2024/03/01 のログ
ティカ > 本当にズレている……。
こんな状況で同性に触れられて、セクハラだなんだと騒ぐ馬鹿などどこに――――いや、行き倒れのフリをして獲物を誘い似たような被害を訴える新手の美人局みたいな輩ももしかしたらいるのかも知れない。
そんな益体もない思考の寄り道を交えつつ黙っていれば、ようやくにして小躯が雪の寝藁から助け出された。なんてこと無い様子でティカの身体を木箱の上まで抱え上げた膂力にはまたも驚かされる。
そして程なく彼女の唇が紡ぎ出すのは聞き覚えの無い異国の言葉。
魔法の知識など皆無である少女戦士は多分呪文なのだろうと類推し、溢れ出す翠光に身を任せるばかり。

「お、おぉ…、おおおぉぉ……っ! すっげえ、痛みがすっかり無くなりやがった! あんた、優秀な治癒術師だったんだな!」

失血に由来する気怠さこそ残ってはいるものの、身動ぎもままならぬ程の痛みはすっかり消えていた。豊乳を揺らしながら腕を回すも、脇腹からの鋭痛に動きが阻害される事もない。

「よ……っ、ととっ! はは、流石に全快って訳にはいかねぇみたいだけど、おかげで動けるようになったぜ。助かったよ、ええっと………あ。あたしはティカってんだ。よろしくな!」

振った両脚の反動で木箱から飛び降りた小躯は着地の際に若干のふらつきこそ見せる物の、その動きは先程の行き倒れと同一人物とは思えぬくらい身軽な物。
つい先程まで警戒心丸出しの野良猫めいていた態度もすっかり軟化し、笑顔を浮かべて差し出す手指が互いの名前さえ知らなかった事に気付いてまずは自ら名を告げる。

> 誰かに指摘でもされないと自覚はしない。
同性でもセクハラと訴えられたら怖いので許可を取ったのは自衛の一つでありました。
治癒が終わった後、じろじろと正面から彼女を見たのは治癒がきちんとできたかの確認であって
決して邪な事では微塵にもなかったと目力で訴えたかった。

「いえ、治癒術師ではありません。治癒が使えるだけの者です」

血も戻す術があるとは聞いたことがあるがそこまでの腕前ではない。
胸について視線をそらした、同性であっても揺れるそこは凝視しない。
よく動けるようで何よりです、とても俊敏さに満ち溢れつつも顔色は血が足りないのが感じ取れる。

「よかったです。ティカ様。名乗りをされれば返さねば。
 私の名は鼎(かなえ)です。はい、握手。こちらこそよろしく願います」

名を告げられればこちらも名乗り、差し出される手に対してこちらも翳していた手だけど握って握手を交わす。
握手をし終えれば さて、と立ち上がって視線を泳がせて。

「本来の要件に戻らねば、私は貧民地区の孤児院に行かねばなりませんので、ティカ様はいかがなされますか?」

ご案内:「貧民地区 雪の日の路地裏」からさんが去りました。
ティカ > 「? ??」

脇腹の調子を確かめる少女戦士は、いきなり強まった桃色の目力に双眸を瞬かせるも握手と名乗りに笑みを深めた。
立ち上がる様子を見せる彼女の身体を繋いだままの細腕で引っ張って、僅かばかりに恩を返す。成こそ冒険者のそれではあるが、筋肉の凹凸もほとんど見られず、繋いだ手指からは剣ダコやあかぎれに由来する硬さは全く感じられない。むしろ、貴族娘にも似た繊細な柔らかさばかりが伝わろうか。

「――――おぉ、そっか。道草食わせちまって悪かったな。あんた―――えっと、鼎っつったっけ。鼎みたいな可愛い子が一人でこんなトコ歩いてたら襲われっちまうだろうし、そこまであたしが護衛してやるよ。チンピラの二人や三人なら返り討ちにしてやらぁ」

ぐっと曲げても貧弱な小山が慎ましやかに膨らむ細腕をぱんと叩いて、恩返しのローン返済を申し出る。ともすれば命の恩人とも言えるだろう恩義にはまだ足りぬ報いだろうが、少しつづでも返していければと。
そうして彼女が目的地へと向かうなら、道中あれやこれやと声を掛け、新たに出来た奇妙な知人との縁を深めていくことになるだろう―――。

ご案内:「貧民地区 雪の日の路地裏」からティカさんが去りました。