵だからよう、嘘を吐いてる奴ってのは、判っちまうから諦めな。
正直に答える事をお勧めするぜ。」
変わらぬ調子で、されど、煙に巻いたり、誤魔化す事を赦さぬ圧を帯びた声音で。
女の瞳を、静かに、見通すように、捕らえ乍ら。
「―――――人攫いの仲間か?」
――重要なのは、其処だ。
盗賊を捕まえるのは騎士や憲兵の仕事であって、己は別に構わん。
だが、人攫いや、殺しが関わって来るならば別だ。
もし、女がそうであったならば――
「其の場合は、話し合いの余地が無くなっちまうからよう。」
■ノア = セシル > 「 ︎︎随分手癖が悪いのね、傭兵さん。 ︎︎」
飛ばした硬貨に試され、掛かってしまったと悟った女は… 先程まで危うげにふわついていた身体を、しっかりと自立させて。長い睫毛を持ち上げ、手のひらの硬貨から 貴方へと視線を移し。突き立てられた指の向こう、貴方の顔を真っ直ぐに琥珀色で見詰めながら
「 ︎︎…………… いいえ、違うわ。 ︎︎」
逃げ道は塞がれた。一括りに傭兵と言っても、その実力は様々。一介の新兵にだって正々堂々勝負を挑めば勝ち目のない女は、体格の良い貴方に詰められてしまえば観念したのか小さな溜め息を零して。問われた質問に、正直に答えた。確かにそこに、嘘は一つもない。
「 ︎︎それで………… 話し合い、って ? ︎︎」
床に横たわった時に付いた砂埃を払ったり、乱れた衣服を整えながら… 太腿のホルスターから指先に、細い針を忍ばせて。
■グライド > 「はっは…! 手癖の良い傭兵ってのが居たら、其れは其れで希少だと思うがよう。」
言葉遊びに興じる余裕は見せつつ、されど、女が答えるまでは
少なくとも道を譲ると言う気は無いと見えるだろう。
どうせ逃れられぬ、相手も判って居る筈だ
だからこそ、急かす事無く、のんびりと待ち――其の言葉に、双眸を細めた。
「……そうかい。 ……嘘を吐いてる眼、じゃあ無さそうだな。」
――一先ずは。 女の言葉を信用はした。
納得した、と言った方が正しい表現かも知れない。
「何、別に難しい話じゃあねぇ。
……御前さんが、連中の仲間じゃないなら、此処で何してたって話だ。
大方、同業者から分捕ろうって所だろうがよ。」
ゆっくりと、動く。 女の前へと、歩み寄っては、其の姿を見下ろし。
――もし、女が仕込み針を振るうならば。 其の瞬間、其の手首を制して掴み。
傍の壁へ、其の身を押し付けようとするだろう。
自らの体躯で、女の動きを抑えるのは――体格差を鑑みれば、容易だろうか
「―――……おいたは駄目だぜ、嬢ちゃん。
あんまり暴れると、紳士じゃあ居られなくなっちまうからよう。
……ただ、ちょいと秘密にして貰えりゃあ良い。 ……この部屋での事をな。」
■ノア = セシル > 「 ︎︎それを言うなら……
︎︎ ︎︎ここまで仕事熱心な傭兵もそう居ないわ。
︎︎ ︎︎さっさと引き払ってくれていたら良かったのに… ︎︎」
勝ち目のなさそうな相手ならば、せめて少しでも穏便に済ませたいところだけれど… 残念ながら、易々と金品に揺らぐタイプには見えない。ともなれば 隙を見て逃げ出したいと考えるも、細い通路に立ち塞がれては完全に退路は絶たれたも同然。残された道は少なく、考えうる中で最も最悪の手段。女はその指先に力を込めて
「 ︎︎嘘なんてついてない、酒の誘いも ね。
︎︎ ︎︎イイ男って思ってたのよ、こうなるまでは ─── ︎︎」
歩み寄り女を見下ろす貴方の首筋めがけ、女は指を伸ばした。ところが反射か、はたまた見透かされていたか、手首を捕まれ壁に押し付けられて
「 ︎︎─── ッ、女の顔にコイン投げつけといて…
︎︎ ︎︎何が…… 紳士 よ、っ……… ︎︎」
もがこうにも、壁に縫い付けられたかのように身動きは取れず。ぎり… と歯を食いしばった。
■グライド > 「其れは俺様も同意見だ。
だが、気付いちまったもんは仕方ねぇ。
……誰だって、後ろから襲われたくはないからな。」
――実際に、こうだ。 相手が指に携えたのは針だろうか。
狙われたのは迷う事無く首筋、急所。 其れを、殺意と受け取るには十分に過ぎる。
壁面との間に女を閉じ込め、其の顔を間近で見降ろせば、悔しそうな其の瞳を眺め
「……嗚呼、そうだな。 俺様に至っては、今でも良い女だとは思ってるぜ。
何より、肚が据わってる所が特にな。」
先刻から、嘘を吐かれ、襲われて、其れで居て紳士を貫ける方が偉いと言う物だ。
寧ろ、称賛して貰いたい位だ、と冗句めいて口にしては。
――片掌を舞い上げ、女の頬に添えて、其の目元を撫ぜた。
気の強そうな眼差しは、今でも隙あらば、と狙って居るのだろう
其れが、如何にも愉快で、つい、くつくつと喉奥で笑い。
「―――結論を急ぎ過ぎるのは、嬢ちゃんの悪い癖だな。
まぁ、のんびり構えてられる状況でも無いんだろうが…。
……言っただろう、秘密にして貰えりゃあ良い、とよ。」
