2025/02/11 のログ
■ハーラ > 「私は…メグ・メールウイスキーでいいかな」
アイカの注文も聞き出せば、ハーラは再び席を立ち、マスターに注文を伝えに行く。
戻ってきたハーラの手元には、注文した酒の瓶とグラス、そしてスナック。
「ところで踊り子さん、踊り子さんも別の国から?」
この国のものではない舞踏、そして微かに異国感のあるイントネーションから、ハーラは当たりをつけていた。
王都やダイラスのような大きな都市では異国の旅人の姿も珍しくはないが、
旅人をやるだけあり大抵の者が纏まった金を持っているため、貧民地区で見かけることはあまりない。
「私はハーラ。この国の南にあるアイレムって国の出身」
■アイカ > 「私は…そうね、エールでお願い」
マスターに注文を伝えに行く姿を見送りながら、アイカは先程貰った報酬を懐に仕舞う。
やがて酒の瓶とグラスを手に戻ってくるハーラに、ありがとう、と笑って。
「ん? そうね、だいぶ前王都にやってきて、それからずっと住んでる」
舞踏、言葉。思えば判別する材料は少なくない。
バレてしまったことにも特に驚かず、「も」と言ったことから彼女もそうなのだろうと確信した。
異国の旅人は大体、平民地区かあるいは富裕地区か…
より華やかで安全なところに宿を構えるのが定石だろうか。最近のことはわからないが。
「私はアイカ。…アイレムというと、交易で栄えてる国?」
ちらっと話には聞いたことがある、砂漠の平和な国。
そこからやってきたのか、と瞬きつつ、テーブルの上で両手を組んでリラックスした体勢になる。
■ハーラ > ウイスキーを注ぎ、ちびちびと飲み始める。
貧民地区の店ゆえに品揃えはそこまで良くもないが、ハズレではないようだ。
平民地区の酒場と比べても見劣りしない味ではある。
「よろしく、アイカ。
そうそう、砂漠とオアシスとラクダの国。ここよりは大分平和なとこ」
この国が乱れすぎということもあるが、他所の国と比べても平和を謳歌している。
まぁ、お陰でハーラ自身は出稼ぎの為に旅立つことになったのだが。
「平和すぎて仕事が無くてね。私も少し前にこの国に来たわけよ」
魔族や帝国等の外からの脅威。王族、貴族同士の競争。九頭龍山脈の未踏の遺跡…。
住人にはあまり喜ばしくないだろうが、冒険者や傭兵にとっては王国は飯のタネの宝庫だ。
「で、アイカはどんな国から?」
ハーラはいくつか自分の国の事を語ると、話を振り返す。
■アイカ > 折角奢ってもらったのだからと、のんびりグラスを傾けている。
ここのお店の酒は初めて飲むが、実際悪くない。
また仕事に訪れた際は利用するのも良いな、と思った。
「まぁ、ここに比べるとどこも大体平穏じゃないかしら。
でも確かに、冒険者みたいな戦いの腕を活かす仕事だと、平和な国じゃ商売あがったりね」
王城や富裕地区に行けば貴族王族のドロドロに巻き込まれる恐れあり。
王都の外に行けば、魔族や魔物が幅を利かせる洞窟・森・ほか遺跡などがあちこちに広がる…
一応冒険者として登録しているものの、普段は踊り子の仕事についているアイカからすれば物騒な世界だ。
「北方の小さな国。数少ない農民が大地を耕してのんびり暮らす、何の変哲もない所。
母を亡くして、父と一緒にあちこちを旅するうち王都までやってきたってわけ。
踊りの技術を身に着けたのも、その道中ね」
■ハーラ > 「なるほどねぇ、生粋の旅人ってわけか。
結構苦労してそうだね…」
父一人娘一人での旅は、ハーラの一人旅とは違い気ままなものではないだろう。
何らかの理由で祖国を離れ、家族と共に流浪するうちにここにたどり着いた冒険者は珍しくない。
来るのが容易で仕事に困らないここは、そんな冒険者を幅広く受け入れてくれる。
「それで今は、名うての踊り子として引っ張りだこ、って感じ?」
彼女が踊っている時、この酒場は随分賑わっていた。
彼女目当てに訪れた客も少なくはないのだろう。
■アイカ > 「苦労はしたけど、今が楽しいからいいわ。王都は物騒だけど気侭に暮らせるし」
実際、踊り子として王都中を舞い踊り、報酬を得る。
たまに冒険者として外に出向き、場合によっては新たな出会いを生む。
そんな暮らしは、ジプシーめいて流浪の生活を送っていた自分の肌に合うのかもしれない。
「名うて…かなぁ。引っ張りだこってわけでもないけど…
呼ばれて踊るってことは多いし、それなりに名は知ってもらえてるんじゃないかしら」
流石に追っかけめいた客はいないと思うが。
盛況で迎えてくれるのはうれしいことだ、と微笑む。
「それにしても、私の踊りを見るのは男の客が殆どなのに珍しいわね。
まぁ女の子の客が嫌ってわけじゃなくて、むしろ嬉しいんだけど」
