2024/02/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアキアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区「術符の酒場」」にニュアさんが現れました。
■ニュア > 「薬酒符ちょうだい。フレーバーはアニスで。」
───“術符の酒場”。
貧民窟にひっそりと存在する小さなBarの、カウンター席に娘はいた。
猥雑な立地に紛れるように看板すらも無く存在する小さな店は、小さいなりに殆どの席が客で埋まり、盛況を呈しているようだ。
暫くして──コト、ン。娘の前に置かれるのは杯に入った透明な液体と、皿に添えられた指先程の四角い小さな術符。
娘の指が先ず、符を摘まみ、飴でも舐めるかに舌に載せる。そうすれば──符は融けて、呪紋が舌に転写された。
そして、杯を傾ければ──── それは芳醇な、娘でも酔える“酒”になる。
この店は、魔力で酒気を得られる酒場。所謂“脱法酒”だ。
本来の酒よりも覿面に酩酊を得られ、効果付与や怪しい効能だって取り込める。
幻覚等のトリップを目当てにくる常連だっている。故に店内の治安は宜しいとは謂えないだろう。
それでも娘が、ほんの時々此処に立ち寄るには、理由があった。
「 ──────…… 、ぅ、わ。 クる。」
一口飲んで、か、と喉に熱が溜まる心地。
己には、毒や薬物への耐性があり、それは酒に於いても然りだった。
故に、通常の酒だと容易に酔えない。だから、どうしても酔いたくなると此処に来るのだ。
───つまり、王都に這々の体で帰還しての、この数日。酒に酔いたい鬱憤があったのであり。
「ぁ゛----…… 」
酔うことを自身に許した夜、という訳である。
■ニュア > 酒では酔えない。でも魔術には酷く燃費が良い。それが己の体質だ。
ので、此処の術符は覿面に効く。正直、効き過ぎる程に。
カラコロと杯を眼前に掲げて氷を鳴らし、眺める。
杯の中身は、希釈された薄い酒の時もあれば、申し訳程度に香り付けされた水だったりもする。
今日は──… 多分、酒。…匂いが、何となく。きっと。
「 コレで酔ってるとかー…、毎回ウケるけど。」
何であれ、酔える。何であれ、キマる。その絶対的信頼感のみで成り立っている店なのである。
店の床には、泥酔している男が半眼で脱力していたりもするし、男女が連れだって厠に行き半刻程戻らぬ、そんな席もあった。
そして、フードの内側。細面にはいつしか頬色に淡く色が差し。
常なら少年風貌をも思わせるその細面は、とぅろりと下がり気味の目蓋に睫毛の紗が霞み、少女らしいそれになる。
恐らく、いつもより幾分無防備で、いつもより幾分気が弛む。だから、長居はしない。
酔って何となく──思い出すだけで陰鬱になる何事かをリセットして、なんとなく明日からの儲けを考える。
それだけのための時間だった。
「 次出向くときは、マトモに路銀貯めて護衛でも雇っていくのもイイかなァ… 。」
はふ。 眠たげな吐息。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区「術符の酒場」」にアドラーさんが現れました。
■アドラー > 貧民地区。
寒い風を受けながら、逃げ込むように入ったバー。
やや古びた扉を開けると、感じるのは普通の酒場とは違う匂い。
視界に入るのは泥酔した男が床に寝そべって居たり、視界の端に捉えた酒は違法のもの。
「あぁ、しまった。ここは"そういう"店か」
小声でぽつりとつぶやく。
しかし、入った矢先に何も頼まず店を後にするのは不作法というもの。
店内はそれなりに盛況で、席はそこかしこが埋まっており、空きがないか周囲を見渡す。
一席、空いている場所を見つければそちらへ向かっていき
「失礼、隣に座っても?」
外套を纏った人物にそう問いかけながら、隣の空いている席を指差す。
■ニュア > 入れ替わり立ち替わり、誰かが抜け、誰かが入る。
それに一々目配りする程律儀でもないし、なにぶん若干酔ってきた。
もう一杯くらい頼むか、──…いや、潰れるかなァ、等と。
半眼にて頬杖つきつつ思い巡らせていれば、声。
「 ───… 」
ぼんやりついでに一瞬、無視し掛けたけども。
己に声が向いてると気付けば無碍にはできまい。のろりと振り仰ぎ、
「 どぉぞ? 」
ほんのりと酒気に血色の灯った少年──否。多分、きっと少女だろう外套姿は、男へと促した。
「早く座った方がいいよ。 うかうかしてると取られるし。」
■アドラー > 「ありがとう、失礼する」
少年、いや少女か…
外套から覗かせた中性的な顔立ちにやや驚きながらも、表情には出さず
微笑みながら隣に座る。
カウンター越し、バーテンダーの背の壁にあるメニューを見るが、こういう場所だからだろうか
見慣れない単語や聞いたことのない酒の名前が羅列している。
「あー…失敬、普段は酒場でこういうことはしないんだが、一つ聞きたい。
その、違法でない酒はどれだ?」
まるでナンパのような声掛けをしているな、と自身に対して苦笑いを浮かべながら
隣を向いて、そう問いかける。
こんなところで違法な酒を飲んで、朝まで記憶がなくなるなんて御免だ。
違法でない軽い酒はないか、そんなことを聞き出そうとする。
■ニュア > 「うん。別にニュアの席じゃないし。」