顔を寄せる。 ……其の目元に、掠める程度に唇を触れさせ。
そうして――ふと女から離れる。 其の拘束をも、解いてやりながら。
女にとっては何時の間にか、己が手に握られて居る物を掲げながら、再び向かうは出入口。
――舶来品の、年代物の蒸留酒。 恐らく、市場に出回れば可也の値が出る物。
部屋の中に在る数多の盗品の中で、唯一価値を理解出来る其れを示しながら
――金品に揺らいだ訳ではない。 初めから、ちゃっかり其れに目を付けていたのだ。
扉を開き、女へと、ちらり、振り返って。
「―――――俺様は何も見なかった。
こんな場所の事は知らなかったし、誰にも会わなかった。
つーか、見逃した騎士団の連中に文句を言う資格は無ぇ。
……代わりに、帰り道、イイ女に出会った。 ……其れで如何だ?」
――傭兵は聖人君子じゃない。 人に胸を張れる様な生き方ではない。
盗賊を、嘲笑えるような存在では無いのだ。
「……其の上で。 ……酒の誘いに、乗ってくれても構わねぇよ。
こんなカビ臭い部屋じゃあ無くて、な。」
■ノア = セシル > 壁に押し付けられた拍子、指の隙間から極めて細い針が落ちる。針の先に仕込まれていたのは、強力な睡眠薬…… 実際のところ女に殺意はなかったが、貴方にそれを知る由もなく。殺意と取られても言い逃れはできない状況の中、最後に出来るのは 歯を食いしばり貴方を睨みつけることくらいだった。それでも、大きな手のひらが上がるのを見れば思わず長い睫毛を伏せてしまうが
「 ︎︎────── ── !? ︎︎」
思いきり叩かれることを覚悟した頬に、瞼に、全く予期せぬ体温を感じる。理解が追い付かない女は、恐る恐る目を開けると… 近付く顔、そっと掠る程度に落とされた口付け。
「 ︎︎なに、言って……… ︎︎ ︎︎ ︎︎──────── 、? ︎︎」
身体の拘束まで解かれ、意味がわからない と視線が彷徨う。更には、いつの間にか手に握らされた蒸留酒。肝が据わっている、などと言われていたけれど… 随分と気を張っていたのだろう。一気に緊張の糸が切れ へたりと膝から崩れ落ちそうになるのを、壁に凭れることで耐えた。
そして、貴方の作り上げたストーリーに耳を傾けながら、手にした蒸留酒を黙って見詰め
「 ︎︎……………あぁ、気に入らないっ ︎︎」
完全に、負けを認めた。服の隙間に手を差し込み、ジャラジャラと取り出した装飾品の数々を床に落とし。代わりに細針を拾い上げホルスターにしまうと、酒瓶片手に貴方を追って歩み寄り
「 ︎︎水だけじゃ物足りなかったのよ。 ︎︎」
未だ悔しげな色は残しながらも、貴方の誘いに乗ったのだった。
■グライド > ―――己が報告しなければ、この場所が見つかるまでには時間が掛かるだろう
また、後日に確認の為、騎士が訪れるかも知れない
けれど、其れ迄の間に、この部屋の盗品達を如何にかする術は在る筈だ
其の時こそ、己の様な者に、見つからないよう、上手くやれば良い
既に依頼は終わったのだ、報告義務なんて本来無い
女に手渡した酒瓶、其れを見て如何するかは、あくまで女に委ねた心算だ
けれど、己が考え得る中で、最も女に都合が良い話、でもあろうから
――其れを、気持ちがどうあれ、女が受け入れたなら
可笑しそうに、愉快そうに、くはは、と笑って。
「そりゃあ、物足りねぇだろうさ。
だがよ、良い酒なのは保証するぜ。 後悔はさせねぇよ。」
飲めば、その味を知らずに見逃すなんて、きっと考えられなくなる
酒飲みゆえの保証付き、己が後ろに女の気配が付いて来るなら
其の儘通路を進み、上の階へと再び戻って、盾を拾い上げる
――矢張り、誰も居ない。
「俺様の宿に来な。 気兼ねなく飲むなら、其の方が良いだろ。」
――もう、逃げ場、と言う意味では、数多に在る。
己を振り切って、姿を消す事だって女ならば出来よう。
けれど、其の上で誘うのだ。 何せ、初めに誘ったのは女の方なのだから――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区の廃屋」からグライドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にノア = セシルさんが現れました。
■ノア = セシル > 騙しきれず、打ち負かせもできず、そんな相手に見逃してもらった上で手に入れたとて… それは女にとって、何の価値もないモノに思えて。床に落としたそれらは 盗品の中でも特に価値の高い宝石類であったけれど、結局、最終的に女が持ち出したのは一本の蒸留酒のみ。
嘘から始まった、傭兵と盗賊の出逢い。奇妙な二人組は、その日一本の蒸留酒を盗んで。秘密は本棚で蓋をして、廃屋を後に 二人連れ立っていった ──
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からノア = セシルさんが去りました。