■ハーラ > 謙虚だねぇ、と茶化すように笑う。
実際、彼女の踊りはハーラにも見事だと分かるものであった。
彼女の情熱的な踊りは、観客に冬の寒さを忘れさせたことだろう。
「あら、そうなの?んー…まぁ、そもそもこの地区の酒場なんて男性客の方が殆どだろうしね」
平民地区や富裕地区であれば女性の客の方が多いような酒場もあるのだろうが、
貧民地区の酒場にいる女は大抵娼婦かハーラのような冒険者だけだ。
「それに…まぁ、素直に言えば見惚れちゃってね」
片手で頬杖をつきながら、惜し気もなく肌を晒す踊り子衣装に包まれたアイカの身体を、
にんまりと笑みを浮かべながらハーラは眺めていた。
■アイカ > 謙虚と茶化されれば、可笑しそうにくすくすと笑う。
王都に踊り子は数多いるが、やはり普段から練習を積み重ね経験を積んでいるだけあって、
自身の舞踏はそれなりのものだと自負してはいる。
「まぁ、ね。男性客の中に女性が紛れてたら、やっぱり気になるわ」
娼婦はおよそ自分が勤めている娼館に詰めているだろうから、こうした酒場に来る女性は大体が冒険者だろう。
素直に──と言われると瞬く。
此方をにんまりと眺めるハーラの眼差しに、己と似たような雰囲気を敏感に感じ取ったからで。
「……ふぅん?」
ふんわり笑みを浮かべると席を立ち、ゆらりと踊るように彼女の隣に場所を移すアイカ。
横から顔を覗き見るようなアングルで、やんわりと瞳を眇める。
「見惚れちゃうくらい、興味を持ってくれたなら…
特別に、ハーラだけの時間を作ってもいいけど? …なんてね」
■ハーラ > 意味深な笑みを浮かべて席を立つ彼女をハーラは目で追い、
隣に彼女が座れば、努めて余裕を保つように椅子に体重を預け、彼女の瞳に視線を返す。
「へぇ、いいの?今日は店じまい?」
彼女の肩に手を回し、抱き寄せてみる。
グラスに残ったウイスキーをぐっ、と一気に飲み干して。
「いいの?特別扱いなんかしちゃって。
……じゃあ、遠慮なく私だけの時間を楽しませて貰おうかな」
ちらりと店内を見渡し、誰もこちらを見てないことを確認すると、
戯れに顔を近づけ、アイカの唇に軽く口付けた。
「どこか、二人きりになれる場所の当てはある?」
■アイカ > 「時間は関係ないわ。店を閉めたいって思ったときに閉めるだけ」
ハーラに抱き寄せられればやんわりと微笑み、
此方からも彼女の腰に手を回して体を密着させる。
空いた手でグラスに残ったお酒を飲みほして、ふぅ、と一息。
「その辺も私の塩梅で決められるからね。
フリーの踊り子はそういうところが自由で便利、ってわけ」
店の男性客は皆、酒と自慢話、仕事の話に夢中だ。
戯れに唇を重ねられれば、お返しにと此方からも顔を近づけ、ハーラの唇を軽く吸って。
「ん~…… この近くに安くていい宿屋があったかな。そこに行きましょ?」
■ハーラ > 「いいねぇ。案内は頼んでいいかな?」
話がまとまれば、ハーラは立ち上がり外套を羽織ると、
喧騒の中、酒代を支払って店を出る。
踊り子が踊りを終えしばらく経った店内では、二人の姿に気付く者は誰もいなかったであろう。
「じゃ、行こっか!」
酒が入り、少々気の大きくなったハーラは、
その気分のままにアイカと連れ立って、宿屋へと歩いて行く――。
■アイカ > 【移動】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアイカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からハーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリエルさんが現れました。
■リエル > 貧民地区の通りではなく一つ脇に逸れた裏路地。
そこで営業をする何軒かの店、商店や娼館などが営業しているその路地の中ほどで壁に背を預けて大きなため息。
今日は運が悪く、討伐や採取の依頼もなく、目についた用心棒と言える依頼を受けたはいいのだが暇の一言。
もし万引きや強盗、代金の不払いや揉め事があれば仕事になるのだが、そういった事もなく平和そのもの。
「このまま終わってくれますといいのですけど……」
このまま何も起きなければ暇をしてお給料がもらえるおいしい仕事。
しかし何かあれば、その度合いでは割に合わない仕事に代わるので気が抜けず。
もし何か起きても万引きぐらいがいいな、と考えて願い。
一度壁から背を離して大きく背を伸ばして体をひねり。
固まりそうだった体を解せば壁に背を預けて、用心棒という名の暇つぶしを続ける。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリエルさんが去りました。