礼は要らないし好きに座れば?とばかり頚をしゃくってみせる。
普段なら、──俺、と言ったところだったろう。殊に、声を掛けてきた見知らぬ男とあっては。
そんなこと、男には関知しないところであろうけど、──とすれば矢張り娘は酔っている。
ともあれ、そこで会話も終わるだろうなんて思った矢先。
またも隣から声。娘の双眸がまあるくなって。ぱたぱた、数度瞬いて
「 ??? ───…… ぁー、そゆこと。」
合点がいったように、頚を傾いでニヤリとした。
笑うと少し、悪戯小僧めいた少年ぽさが覗くのだ。この娘は。
「おにいさん、アレだ。 うっかり入っちゃったクチ。」
ははーん、なんて鼻を鳴らしたなら。
娘は土色の顔の、辛気臭いバーテンへと声を掛け、
「マスター、熱酒符のー…火鼠抜きで! ……、あとぉー…、こっちに薬酒符もう一杯。おにいさんにツケといて。」
───男へともう一度、振り返るのである。口角傾けて。
「ってコトで、御馳走サマ。」
■アドラー > 相手の一人称に片眉を跳ねさせる。
こういう場所では偽名を使う者が多いだろうが、彼女の様子を見るに嘘をついているようにも思えない。
口ぶりや振る舞いを見て、相応に酔いが回ってることを察する
「あぁ、ばれてしまったか。
貧民地区へは私用で来たのだが、外の寒さに耐え切れなくてね」
少年らしさを覗かせる、悪戯っぽい笑みにこちらは苦笑いを浮かべる。
こちらの意図を見通されても敵意は感じない。
むしろ揶揄う相手を見つけた…といった具合だろうか、と相手のことを勘繰る。
「た、助かる…んん、あー…私はアドラー。アドラー・アリストテレス。
ニュア、というのかな。よろしく」
急に自身が奢ることになったことに動揺をしつつも、親切にしてもらったのは確かだ。
息を吐いて、動揺を隠しながら自己紹介と
相手のことについて聞いてみる
■ニュア > 「フゥン。したら、寒いし酒場はヤバいし酒はマズいし散々だよね。かわいそ。」
ちっとも可哀想に思ってないだろう気の無さで娘は相槌を打つ。
もとより可愛気の無い娘であるから、其処は御容赦いただきたいところ。
コ、トン。
やがて、男の前にも液体の入った杯と、皿に載せられた指先程の呪符が置かれるだろう。
娘の前にも。娘は男の呪符をひょいと摘まみ、
「まぁ、術符キメずに飲むのが合法だけど、クッソマズい。──…ちょい貸し。」
書かれた呪紋の数箇所を爪で引っ掻き、幾文字かを消し。
「コ、レ、でー… トバないんじゃん?マズいけど飲めなくはない。片目瞑れば合法、───… くらいなカンジ?」
男の皿に術符を戻し。何の小細工も加えない己の分の術符を、男に見せつけるように舌に載せて示し
───… 一口、杯を嚥下した。
「これなら、まぁ、味はそれなり? ───で、両目瞑れば合法。」
つまり、違法なのだろう。そっけなく娘は示し。
男の名乗りに、少しばかり厭そうに貌を顰めるのだ。
寧ろ、自分が知らず名乗ってたことに気付かされたことへのささやかな表情の変化だったけども。
「うん。よろしくはしないけど──…どういたしまして。」
軽く肩竦め。
■アドラー > 「散々ではないさ。目標は達成できた。
それに、こんな場所でも親切にしてくれる人には出会えることを知ることもできた」
可愛げのない返答をする彼女に、こちらはいつものペースで笑顔を向ける。
凍える寒さにも、胡散臭い怪しい場所にも慣れている。
むしろ親切に自分の注文をしてくれる人が居ることの方が珍しい。
「あぁ、符、か」
そして、目の前に置かれた酒と呪符に目を向ける。
呪符を料理や酒と共に楽しむ、などという物があるのは知っている。
悪い噂の絶えない貴族や、はたまた貧民層の間で人気になっているというもの聞いたことがある。
中には中毒性がある、というのも。
眉間に皺を寄せながら、それを見ていると、彼女が自身の呪符に細工を施す。
「…郷にいては郷に従え、か。
君の好意を無駄にするわけにはいかない」
まるで毒と分かっている物を食らわなければならない緊張感がある。
彼女の真似をして舌に呪符を乗せ、杯を手に取り、口にする。
まるで口の中に炎が付いた松脂を含んだような感覚。
口腔内と喉が燃えるような熱さに目を見開きながら、なんとか口の中のモノを飲み干す。
「…これは些か、私には強烈すぎるかもな」
熱い息を吐き、既に顔をやや赤くしながら、苦笑いを浮かべる。
■ニュア > どうでもいい風に聞いてた娘の双眸が些か細まるのは、「親切にしてくれる人」認定されてしまった所為。
誤魔化すように、肩を竦め。
「別にー…金払って貰う前にトばれたら、ニュアが払うコトになっちゃうしさ。」
そう嘯いた。
───さあ、男はどう酒を嗜むやら。頬杖をついて試すよに、眺めようか。
だって、己が男の術符を、もっと悪辣な何かに改竄したとも限らないのだ。
疑って突けば幾らだって膿が噴く場であるのだし。
「───……… へぇ。」
男は、符を口に含んだ。少しばかり娘が面白そうに双眸を眇める。
杯を含み、如何にもな表情をして嚥下する。そりゃそう。咽喉を掠める際に発火する熱酒符だもの。
───く。 思わず娘が噴きだした。
「はは!それ飲みにくいよね。 ニュアがいちばん苦手なやつ。よく飲めたね。」
男の苦笑に、笑いを重ね、告げてやろう。
ともあれ──…、偶然にも最下位の熱感付与の酒だ。
今に腑に落ちた頃、身体が温くなる。寒い夜にはうってつけでもある酒だと。